■日本流年末年始の過ごし方【12/29】■

 
 
 
 
 

飛行機を乗り継いで到着したのは西日本の地方都市。
寒がりな次元のことを考えて北より南を選んだらしいが、クリスマス以降いきなり寒波が来たらしく、寒さは厳しい。
そこから更に移動を重ね、たどり着いたのは想像した通りかなり辺鄙な場所だった。
とはいえ、人里離れた獣しか生息しないような山奥というわけではなく、民家や自動販売機、小さな商店などがちゃんとある一応は人里だ。
ただ人が住む土地よりも畑や田んぼの方が何十倍、何百倍もあるという風情ではあるが。
五右エ門の案内で辿り着いた場所はいかにも日本家屋といった平屋建てだった。
「着いたぞ」
運転席でぐったりとしている次元を呆れたような目で見ながら、五右エ門は車から降りる。
五右エ門が玄関をあけ、再び車へ戻り後部座席から買い込んだ沢山の荷物を運び出すのを次元はぼんやりと眺めていた。
「元気なもんだ」
一仕事のあと、休む間もなく飛行機や車による数日がかりの長時間移動。
そんなものは次元だって慣れている。
だいたいそれくらいで疲れていたら泥棒家業など、いや、ルパンなんぞと付き合っていられない。
体が資本のこの仕事、日々次元だって鍛えているのだ、五右エ門ほどでないにしろ。
「いつまでグタグタしておるのだ。このくらいでだらしない」
荷物を持って車と玄関を往復していた五右エ門が溜息をつく。
ダンボールに入った最後の荷物を持って再び玄関に向かう侍の背中を横目で見ながら、次元はようやく体を起こした。
カラッポになった後部座席。玄関の先に見える廊下に積み重ねられた大荷物。
それを見てハァと大きく溜息をついて、次元は車を駐車スペースへ停めた。
「本当に元気な奴だよ」
次元が一気に消耗したのは長時間移動によるものでも運転によるものでもない。
途中で寄ったスーパーでの買い物によって、だった。
とにかく凄いの一言に尽きた。
年末年始準備の主婦で溢れかえった店内はあまりの人ごみに歩くことさえ困難に思えた。
その人波を五右エ門は泳ぐようにスイスイと渡り歩き、目当ての品を見つけては買物カゴへ入れていく。
次元といえば、五右エ門に頼まれた品をひとつ手に入れるのにも一苦労。
片手以下の品をようやく次元が揃えたときには、すでに五右エ門は会計まで済ませ両手に抱えきれない程の荷物と共に待っていたのだ。
あの喧騒。あのパワー。あの熱気。
女ってのはホント凄げぇ、と思いながらの買い物だったが、五右エ門は更にその上をいく大物ぶりだ。
精魂尽きた次元だが、買物ひとつ出来ないのかと思われるのもしゃくでドライバー役は最後までちゃんと全うしたのだ、それだけでも褒めて欲しい。
ブツブツと呟きつつ、玄関に足を踏み入れて次元は眩暈がした。
随分使っていなかったのだろう、真冬だけに蜘蛛の巣は張っていないが、廊下の隅には埃が溜まっている。
だが、眩暈がしたのはそんな汚さからではない。久しぶりのアジトなんてどこでもこんなものだ。
問題は廊下の先にいる五右エ門だった。
襷がけをしたやる気満々の姿で、荷物の中から掃除グッツを取り出していたのだ。
「次元、早く来い。掃除をせぬと年は越せぬぞ」
「あー、五右エ門、俺は」
「日本の年末は大掃除と決まっておる」
顔はにこやかに笑っているが、嫌だなんて言ったら一刀両断されそうな気配である。
右手に雑巾、左手に箒。その両手をズイと目の前に差し出された。
どちらがいいかとで目で問われ、次元は仕方なく箒を受け取った。
こんな寒い中、水を使うよりマシである。
「では、次元。さっさと始めるぞ。久々に使うアジトだからな。急がねば終わらぬ」
「へいへい」
ふと目の端に買物袋からこぼれ落ちた障子紙が見えた。が、見なかったことする。
外と同じくらいひんやりと冷たく寒い日本家屋の中でぶるりと震えながら、次元は箒を使い出したのだった。
 
 
 
 
 

■NENMATUNENSHI NO SUGOSHIKATA 12.29■

 
 
 
■あとがき■

「ハッピークリスマス」「プレゼントの行方」の続きです。
次元と五右エ門が日本で年末年始を過ごすお話。
 

 

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