「俺をどうしようというのだ」
スパイとして敵国の秘密基地に入ったものの、捕らえられて自白を強要された後で、
男は薄暗い部屋へとつれてこられた男は、暗闇に向かって叫んだ。
『もう君には、情報提供者としての価値は無い。今の君にあるのは、実験材料としての価値だけだ』
スピーカー越しに、尋問の時に聞いたことのある声が響いた。
「実験材料、だと!?」
『そうだ。君が潜入した目的である、我々の秘密兵器の実験台になってもらうのだ』
皮肉めいた言葉が終わると同時に、部屋の一角にあった扉が開いた。
ぐちゅ、ぐちゅ。
滑(ぬめ)るものを引きずるような音を立てながら、そいつは近づいてきた。
『紹介しよう。君にちかづているのが、実験生命体8号だ』
薄暗い中に見えるそいつの姿は、巨大な蛸のように、何本もの触手を持った生き物だった。
『そいつの元になった生物には、面白い生殖能力があってね。
もともとそいつは雌雄同体で自分自身で受精卵を作れるものの、それを育てるための器官が無いのだ。
そのため、他の生物の子宮へと受精卵を入れて、そいつの体内で成長させるのだ。
さらに面白いことに、手ごろな子宮を持つ生物がいない場合は、相手の体を改造して、強制的に子宮を作り上げてしまうのだよ』
「そんな生き物がいるはずがない」
『いるのだよ。君の目の前に。しかも、我々はその生物をさらに改良して、対人間用にしてみたのだよ』
「ま、まさか」
確かに、今回の潜入に当たって、敵が生物兵器を研究しているとは聞いていた。
そう思ったところで、男はこれから自分の身に起ころうとしていることを想像して恐怖した。
『どうやら、何が起ころうとしているか分かったようだな。では、楽しませてもらうよ』
言葉が終わるなり、男に触手が絡み付いてきたのだった。
「うぅ」
触手は男よりも大きく、そして素早かった。あっと言う間に男は触手に絡め取られる。
離そうとしてもその力は強く、引きちぎろうとしても弾力があり不可能だった。
体中を触手が這い回る。
それと同時に、触手から湧き出る粘膜がまとわりつき、そして体へと染み込んでいくような気がした。
「うわ……あ……」
粘膜が触れた部分の筋肉が、ひくひくと痙攣するのが感じられた。
『まずは、体の変化が始まっていく』
絡まっていた触手が、股間の辺りに集中し、そしてペニスへと集まっていく。
滑らかな触手に絡み付かれる感触は、これまでに感じたことのないものだった。
普通だったら、快感を感じるはずなのに、しかし男のペニスは、それとは逆の反応――だんだんと小さくなっていくのだった。
「ば、馬鹿な……」
『驚いているようだね。男の生殖器は、あいつらには不要だ。だからそうやって、男の生殖器を無くして、女のものへと変えていくのだよ』
突き放したような説明が終わった時には、男のペニスは完全になくなっていた。
それと同時に、胸板からは胸毛が完全に消え、足からは脛毛が抜け落ちていた。
今度は触手が胸へと絡みついてきた。
そして、触手の先端から透明な液が溢れ出たかと思うと、胸へと擦り付けられていく。
「は、入ってくる……」
男は、胸の中へと透明な液が入ってくるのを感じた。それは感じだけでなく、
外見にも表れた。男の胸が、だんだんと膨らんでいくのだった。
胸の大きさは、もはや手のひらで包みきれないぐらいになっていた。
すると再び、触手が股間へともぐりこんでいった。文字通り、にである。
「そんな……入ってくるなんて」
ペニスの無くなった股間へと、触手の頭が入り込んできた。ずぶずぶと入ると同時に、体の中が広げられる感じがする。
「うわっ」
さっき胸で感じたのと同じように、粘液が溢れ出るのが感じられる。溢れ出た粘液は、
体の中にたまり、そして何かの形を作っていくのが感じられた。
『どうやら、体の方は完成したようだな』

