■月夜■
 
 
 

 
カクッ。
頭が重力に沿って落ちるその軽い衝撃で五右エ門は目を覚ました。
寝ぼけ眼で辺りを見渡すと誰もいない。
灯りの消えたリビングのソファーでひとり転寝をしていたらしい。
だが、記憶にある限りこのリビングにはルパンも次元もいたはずだ。
つまり彼らは居眠り中の五右エ門を放置して丁寧に電気まで消していったということだ。
「冷たいやつらでござる」
ぶつぶつ文句を言いながら眠い目をガシガシと手の甲で擦り立ち上がった。

廊下に出ても誰の気配も感じない。
シーンと静まりかえっていて電気ひとつついていない。
だが窓から差し込む満月の光が夜とは思えないほどの明るさで廊下を照らしていた。
足を忍ばせて廊下を歩く。
五右エ門の部屋は次元の部屋の前を通らなければいけない。
いくら自分を放置してさっさと部屋に戻った冷たい仲間とはいえ、ドカドカ歩いて目を覚まさせるような五右エ門ではない。
長くはない廊下、もうすぐ次元の部屋の前だ。
そんなとき何か微かな声が聞こえたような気がした。
「・・・起きておるのか?」
それにしても夜中に部屋でひとりブツブツ言っている男は頂けない。
そう思いながら目を凝らすと、次元の部屋のドアがほんの少し開いていることに気がついた。
また微かに声がする。間違いなく次元の声だ。
興味をそそられた五右エ門は、気配を消しゆっくりとドアまで忍び寄った。
月明かりが仄かにもれるドアの隙間から、そっと中を覗き込む。
部屋にはやはり電気はついていなかった。
しかし、カーテンが開けられた室内は白く明るい。
ベットサイドに腰を下ろしている次元の姿が目にはいる。
寝る前なのかほとんど裸でボクサーパンツを履いているだけの格好だった。
だが、何かがおかしい。
目を凝らして次元の様子をしっかりとみた五右エ門はハッと息を飲んだ。
履いているはずのボクサーパンツは少し摺り下げられ、その股間に彼の手が伸びている。
そしてその手は間違いなく、上下運動をしていた。
それに気がついた途端、掌から微かに濡れた音がしていることに次元の息がとても荒いことに五右エ門は気がついてしまった。
人様の自慰行為など覗くものではない。
頑張っている本人に大変失礼だ。
と、少しパニクリながら五右エ門がドアから離れようとしたとき。
「・・・五右エ門」
名前を呼ばれた。
覗いていたのを気がつかれてしまったのだと、言い訳を考えながら慌てて部屋の中を覗きなおす。
しかし、次元の視線はこちらを向いていない。
あれ、と気が抜けた五右エ門であったが再び名前を呼ばれて、すぐに状況を理解した。
「はぁ・・・ご、えもん」
次元が。
次元が五右エ門の名前を呼びながら自慰をしている。
つまり彼が今、美味しく召し上がっているおかずは五右エ門なのである。
カァァァっと顔が赤くなるのを感じる。羞恥で頭に血が昇る。
だが、五右エ門は次元から目を離すことは出来なかった。
眉間に皺を寄せ目を閉じている横顔。
少し開いた唇からは絶え間なく、荒い息と五右エ門の名前が発せられている。
手の中の男の象徴は隆々としてその存在を誇示している。
先走りに塗れたソレは月明かりの中でテラテラと黒光りしていて、手が動く度にクチュクチュとした水音を鳴らしていた。
「五右エ門・・・」
切なげに呟きながら、上下運動が益々早く荒々しくなっていく。
名を呼ぶ声。
自慰に耽る姿。
どうしても目が離せない。
それどころか名前を呼ばれる度に五右エ門も煽られ興奮していく。
無意識に生唾を飲み込んだ五右エ門の目に次元の躯が引き攣ったように痙攣するのが見えた。
「くはっ」
顎をあげて切なげに眉を寄せる。
苦痛を感じているような、快感に蕩けているような、そんな淫らな表情を浮けべながら次元は吐精した。
硬直した躯が満足気な溜息と共にゆっくりと弛緩する。
引き締まった躯を流れる汗。
首筋も唾液を飲み込み上下する喉仏も、骨ばった長い指も。
すべてが男の色気を醸し出していた。
次元は側にあったティッシュで濡れた手を拭きながらまた名前を呼んだ。
「五右エ門」
呼ばれてハッと我に返った五右エ門は次元の顔がこちらを向くのをみた。
間違いなく、その視線はドアの反対側にいる五右エ門を捕らえていた。
次元がニヤリと笑う。
(こやつ、覗いていたのを知っておったのか!?)
慌てる様子もなく愉しげにみつめる瞳をみて、即座に理解する。
なんてタチが悪い男だ。
恥かしげもなく自慰を他人にみせて、そして平然としている。
なにか一言言ってやりたかったが、五右エ門とて覗き見していた身。
文句をいえる立場ではない。
そんな五右エ門に向かって次元が手を伸ばした。
「俺に抱いて欲しくなったか?」
すっと差し伸べられた腕。
こちらに来いと、早くこの手を取れと五右エ門を誘っている。
その誘惑を最後の理性とプライドで振り切って五右エ門は叫んだ。
「そんなはずがあるか、愚か者!!それにヤるときくらいはドアをちゃんと閉めろ!!」
ギッと次元を睨みつけドアを乱暴に閉める。
近寄ってきたときとは正反対にドタドタと走り去る足音を聞きながら次元はククッと笑った。
「無防備な可愛い寝顔をみせつけられても手を出さなかったことを褒めて貰いたいね。お前をオカズにするくらいいいだろ」
次元はそう言いながらボスンとベットに寝転んだ。
ドアの隙間から自分の自慰をみつめていた五右エ門。
名前を呼ぶたびに反応していた姿が可愛い。
それに五右エ門もそれなりに興奮を覚えていたようだし。
「あともう少し・・・かな」
次元はクスクスと笑いながら満足気な表情を浮かべて目を閉じた。
瞼の裏に、強情で愛しい男が映る。
「あともう少しだ」
もう一度確認するように呟いた言葉は月光で仄かに浮かび上がる部屋に吸い込まれていった。
 
 
 
 
 

■TSHUKI-YO■
   

    
 
 
   
 ■あとがき■
『夢十夜』の続きです。
あの話の数ヶ月後の設定。
その間、五右エ門は次元に猛アタックされています。
そしてふたりは現在こんな雰囲気に。

って、あとがきで説明すんなって感じですね(^^;)
 
自慰ってる次元が書きたかっただけなのさ〜
覗いて興奮しちゃう五右エ門も萌えるよね〜と思っただけなのさ〜
と開き直ってみる。

 
 
 

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