「今日は暑かったなぁ!おい、最高気温が37.7度もあったみたいだぜ」
下調べから戻ってきた俺は汗を拭き拭きアジトのドアをあけた。
ソファーの上で胡坐をかき瞑想している男は我関せずといった様子で見事反応せず。
そうだよな、絶滅危機種のこの侍が暑い寒いと大騒ぎするはずないんだった。
「へぇ、そんなにあったのか」
ソファーに寝転がっている男は帽子の鍔をあげて感心したように言った。
暑いのに帽子を被ったままってのはどうよ、いくらトレードマークとはいえ。
蒸れて禿げるぞお前。
といいたいが、今更言っても無駄なので突っ込まない。
だが、流石にこいつも暑かったんだろう、珍しく半袖シャツを着てる。
「今日はホーントに暑かったろうが、なに言ってんだ」
ここのアジトは古い。はっきり言って廃屋ギリギリのボロ屋だ。
ほんの数日の滞在なので今回特に手を入れてないこの家のクーラーははっきり言って役立たずも同然。
扇風機並の効果しかない。
だから俺のように外出してなくっても暑かったに違いないのに何を他人事のように言ってるんだか。
「暑かったぜ、勿論。いつもよりもな」
一瞬チラリと次元の視線がある方向に飛ばされる。
ほんの僅かな動きで普通なら見逃しそうなものだが、この俺が見逃すはずない。
視線の先にいる侍はなんの反応もしなかったがコメカミがほんのちょっとピクリと動いた。
あーあ。そういうことか。
最近はずっと三人一緒だったからなぁ。
そしてこの先も当分一緒に行動を共にする予定で今回の俺の単独行動は突発的なものだった。
次元がこのチャンスを逃すはずないんだ。
ヤったな、こいつら。
あの暑い中、クーラーも効かないのによくヤったもんだ。
久々な挙句、この先も当分お預けだ。
次元の奴、きっとノンストップでヤりたい放題、好き放題ヤったんだろうなぁ。
それじゃあ、ちょっとくらいいつもより暑くっても気がつかねぇだろ。
「じゃ、気分転換出来たところで、明日からはお仕事で熱くなりましょうねぇ」
手に入れてきた地図をバサリとテーブルに開いてふたりに手招きをする。
俺の言葉に慌てず気にせず満足気に、というか満腹気にニヤリと笑って次元は起き上がった。
俺の言葉の意味をよく理解していないんだろう五右エ門はちょっと首を傾げながら立ち上がり近寄ってくる。
確固とした足取りだが、立ち上がるときよろめいてほんの僅かに眉間に皺を寄せたのを俺は見逃さなかった。
次元、お前ヤリすぎだ。
明日からの仕事に支障が出たらどうしてくれる。
ジロリと睨んでやると奴は面白そうに、煙草を咥えた唇を歪めて笑った。
「ルパンお前、ホント目が効くナァ」
「何言ってんだ。隠すつもりは全然ねぇくせに」
「隠したって無駄ダロ」
侍に聞かれないようにボソボソと言い合う。
どんな些細なことでも俺が見逃すはずないのをこいつは知っている。
だから開き直ってるんだろうが・・・
この狭いアジト。
ここで、たぶんこの部屋でこいつらがヤったと思うとちょーーっと居心地が悪いような気がする。
目聡いのも、こういうときはちょーっと困るぜ。はぁーあ。
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