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城に囚われの身のクロリスにお目付け役として近づいたフヂコは双眼鏡を彼女にプレゼントした。
うまくいけばルパン達が身を隠している場所が覗けるはずだ。
そしてもっとうまくいけばふたりっきりになった次元と五右エ門の情事も覗けるかもしれない。
若き身で囚われ無理矢理おっさんの花嫁にされるクロリスに女として少しばかり同情心を持っていた。
だから、クロリスの意外な趣味を知ったフヂコは、少しでも気がまぎらわせられるならと考えて双眼鏡を渡したのだが。
「気に入っていただけたようね」
目の下にクマをつくったクロリスをみて、フヂコは笑った。
「ええ。一晩中、楽しませていただきました」
「・・・一晩中？」
「ええ」
（・・・あんな場所でよくヤルわね）
一晩中と聞いて彼らの絶倫ぶりにフヂコは心の中で呆れ返った。
だが、それは表情には出さない。
そうよかったわね、という雰囲気を漂わせた大人の女の微笑を浮かべて満足そうなクロリスをみつめた。
「でもナマは初めてでしたから刺激が強くって・・・何度も気を失いそうになりました」
「意外だったわ。箱入りのお姫様の貴女がああいうことに興味があったなんて」
言葉通り、フヂコには意外なことだった。
筋金入りの深窓の令嬢、両親を亡くしてからは修道院にいたクロリスが男同士に理解を示すどころか、興味津々でその様を覗き見しても引くわけでなく楽しそうにしているのだから。
「ふふふ」
可愛らしくクロリスは笑うと、部屋の片隅まで行き、そこにひっそりと置かれたもののうえに被せてある布を取り払った。
そこに現れたのは小さなノートパソコン。
「こんな城の天辺に監禁されて、出来ることといえば音楽鑑賞と読書くらい。
あまりにも暇ですし、世間の動向も知りたいと我侭いってインターネットを繋いで貰ってるの」
「へぇ。よくあの伯爵が繋いでくれたわね」
インターネットは情報収集と共に情報を公開することもできる。もしクロリスが誰かに救いを求めでもしたらどうするつもりなのか。
そうフヂコが言うと、クロリスは小さく笑った。
「城の守りは完璧ですし、私がネット上でなにを言ってもなにをしても他愛ないと思っているみていですわ」
「・・・たしかにね」
一国の城に忍び込もうとする者はいないだろうし、だいたいクロリスが皇女を名乗っても本物とは限らないのだ。
彼女を本気で救い出そうとする者は決していないだろう。
「でも私、仕返ししてやりましたの」
「仕返し？」
「そうです。時間はいくらでもあるし、ここには私ひとりしかいません。誰も邪魔しないし気がつかないのです」
そういいながら、クロリスはパソコンを立ち上げ、操作するとひとつのサイトに接続した。
「私が管理人なのです」
フヂコはパソコンの画面に映しだされたサイトをみて絶句した。
「こういうのを書くとスッキリします。否定的な反応が多いけど、それがまた伯爵が否定されているみたいで楽しいですし」
クスクスと笑うクロリスは本当に楽しそうだ。
溜まった鬱積を、伯爵をはじめとする城にいる者に対する嫌悪をこのサイトで吐き出しているらしい。
「よ、よくこんなの書いたわね」
「気持ち悪いって思いながら書いてるから、気持ち悪いって反応があるととってもスッキリして嬉しいのですわ」
どう反応していいのかわからず、ふふふとフヂコは乾いた笑い声をもらした。
サイトの傾向として書いてあるのは『カリオスト●伯爵総受け』。
相手はなんと、執事のジョドーだったり隊長のグスタフだったりと全部男で、傾向は鬼畜陵辱系。
こんな可愛い顔して、やっぱり少女でも女は女なのね・・・とフヂコは苦笑した。
「でも」
「なぁに？」
「あの方達のはとても素敵でしたわ。つい夢中になってしまいましたｖ」
「そう・・・よかったわ」
城に閉じ込められた可哀想な少女の慰めになるのなら、あのふたりも覗かれて本望だろう。
とフヂコは思ったが、ふたりが聞いたら顔を真っ赤にして怒りそうである。
「ですから、私、決めました！」
「なにを？」
「もうひとつサイトを作ります！こっちはラブラブ甘々で、あのおふたりのサイトです！」
フヂコは今度こそ呆れた表情を浮かべ、胸元で手を組み瞳をキラキラさせながら嬉しそうに宣言するクロリスを、一歩ひいてみつめたのだった。
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