●1●
「ね、これ飲んでみて?」
そう言って、見るからに怪しげな液体を俺に差し出してくるのは、俺の彼女の雅だ。
知り合ったのは大学のオカルト研究会、通称オカ研の部室だった。何を隠そう俺もオカ研の会員なのだが。
「ねぇ、雅君。このあからさまに怪しい液体を、増してやオカ研の部室で飲ませようとするとはなかなか豪快な神経の持ち主ですね、君は」
「むー、いいじゃないのよー。私の魔術薬学知識を総動員して作った薬なんだからおとなしく実験台になりなさいっ」
「・・・開き直りですか・・・・?」
こういう奴なのである。
「一つ問う」
「許可する」
「これは何の薬ですか?」
「・・・」
何で沈黙するんだよ・・・そこで。余計に飲みづらいじゃないか。
「・・・むー」
「・・・」
気まずい沈黙が俺と雅の間に流れ・・・なかった。

「強精剤よ!」

・・・俺は雅の頭の右斜め上15センチの上空に電球が点灯したのを見た。絶対嘘だ。嘘に決まってる。

「えーっと・・・雅さん。一つ伺ってよろしゅうございますか? 私に強精剤を飲ませてどうするおつもりでしょう。
わたくし、そんなに下手でございましょうか?」
「なに卑屈になってるのよ。うりゃっ、こうしてやるっ」
「こらっやめっやめてぇぇっんむっ・・・ん・・・・んむーーーーーーーー」

哀れ、後ろから抱きつかれ鼻をつままれて息が苦しくて口を開けたすきに、怪しい「自称強精剤」を流し込まれてしまった。
お母さん、僕はどうなってしまうのでしょうか。



●2●
「うう・・・ひどい・・・」
お母さん、僕は汚されてしまいました。
「あんたねぇ、私の調剤の腕前を信じてないの? ほらっ、しゃきっとする!」
「ほー、君の調剤の腕ね・・・ 頭がよくなる薬を作って飲んだ誰かさんは試験中に昏倒して単位を落としませんでしたっけ」
「う・・・」
気まずい沈黙が俺と雅の間に流れ・・・なかった。前回と同じネタかよ!
「早速薬の効果を試しに行くわよ!」
あぁ、今は昼下がりだなぁ。晴れてるなぁ。そっか、ある晴れた昼下がりなんだ。
あーるー晴れたー 昼さがりー ほーてーるー へ続く道ー、女がーずーるずーる 男を引きずっていくー
お母さん、僕には拒否権は無いそうです。
もっとも、こんな雅もベッドに入ったら可愛いからいいんだけどね。

「先にシャワー使うね」
「おう・・・いや、やっぱ一緒にシャワー浴びようぜ」
あの薬、ほんとにただの強精剤だったのかな・・・身体が熱いw 火照ってびんびんだ。待ってられない。
「薬、効いてきたんじゃない?」
「かもな」


●3●
俺はびんびんだし、彼女もノリノリ。
風呂場で1回、ベッドに移動して2回。
いつもは中は嫌がるのに今日は3回とも「中に出して」って自分から言って腰に脚を絡めてきた。
とにかく夢中で彼女を抱いた。
それでも収まらなくて4回戦に突入しようとして彼女の後ろから抱きついた瞬間、突然眠気が襲ってきてそのまま眠ってしまった。

誰かがほっぺをつんつんつついてる。
「ん・・・」
薄く目を開けると、見慣れた顔。雅がこっちを見つめて笑ってる。
あぁ、そうか。昨日はこいつとホテルに来てHしたんだった。変な薬を飲まされたおかげで暴走気味にやっちまったきもするけど。
「もう一回、しようか」
冗談交じりでそう言って笑った。


●4●
返事は、行動でだった。
そのまま抱きついてきて、俺たちは深く口づけを交わした。激しいセックスの余韻がまだ身体に残っていて体中が敏感になっているみたい。

ん・・・?

違和感。昨日、あんなに痛いほどいきり立っていた感覚が無い。
いくら腐れ縁とはいえ、雅はそれなりに可愛いルックスだ。
全裸で抱き合いながらディープキスを交わせば立たないはずがない。
いや、それどころか股間のモノの感覚がない。
頭の中が真っ白になりそうなパニック状態(でも雅と抱き合って濃厚なキスは続けているんだが)で確かめようと、
股間を彼女のふとももに押し当ててみても、やっぱり感触がない。
ごわごわした突っ張りも、ぐにょぐにょした感触もなく、直接下腹部と股間が彼女のすべすべのふとももをこする感触。
そこが股間であることを証明するのは毛のさりさりした感覚。モノの感触のない股間から伝わってくる。

俺の様子がおかしいのに気づいた雅が、唇を離した。つぅっと唇と唇の間に唾液の糸が引いたが、俺にはそれを気にするだけの余裕は無かった。


●5●
にやり
このときの彼女の表情は、これ以外に表現できないと思う。

「どうしたの? もう一回しようよ・・・ はやくぅ・・・」
甘えた声で求められても、俺の脳みそはパニクるばかり。
キスから解放されて一息ついたことで、脳に酸素が供給されたおかげかわずかに冷静さを取り戻した俺は、
股間だけでなく全身からもたらされる違和感に気づきつつあった。
雅が上になって抱き合ってるから起きあがったり、全身を目で確認するわけにはいかなかったけども。
股間の違和感は言うに及ばず、上になってる雅の胸が俺の胸を押しつぶしている。

