■帰り道■
 
 
 
 

 
アジトへの帰り道。
街路樹に挟まれた人気のない小道を次元と五右エ門はふたり並んで歩いていた。
「ルパンのヤツ」
次元がぶつぶつと文句を垂れている。
仕事帰りで疲れているというのに、ルパンはアジトまで数キロというところでふたりを車から放り出したのだ。
「大した距離じゃないからいいだろ?歩け歩け」
ケケケケと笑ってルパンは排気ガスを撒き散らして走り去っていった。
確かに大した距離じゃない。
歩いて帰れない距離でもないし、普通なら別に構わない。
だが、ふたりを捨ててとっとと向かった先が不二子のところだと思うとムカつくのだ。
そんな次元を少し呆れた目で見ながらも、五右エ門は何も言わなかった。
言ったが最後、不機嫌な次元に意味もない口論をふっかけられそうだからだ。
『触らぬ神にたたりなし』
その通りである。

しばらくブツブツと歩いていた次元だったが、隣に人の気配がなくなったことに気がついて足を止める。
並んで歩いていたはずの侍がいない。
振り返ると数メートル後ろでしゃがみこんでいる。
「どうした?」
ゆっくり近づきながら様子を伺うと、俯き片膝をついて草履を手にしている。
「鼻緒が切れた」
短くそう答えながら五右エ門はなれた手つきで切れた鼻緒を直していく。
そんな五右エ門を見下ろした次元の目に、ふと五右エ門のつむじに目が入った。
女なら横に立てば身長差でよく目に入るつむじだが、ほぼ同じ身長のルパンや五右エ門の場合は視界に入らない。
なんだか珍しい感じがして、つい凝視してしまった次元だったが、その視線に気がついたのか五右エ門が顔をあげた。
「なんだ?」
「いや、なんでもねぇ」
訝しげな表情を浮かべながらもそれ以上追求せずに、五右エ門は再び鼻緒を直すべく俯いた。
その動きで髪がサラリと両頬へ流れ落ち、白いうなじが露になった。
ドキン、と次元の胸が小さく鳴る。
今度は現れたうなじから目が離せなくなる。
サラリとした長い黒髪の間からみえる白い首。
それはそのまま着物の中へと続いていて、白い背筋まで見えそうだ。
実際は襟首からほんの少し肌は見えていただけなのに、背中が全部みえたような錯覚を次元は覚えた。
「よし」
そう言って直した草履を履く五右エ門はすぐに顔をあげてしまうだろう。
そしたらこのうなじは髪と着物で隠れてしまう。
なら、その前に。
次元の手が無意識に伸び、首筋を指先でツツツと撫でた。
「っ!!」
息を飲む気配。同時に五右エ門がパッと顔をあげた。
視線が合う。
無意識による動きだったが次元は戸惑わず、ニヤリと笑ってみせた。
うなじを手で押さえた五右エ門は立ち上がり後ろに飛びのいた。
「な、なにをするっ」
「なにって触っただけだろ?」
「触るなっ」
「じゃあ、色っぽいうなじをみせるんじゃねぇよ」
ヘロリと答えて次元は斜に構えた表情で笑った。
「い、色っ!?」
思わぬ単語に五右エ門の顔が真っ赤に染まる。
恥じらいと、からかわれたという怒りと、わけのわからぬ心拍数の上昇。
その感情が怒り一色に塗り変わってしまう前に、まだ恥じらいが勝っている間に、対処しなくてはいけない。
それを間違うとこの侍は斬鉄剣を振り回し始めるのだ。
次元は五右エ門の肩に腕を回すと、ぐっと己の方に引き寄せた。
「せっかくふたりっきりになったんだからな。楽しく歩こうぜ」
悪戯気な目で侍の目を覗き込む。
その目の奥に、ふたりきりの夜にみせる艶のある色をみつけて五右エ門は益々顔を赤くした。
不二子のところに行ったルパンは当分帰って来ないだろう。
ここ数週間は仕事仕事でふたりっきりになることはなかった。
ということは。
微かに湧き上がった期待と高揚を振り払うように五右エ門はギュッと目を瞑った。
だがそれは一瞬ですぐにあけた目には動揺の色は消えていた。
「ずっと、ぶつぶつ言ってたのはおぬしであろう」
「ハハ、すまなかったな。もう言わねぇよ。楽しく帰ろうぜ」
すぐに隠されてしまった五右エ門の動揺を次元は見逃さなかった。
今夜は愉しい夜になりそうだと期待に胸を膨らませ、次元は五右エ門の肩を組んだままアジトへの道を歩きだした。
 
 
 
 
 

■KAERIMICHI■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
五右エ門のうなじは色っぽいの〜v
日頃隠れてる分、チラチズムは最高かろう。
直視したら次元もクラクラ鼻血もんだろうな〜v
という妄想のもと書いたものです。

ゴエうな(五右エ門のうなじの略)といえば
新ル56話『花吹雪謎の五人衆(後編)』の
ゴエうなは必見ですよ!(鼻息荒)
公式でこれほど色っぽいとは、五右エ門どんだけお色気担当だ!
と思うもの!!
 
 

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