仲間としてのつきあいは長いが想いが通じ合ってからはあまり時間は経ってない。
そんな俺の恋人、石川五右エ門にこのことを伝えたらどんな反応をみせるんだろう。
甘ったるい女やガキの恋愛じゃねぇから、プレゼントが欲しいとかデートしてホテル行きなんてオーソドックスなものは望んでないし、別に欲しくもねぇ。
だが恋人としてみせるこいつの顔や態度や言葉に興味がある。
部屋の隅で目を閉じ胡坐をかいている相変わらずの侍を、帽子で目を隠しつつも視線で捕らえ、グラスを傾けながら俺は何気ない調子で言った。
「ああ、俺もまたひとつ歳をとっちまったなぁ」
呟きと言っていいほどの音量だが、耳が良い五右エ門に聞こえないはずはない。
案の定、閉じていた目をあけて俺の方に顔を向けた。
「今日は俺の誕生日なんだよ」
シニカルに笑いながら、五右エ門を見る。
俺の言葉を聞いた五右エ門は驚いたように切れ長の目を少し見開いた。
今まで誕生日なんて話題にしたことはない。これはお前が恋人だからこその話題だ。
表面上は何気ない態度をとっているが、俺の心は期待とワクワク感でいっぱいだ。
五右エ門は口篭り少し考え込んだあと微かな笑みを浮かべ「次元」と俺の名を呼んだ。
さあ、五右エ門、おまえはどう反応する?
「仕方あるまい。気にするな、誰でも歳はとるものだ」
・・・・・・え?
「前回の仕事のときあの娘におじさんと呼ばれのを気にしてるのだろうが」
「そ、そうじゃねぇ!!つうか気にしてねぇ!!」
「・・・ではなんなのだ?」
俺の剣幕に驚きつつも、訝しげな侍の姿に俺はガックリと肩を落とした。
「いや・・・もういい」
こいつに甘さ、恋人らしさを求めた俺が馬鹿だった。
なんだかんだ言って、俺もロマンチストっていうか甘さを求めてたんだなぁ。
五右エ門はわけがわからんと言わんばかりの顔をして「そうか」と答えた。
だがその夜。
食事当番の五右エ門が、日本食一辺倒なあいつが用意したのは豆とベーコンが副えられた、血も滴るようなステーキだった。
これは意外と夜の遊戯も期待できるかもしれねぇな。
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