驚きで言葉を失った五右エ門に次元は「かてぇなぁ」と文句を言った。
「かてぇ、かてぇ」と呟きながらズリズリと動く頭は今は帽子を被っていない。
隠れずに晒されている目に愉しげな色が浮かんでいるのが見える。
硬いのは当たり前だ。
男の自分に何を求めているのだ。
というより、なんで拙者がこんなことをされねばならん。
頭の中でグルグルと回る苦情の言葉が口から出る前に、次元の動きが止まった。
そして「ふー」という気持ち良さそうな溜息を吐いた。
筋肉に覆われた硬い足だ。寝心地がいいはずはない。
それなのに次元は満足気な表情を浮かべて目を閉じた。
この位置に決めたらしい。
足を引いて落としてやろうかとも思ったが、次元の安らいだ顔を見て気が削がれる。
「まったく」
五右エ門は呆れた声で呟くと、膝の上にある次元の頭を軽くはたいた。
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