■乱入者と怒れる獣■
 
 
 
 

久々の交歓はアジトの片隅でひっそりと密やかに行われていた。
何ヶ月ぶりになるかわからないほど長く触れていなかった恋人の感触に夢中になりそうになる度、ここはアジトだと思い出しセーブする。
そんな面倒くさいことを繰り返しながらも、次元はこの奇跡ともいえる時間を壊したくなくって、微かに残った理性を総動員させていた。
本当なら何もかもかなぐり捨てて抱き合いたいのが本音だ。
周りに気を配り、声を潜め、出切るだけ音も消す。鬱陶しいことこのうえない。
だが、いつもなら同じ屋根の下にルパンがいるという理由で絶対に拒む五右エ門が、今夜に限って受け入れてくれたのだ。
明日の夜から始まる仕事の前にふたりきりになるチャンスもなくその仕事も長引きそうだとなると、この際そんなことは言ってはいられなかった。
それほどお互いの肌や味や感触に飢えていた。
「いくぞ」
組み敷いた五右エ門の耳元で囁くと、返事のように長い足が腰に絡まって引き寄せてきた。
堪らない。ギュンと硬さが増したのを自覚する。先走りもどぷりと洩れた。
照準を合わせた腰をゆっくりと前へ進ませると、トロトロに溶けて焼けるように熱い褥が肉の凶器を飲み込んでいく。
背中に回された腕にぎゅううと力が入り、微かに爪が立てられた。その痛みがまた新たな快感を生む。
次元は堪らず、ゆっくりした動きをかなぐり捨て、根元まで思いっきり突き込んだ。
「ぅあっ」
白い喉を晒して五右エ門が思わず喘いだ。思ったより大きな声だ。
すぐさま薄く開いていた唇がキュと一文字に締められ、甘い声は殺されてしまった。
それを残念そうに見つめながら、次元も一瞬動きと息を止める。性器から全身に駆け回る快感につい声が洩れそうだったからだ。
肉壁が性器に馴染み形を一定にした。同じく性器も肉壁の中に己のポジションを確保する。
結合部が馴染んできてようやくふたりは息を吐いた。
声は殺せてもあがる息遣いはどうしても止められない。かといってこのまま動かずいるのは生殺し意外なにものでもない。
動かなければ開放のときは訪れないのだ。
「動くぞ」
「うむ」
次元はゆっくりと前後に動き始めた。摩擦される快楽に自然と動きが早くなっていく。
セミダブルとはいえ、しっかりした作りのベッドで助かった。これが安物だったら振動と軋む音でルパンにバレバレだっただろう。
ぐちゅぐちゅという結合音は消すことは出来ない。
だがそれ以外の音は少しでも立てないようにと、唇を合わせ舌を絡ませお互いの快楽に喘ぐ声を飲み込み合う。
角度や早さを変え体内を抉ると当時に、腹の間にある五右エ門の性器も揉みくちゃにする。
荒い息遣いとあちこちから発するいやらしい水音が耳から入り込み、脳内を更に蕩かしていった。

