ベリーダンスの夜は熱いぜ
  
BY むぎ様
 
 


風呂から上がっても、まだ五右ェ門は不機嫌なままだった。

「おい、五右ェ門。」

リビングから掛けられた声にも、「なんだ」とむっつり応じる。

「明日の準備はできてるのか。」

侍の機嫌に頓着する様子もなく、朗らかに問いかける次元を、侍は睨めつけた。

「ルパンが全部済ませているだろう。拙者が準備することは特にない。」
「そいつはまずいんじゃねえか。」

思いもよらぬ真面目な声に、つい五右ェ門は釣り込まれた。

「まずいとは、何が。」
「見せてやる。来いよ。」

自室に戻りかけていた足の向きを変え、侍がリビングに入ると、次元はノートパソコンを立ち上げた。

「見てみな。お前が明日やるのはこんな踊りだぜ。」
「・・・これは・・・・・・、」

ベリーダンスとかいうトルコの舞踊の動画を眺め、侍は絶句する。腰と腹をさらけ出し、激しくくねらせるダンサー達の舞踊は、男女を問わずこの上なく扇情的で淫靡だった。

「このような破廉恥な舞を、拙者が・・・、」
「おいおい異文化を頭から破廉恥と決めるのは狭量ってもんだぜ。日本の銭湯だって、俺に言わせりゃ相当破廉恥だ。」
「む・・・。」
「それに、明日はお前が敵のボスを叩けるかどうかにかかってんだ。踊り子として怪しまれずに近づいてもらわなきゃな。破廉恥だの何だの言ってる場合じゃねえ。」
「・・・・・・。」

抗弁もできず、五右ェ門は黙りこんだ。次元がす、と立ち上がる。

「練習するか。なんなら付き合うぜ。」
「・・・うむ。かたじけない。」

答えるや否や夜着を剥ぎ取られ、五右ェ門は仰天した。

「次元!? 何をする!?」
「だから、練習だよ。」
「これのどこがれ・・・、むぐ・・・!」

唇を塞がれ、五右ェ門はもがいた。強引な手つきで次元が褌ごと股間をまさぐりだす。ソファに座らされ、無理やり開かされた脚の間を激しく愛撫されて、とうとう緩んだ褌の横から五右ェ門のものがこぼれ出た。既にそそり立ち、少し濡れているそこを見つめ、次元がごくりと喉を鳴らす。

「次元・・・、何を・・・、あ!?」

大きく開けた口にひと呑みにされ、五右ェ門は堪らず喘いだ。ぬぶぶぶ、と唇を滑らせて一旦それを離した次元が、わざと先端を微かに舐めながら、侍を見上げる。

「俺は動かねえ。五右ェ門、お前が動かすんだ。」
「この・・・、たわけめ・・・、これが練習になど・・・、っく!」

また丸呑みにした次元が、今度は目だけで五右ェ門を促す。動かさないと言ったくせに、口の中で五右ェ門の敏感な先端だけを次元は舌先でつつき始めた。溢れ出る先走りを舐め取っては、尖った舌がまたそこをツンツンと刺激する。たまらない。自分の吐く息がどんどん激しくなっていくのが我慢できなかった。
耐えきれず腰を引き抜こうとした瞬間、

「はぁ!」

急にすぼめられた次元の唇にものを締め付けられ、侍の口からあられもない声が上がった。完全に抜くより先に、次元がまた根元まで侍を飲み込んでしまう。引き抜こうとするたびに強く絞り上げられ、逃れようとして五右ェ門は腰を引き続けた。

「んふ・・・、ふ・・・!」

息を荒げて次元が見上げる。
言うな、次元。分かっている。
目を閉じ侍はのけぞった。もはや自分は引き抜こうとして動いているのではない。すぐそばにある絶頂を求めて、この腰はよがり狂っている。

