目の前で起きているコレはなんだ?

 何人もの裸の女達が、屈辱的な格好で拘束されている。
 
 空間は薄桃色に淀み、ほんのりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。
 女達の甘い嬌声が辺りに響き渡る…。
 男達の獣のような唸り声がそれを更に激しくさせている。

 段々と自分の意識がハッキリとしてくるのが分かった。

 「ぅあ…!?」
 目を疑った。
 何だコレは?
 今まで見ていた事は夢じゃなかったのか?
 俺は…。
 俺達は…、そう修学旅行の移動でバスに乗っていて…。
 それから…。
 それから…。
 「!!」
 そうだ!…バスに乗っていて、山岳の道路を移動中に…。

バスハ、イキナリ、ガケカラオチタ…。

 それからどうなった?
 俺達は?
 死んだのか?
 でも、こうして意識はある。
 しかし、目の前で起きている狂乱はなんだ?
 拘束された裸の女達を狂ったように多数の男達が犯している。
 この状況は一体なんなんだ!?
 ここは一体何処なんだ!?

 ”ガシャ…。”

 「え…?」
 興奮した俺は身体を進めようとしたが、前に進めない。
 その時になって俺は、初めて気がついた。
 …俺も、女達のように拘束されている事に。
 「なっ…!! なんで俺も…!…えぁ!?」
 声が…! 声が変だ…!!
 ま…まさか…。
 慌てて俺は、今の自分の姿を確認してみる。
 どうも両腕は後ろから前の方に捻り上げられ、何か手枷のような物で固定されているようだ。
 両足も同じように拘束されている…。
 伸びている鎖は、空間のどこかに続いているような感じだ。
 そして、腰を突き出すような姿勢になっているのが分かってきた。
 …周りで男達に嬲られてれいる女達と同じ格好だ。
 足元を確認する時に視界に入ってきた、ふくよかな両のふくらみ。
 改めて確認するまでも無い。

