■10万回の××■
 
 
 
 

ドゥ、ドゥと銃声が狭い地下室で木霊する。
ルパン特製のコンピューター仕掛けの的を全的中させた次元は薬莢を床に散らばした。
動かない的や一定の動きしか出来ない的と違って、なかなか楽しい。
召集はかけたもののターゲットの予定が変更になり、思ったより待機時間が長くなりそうだった。
そのうえ計画や諸々の都合でアジトに閉じ込められている状況が続き、そのことに対してのルパンなりの侘びらしい。
さすが天才の作ったものだけあって即席ではあるが、それなりに次元は暇を潰せていた。
だが、それもある程度の時間を過ごせば飽きてくる。それに弾丸だってただではないのだ。暇つぶしに好き放題使って実践で足りなくなるなんて笑い話にもならない。
次元は一日に使う弾丸数を決め射撃場を使っていた。
「今日はこれでラストだ」
ドゥと最後の一発を的のど真ん中に命中させ、次元はマグナムを下ろした。

ギシギシと音をたてる階段を昇りドアをあけると自然光が廊下を照らしていた。
電気と違うまぶしさに少し眼を細めながら、リビングに向かう。
ふと、廊下の窓から外をみると、申し訳程度の広さしかない小さな庭で五右エ門が一心不乱に剣を振るっていた。
両袖から腕を抜き上半身裸で、汗を散しながら素振りを続けている。
次元が地下に篭った2時間前も、まったく同じ場所でまったく同じ様子で剣を振っていた。
それどころか、その時点ですでに1時間は経過していたのだから、優に3時間は経っていることになる。
そのことに気がついた次元は、いつものことながら呆れた。
次元の拳銃と違い、斬鉄剣の場合はどれだけ使っても限はない。
やめるやめないは本人の意思によるのだが、放っておけばいつまで経っても終わらないのが五右エ門である。
修行に明け暮れる五右エ門が、こんな狭いアジトに長期間閉じ込められているのだ。次元以上に退屈なのだろう。
次元が言って止めるような侍ではない。余計なことは言わず放っておくに限る。
そう結論付けた次元はリビングに戻り、軽く汗を拭いながらコーヒーメーカーのスイッチを入れた。

コーヒー片手に新聞を読み終わった次元はソファーから体を起こした。何杯も飲んだせいか少々胃がもたれている。
窓から外をみると既に五右エ門の姿はなかった。
「起きたのか」
ガチャリとドアが開き、五右エ門がリビングに入ってきた。
「は?寝てねぇぜ。新聞を読んでただけだ」
「なにを言っておる。寝ていたぞ」
え?と時計をみるとずいぶん時間が経っている。新聞1誌読むのに使うには充分以上の時間だ。
どうも気がつかないうちに転寝していたらしい。
「そんなにゴロゴロしているとなまるぞ」
五右エ門が次元の横を通り過ぎる。
シャワーで汗を流したのだろう、軽い石鹸の匂いが次元の鼻先を擽った。
「ちゃんと地下で射撃してたぜ。おまえのエモノと違って弾数に限りがあるんでね」
だいたい数撃てばいいというものでもない。
射撃を始めた当初なら反復もいい勉強になるが、次元くらいの腕になれば必要になるのは反復よりも一撃で確実に的を捉える集中力とテクニックだ。
「そうか」
素直に五右エ門は頷いた。
武器の違いによって腕をあげるための手段は違う。それに一流ともなれば自分なりの方法というものもある。

