俺の下で女が喘いでいた。
 腰をグラインドさせ、快感を貪る。
 女の膣は程よく俺自身を締めつける。
「いくぞ!!」
 俺は自らの精を女の中にぶちまけた。
 女も嬌声を上げ、達したようだ。
 深く息をして満足げに微笑んでいた。

「ねぇ」
 女が言った。
「スキンを着けてみない?」
「俺は直が良いんだ。スキンは感度が鈍る」
「すごいスキンがあるの。あそこの感覚を何十倍にも高められるそうよ」
「本当か?」
「ねぇ、試しに着けてみない?」
「しゃぁねぇなぁ。そこまで言うんなら着けてやるよ」
 女はいそいそと枕元からケースを取り出した。
「これは『Vスキン』といって特殊な加工がしてあるの。着け方にコツがいるからあたしに任せてくれない?」
「好きにしろ」
 俺はベッドに仰向けに転がった。
 女は俺の股間に潜り込んだ。
 スキンをムスコに被せる。
 先端から根元まですっぽりと被われた。
 さらに…
「なんだよそれは?」
「これが、このスキンの特徴なの。袋からお尻の穴まで被い尽くすのよ」
 玉袋がスキンに包まれる。
 そして、尻の穴に終端が挿入された。
「薬が廻る間、少し痛いかも知れないけど我慢してね」
 その途端、ぎゅっとムスコが締めつけられた。
 それはぎゅうぎゅう押し込めるようにムスコの頭から根元まで全体を締めつけるのだ。かなりの痛みを伴っている。
 俺は天上を見つめ、その痛みに堪えた。

 やがて、ふっと痛みが消えた。股間に痺れが残っているが、スキンの装着感も全くなかった。
「じゃぁ、いくわよ」
 俺の股間に潜り込んだ女が言った。その直後、亀頭の先端から強烈な刺激が俺の身体を貫いていった。
「うっ!! あうっ!!」
 俺は思わず声を上げていた。
「どお? 凄いでしょう?」
 それは、痛みと快感を伴った強烈な刺激だった。確かにスキンを着ける前の数十倍の刺激があった。
しかし、それ以外には何も無い。股間にその存在を主張するムスコの憤りが感じられないのだ。
女は更に刺激を繰り返す。次第に俺の股間が熱くなっていった。
 汗が吹き出るように湿度が高まる。

 たらりと股間を雫が溢れた。

「そろそろ良いようね。じゃぁ、次に行くわよ」
 女は尻の割れ目から指を滑らしてきた。お尻の穴を通り越す。
 湿り気を帯びた股間に女の指が突き立てられた。
「???????」
 女の指が俺の胎内に潜り込んでいた。
 女は指先を曲げ潤った肉壁を撫で廻す。
 それは『男』にはある筈のない器官だった。

「あうっ!! う〜〜っ!!」
 俺は声を上げていた。Gスポットと呼ばれるのであろう所を刺激されたのだ。
 女の指は確実に快感のポイントを責めたててくる。それは『女の快感』なのだろうか?
 俺は女のように喘ぎ、悶えていた。
 果てる事の知らない快感の渦に呑み込まれてゆく。

 頭の中が真っ白になった…

 俺はしげしげとそれを眺めていた。
 俺の股間からムスコの姿は消えていた。
 替わりに女の肉襞がそこにあった。
 さらにその奥には膣まで形作られているのだ。

 気がついた時、女の姿はどこにもなかった。
 Vスキンのケースだけがそこに残されていた。
 ケースには注意書きがしてあった。
 ・Vスキンを外すには専用の剥離剤が必要
 ・一度外したVスキンは再使用できない
 ・Vスキンを長時間着用する場合は排泄物が残らないように清潔を保つこと

 そんな注意書きを読んでいると、途端に尿意を覚えてきた。
 Vスキンを外せない事を覚悟した俺は便器の前で一瞬躊躇したものの、便器の上に座った。
 張っていた気を緩めると、股間から小水が迸った。
 ウォシュレットのダイヤルをビデに合わせ股間を洗浄した。
 ペーパーで股間を拭う。
 ムスコが居ない侘しさがこみ上げてきた。
 部屋に戻り、服を着た。
 鏡に映る俺はいつもの『俺』だった。
 その股間が『女』になっていることなど想像もつかない。
 Vスキンのケースをポケットに入れ、俺はその部屋を後にした。

