欲して発情して戸惑って。
悩んで悩んで苦しんで。
無断侵入して無理やり躯を奪って。
勘違いにつけこんで抱いて自覚して。
そして悩んで苦しんで。
すべてがバレて玉砕覚悟でぶつかって。
奇跡的に許されて。
本当に手にいれるために口説いて口説いて口説きまくって。
ようやく、やっと手に入れた恋人。

 
 

 
 
■現夜■
 
 

 
右往左往して時間をかけてようやく五右エ門を恋人に出来た次元だったが。
現在、もう我慢ならぬMAX状態になりつつあった。

もともと五右エ門の性癖はノーマルだ。
だから恋人同士になったとはいえ、男同士で躯を重ねることに強い抵抗感があるらしい。
抱きしめ合ったりキスを交わしたり。
ティーンの恋人同士のような可愛い触れ合いは嫌がらず五右エ門も受け入れてくれる。
だが、それ以上のディープな関係にはどうしても踏み出してくれない。
いや、違う。と次元は思う。
今時のティーンの方がもっと進展している。なんといってもヤりたい年頃。
やつらは毎日ヤリまくってるに違いないのだ、自分達と違って!!
ぐぐっと拳を握った次元はギリギリと悔しさに歯軋りしながら考え続ける。
自分だって本当はノーマルなのだ。男相手なんてとんでもない、気持ち悪い、吐き気がする。
と思うのに、相手の男が「五右エ門」に限定されるとその反応は180度転換する。
抱きたい、ヤリたい、モノにしたい。
言葉を変えれど言いたいことは同じ。
とにかく次元は五右エ門とセックスしたいのだ。

悶々とした次元の様子をソファーに座りこっそりと伺っていた五右エ門はそっと溜息を吐いた。
次元が自分になにを求めているのかは知っている。
自分だって男だ。男の生理現象は嫌というほどわかっている。
抱き合うのも舌を絡ませるような口付けを交わすのも、はっきり言って嫌じゃない。
それに、次元相手に欲情しないといえばそれは嘘になる。
肌を合わせたいと思うし、次元が快楽を感じている姿をみたいとも思う。
が。
やっぱりソレとコレとは話が別なのだ。
次元は五右エ門を抱きたがっている。
夢のときのように、五右エ門の後孔を己の性器で貫き深くまで混じりあいたいと思っている。
そこまで考えて五右エ門の躯がブルリと震える。
恐れ、怯え、そして僅かな期待。
次元になら許していいとは思う。抱かれてもいいと思う。
だが、どうしても男としてのプライドが、未知なる世界に足を踏み入れるという恐怖がその気持ちを霧散させてしまう。

「五右エ門」
いきなり名前を呼ばれてビクリと躯を振るわせる。
深く考え込んでいたようで、次元の接近にまったく気がついていなかった。
そんな五右エ門の前に跪き、その白い手を両手でガシリと握り締める。
「頼む」
帽子の下からみえる目は完全に真面目だ。というよりもう切羽詰っている色をしている。
何も言わない五右エ門の視線を完全に捕らえて、次元は握った手の甲に口付けた。
「もう我慢できねぇ・・・ヤらせてくれ」
歯に衣着せぬ直接的な要求。
直球勝負に出たらしい。
もう作戦を立てたり順序を踏む余裕が次元にないことがヒシヒシと伝わってくる。
こんな切羽詰った姿をみて、無情に手を振り払うことが出来ないくらいには、五右エ門は次元を好いていた。
縋るような瞳に負けて五右エ門は小さく頷いた。



さてはて実践の日が来た。
承諾は得たものの、ルパンがいるときは絶対嫌だという五右エ門の意思を汲み取って、日々は淡々と、しかし緊張に満ちて過ぎていた。
そしてようやくルパンが所用でアジトを数日あけることになったのだ。
それを知ったときの次元の喜びようと五右エ門の慄き。
表面に出さないといった点はふたりとも同じであったが、彼らを襲った感情は正反対のものだった。