「んっ・・・、んんん・・・!」

爆ぜるように放出した瞬間、硬直した体を次元がしっかり抱き締める。一滴残らず搾り取ってからじゅぽ、と唇を離し、再び侍を抱きすくめた。

「かなりヤらしかったぜ、五右ェ門。」
「馬鹿者、これのどこが・・・、」
「練習になってねえか? じゃあ、部屋でもっと特訓するか。」
「・・・・・・。」

立ち上がり、次元が手を伸べる。馬鹿げたことだと分かっているのに、その手を取ってしまっていた。火をつけられた体が求めているのは、もちろんもう特訓などではない。




男の部屋のいつもの引き出しから、次元がボトルを取り出す。べッドに腰かけた男がその浅黒い手にローションを垂らすのを、五右ェ門はぼうっと眺めていた。

「・・・ほら、ここ。」

どうして抵抗できないのだろう。促され、両膝の上に大きくまたがるように腰を落とす。途端に次元の両膝が開いた。

「あっ・・・、」

自然、開かされることになった五右ェ門のまたぐらを、濡れた手が撫で回す。

「くっ・・・、次元・・・、」
「たまんねえ・・・、その声・・・、」

煽られたように、次元の指が激しさを増す。既に熱く充血しているすぼみに指があてがわれ、むずむずとそこをこね回した。たまらず男の首元にしがみつくのと同時に、指が入ってくる。

「     !!!」
「動いて、みろ・・・、五右ェ門・・・、」

甘く切羽詰ったような声が、五右ェ門を意のままに操ってしまう。快感をまさぐるように腰を波打たせると、再び勃ち上がっていた自らのものが次元のスラックスに当たり、そこに大きな染みを作った。ギンギンにいきり立っている次元のものへの摩擦と、ぐちょぐちょと音を立ててこすられる自らの中の刺激に、頭の中が弾けてしまいそうだ。次元の首に手を回したままぐっとのけぞると、尖った乳首に男が吸い付いてきた。

「じ・・・・・・!」

もう喘ぎ声を抑えることもできない。跳ねるように激しく上下する五右ェ門の腰に合わせて、次元の指がぐっぽぐっぽとそこを掻き回す。両方の乳首を舐めしゃぶった後、男が寄せてきた唇に、侍は自ら吸い付いた。また自分だけ、イカされてしまう    、

「〜〜〜〜!!!」

長い絶頂に体をびくんびくん震わせ、次元のシャツに押し付けるようにして侍は果てた。ぐにゃりと床に倒れこみそうになるのを抱きとめ、次元がベッドへ横たえさせる。ベルトの音がした。すぐに体を引き起こされた。
ほとんど何も考えず、横になる次元に跨った。暴発寸前のものに軽く手を触れただけで、男が荒い息を吐き出す。穴にあてがった先端が熱い。沈み込み、開かされながら五右ェ門は声を上げ、男の唇を求めてかがんだ。

「・・・ふ・・・・・・、」

互いの舌を絡ませながら、2人の腰が同時に揺らめきだす。早くも一番奥まで届いた次元が、入口近くまで戻ってはまた最奥を突き上げる。今は頼むから気持ちいいかと聞くな、と侍は請い願った。いま聞かれると答えてしまう。男の脇の辺りに両手を付き、恥も外聞もなく侍は腰を振り立て続けた。
不意に両腕を掴まれ、我に返った。

「     じ・・・?」
「・・・もっと・・・、よく見せてくれ・・・。」

意味を理解する前に、腕を後ろに回され、次元の体の上でのけぞるような格好にさせられた。次元の腹の上で両脚をがば、と開かされ、ぐしょ濡れの陰茎も突っ込まれ拡がった穴も、すべて晒される。

