■四季の約束■
 
 
故郷から遥か遠い、この西方の地に来て幾年過ぎたのか、フロドにはよくわからない。
ただ随分長い時間が経っていることだけはわかっている。
穏やかな時間が流れるエルフ達が集うこの地に暦は必要ないが、フロドは手作りで暦を作り今日が何月何日かだけは把握していた。
もう何枚も何十枚も年の終わりに翌年の暦を作ってきた。
その枚数を数えれば何年経ったかわかるが、フロドにとって大切なのは今が何年かということでなく、今日が何月何日か、ということだった。
暦をみて、フロドは台所に向かった。
あまり加工品がない土地だからなかなか大変だが、フロドは毎年必ずチョコレートを手に入れる。
少しのミルクを温めチョコの欠片を落とす。
いくつかの欠片が溶けてなくなった頃に、暖かな甘い香り漂うホットチョコレートが出来上がった。
フロドが生まれ育ったシャイヤは冬になるととても寒い。
そんな寒い夜に飲むホットチョコレートは小さい頃から大好きだった。
体が芯から温まるし、心も同じく温かく幸せな気分になれるからだ。
以前、シャイアをこっそりと訪ねてきたレゴラスにも飲ませたことがある。
甘いものが苦手なのか半分しか飲めなかったけど、「沢山は飲めないけど美味しい」といってニッコリとフロドに微笑みかけてきた。
そのあと、レゴラスの膝に座らされ後ろから抱きしめられながら、残りの半分をフロドが飲んだのだ。
懐かしい。
そう思いながら、カップを持って窓辺に置かれた椅子に座る。
この地は温暖でホットチョコレートが飲みたくなるほどの寒さは来ない。
だが、今日は『冬のホットチョコレート』の日だ。
きっと遠くの懐かしいあの地でも、レゴラスが甘さに辟易しながら飲んでいることだろう。

春の日には、花を摘みそれを飾り愛でる。
夏の日には、太陽を仰いで同じ歌を歌う。
秋の日には、夜空を見上げ月と星を眺める。
そして冬の日には、ホットチョコレートを飲む。

同じ日に同じことしよう。
レゴラスと交わした四季の約束。

今このときにレゴラスも自分と同じことをしている。
きっと、いや絶対に自分のことを想いだしてくれている。
そう思うと、とてもとても幸せな気持ちになる。

フロドは幸せそうに微笑んで、ホットチョコレートを飲みながら遠い地にいる恋人を深く深く想った。

 
 
 

 

   
  
 ■あとがき■
バレンタインっぽいものを書こう!
とチャレンジしてみました。
あの世界観ではバレンタインなんてあるはずないので
チョコレートネタでひとつ。

ちなみにホットチョコレートの作り方は適当デス。
信じない&突っ込まないでください(笑)
    
 
 

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