■ルパンファミリーの平穏な日常(後)■
 
 
 
 

 
しぶしぶという態度ではないが、乗り気ではないのは表情でわかる。
それでも文句をいうでもなく、ちゃんと従う姿はそれなりに仲間としての自覚が芽生えているのだろうということをルパンと次元に知らしめた。
腰紐をとき、スルリと和服を脱いでいく。
袴も落とした五右エ門をみて、下着も買っておかなくては、とルパンは思う。
洋装に褌は似合わないというか、スラックスの下で変にモコモコしそうで不自然だ。
服のサイズも確認しておかなければと思いつつ、褌とサラシだけになった五右エ門をジロジロと上から下まで観察する。
白く無駄毛もほとんどない綺麗な肌をしている。
白人の白さとは違うが、日本人の肌の色とも微妙に違う白さ。
炎天下の元、修行をしているのを考えれば焼けない体質なのだろう。
脱毛に金と時間を費やしている女が見れば羨むだろうというくらい体毛が薄く、少ない。
それに思った以上に細い体をしている。
軽々と残鉄剣を振り回す様子をみて、服に隠れてみえないが実は筋肉隆々なのかとも思ったのに、それどころか反対に細ッこい。
なんであれだけの剣がふるえるのか不思議だ。
「・・・じろじろみるな」
五右エ門が嫌そうに顔を顰めながらルパンを睨んだ。
実は次元も同じく観察していたのだが帽子に隠れていて、ルパンの視線ほど露骨ではなかったらしい。
「いいじゃん、男同士でしょ」
「男同士でも気持ちわるい」
不機嫌そうに言い放つ。
威勢はいいが、服を着ていく手順は遅く、もたもたとしている。やぱりよくわかっていないらしい。
それでも教えずにニヤニヤしながら眺めてるとジロリと睨まれる。
だが、ルパンは気にしない。次元も自分に矛先が向いたら嫌だとばかりにだんまりを決め込む。
なんでこんなに時間がかかるのかというほどの時間を使い、ようやく五右エ門はシャツと上着に袖を通しスラックスも履き終えた。
「・・・大きい」
五右エ門の呟きがなくともそれは一目瞭然だ。
ウエストがダブダブしている。だが丈は上下とも合っているようだ。
着るだけで精一杯の侍に微調節は無理かと、ルパンはようやく手伝ってやる。
「こうベルトを思いっきり締めて・・・あれ?」
ベルト穴を一番内側にしてもまだウエストがあまるのだ。
細いと思っていたとはこれほどとは。
「・・・五右エ門、お前、身長と体重はいくつ?」
「背丈は6尺ないくらいだ。目方は16貫5斤」
思いもよらない単位に次元の肩がガクリと落ちる。
「わからねーよ」
と突っ込むが、ルパンはなんでもないように応えた。
「約180センチ、63キロってとこか」
「・・・よくわかるな」
次元のちょっと見直したような言葉にルパンはニヤリと笑う。
「俺様って天才なのよ、忘れてない?」
「忘れてた」
そういえばそうだった、という感じである。
ルパンの普段の態度はどうしても天才のものではない。
まさに天才となんとかは紙一重。
「で、次元おまえは?」
「あ?」
「身長と体重」
「178センチ、70キロ」
「・・・次元お前太りすぎ」
一瞬何を言われたかわからなかったが、すぐさま理解し次元はムっとした顔で怒鳴った。
「なんだと!?俺は標準だ!!」
この数年、体重の増加はない。
ずっと現状保持、今の体重が一番いい状態だ。
自分の体格に自信があっただけにルパンの暴言は許せるものではない。
「だっぁて、五右エ門ちゃんとほぼ同じ身長なのにサイズ全然あわないじゃん」
「こいつが細すぎなんだよ、や・せ・す・ぎ!」
筋肉がついているとはいえ、細ッこいのは五右エ門だ。
自分が太っているわけではない。
「だけど俺様も179センチ、63キロよ?」
ニヤリ顔で言われて、次元はグッと詰まる。
どう考えても178センチに70キロはベスト体重、標準体型だ。
だが身近のふたりがその標準値を狂わせてしまっている。
「ということで五右エ門ちゃん、俺様のお洋服を貸してあげるから、そのおっきな服を脱いでおいてね」
「俺は標準だって!」
次元の怒鳴り声を背に、ルパンはいそいそと自分の服を取りに行った。

