■逢瀬■



彼が旅立ってどれだけの月日が流れただろう。
はじめの頃は一日一日を数えていたけれど。
そのうち虚しくなって数えることをやめてしまった。

私の種族と共に海を渡った彼。
私の種族と別れこの地に残った私。

愛はまだ生まれたばかりのようにこの手の中にあり。
彼の心も愛もこんなに身近に感じるのに。
私達は距離も時間も遠く離れてしまった。

寂しくて哀しくて、会いたいと思わない日はない。
愛しくて泣きたくて、この手に抱きたいと思わない日はない。





私が彼の地を離れてどれだけの月日が流れただろう。
はじめの頃は一日一日を数えていたけれど。
そのうち意味のないことだと気づき数えることをやめてしまった。

彼の種族と共に海を渡った私。
私の種族の生きる彼の地に残った彼。

愛は消えることなくこの胸の中で燃え続けていて。
彼の心も愛もこんなに身近に感じるのに。
私達は距離も時間も遠く離れてしまった。

寂しくて泣きたくて、会いたくてたまらない。
愛しくて哀しくて、彼の姿を声を思わない日はない。





でも、私達はこの世にふたりきりの存在ではなく。
私達を取り巻く沢山のものに支えられ生かされている。
だから、彼のことだけを考えて生きていくことは出来ない。
自分の役割、成すべきこと。
それを果たさずにいることは決して出来ない。
それはわかっているのだけれど。
感情は理性を裏切り愛しい人を求めずにいられない。





そんな遠く離れた恋人達が。
求める心のままに会える刻がある。





それが夢なのか、幻なのかはわからない。

でも満点の星空のもと。
ゆっくりと目を閉じて、愛する人を想い、手を伸ばすと。
そこには求めてやまない温かい躯。
指を絡ませ、引き合い、抱きしめあう。
合わさった胸からお互いの鼓動が響き合う。
指先に絡まる髪も、優しく触れる唇も。
間違いなく愛しい人のもの。

名を呼び、名を呼ばれ。
体温を分け合い、強く結びつく。

そっと閉じていた瞳をあけると。
同じように自分を覗き込む恋人の瞳。
白い顔も。紅い唇も。美しい瞳も。
逢いたくて逢いたくて。
心が壊れそうなほど望んでいた人のもの。

だけど、それは一瞬。
逢瀬は一年に一度のほんのわずかな時間。
見つめ合って、愛情の溢れんばかりの瞳や表情を確認しあったとき。
すべてが陽炎のように消えていく。

でも、それだけで充分。
愛しい人の姿と声を、何度も何度も繰り返し思い返せば。
次の逢瀬までの日々を過ごしていける。





夢なのかもしれない。
幻かもしれない。
恋する心の生む幻想なのかもしれない。
それでも、一瞬の逢瀬は恋人達に力を与える。





優しく幸せそうに微笑んで。
フロドは満天の空を見上げ流れる涙を拭った。
優しく幸せそうに微笑んで。
レゴラスは満天の空の下両手で自分の躯を抱きしめた。
そして、ゆっくりとその場を離れ。
いま自らがあるべき場所へと戻っていく。






本当の逢瀬はまだまだ遠い先のこと。
 
 
 
 
 
 
 

   
  
 ■あとがき■
テーマは『七夕』から「年に一度の逢瀬」です。

なんだこりゃーという感じに仕上がりました。
アハハハハ・・・(^^;)



   

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