今や、かつて男だった人間の体に、男の要素は見受けられなかった。
どう見ても、20代そこそこの女性のようにしか見えなかった。
『さて、体は女性になったことだし、あいつの生殖に協力できるようになったわけだ』
「ふ、ふざけるな。そんなこと、させてたまるか」
女の体を持った男は、必死になって抵抗しようとした。
股間へともぐりこんでいる触手を払いのけようと、両足で触手を挟んでは、引き抜こうとする。
『ふむ。やはり他の生物と同じく、人間も素直にメスになろうとはしないようだな』
「当たり前だ」
『そうやって暴れられては、受精卵の着床もうまくいかなくなるのだがな。
もっとも、あいつらもそんなことは元より承知だ。ちゃんと対処方法も作られている』
何を、と言う前に、女の体をもつ男の口が、触手によって塞がれた。
「むぐ、う……」
うめく口中へと、粘液が流れ込んでくる。鼻もふさがれていて、それを飲み込むしか手がなかった。
途端、体中が熱くなるのを感じた。
『それは一種の媚薬でね。それを飲むと、生殖がしたくて堪らなくなるのだよ』
男の言う通りだった。体中が熱くなり、セックスをしたくてどうしようもない気分になってきたのだった。
それは、男だった時に何度も体験した感情のはずなのだが、体の反応はまるっきり違っていた。
いつもだったら、性欲にあわせて大きくなっているはずのペニスが無い。
それに代わり、体の奥が熱くなり、何かが欲しくて堪らなくなってくる。
股間だけではない。
触手が絡みついてくる乳房は熱を帯びたようになり、
その先端にある乳首は透明な紐で引っ張られたかのように尖り、固くなってきているのだ。
「な、何か……欲しい」
女は自分から足を開き、腰を突き上げた。
「あはっ」
その時になって改めて、触手が股間へと入り込んでいるのを女は感じた。
ぐちゅ、ぐちゅ、と音を立てて、触手は女の股間の中を動き回る。
「す、凄い。体が一杯になってる」
こんな体験は初めてのことだった。
体に何かが入りこんで快感を感じることも初めてならば、それが膣と子宮口一杯に広がることも初めてのことなのだ。
男のペニスと違い、触手は自由にその形を変えることが出来る。
そしてそれは、女の生殖器にぴたりとはまるように、形を変えているのだった。
子宮口が、膣襞が、そして入り口のクリトリスが同時に刺激される。
「あは……あぁ」
しかも、形だけではない。その動きも、人間のペニスには不可能なものだった。
中で回転をしたり、膨らんだり萎んだりして、生殖器にある神経をあらゆる方法で刺激してくるのだった。
そのうちに、触手の粘液とは違ったものが、女の膣口から流れ始めてきた。
だが、貪欲な触手の動きは、膣口には止まらなかった。
「ああっ、そっちは」
触手の一本が、アナルへと向かう。粘膜に濡れたそれは、肛門のわずかな抵抗を無視して、中へと入り込んだのだった。
「そ、そんなのって……」
もちろん、女にとってアナルは初めての体験だった。だが、今の彼女には、それすらも快感と感じられるのだった。
敏感な入り口を刺激されると同時に、中に入り込んだ触手は、薄い肉壁を通じて、別の角度から生殖器を刺激してくるのだ。
「気が、狂いそうだ……もっと、もっと、欲しい……」
それに答えるように、触手の何本かが、女の胸へと向かった。
そしてすっかり大きくなった乳房に絡みついたかと思うと、細い触手の先端が、乳首へと入り込んだのだった。
Cカップぐらいの乳房は、二周りは大きくなった。だが、それだけではない。
「ああ、それ、気持ち良い……」
胸の中に、またしても粘液が撒き散らされる。そしてそれを受け取った乳房は、さらなる変化を遂げたのだった。
ぷしゅっ
乳首から触手が抜けると同時に、女の乳房からは、母乳が溢れ出した。
相手を生殖の道具としか見ていない触手にとっては、それは当たり前の作業なのだった。

乳房、膣、アナルと、体のいたる場所を刺激されているうちに、女の官能は絶頂へと近づいてきていた。
男だったら、とっくに何度も射精をしているところだが、今の彼女には、自ら絶頂に向かうための器官はない。
あるのは、相手の絶頂を受け入れるためのものだけなのだ。
女の昂(たか)ぶりをより高くしようと、触手は股間への動きを弱める一方で、
体中に触手が巻きつき、すでに全身が性感帯となった体を絶えず刺激してくるのだ。
イキたくてもイケない、男であれば、射精しようとしたペニスの根元を縛り上げられ、
強制的に射精を停められてしまったような、そんな感覚の中で、女はうめいた。
「ああ……」
その途端、全身がいっせいに刺激された。
口へ入り込んでいた触手が、舌へと絡みつく。
乳房にまとわりついている触手が、ぎゅっ、と乳房を鷲づかみにする。
乳首へと吸い付いていた触手が、母乳をきつく吸い上げる。
クリトリスへと張り付いていた触手が、ぐりぐりと押し付けられる。
アナルへと入っていた触手が、激しくピストン運動をする。
膣へと入っていた触手が、中で大きく膨らむ。
そして、子宮へと入っていた触手の先端から、受精卵が大量にばら撒かれたのだった。
「あはぁっ!」
女は絶頂を感じつつ、気を失ったのだった。


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