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なーんで男なんか。
ルパンは目の前にいるふたりの相棒を眺めながらそう思う。
最初は反目しあったり、なかなか慣れることがなかった次元と五右エ門が、気がついたら相思相愛という気持ち悪い仲になっていた。
人の好みは人それぞれ。
自分にとって不二子は最高の女だが、このふたりは最低だと罵って文句しか言わない。
とにかく好みの問題なのだ。
それはわかっている。
だからといって男相手に盛ってどうするというんだ、と思う。
不毛だろ不毛。
女の柔らかな体、いい匂い、甘い声。
それが最高だ。男ならそれらのものに惹かれない方がおかしい。
それなのにこいつらは、柔らかくもなく、いい匂いでもなく、甘くもない低い声。
そんなものがいいというのだ。
ま、男全般じゃなくお互いだけに、というとこがせめてもの救いだが、結局はルパンにとっては同じことである。
人前でイチャイチャするわけでもないし、一緒にいる分は前と変わらず普通の相棒たちだ。
今までのところルパンに害は一切ない。
だが、やっぱりなんでこんなゴツイ男なんか。
と思いながら、五右エ門を視界にいれて「ん？」と少し考える。
確かに１８０センチの身長を持ってはいるが、体重は一番軽くて結構細身だ。
修行の成果か筋肉に覆われてはいるが、ムキムキではなくスラリとバランスよくついている。
それに匂い。
着物に焚きしめている最高級のお香の匂いが微かにする程度で、本人はいたって清潔なせいか変な臭さはない。
男くさくないといってもいいほどで、どちらかといえば無臭に近い。
肌は滑らかで白いし、体毛も薄い。
自分にはわからないが、男くささが薄い分、結構その手ではイケる相手なのかもしれない。
じゃ、五右エ門側からの視点ではどうなのだろう、とルパンは考える。
鍛えた体は標準体重らしいが結構しっかりしている。
細身にみえるが、脱ぐと結構すごいんです、タイプなのだ次元は。
浅黒い肌、体毛も多いし、顔だって髭で覆われてて、女的要素はまったくない。
あえていうなら、面倒見がいいとか結構料理がうまいとか、そんなところだろう。
匂いだって、煙草だの、硝煙だの、酒だの、ちょっとした血の匂いだの、といい匂いとは程遠い。
そんな表からみてもひっくり返しても男男している次元のどこがいいというのだ、五右エ門は。
よくわかんね。
そう思ったルパンは正直に五右エ門に聞いてみることにした。
次元が「ビールが切れた」といって台所に向かった隙に五右エ門に向かい合う。
視線を感じたのか五右エ門が顔をあげ視線で何か用かと問いかけてきた。
「あのさ、五右エ門ちゃん」
「・・・なんだ」
「あのおっさんのどこがいいの？」
親指で背後をクイと指す。
ジロリと凄い視線で五右エ門が睨みつけてくるがルパンは歯牙にもかけない。
まったく気にしない様子で「ねぇ、どこ？どこ？」と聞き続ける。
「あーんな親父のどこがいいのか、俺にはさーっぱりわかんねぇ」
「・・・わからんでいいではないか」
「でも気になるのよ」
無言になって無視を決め込もうとした五右エ門に向かって、ルパンはとどめの一言をかける。
「答えてくれないなら、反対に次元に聞いちゃおうかな〜ｖ」
ぱっと顔をあげ五右エ門は目の前でニヤニヤするルパンを睨んだ。
「ね？どこ？」
「・・・あれでも意外に可愛いところがあるのだ」
ボソリと呟いたあとに、顔を真っ赤に染めて五右エ門が立ち上がる。
そしてくるりと背を向けて、逃げ出すようにリビングをあとにした。
「ん？どうしたんだ？」
なにも知らない次元がビール片手に戻ってくる。
その顔をじぃっと正面からみつめてルパンは眉間に皺を寄せた。
（これが・・・可愛い？）
裏にしても表にしても逆さにしてもひっくり返しても。
次元のどこからも『可愛い』なんて形容詞は出てこない。
（つうことは俺が知らないとこで可愛いってことなの・・・か？・・・まさか、よ、夜とかっ）
辿りついた自分の考えにルパンはゲンナリとしてドっと倒れ込んだ。
「なんだ、どうしたんだ」
次元の訝しげな声が聞こえるが、それは完全に無視。
この男を可愛いと言った五右エ門。
つまり考えたことは一度たりともなかったが、意外や意外、次元が女役だったということだろうか。
（いやーな結論に達しちゃったよ、俺様としたことが・・・）
だが一度出た結論はそう簡単には覆らない。
まあ、好みはひとそれそれ。
俺に害が及ばなければいいんだけどさ・・・ってかもうすでに害被ってる気がします。
ガックリ肩を落としながらも、ルパンの中で次元は受けポジションに固定されたのだった。
そんな誤解を受けているとは露しらず。
「変な奴だな」
次元はビールのプルトップをあけながら、呆れたように呟いた。
知らぬが仏。
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