五右エ門は茶を注ぎ、湯のみを片手にソファーに向かった。
次元の横を通り過ぎる瞬間、手首を軽く掴まれた。
振りほどくことはせず歩みをとめ五右エ門が訝しげな表情で見下ろすと、次元は斬鉄剣を握った指を何本か広げさせ、現れた掌を覗き込んでいた。
「硬そうだなぁ」
骨ばってはいるがほっそりとした指の根元は皮膚が硬くなっている。
子供の頃から何万回、何十万回、と剣を握り振るってきた手だ。
誰もが認める剣豪であるにかかわらず基本のような素振りを何時間も続ける五右エ門にはある意味頭がさがる。
「何十万回も振ってきたんだな」
指先で硬くなった場所をくぃっと押され、なにやら訳のわからない感覚が五右エ門の体を貫いた。
こともあろうに、指2本でようやく握っていた斬鉄剣をドサリと絨毯の上に落としてしまった。
その感覚の正体もわからぬまま、斬鉄剣を拾おうと手を引くが思ったより強く手首を握られていて動かない。
もう片手には茶の入った湯のみを持っているためどうすることもできず、とりあえず次元に付き合うことにした。
「・・・何十万回じゃ足らん」
「そうだな、おまえのあの修行っぷりからいくと何百万、何千万回だろうな」
クスクスと笑いながら次元は五右エ門をみあげた。
「おぬしだって同じでござろう」
「俺の場合、さっきも言ったが弾もただじゃないんでね、そんなに撃ってねぇよ」
掌に触れていた指がそのまま滑り、五右エ門の指に指を絡ませるようにしてその手を握った。
まるで子供が戯れに手を繋いだかのようだが、1本1本の指の間に入り込んだ指が子供の戯れとの違いを感じさせる。
「離せ」
「なんでだよ」
次元がゆっくりと立ち上がり、真正面から五右エ門の瞳を覗き込んだ。
その中にある熱に気がついて、五右エ門の頬に微かに朱が走った。
いったいどうしてどういう経緯で次元がこんな状態になっているのか、五右エ門にはさっぱりわからない。
「どんなに数えたって何万発も撃ってないさ。だけどよ、10万回くらいは優に超してるのもあるぜ?」
次元にしてみれば、風呂上りの五右エ門の存在はそれだけで刺激的だ。
湯にほんのり赤く染まった肌も、石鹸の良い匂いも、濡れて艶を増した黒髪も、全部。
刺激はされたが、別にその気になったわけではなかった。いちいち風呂上りの五右エ門に欲情していたら切がない。
だが、ほんの戯れのつもりで触れたとき微かに五右エ門が反応した。その反応に次元は欲情したのだ。
切欠なんかたいしたものじゃないのだ、こういうことは。
「なにを、だ」
五右エ門が一歩さがると次元も一歩進む。
距離は離れるどころか、歩幅の違いでさっきよりも縮まった。
次元の片手が五右エ門の濡れた髪に絡み、そのまま引き寄せる。白い頬に軽く唇が触れた。
「お前にキスした数さ」
唇が滑り耳たぶをねっとりと舐めた。
びくりと五右エ門の体が跳ね、その手から湯のみが落ち、絨毯のうえに茶が染み込み広がっていく。
それを目の片隅で追いながら、五右エ門は自由になった手で次元の後ろ髪を掴み不埒な唇を己から引き剥がした。
「そ、そんなにしておらん!」
「してるぜ?」
次元はニンマリと笑いながら五右エ門を思いっきり引き寄せ、その勢いを使って体を反転しそのままソファーに押し倒した。
「こうやってさ」
1回、と囁きながら頬にキス。
2回、と呟きながら首筋にキス。
3回、と詠いながら鎖骨にキス。
20回を超えた頃には五右エ門の息はあがりはじめ、すでに上半身は剥かれ肌を晒していた。
「10万回なんてあっという間だろ?」
次元は白い胸元でさすらっていた唇を離して、伸び上がると五右エ門の顔を覗き込んだ。
「・・・馬鹿め」
五右エ門はそう呟いて次元の首筋に己の唇を押し付けた。



夕日に赤く染まったリビングが闇に包まれても尚、あらゆる場所に降り注がれるキスの音が止むことはなかった。
 
 
 
 
 

■10MANKAI NO XX■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
10万打御礼ということでテーマは「10万」です。
らぶら甘々ジゲゴエ♪(のつもり)

唇へのキスだけなら無理だけど
エッチ中の全身へのキスも含めれば
10万回くらいかる〜く越えるよね!?
と鼻息荒くして書いてみました(笑)


 
 
 

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