■どっちがどっち■

 
 
 
 
 

普通、同性は恋愛対象にならない。
男には女、女には男、それが世の常である。
それでも同性を恋人にする人間は確かに存在する。
次元と五右エ門もその中の一組だ。
気持ちが通じ合って恋人同士となると、手を繋いだりキスをしたりするだけの付き合いでは物足りなくなる。
成熟した大人の男。
勿論、性欲はあるし好きな相手に欲情し抱き合いたいと思うのは当然のこと。
だが、一番の問題はふたりが元々はノーマルな男同士だということだった。
男同士のセックスならどちらかが女役になる。
もとからゲイなら性的役割の合う相手と恋愛できるのに、ふたりの場合は違う。
性的役割が決まってない状態でお互いが恋愛対象となり、右往左往を経て恋人同士となった。
つまり、性欲はあるが役割分担が決まっていないため、最後の一線を越えるころが出来ていないのだ。
しかし我慢にも限界がある。
堪りに堪った欲求不満状態で「もう我慢できません」とばかりにお互い欲情しあい、ベットに縺れ込む寸前まで来た。
だがそこで、残った理性を総動員させ原点に戻った役割分担についての言い合いが始まったのだ。

*

「拙者の方が背が高い」
「高いっていっても数センチじゃねぇか。体重ならオレの方が重い」
もちろん、ヤル方がいいに決まっている。
抱きたいが抱かれるのは御免だと思っているふたりは傍から見るとどうでもいいような自己主張を繰り返す。
「ただデブなだけだ」
「なんだとう?」
「拙者よりも7キロも重いのだぞ、ただのデブだ」
「お前がほそっこいんだよ、俺は標準だ」
「細こいぃ?」
「そ、だからウエイトのある俺がヤル」
自信のある己の体型をデブだの、細いだの言われてお互いカチンとくる。
だが、それさえも次元は攻撃のひとつに変える。
「体重は関係なかろう」
「あるぜ、ホラ」
ムッとした表情を浮かべ反論した五右エ門に次元は詰め寄りニヤリと笑って、そのままベットに押し倒した。
「なっ!?」
「こんな風に押し倒せる」
全体重をかけて五右エ門の体をベットに押し付ける。
ピッタリと合わさった前身の感触にゾクゾクとした欲望が次元の背筋を駆け上がった。
このまま強制的にコトに及んでしまおうか、一瞬そう考えたが、すぐに五右エ門の渾身の抵抗が始まった。
「力なら負けぬでござるっ」
次元を押し戻そうとする五右エ門。
五右エ門を押し倒そうとする次元。
全身の力と力を込めた無言の攻防。
フングググググ。
筋肉がぶるぶると震える、喰いしばった歯がギリギリと鳴る、汗がじんわりと吹き出てくる。
さすがお互い、常日頃から体を鍛え抜いているだけあって力くらべでは勝負がつかない。
その思いは絡み合った視線で通じあい、ふたりは同時に力を抜いた。
「「ハァハァハァハァハァ」」
恋人同士がひとつのベットの上にいるのに。
部屋に満たされる息使いは色気もへったくれもない、力比べ後の荒い息使いだ。
これでは駄目だ。
俺たちが今からしようとしているのは、恋人同士の甘いラブラブセックスのはずなのに、なんだこのムードのなさは。
そう思った次元は、最後の禁じ手に使うことを決心した。
これは諸刃の言葉で、ヘタすれば五右エ門の怒りを買う可能性が高いため出来れば使いたくなかったのだが、このままでは一歩も先に進めない。
0か100か。次元は勝負に出た。
「セックスは背丈でも力でもねぇ」
「もちろん体重でもないでござる」
「そうだ。じゃ、なんだと思う?」
「・・・」
威勢良く返したものの、続く次元の質問に答えに詰まる。
必要なもの、と問われてもなにも思い浮かばない。
考え込む五右エ門をみて、可愛い奴、とかなんとか脳が腐れたことを思いながら次元は目を細めて言った。
「テクだ」
「は?」
「テクだよ、テク。ヘタくそにヤル資格はねぇ」
ピキッ、と五右エ門の体が硬直したあとに、綺麗な眉がキリリと引きあがった。
ここで成功するか、失敗するかで、すべてが決まる。
次元の腹にグッと力が篭る、勝負のときだ。
「なっ、おぬしっ」
「お前がヘタだとはいってねぇ」
すぐさま否定するものの、五右エ門の怒りボルテージがあがっていく。
それを押さえ込めば次元の勝ちだ。
負ければ恋人同士という関係も危うくなる。
「言ってるも同然ではないかっ」
「ま、お前の場合経験値がかなり低い」
「ぐっ」
畳み掛けるように言うと、五右エ門は唸って言葉をとめた。
とめたというより、本当のことを指摘され反論できなかった、というところなのだが。
次元は表情を和らげて優しく恋人をみつめながら、その頬をゆっくりと撫でる。
「セックスはいかに気持ちがいいかだ。それも片方だけじゃねぇ、お互いが、だ。」
「う」
確かに、次元の言う通りだ。
抱き合いたいのは欲望を満たすためではなく、お互いへの恋情から湧き出た衝動だ。
片方だけではない。ふたりが同じくらい気持ちよく、満足を得なけば抱き合う意味がない。
揶揄された怒りはすっかりと鎮火した五右エ門は次元をゆるりと見つめ返した。
自分をみつめる愛しさの篭った次元の表情をみて、彼の愛情を感じ五右エ門の頬が微かに朱に染まる。
よし、この勝負俺の勝ちだ!!
五右エ門の表情をみて次元は心の中でガッツポーズしたあと、勝ち誇ったようにニヤリと笑った。
「さ、もう文句はねぇな。俺がヤラせてもらうぜ♪」
「〜〜〜!!」
もう、何を言っても遅い。
勝負は決した。
役割分担は完全に決まった。
次元は意気揚々と五右エ門は意気恐々と、愛しい恋人との初夜に臨んだのだった。

