■クリスマスツリー■
 
 
 
 

 
ガチャリと次元がリビングのドアを開けると、そこには見慣れないものが鎮座していた。
いや、見慣れないものではなくこの時期どこででも見かけるものなのだが。
この場合、『アジトにあるべきでないものがある』という意味である。
「ルパン、なんだこりゃ?」
ソファーに座ってご満悦そうに眺めているサル顔に次元が問いかける。
「見りゃわかるだろ?」
「もちろん見てわかるが、なんでこれがアジトにあるのかってことだよ」
「な〜に言ってんの。今日がクリスマスだからに決まってんじゃねぇか」
答えになってない。
そう思いながらもテーブルの上に置かれた小さいクリスマスツリーを次元は眺めた。
本物ではない。高さ1メートルくらいの作り物だ。
だが色とりどりの飾りを吊るしたそれはそれなりに華やかだ。
ただこれがあるだけでこの男所帯の殺風景なアジトがクリスマスカラーに染まったような気がしてくる。
「今までツリーなんか飾ったことなかったろ?・・・まさか、不二子が来たのか?」
「不二子ちゃん?違う違う。俺が買ってきたのさ」
「だからなんで」
「五右エ門ちゃん」
「え?」
ニヤリと悪戯気な目をしてルパンが笑う。
「あいつさ、クリスマスって知ってると思うか?」
「・・・・どうかな?」
宗教色をなくしたとはいえ、クリスマスは日本でも当たり前のイベントだ。
知らない日本人はいないだろう。
とは思うが、あの『せいぜい江戸時代(BYタイムマシーンに気をつけろ)の五右エ門』が本当に知っているかは自信がない。
知らない可能性は0じゃないはず。
もしかしたら知ってる可能性の方が低いかもしれない。
「だからさ。これみてどんな反応するかなって思ってよ。それにたまにはこういうのもいいだろ?」
「・・・ま、たまにはな」
次元はコーヒーをカップに注ぎながら答えた。
子供と違ってサンタを信じてるわけでもプレゼントが欲しいわけでもない。
だが『クリスマス』というだけで、なんだか少し気分が高揚してくる。
そしてそれは決して嫌なものではない。
コーヒー片手に煙草を燻らせながら、ルパンの向かいに座る。
男ふたりでほのぼのとなにツリーを眺めてるんだか、とセルフ突っ込みするものの、視線はついツリーに向いてしまう。
ガチャリ。ドアが開く。
背を向けた次元は振り返らない。
見なくてもわかる、侍が朝の修行から戻ってきたのだ。
「かえった」
「あ、五右エ門ちゃん。おかえり」
ルパンがおいでおいでと子供を呼ぶように五右エ門を招く。
「なんだ?」
素直に近づいて来た侍の姿が視界に入ってきて、ようやく次元は顔を五右エ門に向けた。
「よ、楽しかったか?」
「修行に楽しいも楽しくないもあるか」
生真面目に答えながらも五右エ門の視線はさっきまでの次元と同じく、テーブルの上にあるツリーに注がれていた。
「ね、これ何か知ってるか?」
ツリーを指してルパンがにこやかに問う。
裏なんてなにもない、ただ聞いてみただけ。そんな感じの問い方である。
「無論」
五右エ門がルパンをみて大きく頷く。
幾らなんでも知らないはずなかったか。ふたりの男は心の中でそう思う。
「そっか、知って・・・」
ルパンの言葉が終らぬうちに、侍はこう言った。
「西洋式の門松でござろう」
カキン。
ルパンの言葉と動きが止まる。
次元の呼吸と動きも止まる。
いきなりシーーーーンとなったリビングでは、侍が「流石西洋式は華やかだ」とか「だが落ち着きにかける」とかひとり呟いている。
「・・・あの、ごえも」
ルパンがようやく搾り出した声は五右エ門の耳には届かなかったらしい。
「ではひとっ風呂してくる」
ルパンと次元を交互に眺めたあと、五右エ門はそう言ってリビングから出ていった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・マジかよ」
「・・・まさかとは思ってたけどよ」
さすが『せいぜい江戸時代』。<しつこい
いったい今までどういう育ち方、生き方をしてきたんだか。
五右エ門の間違った知識をこのまま放置しておくべきか、ちゃんと正してやるべきか。
ふたりの男は顔を合わせ、困ったように大きく溜息を吐いた。
 
 
 
 
 
「おぬしら、冗談も解さぬとは少し問題ではないのか?」
その後、呆れたような五右エ門のこのひとことでふたりの悩みは簡単に解消されたのだが、
冗談は冗談らしく言え、とか、お前の場合は有りえるんだからマジにとっても仕方ねぇだろ、とか。
言いたいことは沢山あったが、ルパンと次元はそれをぐっと飲み込み、ハハハと弱弱しく笑ったのだった。
 
 
 
 
 

■CHRISTMAS TREE■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
カップリング要素ナッシングの初期ルパンファミリー。
仲間になって手探りでお互いを理解しあってたころの一コマ。

というか、最近ファーストルパンばっか観てるので
ネタがいつもこんな感じになってしまいます。(笑)

時代錯誤の日本男児のお侍さんが
クリスマスを知っていたかどうかは不明ですよね。
どうなんだろうな〜と思ったのでネタにしてみました。
一応うちの五右エ門は知っていたようです。
そのうえ冗談も言う、と。(笑)

仲間になったばかりなのでお互い知らないことばかり。
ちょっとずつ知り合っていき、最後には阿吽な仲間になる。
という設定はとても楽しいと思います♪
 
ということで。
メリークリスマス♪

 
 

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