■夢十夜 〜第七夜〜■
 
 
 

 
ドアのノブが回る音を五右エ門は聞き取った。
入ってくる人物が誰なのか既にわかっている。
「よう、五右エ門」
煙草を咥えた次元が手をあげて挨拶をしたあと、無言でソファーに座る五右エ門に向かって近づく。
じっと前だけみつめていた視界に黒いスラックスに覆われた二本の足が出現した。
「この間は愉しかったな。またヤリに来たぜ」
五右エ門は顔をあげ、自分の前に立つ男をじろりと睨んだ。
「拙者は・・・愉しくなんぞなかった」
力強い声で吐き出すように答える。
あの屈辱的な行為。愉しいはずはない。
「そうか。そうだよなぁ。ありゃレイプだったからな」
レイプという言葉を聞いてカッと頭に血が上る。
男なのに男の力に屈して好き勝手に躯を使われた怒りと羞恥が湧き上がる。
今すぐにでも目の前の男に掴みかかり殴りとばしたい。
出来ることなら斬鉄剣の露にしてしまいたいくらいだ。
だが、それはこれが現実であればの話だ。

五右エ門はこれが夢であることに気がついていた。
夢の中で夢を自覚していた。
そして夢の中で行われている次元との行為について現実世界で悩み考えていた。
次元から与えられる愛撫と快感。
性器を刺激されれば強烈な快感を受けるが、後ろを嬲られたときはなんともいえない感覚になる。
痛いのか気持ちいいのか苦しいのか。
全部のようで全然違うようでうまく表現できない。
つまり現実で知っている感覚は夢の中でも再現される。
しかし、知らない感覚は再現しようがないため脳が作り出した擬似的なものなのだ。
男に、次元に抱かれる感覚。
それはすべて五右エ門の脳が作り出したものに過ぎない。
だが、そんなことは重要な問題ではない。
問題なのはこの夢の内容だ。

次元の手が伸び五右エ門を引き立たせる。
「なぜ拙者はこんな夢をみるのだ」
抵抗せずされるがままに抱き寄せられながら五右エ門は呟いた。
口付けされ、後ろを愛撫され、性器を擦られいかされ、最後には挿入までされている。
わからない、こんなこと望んだことは一度もないはずなのに。
無意識に望んだことなのか。
泣きそうな声でいうと次元が困ったように笑った。
「いやか。死んでしまいたいくらいか」
「いやだが・・・死にたいほどではない。一番嫌なのは理由がわからないことだ」
「俺もわからない。なんでこんなにお前が欲しいのか」
次元が五右エ門を抱きしめながら耳元で囁く。
顔は見えないがその声は焦燥に満ちていて苦しそうだ。
この次元の言葉も自分が望んだことなのか。欲しがられたいと思っていたのだろうか。
自分の言葉は己で考えた自分のものだ。
だが、次元の言葉は違う。自分が無意識に言わせている言葉なのだ。
「なあ、挿れていいか」
いつの間に欲情したのか、下肢に膨らんだ次元の股間が擦り付けられる。
こんな状態になって欲しいと、抱いて欲しいと自分は思っているのだろうか。
次元は少し躯を離し、無言の五右エ門の顔を覗き込んだ。
指先で薄い唇をなぞる。
「じゃ、口でやってくんねぇ?」
意外な言葉に五右エ門は大きく目を見張った。
これも望んだことなのか?こんなことを要求され、そしてそれに従いたいと思っているのか?
驚き戸惑った五右エ門だったが、これが本当に自分が望みなのか試してみようという気になった。
どうせ夢だし、いやならすぐにやめればいい。
五右エ門は躯に絡む腕をとくと、位置を入れ替えて次元をソファーに座らせた。
「五右エ門?」
まさか本当にされるとは思っていなかったのか、次元が慌てたような声を発した。
それを無視して次元の長い足の間に跪いた五右エ門はゆっくりとジッパーを下ろした。
そっと指を差し入れ下着の中から勃起した性器を引きずり出す。
「ご、五右エ門・・・」
他人のこんな状態をこんな近距離で見たのは初めてだ。
少し戸惑うが試すと決めたから実行する。武士に二言はない。
唇を近づけ、思い切って先端を舐める。
「うっ」
次元の呻き声にゾクッとした感覚が背筋に流れた。
チロチロと舐めながら、チラリと視線をあげると次元と目があった。
「咥えてくれ」
欲情に満ちた目と声で次元は行為を強請る。
その望みの通りに、五右エ門は口を大きくあけ先走りを滲ませている性器を迎え入れた。
今まで夢で次元にされてきた所作を思い出し再現する。
括れに添って唇を動かし尖らせた舌で先端を刺激した。
口内に苦い味が広がる。肉棒の感触は意外と滑らかだ。
無心に口を動かしていると突然ぐいっと頭を押さえつけられて喉まで飲み込まされる。
嘔吐感に頭を引くと、擦るような刺激を受けたのか、次元の快感に満ちた声が頭の上から降ってきた。
こんな行為は嬉しくはないし望んでもないような気がするが、次元の快感を感じて五右エ門は興奮を覚えた。
頭を上下に振って強く刺激しながら、吸引すると次元の躯がビクビクと震えた。
「五右エ門っ」
切なげな声で名前を呼ばれた途端、性器が痙攣し爆発した。
口内に広がる液体を五右エ門は目を閉じて飲みくだす。
「すまねぇ、お前にこんなことさせちまって」
ここまでやってしまった自分に信じられない気持ちを抱きながら五右エ門が口を拭き顔をあげると、次元が罪悪感に満ちた表情でみつめている。
「五右エ門、教えてやる。これはお前の夢じゃねぇ。俺の夢だ」
 
 
 
五右エ門はハッと目を覚ました。
覚醒は突然だった。
だからなのか、最後の次元の言葉ははっきりと耳に残っていた。
 
 
 
 
 

■YUMEJUUYA-DAINANAYA-■
   

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