バタン!!!
優しく穏やかな雰囲気に包まれた部屋に突然割り込んで来た音。
その大きさに驚いて、ふたりはその音の方を振り向いた。
 
 
 
■Kiss Me(後編)■
 
 
 
部屋の扉が大きく放たれていて、そこにはひとりの男が立っている。
逆光の中に立つその男はとても美しかった。
すらりとした痩身と日を受けて光る金色の髪。
身に着ける衣服やその顔の造型から言ってエルフという種族以外何者でもないだろう。
病床にあったファラミアはまだ会ったことはなかったが、王となる男がエルフの友人を連れて来たことは聞いていた。
きっとそれが彼のことなのだろう。
不老不死の体を持ち、年を増すごとに知識の輝きを身につけるエルフ。
美しく穏やかな種族だと聞いていたが、この目の前の彼は。

「レゴラス?」

フロドが小さく名を呼ぶと、扉の前に立つ男、レゴラスはつかつかと寝台の方へ歩み寄って来た。
表情のない美しい顔。
しかしその緑色の瞳にはなんともいえない怒りの色があった。
レゴラスは寝台の傍まで来ると、脇で跪くファラミアに冷たい視線を送った。
ザッと鳥肌を立てファラミアはその場から後ろへと飛びのいた。
自分に向けられた強い殺気を感じて反射的に体が動いたのだ。

なぜ彼がこんなに怒っているのかがわからない。
初対面である彼に殺されるほど憎まれる理由はないのだ。
ファラミアは立ち上がり、更に数歩引いた。
フロドを助けるべきかとも思ったが、自分に対する殺気の強さが近づくことを躊躇わせた。
それに彼はフロドに対して殺気は持ってはいない。

フロドもまた戸惑っていた。
無言ではあるがレゴラスがこれ以上ないというほど怒っていることがわかるからだ。
でも、理由がわからない。
ファラミアと再会の喜びをわかちあっている最中に。
ノックもせずにいきなり部屋に飛び込んで来て怒られたって何がなんだかわからない。
そんなフロドの様子がレゴラスの最後の糸を切ってしまった。
理性という名の糸を。

レゴラスはフロドの顎を掴むと仰向かせた。
くいっ、と上向いた途端に噛み付くように口付けする。
驚き目を見開いているフロドに構わず、顎を掴む指に力を込め唇を開かせると遠慮なく舌を差し入れた。
勢いのままレゴラスはフロドを寝台に押し倒す。
口腔内を這う熱い舌の動きと流れ込んでくる唾液にフドロはようやく我に返った。
顔を背けようにもぎっちりと掴まれていて動かすことも口を閉めることも出来ない。
ならばと両手でレゴラスの体を押しのけようとした。
何度も何度もぐいぐい力を込めているとレゴラスの体が動いた。
開放の予感に更に力を込めようとした途端、レゴラスの両手がフロドの両手首を握り頭の上で一纏めにした。
顎からレゴラスの手がなくなり、顔を背けようとするが唇がそのまま追ってくる。
口付けから逃れ切れないうちに再びレゴラスに顎を掴まれて顔を元の位置に戻されてしまった。
さっきまで自由だった両手は一纏めにされ大きな手に寝台に押さえつけれいる。
抵抗がまったく出来なくなってしまった。
体全体はレゴラスの体重で抑え込まれ、両手は拘束され、顔を動かすことも出来ない。
今フロドに出来ることと言えば、レゴラスの口付けを受けることだけだった。

レゴラスの舌がフロドの口腔内を蹂躙していく。
歯列を舐め、舌が這い回る。
時に激しく、時には掠るように優しく、口内のあらゆるところを舐められる。
絡んだ舌がフロドの体の奥の情欲の火を灯していく。
舌を吸われレゴラスの口内に導かれ、舌を噛まれた瞬間強い快楽がフロドの体を貫いた。
新しい空気がなかなか吸えなくて意識が朦朧としてくる。
とちらかのかわからない荒い息と舌を絡ませる水音が頭の中で響き渡る。
何度も何度も飲み込んだが、どうしても飲み込めきれない唾液が混ざり合って項を流れ落ちていく。

