■KISS ME (中編)■
 
 
 
 

 
次元の影に怯えながらも、ルパンと不二子が廊下でこそこそと意見交換した結果。
原因は五右エ門にあるのではないかという結論に至った。
あの次元があそこまで素っ頓狂な行動を起こすことは滅多にない。
そう「滅多に」。全然ないわけではない。つまり「たまに」なら「稀に」ならばあるのだ、とんでもない行動を起こすことが。
統計上、それらの原因が五右エ門がらみであった確率がかなり高い。
というか、ほぼ五右エ門絡みだった。
今回も疑うことなく「原因=五右エ門」で決まりである。
ということで、原因に関する意見交換は1分もかからず終了、あとはその理由調査と対応について話し合ったふたりである。
常の不二子なら「いつも行動を一緒にしているわけじゃないし、私には関係ないわ。ルパン頑張ってねv」で終わりである。
だが、次元のあの様子。
ディープキスするまで地の果てまで追いかけて来そうな勢いだった。
今回は簡単に逃げられそうにないと、不二子も諦めてルパンと一緒に「次元の奇行の調査及び対応」をすることにしたのだ。
ひとりでアレと対峙するよりよっぽどいい。
いざとなればルパンを人身御供にして逃げればいいのだ。
「やっぱり五右エ門がなにか言ったのかしら」
「悪気もなくナチュラルに爆弾発言かました可能性が高いなぁ」
本人は無自覚だから性質が悪い。
だが次元を、男であるルパンにまで迫るキス魔にするほどの言葉とはなんなのか。
どんなに考えてもさっぱり思いつかない。こうなれば本人に探りをいれるのが一番早く確実だ。
ふたりは意を決し、リビングのドアをあけた。


胡坐を組んでソファーに座り日本茶をすするターゲット。
ルパンと不二子は会話をしながら何気なさを装い近づく。
「なんかおかしいわよ」
「そうだなぁ」
「なにかあったのかしら」
「俺が出かけるときは普通だったんだけどねぇ」
主語のない会話をしながらチラリとみると、五右エ門が顔をあげてふたりの方をみたところだった。
「不二子ちゃん、コーヒーいかが?」
「ええ、お願い」
ルパンがコーヒーを煎れに行き、不二子は五右エ門の前にポスンと座る。
だが侍には話しかけずにウーンと考え込むポーズ。
珍しいその様子に興味を惹かれたのか五右エ門は目の前の不二子に視線を送る。
が、特に問いかけるわけでもない。
興味は持っても余計な首は突っ込まないのが侍のスタンスだ。
「はい、不二子ちゃん」
「ありがと」
コーヒーを渡したルパンが不二子の横に座る。
「「ふーーー」」
そして同時に大きな溜息。
「・・・どうしたのだ?」
いかにも「さあ、質問してください」と言わんばかりのふたりの様子に、さすがの侍も尋ねないわけにはいかなかったらしい。
その問いかけを聞いてルパンと不二子は心の中でニヤリとほくそ笑む。
「んーーー」
「おぬしら先ほどからなにかおかしいぞ?」
「おかしいのは次元よ」
不二子が身を乗り出してヒソリと囁くように言う。
「次元?」
「そう、五右エ門なにか心当たりない?」
なにがどうおかしいとは言わない。
原因がわからない今、五右エ門から情報を引き出すには曖昧に聞くのが効果的なのだ。
「次元の様子が・・・」
口篭って少し考え込んだあと、侍の頬が緩んだ。そしてその頬は微かに紅を差す。
ほんの僅かな変化だったが、ふたりが見逃すはずはない。
それなのに。
「知らぬ」
と五右エ門はすました顔で応えた。
そんなはずないだろう、と突っ込みたくなるがそれをグッと我慢する。
「そうなの」
「困ったなぁ、原因がわからないんじゃ。被害が益々・・・」
「・・・被害?」
簡単に引っかかった。馬鹿正直な侍である。
「なんか怒ってるんだよな、あいつ」
「怒っておるのか?・・・悔しがってるのではなく?」
ポロリとこぼれた言葉をふたりはしっかりと受け取る。そして放さない。
ここで原因を解明しておかなければ、自分達の身が危ういのだ。
すかさず、何気なさを装って不二子は再びウーンと考え込むポーズ。
「そういえば・・・そんな感じでもあったわね?」
「あいつが悔しがるようなことがあったのか?八つ当たりされちゃぁ、俺らも堪んないんだけんども」
恨みがましくルパンは五右エ門を上目遣いで睨みつける。
グッと五右エ門が口篭ったのを見逃さない。
「五右エ門ちゃん、お前あいつに何したの?正直に吐いちゃいなさい」
「そうよ、こっちはいい迷惑だわ」
畳み掛けるように、ふたり一緒に五右エ門の方へズズイと体を乗り出した。
「だ、だが」
「だがなんだよ」
「おぬしたちの言った通りにしたのだぞ?」
思いも寄らない返答。
自分達の言った通り?いったい自分達が次元に何をしろと五右エ門に言ったというのか。
「なんのことだ?」
「だから・・・」
「だから?」
「相談したであろう・・・以前」
顔を真っ赤にした侍は観念したように、だが恥ずかしそうにこう言った。
顔を赤らめるような相談?
そこまで考えて、ふたりはハタリとあることを思い出す。
「アレか」
「アレね」
お互いの「納得!」といったニュアンスを含んだ声に不二子とルパンは顔を見合した。
「なになに、不二子ちゃんも相談されたの?」
「貴方もなの?ルパン?」
合わせた顔をふたり同時に五右エ門に向けると侍は恥ずかしげに小さく頷いて
「意見は多いほうがいいと思ってな」
と言った。

 
 
 
 
 

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