「はい、五右エ門ちゃん」
「かたじけない」
真っ赤な上着に黒いスラックスを受け取り五右エ門は軽く頭を下げた。
せっかく取りにいってもらったが、やっぱり真っ赤な上着には抵抗を感じる。
少し考えて、とりあえず上着は後回しにしてスラックスから履くことにする。
上着なら次元のでもそこまで大きくないし、問題はスラックスだからだ。
だが。
「大きい」
「なぬっ!?」
五右エ門の言葉を受けて、ルパンが飛びつくように侍のウエストをチェックする。
次元のほどではないがやはりウエストに余裕がある。
「ダアハハハハハハッ」
次元の笑いが部屋中に響く。心底楽しそうな笑い声だ。
「なに笑ってるんだよ、次元」
振り向いたルパンに次元は唇の端をあげニヤニヤと笑ってみせた。
「俺と五右エ門はウエイトに差があるからな。俺の服が大きくっても仕方がねぇ。
だがよルパン。ほとんど身長体重が同じお前の服が五右エ門に合わないってのはどういうことだ?」
帽子のつばを指であげて見せた目は悪戯気に光っている。
「・・・五右エ門ちゃんがデルモ体形だというこ」
「ちがうだろっ!ま、完全に違うわけじゃねえだろうが今問題なのはそこじゃない」
ルパンの答えを遮って次元は遠慮なく突っ込む。
「なにがいいたい」
「同じ身長、同じ体重で服のサイズが会わない、つまりルパン、お前の体は脂肪だってことだよ!」
ガーーーン
ショックの音が聞こえたとしたら、きっと部屋中に響き渡っただろうと思われるほどのショックをルパンは受けた。
さっきデブよばわりされた腹いせか次元に遠慮はない。
「日頃鍛えてる五右エ門はきっと筋肉なのさ、その点お前はぶよぶ」
「俺は標準だ!!」
今後はルパンは次元の言葉を怒鳴り声で遮る。
身長の割りに体重が軽いことは自覚していたルパンであるが、鍛えた体に自信はある。
だが、目の前に突きつけられた事実はちょっと自分にとって不利だった。
「どーだかね。身長と体重からみれは痩せすぎなんだろうが、そうみえないってことはやっぱ脂肪」
「違うっての!!」
「脂肪だよ、脂肪!」
「なんだよ、おまえだってデブじゃねぇかっ」
「俺のは筋肉、そして標準だってーの!」
お互い自慢の肉体を五右エ門の存在ひとつで覆られそうになって、ちょっと必死だ。
五右エ門の体型の方が問題なのだという結論は頭に血が昇った今の二人には導き出せない。

喧々囂々はじまった言い争いを呆れた顔で眺めたあと、とりあえず今日は洋装をしなくったもよさそうだと判断し安堵した五右エ門は、自分の服を持ち二人を残してこっそりと部屋をあとにしたのだった。




■HEION NA NICHIJYO■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■

昔の人の身長の単位は『尺』だったのは知っているのですが
(昔、祖父に「身長何センチ?」と聞いたら
単位『尺』で答えられて、「わかんねーよ!」と
心の中で突っ込んだ覚えがあるので:笑)
体重の単位はわからなかったので、体重は適当です(^^;)

五右エ門の公式、180センチ63キロなんてデルモ体形だよ!
と思ったので、ソレで妄想♪

ま、なんでもない彼らの日々のひとこまって感じで。
訳のわからない言い争いは勃発しておりますが(笑)



 
 

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