一緒に入ろうという誘いを頑ななまでに拒否した五右エ門が風呂からあがったのは既に真夜中に近い時間だった。
ゆっくりと次元の待つ部屋へ向かう。
心臓はドキドキしっぱなしで口から飛び出しそうだ。
だが、誘う次元を先に風呂場に押し込み、その後入れ替わりに風呂へ入るときに、まだちょっかいをかける男に「あとで行くから大人しく部屋で待て」と怒鳴りつけたのだ。
抱かれるために自ら部屋を訪れるなんて恥ずかしい以外なにものでもないが、言ったからには約束を守る、哀しいまでに漢で侍な五右エ門であった。

次元の部屋の前まで着いたものの、やはり戸惑い暫くドアをあけることができなかったが、
このままじゃいけない、と最大の勇気を振り絞ってそっとノブを回した。
ゆっくりと半分ほどドアを開けたところで腕を掴まれ部屋の中に引きずり込まれる。
力強く抱きしめられている事実を認識したときには、既にベットに押し倒された後だった。
プロセスもムードもあったものじゃない乱暴で早急な次元の態度に驚いた五右エ門だったが、すぐにジワリと腹が立ってくる。
一言非難しようと覆いかぶさる次元をみあげれば、不機嫌そうな表情で見下ろしている。
その表情に五右エ門の怒りは掻き消されてしまった。
「・・・なにを怒っているのだ」
「・・・怒ってねぇ」
「怒っておるではないか」
「怒ってねぇって!それよかお前、焦らしすぎだろ!?」
声を荒げる次元をポカンとみつめる。
「焦らす?」
「とぼけんなよ、いったい風呂に何時間入ってるんだ。お前、俺を焦らして楽しいか?」
言っている意味がわからず、とりあえず部屋に備え付けの時計に視線を送る。
時間を確認したものの、見間違えかと何度か瞬きし、もう一度時計をみる。
「あの時計進んでおるぞ?」
「・・・本気で言ってんのか、お前」
風呂に入る前に一応時間は確認した五右エ門である。
その時間からゆうに2時間以上が経過していることになる。この部屋の時計では。
「あ?」
「マジかよ、素ボケか?・・・ホント、2時間以上もいったいどこ洗ってたんだ」
五右エ門の様子に焦らされていたわけではないとわかったものの、それはそれで呆れた次元だった。
「すまん」
自分でもそんなに長い時間何をしてたのかわからない五右エ門であるが、ここは素直に謝った。
暫く沈黙が続いたが、次元のクスリと笑う声でその沈黙は破られた。
恐る恐る見上げると次元が小さく笑いかけてきた。
ほっと安心したのも束の間、続いた言葉に五右エ門の緊張が一気に高まった。
「やっぱ可愛いわ、お前。だがな、お前にその気がなかったとしても焦らされたのには間違いねぇ。
すまねぇが俺にはもう余裕はまったくない。覚悟するんだな、五右エ門」
次元は躯を起こし、身につけたものを次々と床へ落とした。
硬直しベットに寝転んだままの五右エ門をみて苦笑する。
「おい、お前も脱げよ。それとも脱がして欲しいのか?」
「じ、自分で脱ぐっ」
伸びてきた手を軽く払い、体を起こして腰紐を解いた。
初心な乙女でもあるまいし。
自分でそう思うものの指が震えるのをとめることができない。
それでもどうにか全部脱ぎ終わり衣服を床に落とすと、あっという間に組み敷かれた。
「焦らすなって」
「だから焦らしてな」
答え終わるより早く、唇を奪われる。
厚い舌は遠慮なく口内へ侵入し、その味と感触をじっくりと味わう。
重なった唇、絡む舌。
慣れたその感触はいつも最高の快感と興奮を与えてくる。
だが、それよりもふたりを刺激したのはお互いの肌の感触だった。
合わさった胸板。重なった腹や下肢。絡んだ足。
皮膚がこれ以上ないほど敏感になり、触れ合っているだけなのにゾクゾクとした快感が湧き上がった。
 
 
 
 
 

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■UTSUTSU-YO■
   

    
 
 
   
 ■なかがき■
なんだかんだいって恋人同士なのです!
次元、頑張りましたヨ!(笑)

今回はいままでの夢オチじゃなく、一応現実です。
だから題名が『現夜』。

ようやくなジゲゴエの初夜な話です。
『初夜』
いい響きですよね!
でもこのシリーズのジゲゴエだから・・・
どうなることやら。(笑)



 
 

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