「押しつぶしている」  
オシツブシテイル。ナニヲ?  オレノチブサ ちぶさ 乳房

「気づいたみたいね」
にやり、と。あぁ、そうだった。雅は何か悪巧みが成功すると、こういう表情をするんだった・・・


●6●
「んっ・・・・」
再び激しいキス。
「んーーーーーっ んーーーーーっ」
唇で口をふさがれた俺の股間を、雅の指がまさぐっている。
指が動くたびににちゃにちゃした感触が股間から来るのが自分でも分かる。
もう片方の手が俺の乳をもみしだいている。彼女の指が乳首にあたるたびに、股間の指に粘液が絡みつく。
「ぷはっ・・・ん・・・・あ・・・やめ・・・なんで・・・・・?」
「んふー。可愛いっ! あの薬は大成功ね♪ 一回女の子を犯してみたかったのよねー。
本物の女の子に手を出したてレズって噂を立てられても嫌だし、ともちゃんなら後腐れないしねー。
すっごい可愛くなってるよ。もう、めちゃめちゃに犯しちゃうっ」
「あっ・・・・」
男を知らない俺のオンナノコに異物が侵入してきた。雅の指だ。
「ん・・ぁ・・・・」
くちゅっ、という音をさせて指が根本まで入れると、ぎりぎりまで抜き取り再び入れる。
「どう? 女の子も悪くないでしょ」
「あ・・ん・・・ん・・・」
そう言って抜き取った指を俺の前に突き出し、糸を引く粘液にまみれた指をつけたり開いたりして俺に見せた。
もう俺はなされるがままだ。
そうしてしばらく愛撫を受けていたが、雅は俺の脚を大きく広げM字開脚の姿勢をとらせると、
股間と股間を合わせ正常位の体制でのしかかってきた。
女性器同士、乳房同士が押し当てられてお互いがお互いの性器を刺激する。
女同士だと終わりがないというが、それは本当だ。
もうどちらがどちらを犯すというのではなく、雅が上になり、俺が上になり、ひたすら快楽を貪り合った。


●7●
目が覚めると、目の前には雅の寝顔があった。
昨日の淫乱な雌の顔はどこへやら、すぅすぅと寝息を立てる寝顔はその童顔も相まってまるで無邪気だ。
もっとも、淫靡な女の匂いとお互いの体液を全身にからみつかせ、
体液でべとべとになったベッドに裸で寝ているのだから、その邪気のない表情は返って淫靡さを感じさせる。
相変わらず、俺の身体は女のままだ。
ベッドに横になっていても鉛直方向に向かって重力を感じる胸の重さに違和感がある。
何より、男なら朝に感じないはずのないあの感触がかんじられない。
そんなあほなことを考えながら、俺は軽く雅の身体を抱きしめた。
「ん・・・ おはよ」
「あ、起こしちゃったか?」
「ううん・・・」
お互い、ベッドの中で抱き合ったままの時間。
「んー、べたべただね・・・シャワー浴びてくる」
「もうしばらくこのまま。雅の匂いとべたべたな感触を味わっていたい」

そう言って、朝日の差し込む中、女同士で再び快楽を与えあった。


●8●
俺と雅がベッドから出たのはもうお昼近かった。
見慣れた景色。全裸の雅が台所でブランチの支度をして、全裸の俺がテーブルでその景色を眺めている。
どうせ他人が入ってくるわけでもなし、お互いすべてをさらけ出した後の朝。裸の食卓。
たった一つ見慣れないのは、俺が女になってるというその一点だけだ。

ミディトマト、フレッシュチーズの油漬け、生ハム、アボカド、チコリのサラダ。
カリカリに焼いたベーコンとバターたっぷりのスクランブルエッグ。
トーストと、輪切りにしたオレンジのママレード。

夜通し乱れに乱れて疲れた身体に、ボリュームはあるもののレモンとオリーブオイルでさっぱりとしたサラダがうれしい。
半熟のスクランブルエッグに添えられたベーコンの塩気が、汗と体液を出しまくった身体に美味しい。

「なぁ、そろそろ男に戻してくれよ」
雅は普段はコンタクトだけども、家の中では大ぶりな丸い縁なしめがねをかけていることが多い。
輪切りになったオレンジがそのまんまの形で残ってるママレードを一片丸ごとのせたトーストをくわえた状態で、きょとんと俺を見つめる雅。
嫌ーな予感が頭をよぎる。しばらくこのままでいろと言うんじゃ無いだろうな。

「戻せないよ」

口にくわえた部分をきっちり咀嚼して飲み込んだ後で出てきた言葉が、それ。
なんでこう、予想の斜め下20光年くらいの発言をするかな・・・こいつ


●9●
「えーっと、それはつまり、どういうことかな? 俺はこの先ずーっと女のままとか・・・?」
「うん」
悪びれもせず、間もおかず。実にあっけらかんと。

「えー、雅さん、私はこの前、『卒業したら結婚しよう』って言いましたよね。あなたもオッケーしましたよね?」
「だって、人を好きになるのに性別は関係ないでしょ。あなたという人を好きになったんだもん。女でも全然問題なし。身体は女だけど、戸籍 男のままだから 結婚も問題ないし。
あ、でも女同士では子供は作れないから、前もって昨日中で出して貰ったでしょ。昨日は危険日だし、妊娠しやすくなる薬(魔術薬・自作)を飲んでおいたから オッケーよ。
2人目も作れるようにあそこの中に出た精液を採取して冷凍で保存する手はずもとってあるしね。まだ文句ある?」
「・・・・えー、その、俺の意志は?」
「ん〜、・・・えーっとの・・・いーじゃないっ 女の子の方がいいでしょw」

そうだ、こいつはそういう奴だった。
せめてもの救いは、こういう奴だから気が変わって俺を男に戻す薬を作ってくれる見込みが僅かながらあることくらいか・・・
その日まで、女の身体を楽しむとするか。
そこまで考えて、雅とつきあうようになって極端なプラス思考になってしまったのに気づき、微妙に鬱になった。


おわり


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