 俺は…。女になっていた…。

 何故?と言う思いと共に、早くここから逃げ出さないと…!という気持ちが強くなってくる。
 俺は、目一杯の力を込めてもがいてみる。
 だが、ジャラジャラと音を立てるだけで、戒めは外れそうにも無い。
 「くっ…!」
 それでも俺は諦めずに、動いてみる。
 多分、今の自分の姿は扇情的なのかもしれない…。
 周りで女達を嬲っていた何人かの男達の視線が、自分に突き刺さってくるのを感じた。
 「…!! んっんんんんぅぅぅぅっっっ・・・!!!」
 その時、突如として俺の身体に電流のような刺激が流れた。
 「ようやく気がついたようだな…」
 ハッとした俺は慌てて声が聞こえた、自分の背後に首を向ける。
 そこには、青黒い筋肉質の”鬼”が立っていた。
 「な…っ!? なんだ…おま…えっ…っあああっっ!?」
 また、身体中に刺激が流れる。
 分かっている、もう俺の身体は気付いている。
 ”鬼”は、俺の女の印に、自らの指を突き入れて嬲っている…!!
 「…あ…っ…。あぅ・・・っ。あ…が…」
 力なく声を漏らす口元から、涎が零れ落ちていく。
 何時の間にか、両の目からは涙が溢れ、頬を濡らしていく。
 屈辱的だった。
 余りにも屈辱的だった。
 男だった筈の自分が、女になって、しかも大勢の男達の前で嬲られている…。
 心が壊れそうになってくる…。
 しかし、”鬼”はそんな事はお構いなしで、責めるのをやめてはくれないようだった。
 鬼の太い指で身体を翻弄されながら、俺は必死に我慢する。
 身体からは甘い汗が噴きだし、声は更に艶を上げて辺りに響き渡っていく。
 他の女を犯している男達も、更に興奮を高めたのか、各々が犯している女達を一段と激しく突き上げている。
 「…気持ちいいだろう? んん?」
 ”鬼”が俺にその凶悪な顔を近づけて、無理矢理に唇を奪う。
 「うむ…ぐっ!…むぅぅ…」
 太い舌が強引に口内に押し入り、俺の舌を絡め取る。
 口の中まで、まさに今俺は犯されている…!
 絡まった口元から、溢れ出る”鬼”と俺の唾液が交わりあった液体が、この空間に更なる淫らな香りを充満させていく。
 ぐちゅっ…、じゅぷ…、っぷ…っ。
 ”鬼”は口を犯しながら、秘所に突き入れた指での責めも休めてはくれない。
 俺は気が狂いそうな快感に身を捩じらせながら、必死に飲み込まれないように抵抗を続ける。
 もし、この快感に飲み込まれたら、自分が…。男の自分が、全て崩壊しそうなそんな恐怖に怯えていた。
 「…ふん…。頑張るな…。お前以外の者は、既に皆女としての快楽を享受していると言うのに…」
 ”鬼”は、っぷんっと、俺のアソコから指を抜き、気持ち悪いぐらいに優しく、俺の尻に指を這わす。
 「ひっ…! ぅんん…!!」
 もう、全身が性感帯だ。女の身体というものは、これほど男と違うなんて…。
 俺はぐったりとしながら、その愛撫を感じていた。
 「そら、よく周りの女どもを見てみろ。見覚えがある奴等ばかりだろう…?」
 ”鬼”のその一言で、俺の意識は少し快楽から離れた。
 「あ…っ、ああっ…!」
 かすれた声が口からこぼれる。
 言われた通り、女達の顔には、皆、何処となく見覚えがあった。
 「ま…、まさか…」
 「そう…。ここにいる女達は、全てお前と共にここに落ちてきたお前の仲間達だ」
 俺は衝撃を受けた。俺だけじゃなく、バスに乗っていた皆が、今ここで男達に嬲られているなんて…!
 …あぁ。あれは、澤井…。アイツは掛川…。沖田…。
 見れば見るほど、気が付いていく。皆、それぞれ美少女とも言える姿形になってはいるが、面影は確かにあった。
 そんなクラスメイト達が、歓喜に身を震わせ、甘い嬌声を上げ、男達に今も突かれている。
 「…い…いったい…、ここは…どこ、なんだ…? お、俺たちを…どうするつもりだ…ぁぁっっっ…!?!?!?」
 言い終えるや、”鬼”は容赦なく俺の中にまた、指を突き入れてきた。
 その衝撃に身体は仰け反り、俺のアソコから飛沫が飛び散る。
 ”鬼”は俺の大きくなってしまった胸に口をつけ、乳首を舌先で弄ぶ。その度に、俺の膣は奴の指を強く締め付けてしまう。
 「…教えてやるか。お前たちは、久しぶりの獲物だ。まず、お前たちの乗っていた乗り物は、偶然落ちてきた落石により、崖に落ちる事になった。
 あの場所はその昔、難所でなぁ。何人、何百人と命を落とした場所なのさ…」
 「…だ、だから…! それが、どうしたって…んんんっっ!?!!!」
 「ふふ…。昔、この山は女人禁制でなぁ。すなわち、崖に落ちて死んだ者達は皆、男達だった訳だ…。
 その死んだ男達は、やがて次々と他の者を引きずり込み、やがて報われない男達の魂がドンドンと増えていった…」
 くちゅ…。ちゅぷ…。
 「あっ…! あ…ぅぅうううっ!!」
 「だが、時代が変わるにつれ、この山も女人禁制だったことは忘れ去られ、あまつさえ大きな乗り物が楽に通れてしまう道まで出来てしまった…。
 女は気軽にこの山を上り、また何も知らない男達は女と一緒に山を上っていく。
 そんな者たちを羨ましく、妬ましく、ここで死んだ男達は指を咥えて見ているだけだった…」
 ちゅぽん…。
 「ひゃうっ…!」
 ”鬼”は一旦、指を引き抜くと、濡れたぎった俺のアソコに舌を這わせ、上手そうに零れ落ちる汁を吸い上げる。
 「ぅうっ…! ぅうう…!!」
 「だが…。そんな男達の負の想いが、やがて大きな力になり、俺を産み出した」
 「…!!…」
 じゃ…、じゃあ…コイツは、この”鬼”は、死んでいった男達の怨念が産み出したモノなのか…!?
 「そうだ。俺は死んでいった男達の願いをかなえる為に誕生した存在だ」
 ”鬼”は俺の心を読んだかのように答え、俺の花弁を指で押し広げながら立ち上がる。
 その股間からは、天を突くように巨大なモノが反り上がっていた。
 「…ヒッぃ!!!」
 おもわず悲鳴が漏れる。
 そんなものが入ってきたら、俺は…、俺は…っっ!!!!
 「産まれた俺は、男達の願い、欲望を成就させる為に、たまにこうやって、多人数の”男達”が通った時に事故を起こさせ、
 この世界に引きずり込み、こうやって女に変え、哀れな男達の魂に、”女”を与えているのさ!!」

