■男ってほんとにバカだよな・・・。■
 
 
 
 

地面を叩く雨音を聞きながら、次元はソファーに寝転び悶々としていた。
ここは次元の個人のアジト。ルパンでさえ知らない場所だ。
いやあの男のこと。知っているのかもしれないが次元からは教えていない。
教えた相手はただ一人。
一仕事終えたあとにここで合流する約束を取り付けていたが、きっと来ない。
「俺は悪くねぇ・・・!くそっ」
別れ際に交わした会話を思い出しながら、次元は忌々しそうに呟いた。
会話というか、喧嘩別れ。
悪くない悪くないと思いつつ、最後の会話を何度も脳内で繰り返しているうちに少しは自分も悪かったかもしれないという気になってくる。
うっとうしい雨の音。もう来ない待ち人。楽しくなるはずだった予定と現実の落差。
そんなものが、どんどん次元の気を滅入らせる。
「いいじゃねぇか、たったひとことくらい」
切欠はほんの気まぐれの問いかけだった。
だが頑なに拒まれればムキになるし、疑う気持ちも湧き上がってくる。
「でも・・・相手はあの侍だからなぁ」
わかってる。そんなことを軽々しく口にするような男ではないことは、わかっているのだ。
だからこそあのときは聞きたかったのだし、だからこそ今になれば自分も悪かったのだという気になる。


山積みの吸殻が崩れて、灰と一緒にテーブルに毀れ落ちた。
次元の鋭い視線がドアを捉える。右手がマグナムを握るためにピクリと反応した。
しばらくの沈黙のあと。次元はゆっくりと警戒をといてソファーから立ち上がった。


鍵をはずしてドアをあけると、そこにはずぶ濡れの侍。
笠もせず、斬鉄剣ひとつでそこに在る。
ピンと背筋を伸ばし真正面から見据える姿も表情もいつもと変わらないのに、なぜか雨に打たれて軒下に蹲る猫のように見えた。
「濡れた。風呂を貸りるぞ」
五右エ門はドアの隙間からスイッと部屋の中に滑り込んだ。
床に大きな水溜りを作りながら、次元に背を向けそのまま奥へと歩いていく。
ドアを閉めると大きかった雨音が小さくなる。次元はドアの内側に佇んだまま無言で五右エ門の背中をみつめた。
「おぬしがどう思っておるか知らぬが」
五右エ門がピタリと歩みをとめて言った。
「拙者は・・・惚れてもおらぬ者と同衾などせぬ」
次元はうっと息をのんだ。同時に小さな眩暈を覚える。
五右エ門の表情が無性に見たくなるが、これ以上を求めるのは侍にとって酷というものだ。
「・・・バスルームは右だ」
「うむ」
奥に五右エ門が消えると、次元はドアに背を預けズルズルとしゃがみこんだ。
そのままの体勢で大きく深呼吸を繰り返す。
顔が火照っているのがわかる。誰かに見られるわけでもないのに顔が上げられない。
「男ってほんとにバカだよな・・・」
シャワールームから聞こえ出した、雨音とは異なる水音を聞きながら、次元は小さく呟いた。



待ち人来たれり。
それも問いに対する応えをきちんと携えて。
当初の予定通り、楽しい時間を過ごすことになりそうだ。




■OTOKO TTE BAKA DAYONA■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■

以前、頂いたコメントの
「男ってほんとにバカだよな・・・。」
の台詞にいたく萌えたのでつい書いちゃったSSデス。


 
 
 

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