 ようやくVスキンの剥離剤が届いた。
 かなり大きな箱で届けられた。
 開けると送付状と思われる1枚の紙切れの下に、待ち焦がれた剥離剤があった。
 しかし、箱の大半のスペースは『試供品』と印刷された箱に占められていた。
 さらに、その下には分厚い通販カタログが入っていた。

 俺は案内状に目を戻した。
 御買上有り難う御座いますの月並みの挨拶文に続いて、
『Vスキンの剥離の前に是非とも弊社の試供品をお試し下さい。今までにない快感を得ることができます。』
 とあった。
 その試供品の箱を開けると、中から出て来たのはバイブレータだった。
 ただで貰えるものであっても、男の身体では使い道がない。(一部の特殊な嗜好の人たちは除くが…)
 せっかくだからと、俺はVスキンの剥離を明日まで延期する事にした。

 そして夜が来た。
 シャワーを浴び、丹念に股間を洗い流す。
 なにも無い股間。
 それも、今夜までだ。
 そして、最後に味わう未知の快感…
 考えただけで、俺の股間が潤んでいた。

 ベッドの上でバイブを手に取る。
 初心者?向けか、幾分か小振りに出来ている。
 既に俺の股間は準備が済んでいる。
 バイブを逆手に持ち替え、仰向けに横たわる。
 膝を立て、股間を広げる。
 その先端を割れ目に押し当てた。
 ズブズブと抵抗らしい抵抗もなく、俺の胎内に滑り込んできた。
 殆ど根元まで挿入された。
 俺は身体の中にその存在を感じていた。
 そしてスイッチを入れる…

 一瞬の事だった。堤防が決壊するように、快感が一気に押し寄せて来た。
 言葉に表現する暇もない。俺の下腹部を起点に快感の洪水が全てを押し流していった。

 ヴ〜〜ンと微かな音が聞こえる。
 静寂が訪れていた。
 その微かな音だけが、俺の内から漏れ出している。
 その音と供に、心地好い振動が伝わってくる。
 アタシの内でそれは蠢いていた。
 膣壁を、子宮を、骨盤を通して快感が伝わってくる。
 これが『女』の快感なのだ。
 アタシは快感の波に揺られ、再び微睡み始めた。

 目覚ましの音に起こされた。
 俺は身体にこびりついた汗と体液を冷たいシャワーで洗い流した。
 そのままトランクスを穿いた。
 まだ、股間はVスキンを装着したままだ。
 俺は剥離剤をごみ箱に投げ込んでいた。
 替わりに通販カタログで「立ちションの出来る疑似男根」を注文していた。
 これで昼間の間は『男』として生活できる。
 逆に『夜』になると、俺はどんどん『女』に近づいていった。
 通販カタログで様々なアイテムを購入してゆく。
 リアルバスト
 女顔マスク
 音声変換機
 生理体験剤
 体格補正下着
 :
 :

 俺は通販のカタログを手放せなくなっていた。

 俺は街を歩いていた。
 若い男が声を掛けて来る。
 俺の事を『女』だと信じて疑わない。
 ホテルのベッドで、俺は男に抱かれていた。
 挑発するように喘いでやると、男は快感を貪るように腰をグラインドさせる。
 俺は膣の力を巧みに操り、程よく男の男性自身を締めつけてやる。
「いくぞ!!」
 男は自らの精を俺の中にぶちまけた。
 俺も嬌声を上げやる。
 そして深く息をして満足げに微笑んでやった。

「ねぇ」
 俺が言った。
「スキンを着けてみない?」
「俺は直が良いんだ。スキンは感度が鈍る」
 以前の俺と同じ事を言っていた。
「すごいスキンがあるの。あそこの感覚を何十倍にも高められるそうよ」
「本当か?」
「ねぇ、試しに着けてみない?」
「しゃぁねぇなぁ。そこまで言うんなら着けてやるよ」
 俺はVスキンを取り出した。
(これでお前もVスキンの虜になるんだ…)
 俺は『女』になったこの男の姿を想像しながら、男の股間にVスキンを装着していった。
 薬が効き始める。
 男は痛みを我慢していた。
 そしてVスキンが定着する。
 男の股間は『女』になった。
(さぁ、新しい世界を見せてやるよ…)
 俺は生まれ変わった男の股間に優しく触れた…

−了−


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