 ブチッ…!!

 「あ…!? あああああああああっっっ!!!!」
 俺は絶叫した。
 ”鬼”の太い指によってほぐされていた筈のアソコだが、当然、巨大なイチモツを受け入れるほど成熟してはいなかった。
 そんな女の証明に、荒々しい塊が防破壁を突き破り侵入してくる。
 全身に耐えがたい痛みが走り抜ける。
 今までの愛撫が嘘のように、゛鬼”激しく俺を蹂躙し始めた。
 「あっ…!! ぐううぅぅ!!! ひぁっ…!!! や…やめ…やめ…てぇぇぇっっっあがああああっっ!!!!」
 叫ぶ悲鳴は意識しないで女のモノになっていた。
 「ただの女を引きずり込んで、嬲っていた事もあったが、直ぐにここの男達は飽きてしまってなぁ!!
 それ以来、お前達のような何も知らないで人生を楽しんでいる若い男達をたまにこうやって”女”に変えて楽しむようになったという訳だ!!」
 パンッ…!!
 パシンッ…!!
 ”鬼”が荒々しく俺の腰を掴んで打ち込んで来る。
 「この世界からは抜け出せん!お前たちの魂が枯れ尽きるまで、嬲られ続けるのさ!!」
 周りで学友たちを犯している男達も、ますます興奮の度合いを高めて責めを激しくしている。
 「あっ! あっあ!! あああっっ!!!!」
 気付かぬうちに、俺の声は痛みよりも快感に溺れ始めていた。
 じゅくっ、じゅぷ、ぷちゅ…。
 いやらしい音が結合部から聞こえる。
 そんな音さえも、興奮剤となっているような感じだ…。
 「あふっ…! あんっ! あああっっ!!」
 「いいっ…! もっと、もっとぉぉ……!!!」
 あちらこちらで女になった友人達の甘い嬌声が響き渡る。
 もはや、完全に女として堕ちた彼女達の身体は、荒々しい男達の白濁液で全身が彩られている。
 (…俺も、ああなっちゃうのかな…?)
 朦朧としてきた意識の中で、俺は”鬼”に突かれるままに自分でも驚くような嬌声を上げ続け、ふと思った…。
 「…イ…いや…だ…」
 でも、俺は戻りたい…。
 元の世界に何としてでも戻りたい…!

 ズン…!!

 「くはぁぁあああああああああっっっ!!!!」
 ”鬼”はそんな事を考えている俺に止めを刺さんばかりに、更に深く肉棒を突き入れてきた。
 「俺は何時もは、こうやって女に変えた獲物を嬲るような事はせんのだがな!
 お前は特別だ! お前は今まで変えてきた、どんな”女”よりも美しい!!
 俺はお前が気に入った! お前には”俺達の子を産んでもらう!!!”」
 「――――――――――――――!!!!!―――――――――――――――」
 な? 何を言っているんだ…!!
 子を産めって…!!
 お…”俺達の子”!?!?
 や…やだ!!
 やだ! やだやだやだやだ!! やだっやだっやだっ!!! ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤ…!!!!!!

 パンッッ―――――――――!!!!

 一際大きく響く音。
 ”鬼”は俺の最深部を貫かんばかりに腰を打ち付け、グッと力を込める。
 そして…。

 びゅるっ!!!

