■男のパンツ■
 
 
 
 

「はよ」
リビングで優雅にコーヒーを啜っているルパンが明るく挨拶する。
「おー、帰ってたのかよ」
いかにも寝起きですと言わんばかりの寝ぼけた様子の次元が頭をガリガリ掻きながらルパンをみた。
「さっきな。昨日は楽しい夜だったぜ〜♪」
何を思い出したのかルパンがいやらしい表情でニヒヒと笑う。
珍しく仲良くなった女と珍しくうまくいって珍しく充実した夜を過ごしたらしい。
「その割には帰ってくるの早ぇえじゃないか」
「何言ってんだ、もう10時だぜ?彼女はお仕事。ジェントルマンの俺様はちゃーんと彼女を仕事先まで送り届けてきましたよ」
「あ、そ」
興味なさげな返事をしてトイレへ向おうとする次元を改めてみたルパンは呆れた表情を浮かべた。
「つーか、クールなガンマンがなんつう格好してんだよ」
朝の10時。
日も燦々と照っていて、昨夜一緒に夜を過ごした女も仕事真っ最中な時間帯だというのに、なんと次元はパンツ一丁だった。
「トイレに起きたんだから仕方ねぇだろ。いちいち着替えてトイレなんかいかねぇだろうが」
「そうじゃねぇ」
「あ?」
親しき仲にも礼儀あり。
なーんて使い古された言葉を使うつもりはサラサラない。
男の裸なんか清清しい朝っぱらからみたいものじゃないが、男所帯のアジトで何を気を使う必要があるというのだ。
「パンツ一丁なのはまあ置いといてよ」
「なんだよ?」
「お前、たった一丁のパンツさえ裏表ってどうなのさ」
指摘されて次元が下を向く。
「あらら」
確かに裏表になっている。外側にピロリと現れたラベルを摘み次元は苦笑した。
その様子をみながらルパンはハテと頭を傾げた。

昨夜、ウキウキとデートに出かけようとしたとき、ちょうどシャワーを浴び終えた次元が風呂場から出てきた。
ガシガシと頭をタオルで拭きながら「出かけるのか」と声をかけてきた次元は今と同じパンツ一丁。
「デートだよ、ウヒヒ。お前もパン一でウロウロしてるようじゃモテないぜ」
そう返しながら嫌みったらしくジロジロと次元を眺めてやったが、確かにあのときは裏表反対じゃぁなかった。
ような気がする。
男のパンツなんて興味ないからよく覚えてないが、反対だったら今と同じく突っ込んでいるはずなのだ、自分なら。
ということは、どういうことだ?

「昨夜はちゃんと履いてたよな。なんで朝起きたら逆になってんだ」
トイレで履き替えたのだろう、今は正しく履かれているパンツをジロジロと眺めながら、トイレから戻ってきた次元に疑問をそのままぶつける。
「そりゃぁ、夜中に脱いだからだろ」
「なんで脱いだんだ」
「男が夜中にパンツ脱ぐ理由はひとつだろうが」
確かに。
ルパンは大いに納得する。
だが、それは相手がいればこそだ。
ということは。
「五右エ門が戻ってきたのか?」
「ああ、昨夜お前と入れ替わりにな」
成るほど。
仕事だと侍を呼びつけてはいたが、来るのはまだ2〜3日先だと思っていた。
珍しく早々と戻ってきたのか。それも偶然にも自分がいないときに。
次元にとって自分の留守は好都合だっただろう。
きっと昨夜は久しぶりの侍との逢瀬をガツガツと愉しんだことだろう。
「なるほどな。男が夜にパンツ脱ぐのは穴に突っ込むためだもんな〜」
ケケケ、とルパンはいやらしく笑った。
「ま、五右エ門の場合は褌だから例外か。あいつの場合、突っ込まれるために脱ぐんだからな、ヒヒ」
深い意味はなかった。
言葉遊び・・・とはちょっと違うが冗談のつもりだった。
だが、リビングを覗くように廊下に立っていた次元がじりじりと後ずさり、ルパンの視界から消える。
「い、言ったのは俺じゃねぇぞ!?」
慌てて怯えたように叫ぶ次元の声はドップラー効果。
最後の方はかなり遠くで叫んでいたらしいから、信じられない速さで逃げ去ったようだ。
廊下の向こう側から発せられる殺気。
それは明らかにルパンに向けられている。
ゾゾゾッ、と全身に寒気が走り背筋に嫌な汗が流れる。
ユラリと空気が揺れた瞬間、ルパンは弾けるようにリビングの窓から飛び出した。
「ご、ごめんなさーーーーーーーーーい!!」
言い訳は効かない、シャレも通じない。
怒りと羞恥で久々に殺人マシーンと化した侍に命を狙われたルパンは、それから数日アジトに戻ってこなかった。
もちろん、それを追う五右エ門も。
ルパンを逃した五右エ門がもし戻ってきたら、その怒りの矛先は自分だと次元もとっとと逃げ出したので、
それから数日間、ルパン一味のアジトには久々に静けさが訪れたのだった。
 
 
 
 
 

■OTPKO NO PANTSU■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■

何度かパンツを裏表反対に履いたことがありました。
(女として・・・^^)
自宅で気がついたときはいいんですけど、
会社のトイレで気がついたときはなんだか切なくなります。
それも1回や2回じゃない。
トイレに行くたびにピラリと指先に触れるタグに
イヤーンな気分になるので、それをネタにして書いてみました。
ハンツを裏表反対に履いた日に。
転んでもただでは起きませんよ。
パンツ裏返しも全部ジゴゴエネタに変換デス!


 
 
 

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