■夢十夜 〜第五夜〜■
 
 
 

 
気持ちのよい風が吹いている。肌にあたる日差しも暖かい。
風にそよぐ木の葉や草の音。
土と緑の匂いを嗅ぎ、瞑想中だった五右エ門は目を開け辺りを見渡した。
修行にはもってこいなほど静かで自然に溢れた場所である。
「やはり良いな」
満足気に笑って独り言をいった。
「ヲォン!」
返事をするように吼えた黒い塊に襲い掛かられて、突然のことに五右エ門はドサッと仰向けに倒れた。
驚いて斬鉄剣を掴もうとするが、すぐに自分のうえに圧し掛かるものの正体を知り伸びていた手を引いた。
フサフサとした毛並み。
ハッハッと息を吐きながら大きな舌が五右エ門の顔をベロベロと舐める。
「こら、よさぬか!」
人懐っこそうな大きな黒い犬だった。
尻尾をブンブン振りながら五右エ門の顔中を舐めまくる。
「おぬしはどこの犬だ、こら、やめぬかっ、ハハハッ」
くすぐったいのである。
遠慮ない動物の攻撃だが、悪意はないから邪険には出来ない。
五右エ門は笑いならが犬の額に掌をあて押し返した。
顔が遠ざかり舐めることが出来なくなった犬はちょっと小首を傾げたあと、五右エ門の躯を鼻先でクンクンと嗅ぎだした。
濡れた犬の鼻が五右エ門の首筋を嗅ぎ、胸元を嗅ぎ、最後には着物の合わせ目に突っ込んで嗅ぎ続ける。
「何も食い物は持っておらぬぞ?」
肌を掠る鼻先がまたくすぐったくって五右エ門はクスクスと笑う。
「残念だったな、諦めろ」
上半身を軽く起こし、まだサラシ辺りを嗅いでいる犬の頭をぐりぐりと撫でてやる。
「犬には優しいんだな」
よく知る声に問いかけられて五右エ門は答えた。
「何を言っている、拙者は誰にでも優しいぞ?」
「そうかぁ?」
いつの間に近づいていたのか近距離で響く次元の声に五右エ門は犬から目を離し顔をあげた。
が、周りには誰もいない。
「次元?」
「腹ぁ、減ってんだ。喰わせろ」
声はすれども姿はみえぬ。
首を捻って後ろを見ても勿論誰もいない。
「おぬし、どこにいるのだ?」
「喰っていいか?」
姿が隠せるような場所は近くにないというのに、次元の声だけが答える。
「食い物は持っておらぬ」
「そうか?かなり旨そうだぞ?」
「何を言っておるのだ?というか、おぬしいったい何処にいるのだ!」
姿が見えないことに焦れた五右エ門が苛苛と怒鳴った。
「ここだ」
笑いを含む低い声。
五右エ門がはっと視線をおろすと、黒い犬は消え代わりに黒い男がそこにいた。
「なっ!?」
驚きに目を見開く五右エ門だったが、すぐに襲った快感に躯を仰け反らせた。
声を抑えビクビクと打ち震えながらもう一度次元をみる。
いつの間に脱がされていたのか、袴はすでに膝元まで引き下げられている。
褌も緩み、布の横から引き出された性器の先端が次元の口の中に消えていた。
「な、なにをしているっ!?」
わざわざ聞かずとも、百聞は一見にしかずの諺通りである。
次元は何も言わず、だが応えるように強く吸引した。
「ヒッ!」
短い悲鳴を発したあと、五右エ門は震える手で股間に埋まった頭を掴んだ。
「や、やめぬかっ」
帽子が飛び、現れた髪をムンズと掴み、引き剥がそうと引っ張る。
途端に躯を縦断する痛み。
咥えていた次元が強く歯を立てたのだ。
急所へ与えられた痛みに五右エ門は呻きながらもなお次元を引き剥がそうとするが、その度に歯を立てられ痛みを与えられ、最後には抵抗する気力を奪い取られてしまった。
おとなしくなった五右エ門の性器を癒すように次元は舐めあげ音を立てて啜りあげた。
痛みの代わりに与えられる愛撫に縮こまっていた性器が反応する。
「い、やだっ」
反応してしまう羞恥と湧き上がる快感に抵抗しようと腰が揺らぐ。
尖らした舌で先端を穿られ、括れを唇で刺激され、裏筋を舐め上げられる。
巧みな舌と厚い唇の動きにとうとう五右エ門は泣き声のような細い声をあげた。
咥えた唇が歪み、笑いの形をとる。
次元は飲み込めるまでソソリたつ性器を飲み込むと、同時に流れ落ちた唾液と先走りに塗れた後孔に二本の指を捻りこんだ。
「ひっ、あぁっ」
迸る声が完全に泣き声に変わる。
差し込んだ指をまるでセックスの擬似のようにピストン運動させ、五右エ門の後孔を犯す。
次元の頭を掴んでいる両手が、押し返すような引き寄せるようなどちらともいえない動きをした。
「やめっ」
躯を捩り身悶える五右エ門への攻撃を次元は益々強くしていく。
肉欲が理性を押しのけ、貪欲に快感を欲する。
容赦ないフェラチオと体内を犯す指の動きが瞬く間に五右エ門を絶頂に追い上げていく。
「あっ、ああーーーーー!!」
悲鳴と共に五右エ門は精液を次元の口内へ迸らせた。
ぐったりと地面に沈んでいく五右エ門から次元の口が指が離れていく。
達したものの快楽とショックから抜けきれずぼんやりしている五右エ門の耳に次元の声が響く。
「やっぱり我慢できねぇや。今度はヤるぜ。もう遠慮はしねぇ」
 
 
 
リアルに響いた次元の声に、五右エ門はハッと目を覚ました。
 
 
 
 
 

■YUMEJUUYA-DAIGOYA-■
   

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