■仲良くなりました■

 
 
 
 
 

ひいこらとルパンがアジトに戻ってきたのは深夜をとうに過ぎてからだった。
アジトはシーンと静まり返っている。
ホッとしながらも、一応忍び足で静かに静かにリビングに入った。念のため電気はつけない。
「ああ、疲れた」
冷蔵庫からビールを取り出しドサリとソファーに体を投げ出す。
ぐびっと一口飲み込んだとき。
「ルパン」
声と共にパチンとリビングの電気がつく。振り返ると気配を消した侍がドアの脇に佇んでいる。
「ごごごごご、五右エ門!!」
斬られては堪らないとザザッと部屋の隅まで後ずさったが、侍は動かない。
よくよくみるとかなり思いつめたような顔をしている。
「これだが」
ポスンと音をたてて、菊の花と旗がついた偽刀がソファーのうえに落ちた。
「だから、悪かったって」
慌てるルパンをよそに、五右エ門は意を決したような表情を浮べ、真正面から怪盗をみつめた。
「拙者は・・・おぬしなら」
「え?」
「次元ではなく!おぬしになら・・・!!」
最後まで言葉は続かなかったが、叫んだ侍の顔はトマトよりも赤い。
「えっ?・・・ええぇぇ!?!?」
そういう意味か。そうなのか。
この様子をみる限り、この侍はルパンとならそういう関係になってもいいと言っているのだ。
男なんて冗談じゃない!と心で叫ぶも、その心の片隅で本当に無理かどうか検討しているもうひとりの自分がいるのをルパンは感じた。
ヤバイヤバイ。
ぶるぶると頭を振る、その背後にもう一人の気配。
侍と同じく気配を消していたのだろう、黒い男がポンとルパンの肩を叩いた。
ビクッと飛び上がったルパンの目の前に、ぬっと大人のおもちゃが差し出される。
「じ、次元っ!?いや、いらねぇ、いらねぇ、こんなもん俺は五右エ門に使わねぇぞ!」
ビールを投げ出し両手をブンブン振りながら、ルパンはふたたびじりじりと後ずさった。
自分がなにを口走っているのか気がついていない。
「違う、そうじゃねぇ」
次元が真正面からルパンの目を見つめる。
なにか並々ならぬ決心が浮かび上がるその視線に、ルパンの背筋に寒気が走った。
「おまえは冗談のつもりで、こいつを五右エ門に使え、と俺に言ったのかもしれないがな」
「だから、それは」
「俺はそれが・・・許せねぇんだ!」
「じ、次元?」
「五右エ門じゃなく、俺はお前に使いたいんだよ!!」
「えっ?・・・ええぇぇ!?!?」
長く相棒をやってきたが、まさか次元がそんなことを考えてたなんて思ったこともなかった。
そんな目で俺を見ていたのか、と全身に冷汗が噴出す。
「ルパン!」
五右エ門がズズズと詰め寄ってくる。
「ルパン!」
次元がズズズと詰め寄ってくる。
「「どちらを選ぶんだ!?」」
五右エ門相手に掘るか、次元相手に掘られるか。
どっちにしても・・・冗談じゃない!
仲間、それも男ふたりから迫られるという驚愕の事態にただもうパニックだ。
「俺はボンキュボンの女の子が好みだ!男なんかお呼びじゃねぇ!!!」
真面目な顔をしたふたりの男に詰め寄られ、とうとう逃げ場を失ったルパンはそう叫びながら窓から飛び出した。


残されたのは侍とガンマン。並んでルパンが逃げ去った窓の前に佇んでいる。
「ふ」
「くっ」
ふいに、ふたりの男の口から笑いが零れる。
「ぷぷぷぷっ」
「くくくくくっ」
「はははははははっ!」
「あーーはっはっはっはっはっ!!!」
静まり返った闇夜に似合わない、大爆笑がアジトの中に響き渡った。


「くっそー!仲良くなってなによりだこと!!」
屋根の上では冷汗をかいてクタクタになったルパンが、悔しそうな、してやられたという顔でそう喚いた。
 
 
 
 
 

■NAKAYOKU NARIMASITA■

 
 
 
■あとがき■

「仲良くしましょう」の続き。

ルパンにギャフン(死後)と言わせるために結託したふたり。
こんな感じでだんだん仲良くなるといいなーと♪
 
それにしても五右エ門がルパンに迫るのは
仕返しのためとはいえ決死の覚悟でしょうね(笑)
 



 

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