「んっ・・・ぁ・・はぁ・・・・・・く・・・ぅん」

耐え切れないというようにフロドから絶え間なく甘い喘ぎが洩れる。
声にならない嬌声が塞がれた口から洩れてくるのだ。
官能の篭った喘ぎ、フロドが昂っていくのがわかる。
最初はあったはずの抵抗は既になく、レゴラスの思うがままに翻弄されている。
理性も意識も溶けてしまっているのがわかる喘ぎ声。

ファラミアは数歩さがったままの姿でぎっちりと固まってしまっていた。
目の前で展開されているふたりの口付け。
くちゅくちゅという水音が淫らに響いている。
荒い息遣いと洩れるフロドの喘ぎ声にファラミアは呆然としていた。
フロドを助ける、という意識はなぜか湧いてこない。
どうみても恋人同志にしかみえないし、それもこの展開は痴話喧嘩系だ。
男同士で恋人関係、というのも驚きの一因でもあるが。


どれだけ時間が経ったのか。
一際大きい嬌声と共にフロドの体が跳ねて大きく仰け反り、その後ゆっくりと弛緩した。
ようやくレゴラスが体を起こし、フロドの体と唇を解放する。
寝台に横たわるフロドは荒い息を吐き涙を流しながら、くったりとしている。

成すすべもなく呆然と一部始終を見ていたファラミアをレゴラスが振り返る。
先ほどの無表情と違い満足気な微笑みを浮かべたレゴラス。
はっ、と我に返ったファラミアにレゴラスが声をかけた。

「悪いけど部屋を出て行ってもらえるかな?フロドに着替えをさせなくちゃいけないからね。」

部屋を横切り奥にある物入れから下穿きを取り出したレゴラスをみてファラミアは顔を軽く染めた。
フロドの様子と取り出された衣服で、その意味を悟ったのだ。

「あ、ああ。わ、わかった・・・」

あたふたと扉に向かうファラミアの後ろでレゴラスがフロドに優しく声をかけている。

「そのままじゃ気持ちわるいだろう?フロド。着替えさせてあげるから・・・」
「・・・・・・ん?」

シーツを剥ぐ音に混ざってフロドの小さい声が聞こえる。
ファラミアが慌てて部屋出て、後ろ手で扉をバタンと閉めた瞬間。
部屋の中で泣き声の混ざった大声とガシャンと物が割れる音が響いた。
ドタン、バタン、ドン、ガシャン。
派手な音が鳴り続ける中、レゴラスの必死に宥める声が聞こえるが、それを遮るようなフロドの叫び声。

「レゴラスの馬鹿ーーーーーーーーーーーーー!!!出て行けーーーーーーーーーー!!!」

危機一髪、扉の前にいたファラミアがひょい、と体を避けた途端に扉が大きく開かれて
髪を乱してあちこちに傷を作った挙句、水浸しのレゴラスが飛び出してきた。
中で何があったか一目瞭然。

「また、落ち着いた頃に出直してくるよ。」
「もう来るな!!ばかーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

飛んでくる本をヒョイと避けながら、レゴラスは扉を閉めて飛ぶように逃げていった。




残されたファラミアは暫く閉められた扉をみつめていた。
今入ればフロドに恥をかかせるだろうと大きく溜息を吐く。
とりあえずフロドが元気そうなのがよくわかった。
またゆっくりと会いに来ればいいだろうと、女官に少し時間を置いてからフロドの部屋を片付けにいくように頼み、
ファラミアは自室へと足を向けた。
 
 
 
 
 

   
  
■あとがき■
今回のテーマはふたつ。
「嫉妬するレゴラス」と「キスだけでイっちゃうフロド」

私には自分からキスしてくれないくせにあの男には!
って感じで嫉妬メラメラ。
きっと彼は扉の外から中を伺っていたのでしょう(笑)
はじめは旧知との再会を邪魔しないように、
とか思って遠慮してたんだけど、キスでブチッっと。

嫉妬メラメラのキスはさぞかし激しかったことでしょう。
キスだけでイっちゃうくらいには(ニヤリ)
そして。
体を愛撫されているわけでもなく
ただキスだけで感じて達してしまうフロド
つうのを書いてみたかったのです〜

阿呆ですか?(^^;)

   

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