*

ぐったりとベットにうつ伏せに沈んだ五右エ門は顔を横に向け、満足気に煙草を燻らせる男を睨んだ。
「・・・この嘘つきが」
「なにがだ?」
息も落ち着いて吹き出ていた汗も引いてやっと一息、という状況で投げかけられた五右エ門の言葉に、次元は小首を傾げた。
「痛かったぞ!?なにがテクでござるか!」
ギロリと睨みつけてくるが、目元は上気したままで色香が増すだけだ。
次元は灰皿に煙草を押し付け、五右エ門の横にゴロリと寝転んだ。
片手で頭を支え添い寝するような体勢で体を密着させる。
「バージンは痛いもんなんだよ、女でもそうなんだから男はそれ以上に決まってるだろう?」
「なにを開き直っ」
「気持ちよくなかったとは言わせねぇぜ?」
「なっ」
「スゲエ善がってただろ?」
「な、なっ」
どもりながらカバリと体を起こそうとする五右エ門の肩を片手で抑える。
力を入れると腰に響くのか、押させた力はそんな強くなかったのに五右エ門の体はふたたびポスンと敷布に落ちた。
その体に半分圧し掛かり、耳元で優しく囁く。
「男の性は正直だよな。お前、自分が何度イったか知らねぇのなら教えてやろうか?」
「!!!」
五右エ門の顔が真っ赤に染まる。
「俺の手と、口の中と・・・」
「や、やめぬかっ、もうよいでござるっ」
片手をあげて次元の口を押さえる。
口を塞ぐ掌を舌先でぺろりと舐めると、ハッとしたように手が引かれた。
「なんだよ、せっかく教えてやろうと思ったのによ」
ニヤニヤ笑いながら次元は五右エ門を両手で抱きしめた。
与えられる快感にはしたなくも乱れ喘がされた記憶がはっきり残る五右エ門は耳まで真っ赤だ。
「くっそーーー」
次元を跳ね除けはしないものの、顔を押し付けられた胸元で五右エ門の悔しそうな呻きが洩れる。
経験値が低いのも理由のひとつだろうが、それを差し引いてもこの体はかなり敏感だった。
次元の一挙一動に反応し喘ぐ姿はまさに眼福。
回数を重ねて隠れた性感帯をすべて暴きたい欲望が湧きあがる。
これっきりにするつもりも、役割分担をチェンジするつもりも次元には更々ない。
もっともっと、五右エ門が欲しがり自ら足を開くようになるくらい、この体を抱き続けたい。
だから。
「大丈夫、慣れりゃぁ気持ちよくなるさ」
「え?」
五右エ門の得意ワードを使って。
「修行だよ、修行。修行は毎日の積み重ねなんだろ?サボらず頑張ろうぜ」
「ま、毎日!?」
セックスをする理由づけをして。
「じゃ、毎晩11時、部屋に行くからな。準備して待ってろよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
毎日スル、約束を強制的に取り付けるた次元は朱に染まった頬にチュッと口付けた。
半パニック状態の五右エ門は口をパクパクさせるだけで何も言葉に出来ない。
「早く一緒に気持ちよくなれるように頑張ろうぜ」
とどめとばかりにそう言った次元はニヤリと笑い、五右エ門を思いっきり抱きしめた。

 
 
 
 
 

■DOTTI GA DOTTI■

 
 
 
■あとがき■

ジゲゴエ初夜。
というより、役割分担バトル(笑)

ゴエは受けでも恰好よくって男らしく!
一歩間違えればリバの危機があるような
男×男CPが大好きです♪




 

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