 びゅるっ! びゅる!! びゅるるるるるるるっっっ…………。

 「あ…、ああ…っ、あ、あ、あ、あ、ああああああああ……………!!!!!」
 俺は身体を振るわせる。
 涙が止まらない。
 悔しくて、情けなくて、どうしてこうなったのか? どうしてこんな目に…。
 だが、射精はまだ続いている。俺の子宮を”鬼”の種が満たしていく…。
 溢れ出した精子は、股、太ももを伝い、下へと流れていく…。
 俺の心が壊れていく…。

 こんなのウソだ…よね…?

 ゆめだよね…?

 うそ…。

 …。

 消え行く意識の中で、”鬼”の笑みだけが意識に焼きついた…。

 …目が覚めると、そこは病室のようだった…。

 あれ? 俺…。

 辺りをキョロキョロ見渡してみる。
 やはり病室のようだ。
 そこへ看護士さんが入ってきた。
 驚いたような表情で俺を見る。
 「天川さん!? 大丈夫なの? 分かる? 喋れる?」
 慌てたように俺に問い掛ける。
 「あ…。ハイ…。大丈夫ですけ…ど!?」
 「先生に連絡しなくっちゃ!! あっ!! ご両親にも連絡するわね!!」
 ちょっと年増の看護士さんは、あわてて病室を出て行くと、部屋に静寂が戻った。
 だが俺は、自分の口から出た声によって、身体を震わせていた…。
 「おんな…。おんなの時のままの声だ…」
 ぎゅっ、っと抱きかかえた自分の身体は、明らかに男とは違う身体つきだ。
 念の為に裸になってみたが、やはりその身体は、あの散々”鬼”によって犯されたあの身体だった…。
 そして鏡に映るその顔は、”鬼”が気に入ったのも頷けるほどの美少女のものだった。

 数日後、もう別段異常なしと診断された俺は、両親と共に自宅に戻っていた。
 入院中に俺達が本当に事故に会ったのか調べてみると、やはり事故は本当におきていた。
 十数年振りの大事故だったらしい。
 そして、奇跡的に助かったのはこの俺だけだという事だった。
 みんな死んでしまった…。
 いや、囚われてしまったのか…。
 実際、事故現場で見つかったのは大破したバスと、俺だけだったようだ。
 だが俺が発見された時は、俺は”男”だったらしい。
 それが、意識不明のまま病院に運ばれてきた時から、徐々に女性化していったらしい。
 原因は不明。
 医者もお手上げだった。
 両親も当初はパニックを起こしていたが、取り合えず命には別状が無さそうな事。
 何より俺が生きていた事が、女性化という現象も受け入れる事が出来たようだ。
 …俺自身は嬉しくもなんとも無いが…。
 もう…友人達は戻らないのが分かっていたし…。
 もし…、”あの事”までもが本当に起こっていた事だとしたら…!?
 俺は恐怖する毎日を過ごし始めた…。

 自宅に戻ってからは、今後どうするか両親とも話し合い、結局転校する事に決めた。
 今の学校に通い続けるのは、余りにも悲しみが大きすぎるし、
 何より、女の子となってしまった自分が好奇心の対象で見られる可能性が高いのがイヤだったから…、
 両親も、俺の為に引越しを決定してくれた。
 名前は元々の名前が「勝巳」だったので、ひらがなで「かつみ」に変更してもらった。
 今更まったく違う名前も、なんだか慣れなさそうでイヤだったからなんだが。
 「天川かつみ。か、いいんじゃないか?」
 「ええ。最初から男の子でも女の子でもいい名前にしておいて良かったですねお父さん?」
 「そうだな。母さん。ははは」
 …楽しそうに語ってくれるなよ親父、おふくろ…。

 そんなこんなで、”あの事故”から一年が過ぎた。
 新しい学校で、俺はなんとか上手くやっている。
 随分髪も伸びた、サラサラの栗毛が肩までかかるようになっている。
 俺は髪を洗うにも面倒なので切りたいのだが、何故か両親が反対しているせいで切らせてもらえない。
 おふくろはまだ理解できるが、何で親父まで…
 他に困るのは、男女問わず、俺に猛烈にアタックしてくる奴が多いという事か…。
 今の自分は自分で見ても綺麗だと思うけど…。正直イヤだ…。
 今日もどうにか学校での生活を終え、自宅に帰って夕飯を食べ、勉強をして風呂に入り、ボーっと本を読んでベッドに潜り込む。
 「はぁ…、寝よ…」
 (そうか…、もう一年経つんだよな…。あの事故から…)
 俺はふと悲しくなって、涙が自然に溢れてくるのが分かった。
 そのうち段々と睡魔が忍び寄り俺を眠りの世界に誘った。

