朝。目覚めた俺は、起きあがろうとして体の異常に気がついた。
全裸であることは別に珍しいことでもないが、体中の関節が軋むように痛い。
まずは腰。
五右エ門相手にどんなにスイングしても平気な腰が、キシキシと痛む。
次に手首。
腕を上げて見てみると赤く腫れている。まるで、何かできつく縛られた痕のように。
そして、考えたくはないが。
考えたくはないが信じられない所にも痛みがある。
何でこんな所が痛むんだ?
今まで誰にも、心から愛する五右エ門にすら拒否してきたその場所が。
ツキツキと…軽く痛む。
とりあえず、落ち着かねぇと。
とりあえず、昨夜のことを思い出そう!!
……昨夜?
五右エ門と酒を飲んでいて…それからどうしたっけ?
昨夜に限ってなぜか酔いが回るのが早かったのは覚えている。
だが、それからの記憶がない!?
五右エ門のことを可愛い、と言って怒られた記憶はある。
男なのに可愛いと言われて嬉しいはずがないだろう、とかなり御立腹だった。
男でも俺に抱かれているだろう?俺の腕の中のお前は本当に可愛い。
声も痴態も喘ぐ様も、色っぽくって艶っぽくて、そして可愛い。
そう甘く囁くと、五右エ門は半眼で睨みつけてきた。
鋭い目付きは俺を射殺しそうな程の強さだが、微かに朱に染まる耳たぶがすべてを物語ってるようで、やっぱりこいつは可愛いやつだなぁと思った。
どこまでいっても俺は時代錯誤の侍に心底イカレてるらしい。
ニヤニヤ笑う俺を見て、五右エ門は声を荒げて言った。
『おぬしだって拙者に抱かれてみれば、可愛いやもしれぬではないか!!』
もしかして本気だった……とか?(汗)
酒に何か混ぜられて、五右エ門に逆襲されてしまったのでは?
そうだとすれば、今の俺のこの状況も…説明がつく?
そ、そんな馬鹿な!?
信じられねぇが、信じたくないが、俺が、この俺が五右エ門に!?
そんな、そんな馬鹿な!!
カチャリ。
両手で頭を抱えて苦悩する俺の耳に扉が開く音が聞こえた。
恐る恐る顔を上げると、五右エ門が部屋に入ってくる所だった。
「ああ、次元、起きたのか」
「…五右エ門」
「体の具合はどうだ?」
体の具合!?今までそんなこと聞いて来たことなんか一度もなかったぞ!?
「か、体中が痛てぇ」
とりあえず、そう答えてみる。
「そうであろうなぁ」
そうであろうなぁ、ってどういう意味だよ、コラ。(泣)
「この手首は…」
勇気を奮い立たせ赤く腫れた手首を差し出す。
五右エ門はちょっと困ったような、罪悪感のあるような表情を浮かべた。
「悪いとは思ったがおぬしが暴れるのでついキツク縛ってしまったのだ」
暴れるから…縛った…。
「抵抗しなければ優しくしてやるつもりだったのに。暴れるからちょっと無理をしてしまったでござる」
優しくしてやる…つもり。
五右エ門の言葉が頭の中でグルグルする。
それって、つまり、つまりーーーーー!!!
「おっ…覚えて…ないんだが…」
「はっ?」
「昨夜、おまえと酒を飲んだよな?そ…それから……?」
最後の勇気を振り絞って、小さく小さく呟いた。
「昨夜?酒を飲んだ…後??」
「…ああ」
「覚えておらぬのか?」
「ああ」
う〜ん、と五右エ門が顎に手を当てて考え込んだ。
ジリジリと涙目になりそうになりながら、五右エ門の返事を待つ。
すると、五右エ門は優しく微笑みながら言った。
「覚えておらぬのならその方が良い。無理に思い出そうとせず、ゆっくり休め。まだ、体はキツイだろう?」
がくっ。
その言葉に俺は脱力して頭を垂れた。
そして、そのまま気を失うように、ベッドに倒れ込んだ。
「じ、次元!?大丈夫か!?」
体がカッカッと熱い。
意識は朦朧として沈んでいく。
五右エ門の慌てた声を聞きながら、俺は考えることを放棄した。
よりによってこの俺が。
まさかそんなことになろうとは。
あぁ、五右エ門。
おまえに何をされようと、俺のおまえへの愛は不変で不滅だ。
だが。
当分は…立ち直れそうにないぜ(涙)
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