「おーい、次元。起きてるか?」
コンと扉を1回叩く音と共に能天気な相棒の声がドアの向こうから聞こえた。
ピキリとふたりの動きが止まる。とっさに唇を離し、近距離でお互いの顔を見つめあう。
マズイ。その一言に尽きた。
このままサイレントに寝た振りをすれば・・・・と一瞬そんな考えが頭をよぎったが。
「なに、鍵なんかかけてるんだ。とっとと起きろよ!」
相手はルパンだ。寝ている次元を叩き起こすくらい躊躇せずにするだろう。
ガチャガチャという音に即されパッと顔をあげると、視界から正面右にあるドアのノブが右に左に動いている。
どうする、どうしたらいい?
半分パニックを起こして硬直した次元の下で五右エ門もフリーズしている。
「あっ、わかったぞ、次元!!」
ノブの動きが止まると同時にルパンは楽しげに、そして高らかに叫んだ。
「今、五右エ門と一緒なんだろう!?」
ピキーン。部屋の中の温度が数度下がったような気がした。
少なくとも次元に組み敷かれた五右エ門の体は人形ではないかと思うほど、固まりピクリとも動かない。
こうなったら隠しても無駄だ。ここはルパンにひとまずお引取り願わなければならない。
「そうだよ、取り込み中だ!わかってんなら後にしろ!!」
次元は開きなおってドアの向こうを怒鳴りつけた。
「うっ」
固まっていた五右エ門が小さく呻いて身じろぎする。怒鳴った拍子に体が揺れて体内を抉ったらしい。次元自身にもビリリとした快楽が走った。
こんな切羽詰った状態で邪魔をするルパンに殺意が芽生える。だが、奴が去ればすぐさま行為を続行できるのだ、あと数秒の我慢。
そう思ったのだが、考えが甘かった。
「やっぱりそうなんだ」
むふふという笑いが聞こえてきそうな声色であるが、その声は信じられない言葉を続けた。
「でも、わりいけどよ、急用なんだよなー」
カチャカチャと鍵穴をいじる音のあと、キイィとドアが開いたのだ。
咄嗟に動いた五右エ門の手がベッドの隅でクシャクシャに固まっていた掛布を引き寄せ、ふわりと下半身を隠した。
危機一髪。ルパンの目の前に絡んだふたりの体が晒されることだけは避けられた。
「ふざけんじゃねぇ!!」
次元は枕元に置いていたマグナムを咄嗟に掴み、ルパンに向ける。
親しき仲にも礼儀あり。いやそれどころの話じゃない。セックスの最中に乱入してくるなんていくらなんでもやりすぎである。
廊下から洩れる灯りを背に現われたルパンに、ドンと容赦なく一発くれてやった。
途端に五右エ門の体が大きく跳ねて、「ぅあっ」という喘ぎ声があがった。
マグナムを撃つ衝撃が次元の腕から体を貫き五右エ門まで、というか結合部分まで伝わったらしい。
予想していたのかヒョイと避けたルパンであったが、その声を聞いて動きがとまった。
こんな五右エ門の声を聞いたのははじめてだったのだろう、驚きの後、興味津々の厭らしい表情が浮かんだのを次元は見た。
チラリと視線をおろすと、五右エ門は顔を反対側に背けている。
次元にさえその表情を伺うことができない。ルパンには絶対見えない角度で少し安心する。
情事のときの五右エ門を見る特権は自分ひとりのものなのだ。いくら相棒とはいえ、これだけは譲れない。
「まぁまぁ次元ちゃん、怒らないの」
「怒らずにいられるか。とっとと出て行け!」
チャキと再びマグナムを向けても、ルパンはのほほんとして出て行く様子を見せない。
「お取り込み中なのはわかったけどさぁ。本当に急用なのよ、明日の侵入経路に問題が起きてさ」
「・・・なに?」
侵入経路といえば、ルパンと次元が忍び込む経路のことである。
いわば仕事のしょっぱな、第一段階。それに問題が起こったとなると仕事自体がパアになる可能性大だ。
「防御システムの第一プレインを止めたあと、すぐに第二プレインも止める。システムが再起動する数分間に侵入するって計画だったけどさ」
ほんの1分間、その隙に正面ゲートを抜けなくてはいけない。1分間。ギリギリのラインだ。
「実はさ、第二ブレインが実はデュアル構造でさぁ、第二ブレインを止めたらすぐに副ブレインが動きだすって寸法みたいなんだよ」
「なにっ!?」
システム停止したと思って侵入したが最後。実は停止していないシステムの防御レーダーに一瞬にして灰にされてしまうのだ。
「それを止めるにはもう一人必要なんだけどさぁ。五右エ門は退路確保の仕事があるだろ?だ、か、ら」
「なんだ?」
腕を組みにやけた顔でルパンはニヤリと笑う。その表情は嫌なほど見覚えあった。
「・・・不二子か」
「ピンポーン」
陽気なルパンの声が響く。その陽気さが次元の神経を逆撫でした。
だが、決行まで1日しかない。かといって仕事を延期するわけにもいかない。チャンスは明日の夜だけなのだ。
不二子を仲間に加えるのは御免だが、あと一人、緊急で役に立つ奴を探すとなると難しい。悔しいことにあれでも不二子はなかなか腕が立つのだ。
「いいよね、不二子ちゃん誘っても?」
どうするか。次元は眉間に皺を寄せながらぐるぐると考えはじめた、そのとき。

ズキューン!!

