■だってそそられるんだもん■
 
 
 
 

 
外はどしゃぶりの雨。
地面を叩く激しい雨音とラジオから流れる音楽だけが静まり返ったアジト内を満たしている。
たまにパラリと紙を捲る音が混じる程度で後はなんの音もしない。
「暇だ・・・」
煙草を灰皿に押し付けながら次元は呟いた。
ルパンから久々に集合がかかり、退屈していた次元は集合場所のアジトに近い場所にいたこともあって、予定の日よりも早くここに着いてしまった。
気晴らしに外出しようにも昨夜から降り出した雨はやまず、玄関から一歩でも出れば傘をさしていてもびしょ濡れになることは確実で、出かける気にもならない。
ソファーに寝転び酒を傾け自堕落的に過ごしていたが暇であることには変わりない。
読み終わった本をテーブルの上に投げやり辺りを見渡すと、部屋の隅のサイドテーブルの下に雑誌が数冊置いてあるのが目に入った。
なにもないよりマシだと、おっくう気に立ち上がり雑誌を掴むと表紙を確認することなくソファーに戻る。
ドサッとテーブルの上に放られた雑誌は、ザザッと音を立てながら滑るように広がった。
どの表紙もセクシーな裸の女で飾られている。
「なんだ、ルパンの奴。こんなの買ってんのか」
唇の端を引上げ、シニカルに笑いながらその中の一冊を手に取った。
ページを捲ると、ブロンドの裸の女が豊満な胸を強調するように仰け反ったポーズをとっている。
次のページにはブルネットの女が両足を大きく広げ、片手を見えそうで見えない微妙な場所に置き、巧く股間を隠している。
次のページには胸を鷲づかみにした女がいやらしい視線を送っている。
どの女も刺激的なポーズと官能的な表情を浮かべ男を煽ろうとしている。
もちろん次元も男だ。
ページを捲るごとに新しい雑誌を手にとるごとに本の趣旨に従って、いやらしい女達に性的に刺激を受けていた。
だが、このアジトに来る前は馴染みの女のところに通っていたこともあり欲求不満ではないからそこまでは反応しない。
おいしそうな女達を愉しげに眺めているだけだ。
いい年をしてエロ本を片手にひとり遊びするつもりは更々ない。
だが、新しい女の出現で次元の予定は大幅に狂わされた。
捲ったページに現れたのは、今までのような大胆で官能的な女ではなかった。
膝をつき四つん這いになった女はびしょぬれで大きめのシャツを羽織っていて、開いたシャツから形の良い胸が露になってはいるが露出は低く、浮かべている表情も大人しめで全体的に清楚な雰囲気をまとっていた。
だが次元に衝撃を与えたのは女の顔だった。
「あいつ・・・女顔だとは思ってたが」
じっくりと女を眺めながら、仲間のひとりを頭に浮かべる。
そっくりというほどではないが、少し長めの黒髪や顔の造作がかなり五右エ門に似ているのだ。
清楚さを追求しようとしたのか表情も媚びた感じが控えめで、むしろ無表情に近いところがまた五右エ門を思い出させる。
本の中の女の顔に侍の顔が重なっていく。
無表情だがたまに見せる笑顔や拗ねた顔。そして負った傷の痛みに耐える歪んだ表情。
苦痛と快楽の表情は似ているというだけあって、その表情が脳裏に浮かんだ瞬間にドクンとなにかが反応した。
そして顔以外の部位も脳裏に浮かんでくる。
細い首筋、浮いた鎖骨、白い胸。
最後には全身、温泉でみた五右エ門の白い全裸が次元の記憶から引き摺りだされた。
濡れた白い体、薄桃色の乳首に、両手で掴めそうなほど細い腰、薄い筋肉に覆われたすらりとした手足。
水滴を滴らせる濡れた黒髪が頬や首筋に張り付いて、まるで女のような色香を放っていた。
「や・・・べぇ」
理性はやめろというのに、本の女達に散々煽られ続けていた野生は暴走を始める。

