■夢夜■
 
 
 

 
夢で自分の気持ちを自覚した五右エ門だったが、現実世界ではそのような態度は微塵にも出さなかった。
これはどうしたものか、という気持ちもある。
だが目覚めたときの幸せな気分はなんともいえないものだった。
ま、わざわざ次元に教える必要はあるまい。
調子に乗ったらあの男がどんな暴挙にでるかわかったものではない。
それに現実問題として男と体を重ねることには抵抗がある。
気持ちがどうであろうとも、この点においては夢と現実は違うのだ。
そう思いながら、今日も斬鉄剣を腕に抱きリビングのソファーで瞑想をしている五右エ門だった。
そんな五右エ門の背後によからぬ気配が近づく。
反応するよりも早く、黒い男が背後から抱きついてきた。
「よう、五右エ門」
抱きすくめられはしたが、白刃が煌き次元の首筋に当てられていた。
「朝っぱらからいい加減にせい。抱きつくな!」
告白し、頑張る宣言をしてからというもの次元のスキンシップは異常なほどだった。
隙あらば触れる抱きつく、あまつさえルパンがいなければ押し倒してくる。
なかなか図太い。
「冷たいなぁ。抱きつくくらいいいじゃねぇか」
刃に押されてしぶしぶ離れながら次元は不満そうだ。
「毎日毎日鬱陶しい!少しはときと場所を考えろ」
ビシッと言ってやったつもりなのに、次元が嬉々として前に回り込んできた。
「なんだ」
「それって、ときと場合を考えればOKってことか?」
そう言われて五右エ門は自分の発言に気がついた。
カッと顔が朱に染まる。
「そんなつもりで言ったわけではないっ」
「じゃあ、どんなつもりだよ?」
「ただ口が滑っただけだ、いちいち上げ足をとるな」
斬鉄剣を突き出して次元を遠くへ押しやる。
次元はチェッと小さく舌打しながらボソリと呟いた。
「なんだよ、夢の中ではあんなに素直だったのによ」
「・・・え?」
「あ・・・」
しまった、という次元の表情。
その表情と今の台詞。
それが五右エ門の頭の中をグルグルと周り、ひとつの結論を導き出した。
「まさか、おぬし!?」
ガバッと立ち上がった五右エ門から一定の距離を置き、次元が後ろに飛び去る。
「あ、いや、だが薬は・・・」
夢に侵入するために必要不可欠な薬がないことを思い出し、少し勢いを弱めた五右エ門の姿に次元は笑った。
ほんと素直なサムライだよ、こいつは。
だが、もうこれ以上待つつもりはないし、待つ意味もない。
そう考えた次元は最初の一歩を踏み出すべく、開き直って笑いながら言った。
「薬なんかどうとでもなるぜ。博士に頼めばあっという間に手に入る」
「なにっ!?」
あっさりと認めた次元に五右エ門は声を詰まらせた。
ニヤニヤと笑う男の顔がむかつく、気にくわない。
「無断侵入だぞっ!!!」
「仕方ないじゃねぇか。現実のお前はつれないんだからよ」
「開き直るなっ」
「俺も男だからな。溜まっちゃうわけよ、だからたまには」
「たまには、じゃない!!この愚か者ーーー!!!」
羞恥と怒りで真赤に顔を染めてつめよる五右エ門を、愛し気にみつめる。
もう何を言っても遅い。
わかってしまったし、知ってしまった。
「でも、お前の気持ちはよーくわかったし。無断侵入したかいはあったぜ」
次元の自分を見つめる目の優しさに気がついて五右エ門は益々顔を染めた。
体中が羞恥で熱くなる。
くそう、と思いながらも既に怒りは削がれてしまった。
なんとなく悔しい。いや違う、心底悔しい。
「そんなことは拙者は知らぬっ」
斬鉄剣を握りしめ、照れ隠しに切り付けてくるかと思いきや、五右エ門は脱兎の如く逃げ出した。
「どこに行くんだ」
「修行だっ!汗を流してくるっ」
アジトから飛び出す五右エ門を次元は苦笑しながら見送る。
次の仕事はもうすぐ始まる。
五右エ門も遠くへは逃げられない、すぐに戻ってくるだろう。
ま、少しは足掻く時間を与えてやるよ。
すべては今度のヤマが終ってからだ。

そう思いながら、次元は満足気な表情でソファーに腰をおろした。
さて、あの可愛い侍とどこからはじめよう。
自然に湧き上がる笑みを浮かべたまま、黒い男は楽しそうに未来計画を立て始めたのだった。
 
 
 
 
 

■YUME-YA■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
ということで、ようやく両思いになりましたv
よかったね!次元!(笑)

ノーマルな男同士が恋人同士になるのには
そうとうな葛藤や右往左往があるんじゃないかな〜
と思ったので、こんな感じになりました。
ここまで来るのがホントに長かったデス(^^;)

次元は両思いになれて浮かれてますが
これからがまた大変なんですよ、きっと!
三歩進んで二歩下がる恋愛開始ってとこでしょうか(笑)


 
 

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