■日本流年末年始の過ごし方【1/2】■

 
 
 
 
 

炬燵の上には御節とお雑煮。
酒も日本酒だけでなく次元好みの洋酒も用意されている。
年明け頃から降り積った雪は、今日は太陽の日差しを受け溶け始めていて、水滴の音がポタポタと小さく聞こえてくる。
正月番組を流すTVを観ることなく、五右エ門はむっつりとした様子で御節をつついていた。
「なに怒ってんだよ」
「・・・なにも怒っておらん」
次元の問いにそう返しながらも五右エ門の顔は仏頂面である。
「なら元旦早々、そんな不景気な面すんな」
反対に次元は上機嫌で、五右エ門の不機嫌な様を気にもしていない。
「元旦ではない」
「じゃ、正月早々」
洋酒ではなく、五右エ門につきあって熱燗をクイッと呑みながら次元は楽しげに言った。
「・・・不覚」
ガクリと五右エ門が肩を落とす。
いくら久々だったとはいえ、元旦は布団から出ることもなく一日を過ごしてしまった。
眠るか抱き合うか。たまに腹が減れば作り置きした御節を一口二口、口に入れるだけ。
まるで発情期の獣である。
元旦からそんな自堕落的に過ごしてしまった己の未熟さ。
五右エ門は軽い自己嫌悪に陥っていたのだが。
「俺流に付き合ってくれたんだろ?ま、気にすんな」
心を読んだかのようにそう言って、次元は五右エ門の頬に手を添えた。
次元にとっては十分過ぎるほど充実した時間だった。大満足だ。
意外にも積極的だった五右エ門の様子も嬉しい誤算で存分に愉しませて貰った。
「それによ」
五右エ門の顔を自分の方へ向けさせて次元はニヤリと笑ってみせる。
「不本意ながら俺だって年末はお前に付き合って頑張ったんだ。ご褒美貰うのは当然だろ?
・・・もしお前が不本意だったとしても、さ」
一瞬五右エ門は目を見張り、そして頬に添えられて次元の手を乱暴に払った。
「不本意・・・ではないから問題なのだ」
酒をぐいと煽ったあと、ジロリと次元を睨みつけた五右エ門の目元は微かに赤い。
「じゃあさ」
そんな様子を嬉しげに眺めた次元は、すぐに五右エ門ににじり寄り肩を抱き寄せ、薄い唇を舐めた。
「なっ!」
びっくりして、次元を引きはがした五右エ門の手をとって、今度はその甲に唇を寄せる。
上目使いで五右エ門の目を見つめ、次元は「今年は寝正月といこうぜ」と言った。
次元の発する淫の気にやれらそうになりながらも、五右エ門は手を引き抜いた。
ぬりりと甲を滑った舌と唾液の感触に背筋がゾクリとする。
だが、やっと布団から出たばかりで、やっと正月らしい時間が始まったばかりで、また快楽に囚われた時間に戻るにはまだ早い。
「調子に乗るな!」
ガツンと頭を強く叩かれた次元が「痛てぇ」と叫ぶ。
頭を抱えて倒れこんだ男を無視し、五右エ門は手酌で酒を一気に飲み干した。

ふたりの正月は始まったばかり。
 
 
 
 

■NENMATUNENSHI NO SUGOSHIKATA 1.2■

 
 
 
■あとがき■

ということで。
ある年の次元と五右エ門の年末年始のお話でした(^^)
のんびりまったりお互いに振り回されながらも過ごすふたりってのもいいですよネ
 

 

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