「誕生日おめでとう!」
扉を開けたフロドの目に入ったのは両手を広げて満面の笑顔で立つレゴラスだった。



■バースディ・プレゼント■



突然の来訪に驚いたが、レゴラスの訪問はやはり嬉しい。
戸口に佇んだまま来訪理由を尋ねると答えはこうであった。

「今日は君の誕生日だからね。プレゼントを持って来たんだ。」
「プレゼント?」

誕生日を覚えておいてくれただけでも嬉しいのに、プレゼントを届けるためにわざわざ来てくれたのだ。
幸せでふわふわした気分になったフロドだったが次のレゴラスの言葉に我に帰る。

「うん。プレゼントは――私だよv」
「・・・・・・はぁ?」
「私を君の好きにしていいよv」

暗に含まれる意味はやっぱりいつもの如くのことで。
妖しい微笑みを浮かべるレゴラスにフロドは小さく溜息をついた。
いつもいつもレゴラスに振り回されて。
いつもいつも結局はレゴラスの好きにされてしまうのだ。
それが嫌なわけではないけれど、やっぱりなんだか悔しい気持ちになる。

だが。
フロドは何かに気がついたような顔をした。
そして暫く考え込んだあとポツリと言った。

「あの・・・なんでもしていいの?」
「ああ、勿論!」

一笑されるか呆れられるか、それとも怒られてしまうかもしれない。
と覚悟していただけにレゴラスはちょっと驚くが、フロドが乗って来てくれたことに喜んで嬉々として答えた。

「なんでも?」

フロドはチラリと恥ずかしげにレゴラスを見上げて再度問う。
その可愛らしさに、レゴラスの心臓は高鳴るばかり。
そしてつい妖しい期待が頭を擡げてくる。

「君のためならなんでもするし、なにをされてもいいよ?」

フロドの肩に両手を乗せ、甘い声でそっと囁くとフロドの頬が微かに赤らんだ。
恥ずかしげに俯いたフロドが小さな声でぽそぽそと呟いた。
それは、頭の中を整理するような自分自身に話しかけるような感じであったが、その言葉の断片はレゴラスの耳に届いた。

「レゴラスの・・・・は・・・・大きいし・・・・僕からみれば・・・立つと吃驚するくらいだし・・・」
「久しぶりだから・・・・・・最中は大変だけど・・・・・・終ったら気持ちいいし・・・」

妖しい期待は完全に確信に変わる。
行為をおねだりするフロドなんてはじめてのこと。
それもこんな朝っぱらからこんなことを言い出すなんて。
今日は家中締め切って訪問者はすべてシャットアウトして、明るいうちから愉しむのもまた一興。
フロドの誕生日だし、いつも以上に感じさせ乱れさせてあげなくては。
なんて、イヤーンな妄想で頭いっぱいのレゴラスは知らずにエルフらしからぬいやらしい微笑みを浮かべてしまう。

でもそれは一瞬で。
そんな自分にすぐに気がつき顔を引き締める。

「じゃあ、レゴラス。僕からのお願いです・・・」

肩に置かれたレゴラスの手にそっと自分の手を添えて。
フロドはちょっと潤んだ蒼い瞳でレゴラスをみつめ恥ずかしそうに微笑んだ。










夕方近くになってフロドへお祝いの言葉を送りに訪れたメリーとピピンは不思議そうに尋ねた。

「なんでレゴラスがいるの?」
「僕の誕生日だからプレゼントを届けてくれたんだよ」

ニッコリ笑ったフロドは、薄着でじっとりと汗をかいた状態だ。
その奥の部屋にレゴラスの姿がみえる。
いつも綺麗に整った髪は微かに乱れ、襟元も大きく広がっている。

「オラも吃驚しましたよ。お祝いの料理を作りに先程お邪魔したらレゴラスとフロド様が・・・」

フライパンを持ち上げて、焼いた肉をくるりと廻しながらサムがちょっと困ったように笑った。
メリーとピピンは顔を会わせた。
レゴラスが此処にいる意味はわかった。
だが、今ふたりがなぜそんなことをしているかがわからない。

「で、なんでこんなことに?」

周りをぐるりと見回して、もうひとつの疑問を問うた。
フロドが楽しそうにクスクスと笑う。

「なんでもしてくれるって言ったんだよ。誕生日の今日することじゃないけど、せっかくのチャンスだからね。
 一度始めると中々終わらないしどうしようとも思ったけど、綺麗になるのはやっぱ気持ちいいでしょ?」
「まぁ、そうだけど・・・」

気の毒そうにメリーが視線を送った先には、ホビットなら到底届かない天井やシャンデリアの裏を
一生懸命掃除しているレゴラスの姿があった。
その集中の仕方がちょっとヤケ気味にみえないことはなかったが、まあフロドがいいならそれでいいか、と
メリーのレゴラスへの同情はあっという間に四散した。

「もう少ししたら料理もできますだ。ピカピカに磨き上げた部屋でなら気持ちよく食事もできますね」

わいわいと食事の準備を手伝い始めるホビット達。
そこから少し離れた部屋では、未だレゴラスが無言で掃除を続けていた。
期待していただけに、それを裏切られたときに衝撃は大きかったらしい。

「レゴラス、もういですよ。そろそろ食事にしましょう!」

フロドは満面の笑みを浮かべて楽しげにレゴラスに声をかけた。
『僕もいつまでも貴方に負けっぱなしではいないよ』
と心の中で満足そうに呟きながら。

そして、綺麗な部屋で美味しい料理を皆で楽しみながら誕生日の夜は更けていった。










結局、深夜になってから。
フロドはレゴラスのすべてをプレゼントとして受け取ることになる。
 
 
 
 
 
 
 

   
  
 ■あとがき■
フロド誕生日小説第一段。

レゴラスのうわてを行く子悪魔フロドのお話デス。(笑)
いつまでもレゴラスのペースに嵌らずに
その行動を分析予想して振り回すフロド。
つーのもたまにはいいかな〜vと思いまして。(^^)

これは「レゴフロ限定、旦那誕生日企画」様に投稿させて頂きました。


   

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