轟く銃声と全身に走った衝撃、そして忘れかけていた快楽が体中を駆け回る刺激に、次元は思わず呻いた。
自分の声ながら情事中のいやらしい声が出た。すかさず唇を噛み締めながら、なにが起こったのかと音のした方を見る。
いつの間にか奪ったのか次元の手にあったマグナムを両手で構えた五右エ門が、その銃口をルパンに向けていた。銃口の先からは硝煙があがっている。
さすがに使いなれない武器だから照準は合わなかったらしいが、ルパンの足元の床に大きく穴が空いている。
その当のルパンはというと、尻餅をつき、驚愕の表情を浮かべてポカーンとしていた。
「取り込み中だというのがわからぬのか!!そんな話はあとにしろ!!」
部屋中に響く怒声は、さっきの銃声よりも大きく、大いなる怒りに満ちている。
チャキと音をたて、白い指がふたたび引鉄を引いた。
ズキューン!!
今度はルパンの手元に穴があいた。我に返ったルパンはアワワと大慌てで、ドアに向かって一目散に逃げ出す。
まるで室内害虫。4本の手足をバタつかせてあっという間にその場から姿を消した。
「じゃ、次元、この話は」
廊下から聞こえる声は立て続けに轟く銃声に掻き消された。
キィィと音をたてて穴のあいたドアが閉まる。残るは妙な静けさと荒い息遣いだ。
五右エ門の手をベッドに押し付けて、銃を撃たせるのをとめた次元は、身をまわる快感に息を止めていた。
マグナムを撃つたびに五右エ門の体は跳ね、内壁はきついほど狭まり、次元の性器をこれほどかというほど刺激していたのだ。
危ないことに7発目が五右エ門の体内に向けて発射される寸前まで追い詰められた次元である。
どうにか射精感を押さえ込み大きく息を吐きながら、耐えるために閉じた目をあけると怒りに満ちた五右エ門の顔があった。
「おぬし、随分余裕なようだな?」
怒っている。心底怒っているのだ、この侍は。
ルパンに乱入され次元に組み敷かれている姿を見られただけに留まらず、当の次元は五右エ門を放りだして仕事話に意識を向けたのだ。怒らずにいられようか。
ぐいっと突然起き上がった五右エ門に押されて、次元は仰け反った。
そのまま後ろに押し倒された次元の腰の上に、結合した状態のまま五右エ門は馬乗りになった。
「気が他所に向かないようにしてやろう」
その言葉と同時に五右エ門がメチャクチャに動きだした。腰を捏ね回し、上下左右前後にランダムに動き捲くる。
無理な方向に向けば痛みが走るがそれ以上の快感が次元に与えられる。
せっかくイきそういなのをどうにか止めたというのに、このままじゃあっという間にイかされそうだ。
このままじゃマズイとぶるぶるんと揺れる五右エ門の性器に手を伸ばすが、手首を掴まれ寸前で止められたしまった。
「まさか拙者より先にイクのではないであろうな」
上気した顔に冷たい微笑を浮かべて五右エ門は言った。
前への刺激がなければ、いくら慣れた五右エ門とはいえ後ろだけでイクには時間がかかる。
それなのに先にイクなと言っているのだ。次元はうぐっと息を飲んで喉を鳴らした。
こんな積極的な五右エ門は滅多に拝めない。ある意味ルパンのお陰といってもいいかもしれないが、今は感謝どころではない。
どうしようもないほど気持ちよく、すぐにでもイってしまいそうなのを我慢するのは酷く辛い。
ここは五右エ門をふたたび組み敷いて主導権を奪わなければすぐに負ける。
怒れる、だがそれ以上に淫らでいやらしく舞う五右エ門を見上げながら、次元は形勢逆転を狙って、快感に痺れる体に力を入れた。
ドアにあいた銃弾の穴からどんぐり眼が覗き込んでいるような気がしたが、もうそんなことは構っていられない。


今夜はいつも以上に激しい夜になりそうだ。
 
 
 
 
 
 
 

■RANNYUSYA TO IKARUKEMONO■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■

4月5日はジゲゴエの日だけど残念ながら平日だったので
4月3日の夜に「ジゲゴエの日★イブイブチャット」を行いました。

そのとき「H中にルパンが乱入してきたら」という話題になったのですが
いい感じに脳内妄想が出来たのでそれを小説にしてみました(^^)
一応自分の発言を中心に創作し、
人様の発言内容はあまり反映させてないつもり
なのですが・・・違ってたらスミマセン(汗)

3日から4日の深夜にかけてチャットで妄想
4日に創作
5日になった途端にアップ。
という妄想からUPまで1日かかっていないぶっつけ更新物なので
誤字脱字がたっぷりあると思われますが、
まあ許してやってください(^-^)

たまにはこんなジゲゴエ&ルパンもいいですよネ?<聞くな
ちなみに拙宅のルパンは
五右エ門に対してその気はないけど、どんな風かちょっと興味があるv
という感じになっております(笑)

 
 
 

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