思い出はいつも美しく
  
BY 響様
 
 


俺がまだ駆け出しの殺し屋だった頃の話だ。まだ青かった俺が世間に名を売り込もうと躍起になり、調子に乗って手を出したのが伊賀忍者の頭領だった『百地三太夫』。
ところがだ、館のからくりにまんまと引っ掛かり、手下どもに追われる羽目になった。
弾も切れ、刀傷でボロボロになった俺は命からがら紫陽花の木の下に逃げ込んだ。
こりゃあもうだめかと思ったとき、一人の女の子が飛び込んできた。おかっぱ頭で利発そうな顔をした可愛い女の子で、黒目がちの瞳でただ俺をじっと見つめていた。
その時、追手の足音が聞こえ、俺が身を硬くすると、その女の子も足音に気付いたのか、踵を返して去って行った。
『どうしたのだ、青龍』
『賊が忍び込んだ』
俺はあの女の子が、俺がここにいることを告げるのではないかとひどく怯えていた。
『いや、見なかった』
『本当か?』
『ああ。でも、あっちの方でなにやらカラスが騒いでいたが…』
『わかった。見つけたら直ちに俺に知らせろ』
そうして追手の足音が遠ざかると、その女の子が戻ってきた。
何も言わずに腰に下げた竹筒から水を飲ませ、手拭いを裂いて腕の刀傷を手当てしてくれた。
「疾く行け。今ならまだ逃げ切れる。」
そう言って俺のもとから去って行った。

・・・・・・・・・

「で、次元よ、お前の回想はよ〜く分かった。昔、お前を助けてくれた子があいつだということもな。わかったが…何か根本的に間違ってないか?」
「何がだよ?」
回想に浸っていた次元に水を差すつもりはなかったが、ルパンはどうしても次元の話に突っ込みたかった。
「それがさっきの13代目『石川五右エ門』だとしてよ。その子は女の子じゃないんでねえの?」
「いいや!ぜったい女の子だった。」
次元はきっぱりと言い切る。
「んだってよ、『五右エ門』っていったらほら、普通、男の名前だよな。」
「名前を継ぐだけなら男も女もねえよ。」
「日本じゃあんまし女が襲名するってことは無いんじゃねえか?」
「何か事情があんだろ。」
「でもよお〜単に袴って恰好は…」
「剣術をやっているんだ、その方が動きやすいだろ!」
「背、高過ぎねえか?」
「あんなの、いくらでもいる!」
「声、低かったよな。」
「低くて悪いか!」
さらにルパンの追及が続くが次元も一向に引かない。
「大体、あんな透き通るような白い肌の色をして、肩まで届くさらさらの黒髪、紅をさしたような唇に切れ長の目をした男がどこにいるんだよ!」
『五右エ門が女である』と頑なに信じ切っている相棒にこれ以上いっても無駄だと思い、ルパンはさっさと五右エ門が捕らわれている地下牢へ急いだ。

薄暗い地下牢で一人五右エ門が部屋の真ん中で正座していた。
頭の中で師である百地の言動について考えていた。何故養子縁組などというものを結ぶ必要があるのか。父の形見の「とんぼ玉」のありかを聞き出そうとするのか。いままで信じて師事していた百地に対する不信感が募る。どれもこれもあの女がもってきた話だが…
「誰だ!」
音もなく目の前に現れた二人組に目を凝らす。
「泥棒です。」
「泥棒?こんなところに、そなたらの盗むようなものは何もないが?」
ルパンが次の言葉を発する前に、次元がつかつかと五右エ門の目の前にやってきた。そして、徐に五右エ門の来ている単の襟をつかんで思いっきり開いた。
「無え…」
ぽつりと次元が呟く。
「なんで胸が無えんだよ!」
単の下は晒を巻いた胸が現れた。どんなにきつく巻いても、女であったら胸のふくらみぐらいわかるはずだが、そこにはまっ平らな男の胸しかなかった。
五右エ門は『ハトが豆鉄砲を食った』ような顔をして固まった。5秒後、ようやく己の身に起こったことに気付き、慌ててこの無礼な男を突き飛ばし、後ずさりして襟を閉めた。
「な、何をす…」
顔を真っ赤にし、ぱくぱくと魚の口のように動かすだけで、満足に反論もできない。
その間にルパンは次元を羽交い絞めにし、五右エ門から遠ざけた。
「じげ〜ん!やめろ!何やってんだよ!」
「うるせえ、放しやがれ!」
次元はルパンに引き留められながらも涙目で五右エ門に食ってかかる。
「ちくしょう!俺の…俺の…淡い思い出が〜〜〜!」
「ちょ、それよりも、いきなり胸見る奴がいるか?」
「それは、お前が『男だ』と言い張るからだろ!」
「本当に女だったらどうするんだよ。人のせいにすんじゃねえ!」
ようやく落ち着きを取り戻した五右エ門は、二人のやり取りから自分が「女」であると間違えられたことに気づいた。加えて、先程の次元の無礼な振舞いに怒りが込み上げてきた。
「お主ら、拙者を愚弄する気か!」
「なんだと!?騙したのはお前の方じゃねえが!おう、上等だ。表へ出ろ!」
「まて、次元!早まるな〜」

『十三代目石川五右エ門を仲間にして初代石川五右エ門の宝をいただいちまおう』というルパンの作戦は、果たしてうまくいくのだろうか。

(END)




    

 ■響さま■
 
拙宅の10万打祝いに頂きました!


「カリオストロの城」のパロだそうです。
五右エ門が無理なくクラリスポジションになってますね!

養子縁組って・・・
まさか親子縁組にみせて、ホモCP特有の縁組では!?
なとど一瞬、モモゴエ色に染まりそうになりましたv<バカ

ルパンの突っ込み「女だったらどうするんだ!」通りの、胸タッチ。
次元は一気に奈落に落ちたでしょうなぁ(ぷぷぷ)
いくら綺麗な思い出フィルターがかかってたとはいえ
オンナにも間違えられる五右エ門って・・・萌v


響さま、素敵小説をありがとうございました!
 
 
 

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