■こういうときはひとこと言ってくれ■

 
 
 
 
 

通されたツインの部屋は意外と広く、清潔だった。
次元に促されて奥へと進む。
五右エ門がひとつ目のベッドの横を通り過ぎようとしたとき、いきなり腕を取られて引き倒された。
何が起こったのか一瞬わからなかった。
背中には軟らかいベッドの感触、そして上には硬くて重い男の体が乗っかっている。
いつの間にか両手首を掴まれて、全体重をかけて押さえつけられていた。
次元の帽子は床に落ちていて、視線を下ろすと己の胸元で黒い髪が揺れ動いている。
両手が塞がっていても問題ないらしく、歯を上手に使って袷を緩め、鼻先を衣服と肌の間に突き込んできた。
べろりと胸元を舐られて、次元の意図をようやく五右エ門は理解する。
誘う言葉も仕草もなく、いきなり押し倒すという暴挙。
突然次元に仕掛けられて、五右エ門はどうしていいのかわからない。
「次元」
取り合えず男の名前を呼ぶ。
唇と舌が肌を這いまわっているのだ、もちろん返事はない。
吸われてチクリとした痛みが走る。
痕がついたのだと五右エ門は思った。着物で隠せる場所であればいいのだが。
「次元!」
身を捩りながら、今度は強めに呼ぶが、やはり返事はない。
かわりに乳首に吸い付かれた。
舌先で弄びながら、軽く歯を立てられて、五右エ門の体がビクビクと痙攣する。
ジワジワと這い上がってくる快感。
太股に押し付けられた次元の膨れた股間。
この先に待つ行為への予感にゾクゾクとしたものが背筋を駆け上がる。
「次元!!」
獣のように貪りつく男の名をもう一度呼ぶ。
叱咤するように、縋るように、逃れるように、そして誘うように。
ピクリと黒い頭が動き、顔が少し持ち上がった。
胸元から見上げてくるその視線は、行為を止める気など更々ないと伝えてくる。
「次元、放せ」
掴まれた腕を動かしながら訴えても、力は全然緩まない。
逃す気などまったくないらしく、伸び上がった次元は言葉を発する度に動く喉仏に軽く歯を立てた。
コロコロと舌先でその形をなぞりられて、五右エ門は思わず喘いで仰け反った。
「天井のシミでも数えておけ。そのうち終わる」
そのうちっていつだ、と思うものの言葉にはせず、五右エ門は言われるがままに天井に視線をやった。
アジトや安ホテルと違って、観光客相手のホテルは小奇麗で真っ白い天井には染みひとつない。
「染みなどないぞ、次元」
くくっと笑いながら言うと、次元がようやく顔をあげた。
そしてチラリと天井に視線を向ける。
真っ白い壁、真っ白い天井、真っ白いシーツ。
そしてベッドの上には白い肌を晒した男。
問答無用で襲われたはずの男は衣服を乱し、キスマークを肌に散らしながらも、可笑しそうに笑っている。
「なにを笑ってる」
不機嫌そうに言ってみれば、笑った顔がニュッと伸び、柔らかい唇が唇に触れた。
不意打ちについ力が緩んだのか、五右エ門の手首が次元の手の中からスルリと抜ける。
抵抗されるか、殴れらるか、投げ飛ばされるか。
一瞬身構えた次元だが、その腕は予想に反して首に巻きついてきた。
「だいたいおぬし、そんなに早く終わらせる気か」
五右エ門の足が小刻みに揺すられて、煽るように股間に刺激を与えてくる。
「・・・怒らないのか?」
誘われているのを感じて、次元は五右エ門の衣服を緩めながら体を弄った。
「怒りはせぬが・・・こういうときはひとこと言ってくれ」
天井を見上げている間に終わる行為など、なんの面白みも意味もない。
どうせなら合意の上で共に楽しむ方がいい。
白い天井を眺めるのは、行為のあとに疲れた体をベッドに沈めるときで充分だ。
「五右エ門、俺はお前を抱く」
誘いでも確認でもなく、決定事項らしい。
獣と化した男の頭を優しく撫でながら、「お手柔らかにな」と五右エ門は笑いながら答えた。
 
 
 
 
 

■WHITE■

 
 
 
■あとがき■

色のお題は『白』。

スペイン旅行中、
ホテルのベッドに仰向けに寝転んで真っ白い天井を見ながら妄想したジゲゴエ。
つまりスペイン発(笑)
まあ、「天井のシミ〜」のセリフを使ってみたかっただけカモ?




 

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