 「…!!…ここは」
 そこは、紛れもなく”あの場所”だった。
 意識を取り戻した俺は驚愕した。
 目の前に現れたのは、俺を犯し尽くしたあの”鬼”…。
 恐怖で体が動かない。今すぐ逃げ出したいのに、身体がすくんで言う事を聞かない。
 「いやゃぁぁ…、やぁ…ゆ…ゆるしてぇ…」
 自分でも驚くぐらいに、俺は目の前の”鬼”に対して恐怖し許しを懇願していた。
 「約束しただろう…?”俺達の子を産んで貰う”と」
 ”鬼”の一睨みで、俺の着ていたパジャマは消し飛び、俺の身体は熱く火照り出す。
 自分の意志はまるで役に立たなかった。
 ゆっくりと近づいてくる”鬼”のその男根は、既にいきり立っており、俺の身体は自然にそれを求めようとしている。
 「いやっ…! いやっ! いやぁ・・・ぁぁぁっっ…」
 泣きじゃくるしか出来ない俺。
 そんな俺をからかうように、”鬼”の背後に現れる無数の影。それらはやがて、”あの時”と同じように男達に貫かれながら、俺に語りかけてくる。
 「勝巳〜ぃ…。楽になっちゃえよぉ〜…」
 「そうよ〜…。私たちなんて、ホラ、もうこんなに女として可愛がってもらっているんだからぁ〜…」
 「お前だけ、元の世界に戻れたんだから、少しは俺たちの気分も味わってみろよ〜…。白状もの〜…」
 「うらやましいなぁ〜…。現世に戻れて、しかも、その方の子供まで産めるなんてぇ…」
 かつてのクラスメイト、友人達の変わり果てた姿は生々しい。
 美少女達が男達と共に”鬼”と俺を取り囲んで激しく交わり始める。
 「あ…っ! あああ!…ああ…っっ!」
 俺は知らぬうちに、震える身体で”鬼”の元へと進んでしまう。
 (イヤ…っ! こんなの…いやああっ!!)
 心が拒絶しても、身体が認めてくれない。
 ”鬼”の眼前まで来てしまった…。
 「さぁ…。約束を果たしてもらうぞ…」
 ”鬼”が歪な表情で笑った。
 「…い、いやああぁぁぁぁぁぁっっっ…」
 俺は力なく叫んだが、直ぐに”鬼”が襲い掛かってきた…。

 あれは夢だったんだろうか…?
 だが、あの時また”鬼”に犯されたのは現実…。
 事実、俺は妊娠していた。
 両親は俺に降りかかる更なる仕打ちに、愕然としていた。
 最初は、誰かと性交渉を持ったのかと疑われたが、当然俺はそんな事はしていない。
 一応、俺が”鬼”にされた事を包み隠さず話もしたが、気が触れたとしか思ってもらえなかったようだ。
 …当然か。
 今、結局俺は、お腹の子を中絶する事も無く、こうして自分の部屋でその日が来るのを待っている。
 もう、かなり大きくなった。
 最近では、お腹の中でよく暴れているのがわかる…。
 母性本能だろうか?
 最近ではお腹の子が愛しくて仕方が無い。
 中絶の説得を諦めて、最近では早く孫の顔が見たいとそわそわしている両親もそろそろかな? どうかな? と待ちわびているようだ。
 すごく迷惑をかけているのが分かるので、心苦しくもあるのだけれど…。
 でも、どうせ中絶なんて最初から出来ない事だったんだ。
 ”アイツ”が今も見ているだろうから…。
 あの”鬼”が今もきっと…。

 生暖かな風が頬を撫でていく。

 その時、”鬼”の笑い声が聞こえたような気がした。


 -fin-


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