■プレゼントの行方■

 
 
 
 
 

予想通り、ルパンは盗んだ宝石と共に不二子と去って行った。
走り去る赤いスポーツカーに向けて数回発砲してみせたから、ルパンは次元がかなり怒っていると思っているだろう。
だがそう思わせることこそが、次元の行動理由だった。
宝石を持って行かれたのは腹立たしいことではあるが、不二子が現れた時点で予想も覚悟もしていたし、これから五右エ門とふたりで過ごす正月を思えば、そんなことはもうどうでもいいことであった。
怒ってみせたのは、不二子に振られたルパンが簡単にアジトに戻って来られないようにするためである。アジトに戻り荷物を纏めるための時間かせぎにもなるし、もしルパンが戻って来てふたりがいないことに気がついても、怒って出て行ったと思うだろう。
次元の見せた怒りっぷりから、探したり追いかけたりしようとしないに違いない。
せっかくゲットした、それも五右エ門からの誘いという、ふたりきりの時間を邪魔されたくない。
恋する男の思考はもうそっち方面にしか向いていないのである。

*

無事に荷物を手にし、空港へ向かう車中で次元は助手席に座る五右エ門を横目で見た。
その膝の上にある荷物は純和風。唐草模様の風呂敷だ。ある意味泥棒にピッタリといっていい柄である。
『純和風』。その言葉が脳裏に浮かんだ次元は、ふとあることを思い出した。
「そういえばよ。俺が去年のクリスマスにプレゼントしたヤツ、使ってるのか?」
次元へ顔を向けた五右エ門は少し考え込むような困ったような表情を浮かべた。
「おまえ、まさか忘れてんのかよ?」
恋人へのクリスマスプレゼント。
使っていないどころか貰ったことまで忘れられているのなら、これほど切ないものはない。
無意識に次元の声が尖る。
「いや、忘れてなどおらん」
「じゃ、さっきの顔はどういう意味だ」
考え込むような、困ったような。
五右エ門はまた同じような表情を浮かべ、口篭る。
忘れてないというわりに反応がおかしい。
「なにやったが覚えてるか」
「当たり前だ」
「言ってみろ」
「忘れておらんと言っておるのに・・・絹の褌だ」
疑い続ける次元に辟易したのか五右エ門は一瞬反抗の意思をみせたが、ジロリと睨みつけられて溜息をつきながら答えた。
答えを聞いた次元の視線が和らぐ。
シルクの褌。
それが去年の次元から五右エ門へのクリスマスプレゼントだった。
クリスマスカラーの緑がなかったのが残念だったが、色はおめでたく赤と白の二色。
だが、よくよく思い起こしてみるとこの一年、五右エ門がその褌を使っているのを見たことがなかったのだ。
「なんだ、結局使わなかったのかよ」
今度は責める風もなく、仕方ねぇなというニュアンスが含まれている。
褌を履かない次元にはわからないが、シルク製というのは普通じゃないだろうし趣味に合わなかったということか。
だが、五右エ門は「いや」と首を振った。
「使ったのか」
「うむ」
「で、使い勝手が悪かったって訳か」
それならさっきの五右エ門の表情にも説明がつく。
恋人からのせっかくのプレゼントを気に入らなかったから使っていないとは言えなかったのだろう。
「いや、なかなか使い心地はよかったのだ」
え?と少し驚いた顔をした次元に五右エ門は苦笑を返した。
「絹というだけあって軽くて履いているのを忘れるくらいだ。それに冬は暖かく夏は涼しかったしな」
とりあえず、クリスマスから夏までは使ってくれていたらしい。
それならばなぜ?という目で問うと、五右エ門はコホンと咳払いをした。
「使い心地は良かったのだがなにせ絹だ。なかなか滑りもよく・・・気がつくとこぼれていることが多々あったのだ」
ナニがとは言わない。
だが褌からこぼれるモノと言えばそれはひとつしかないだろう。
「・・・こぼれるのか?」
「うむ。普通に生活しているときならまあ良いのだが・・・」
盗みの最中や全力で逃げている最中、そんなときにポロリとされてはいくら己のモノとはいえ邪魔である。修行中の、それも褌一丁のときだったりしたらもう最悪だ。
ボソボソと使わなくなった理由を続ける五右エ門の言葉を聞きながら、次元はつい鼻を押さえた。
五右エ門の、褌からこぼれた姿を思い描いてしまったためだ。
一緒に仕事していたあのとき袴の下ではポロリとはみ出していたのか、とか。
褌一丁で滝にうたれている五右エ門の組んだ胡坐の隙間からチラリとモノがこぼれていたのか、とか
つい、妄想豊かに想像してしまった。
たまんねぇ。
次元はにやけそうになるのを必死で抑え込む。
「だから使ってねぇって言うんだな」
「・・・すまん」
せっかくのプレゼントを箪笥の肥やしにするのには罪悪感があったのだろう。
五右エ門は素直に謝った。
「まあ、そりゃ仕方ねぇよな」
苦笑に乗せてそういえば、五右エ門はホッと安堵したような表情を浮かべた。
可愛い奴である。
「でも日常生活なら問題はないんだろう?」
「ああ」
袴の下で滑ってこぼれてもすぐに仕舞えばいいことだ。
「じゃあよ、これから一緒に過ごす正月の間くらい使ってくれよ」
年末年始は仕事も修行もない。ふたりでのんびりと過ごす正月の間くらい使ってくれてもいいだろう?
そう言われて断る理由はなにもない。
「諾」と答えた五右エ門に向かって、次元は満足そうにニカリと笑った。
相手のことを想い、選んで渡したプレゼントを使って欲しいと思うのは人間として当然だ。
それが良い大人で泥棒家業の男であっても同じことなのだ。
そう理解した五右エ門は、そんな次元の心境を擽ったく感じてはにかんだ笑みを浮かべた。

一緒に過ごす間、袴の下では五右エ門のモノがシルクに滑ってこぼれるのである。
もしかしたら着替えている最中もこぼれるかもしれない。
そして、それをこっそりと戻している姿とかを見られるかもしれないのだ
はみだしたらはみだしたで、それをからかったり、そのままコトに雪崩れ込んだりするのもアリだ。
なんといっても邪魔者はいないふたりきりの状況。
いつでもどこでもどんなときでも。こんなに楽しいことはない。

次元の膨らむばかりの期待を知らぬ五右エ門は、ある意味幸せともいえた。
 
 
 
 
 

■PRESENT NO YUKUE■

 
 
 
■あとがき■

ネットショップで「シルクの褌」という商品がありました。
それについていたレビューを一部抜粋。
『しっとりとしたシルクならではの肌触りと木綿とくらべると薄めの生地でまるで
下着を着けていないような開放感があります。夏でも涼しげで良いです。(中略)
生地の滑りが良すぎていつの間にか滑り落ちてしまうことが数回(略)』

す べ り お ち る !

大爆笑しました。
あまりツボだったのでこのネタ頂きました!(パクッ)
ということで、シルク褌ネタのジゲゴエです(ぷぷっ)



 

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