四つん這いの女はいつの間にか五右エ門にすりかわり、その背後から圧し掛かり貫く妄想が脳内を支配する。
華奢な腰をしっかりとホールドして欲望のままに突き上げると小さな悲鳴をあげながら白い体が仰け反る。
声に煽られて容赦なく腰を振り続けると、腰を突き出したままガクンと上半身が床に沈んだ。
自分の荒い息といやらしく響く結合音に泣き声に近い喘ぎ声が混じる。
どんな表情を浮かべているのかみたくなり、半分ほど引き抜いた状態で男にしては軽い体をぐるりと回転させた。
膝を掴み両足を大きく広げさせると、その根元のモノは完全に勃起していて先走りを滴らせていた。
その下には赤く染まった小さい穴が限界まで広がって、黒々とした次元のモノを半分ほど受け入れている。
ぐっと思い切り腰を力を入れるとズクッと根元まで咥え込む。
奥まで突かれた衝撃に仰け反る五右エ門の体は汗で塗れテラテラといやらしく光っている。
覆いかぶさり顔を覗き込む。
高潮した頬と唾液を流し半開きになった唇、その隙間からみえる赤い舌。
苦痛と快楽でトロンと正気を失ったような瞳には情欲の色を浮んでいて、先をねだるような視線が次元へと向けられている。
これ以上ないほど興奮した次元は白い両足を抱えあげ、激しくスイングをはじめた。
組み敷いた体が動きに合わせて波打つようにくねり赤い唇から悦びに満ちた喘ぎが発せられた。


「くそっ・・・俺はなにやってんだ」
俯き頭から冷たいシャワーを浴びながら、次元は呟いた。
気がついたら五右エ門をおかずにして擦ってました、そして気持ちよくイッてしまいました。
という状況だった。
今までも五右エ門に煽れらたことがなかったとはいわない。
だが、こんな事までしてしまうとは末期もいいところだ。
いったい俺はどうしちまったんだ、と次元はどん底まで落ち込んでいた。
その耳に、シャワーとは違うザアアという音とドアが軋む音が聞こえた。
そして人の気配。だが部屋は静まり返ったままだ。
ルパンならもっと騒がしい。ということは来たのは五右エ門だということだ。
今は会いたくない。
そう心底思うが、いつまでも風呂場にこもっているわけにはいかない。
この雨の中を来たというのなら、五右エ門はきっとびしょ濡れですぐにでも熱いシャワーを浴びたいだろう。
とりあえず軽く挨拶をすませ、五右エ門が風呂に入っているうちにとっとと寝てしまおう。
次元はそう決心し、コックを捻って冷水を温水に変えシャワーを浴びなおす。
まだ五右エ門を直視できそうもないと頭の隅で考えるが、帽子はソファーに置きっぱなしだったことを思い出す。
「ま・・・風呂上りに帽子を被ってる方が不自然か」
じゃあ、髪を乾かしている最中ですといわんばかりにタオルを被っておこう。
そうすれば視線を合わせないですむ。
そこまで考えてから次元はシャワーをとめ脱衣所に移動した。

だが。
意外な五右エ門の格好に、次元の予定はまた大幅に狂わさることになったのだった。


 
 
 
 
 

■DATTE SOSORARERUN DAMON■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
ジゲゴエアンソロ第3弾に掲載された
あすない様の『だって男の子なんだもん』
のお話のちょっと前の設定、ということで書かせて頂きました。
いやぁ、あまりにも作品が萌えだったもんで
妄想がヤめられないとまらないかっぱえびせん状態
になってしまったもんで、つい。

いつもセカンドの五右エ門を頭に浮かべて書くのですが、
今回ばかりは、あすない様宅の美人ゴエと次元をイメージして書きました。
いや、書いたつもりですが・・・
お話&キャライメージ壊しちゃってすみません(平伏)

愚かものが仕出かしたことですが
快く掲載許可を頂けたのでUPしました。
あすない様、ホント色々ありがとうーーー!
そして色々ごめんなさい。

ちなみに『だってそそられるんだもん』という題名は
次元のヤっちゃった言い訳というより
私がこの話を書いた言い訳だったりして(笑)

 
 
 

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