「やめ・・・、じげ・・・、」
「動いてくれ・・・、頼む・・・、」

乳首に次元の手が伸びる。優しく揺するような腰と乳首をくすぐる指の動きに、葛藤も羞恥も甘く押し流される。何より、うわずったような男の顔が五右ェ門を煽った。

「・・・・・・。」

黙って腰をくねらせ始める。次元の「うお・・・」という声が、また五右ェ門を掻き立てる。

「すげえ・・・、やらしい・・・五右ェ門・・・、」

乳首をつまみ上げられた瞬間、スイッチが入った。

「次元・・・、拙者、また・・・!」
「いいぜ・・・、イケよ・・・。」

次元の両腿を掴み、ほとんど天井を仰ぐようにして五右ェ門は腰を振った。頭の中が焼ききれたような感覚と共に何もかも解き放った瞬間、

「もう・・・、ダメだ・・・!」

押し倒され、脚を抱え上げられた。朦朧とした意識が、脳天にまで届く次元の一撃でまた覚醒する。ガツン、ガツンと音がするくらいの激しい交合に、五右ェ門はもがき狂い、声を上げた。次元も咆哮を上げる。熱いものが注がれたのと同時に、五右ェ門は意識を手放した。




唇の感触で、目を醒ました。頬にキスする次元の額にまだ汗が光っているところを見ると、五右ェ門が放心していたのはほんの数分らしい。

「これでバッチリだな、明日は。」

一瞬、何のことだか分からなかった。すぐに思い出し、「このたわけ」と次元の頭を引き剥がす。

「何が練習だ。お主はただ性交がしたかっただけではないか。」
「じゃあお前はずっと練習のつもりでやってたってのか?」
「     、」

返事に詰まり、五右ェ門は背を向けた。「もう寝る」と言う侍を、次元が後ろから抱きすくめる。

「      あのダンスの役に立つぜ。お前が思っている以上にな。」
「・・・・・・。」

到底そうは思えなかった。五右ェ門の頭を撫でながら、「気持ちよかったか、五右ェ門」と次元が囁く。少し考えてから、小さな声で言った。

「今は、気持ちがいい。」
「そりゃよかった。」

とろとろとしたまどろみが押し寄せてきた。



     *



翌日、満席の観客の前で舞踊を披露しながら、五右ェ門は激しく後悔していた。
ベリーダンスの動きを真似て体を動かすたびに、昨夜のことが鮮明に脳裏に浮かぶのだ。

      こんなことでは・・・!

ステッキに見せかけた斬鉄剣を手にして踊りながら、これでは客にもターゲットにもばれてしまうのではないかと五右ェ門は気が気でなかった。あの恥ずかしい情交をとにかく頭から追いやらねば。浮かび上がる昨夜の痴態を振り払い、必死に舞に集中しようとした。

五右ェ門は理解していなかった。
踊り子から立ち昇るえも言われぬ官能に、観客全員が釘付けになっているのを。

ステージ奥からそれを眺め、次元は独り笑う。
もったいねえな、あんなの皆に見せるのは。
できることなら正面で見たかったが、まあ、いいさ。
仕事が始まるまであと数分。
客は想像もしていないだろう、五右ェ門の葛藤を想像し、その短い時間を次元は心ゆくまで楽しんだ。



おわり







    

 ■むぎさま■
 
2010年7月3日〜10日までの7泊8日で、むぎさんとトルコ旅行に行ってきました!
トルコ最終日のイスタンブールの夜。
中近東では有名なベリーダンスショーを鑑賞しました。
妖艶な腰の動き。しなやかに動く四肢。
イスタンブールでも有名なダンサーの踊りを存分に楽しみました。

そのとき特別な会話を交わしたわけではないけど
同じ腐脳を持つジゲゴエスキー同士。考えることは一緒です(^^)

帰りの飛行機の中や成田空港でスケブにお絵描きしたり、
ベリーダンス練習妄想トークを繰り広げたんですが、
なんとその妄想を元にむぎさんが書いてくださったのが、コレ!!


た ま ら ん ば い ! ! (ハアハア)


行って良かった、トルコ!!
書いて良かった、スケブ!!
いやー、本当にトルコっていいもんですねぇ(評論家風)



むぎさま、素敵小説をありがとうございました!
 
 
 

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