バシュッ!!!
大きな音とともに、私の喉は血飛沫を上げた。
私は喉を抑えることもできず、ひざから崩れ落ちた。
「小隊長!!」
部下の声が聞こえる、
「あきらめろっ!! そんなやつは放っておけ! 後退だ! 後退しろ!」
中隊長が大声で叫んだ。
(そんな、私はまだ生きている! 行かないでくれ! 置いて行かないでくれ! 嫌だ、私はまだ死にたくない!)
私は大声で助けを求めたかったが、喉からヒューヒューと空気の抜ける音が聞こえるだけだった。
中隊長と目が合った。
腕を動かし助けを求めたが、恐怖に慄いた奴は、私がまだ息があるのに気が付いていたが、私とは逆の方向に走り出した。

私は、まだ流れつづける喉の血を感じながら眠気を感じるとともに、もう目を開けることは無いだろうと感じた。

  ◇◆◇

目を覚ますと強力なライトに照らされていた。
そのまぶしさに目がくらんだ。
だんだんその状況に慣れてきて少し冷静になった私は、自分の置かれた状況を把握しようとした。
どうやら、金属製のイスに後ろ手に縛られ座らされているようだ。
大きく深呼吸をすると冷たい空気が喉をとおった。
(グッ!!)
喉に強烈な痛みを感じると、とっさに喉を手で抑えようとした。
しかし、両手が後ろで固定されている状況では、もちろん無理である。
激しく咳き込みながら私はあごを胸に着け、少しでも痛みが収まるように、体を小さく小さくした。
喉の痛みが治まってくると、どこからかは分からないが小さなノイズとともに男の声が聞こえた。
「気が付いたかね、少尉」
私は、その訛り混じりの言葉を聞き、この男は外国人だと判断した。
もともと、大学では言語学を専攻していた。
「ヒュッ!」
私は、誰だ!と叫んだつもりだったが、声帯が傷ついているのか、全く声が出なかった。
「ああ、安心したまえ。君の喉は、傷は深いが一生声が出ないというわけではないから」
私は、その男にこの状況の説明を求めようとしたが、結局声の出ないまどろっこしさと、
もがくことにより起こった喉の痛みに、体力を削るだけであった。
男の声が聞え無くなってから何もすることが出来ないとうな垂れていると、
何の前触れもなく小さな機械音とともに、私の両腕を固定していた金属の輪が取れた。
私の拘束していたものがなくなったので、この部屋の全体を見回してみた。。
私が居たのは、6畳ほどの小さな部屋で、中央に金属のイスがあるだけだった。
壁は、全面鏡張りで無限の私を映していた。
合わせ鏡の中で、私は、自分の体の異変に気が付いた。
私は、軍人にしては、そんなに筋肉質ではないが、鏡に映った私はどう考えても異様であった。
少尉の襟飾りをつけた私の軍服は乱れてはいなかったが、なぜか丸みのついた肩を見ると少し女性的に感じた。
まさかと思って胸元を開くと、胸板と言った感じであった胸は、小さくはあるが乳房があった。
それは、成長しきっていない乳房ではあったが、女性の物であることは間違いなかった。
混乱した私は、慌てて股間に手をのばした。
案の定私の股間には男性器ではなく、全く毛の生えていない女性器があるだけであった。
私は、最初に座っていたイスに腰をおろした。
顔を手で覆い、頭の中で 大きく散らばった
点と点を結ぼうとした。
(これは、どういうことなんだ?? 何故こんなことに、あの時迫撃砲の破片が喉にあたりその場に崩れ落ちたはずだ。
しかし、私は今こうしてここにいる。そして、私の体はなぜか女性の物になっている。
頭がどうにかなりそうだ。この体は、果たして私のものなのであろうか。
しかし、この喉の傷は正しくあの時のもののようだ)
結局なにもわからず、考えることに疲れた私は、焦点の合わない目で虚空を見つめていると、またさっきの男の声が聞こえてきた。
「大体分かりましたか? まあ、あなたに危害を加えるつもりは無いので安心してください、精々私たちを楽しませてくださいね」
私は、慌ててこの状況を尋ねようとしたが、先ほどと同様にヒューヒューと空気を揺らすだけであった。

それから20分ほど部屋の角で頭を抱え、小さくなって座っていた。
私は、考えの尽きた頭を抱えながらそっと体を横に倒し疲れた瞳を閉じた。

目を覚ましたそこは、私の希望を裏切るも、予想を裏切らず瞳を閉じたそこであった。
寝起き特有の尿意を感じ、私はトイレを探してた。
部屋は、すべて鏡張りで、どこにもドアが無い
下腹部を押さえ、必死で何か無いか探したが、とうとう何も見つけることができなかった。
もうだめだ、と感じるとともに、私の尿は、カーキ色の軍服をぬらしていった。
足を伝ったそれは、地面に大きな水溜りを作っていった。 
自分のした粗相を恥じ、そして急激な体の変化によるものか、私の頬を涙が伝っていった。
(男の私が、こんな見っとも無い姿をさらけ出しているなんて。
軍学校だって、きちんと卒業したし、今では、8人の部下を持つ小隊長のはずだ。
なのに、なのに、いったいこれは、どういうことなんだ)
私は、悲しみと恥ずかしさに反した怒りを感じ、鏡張りの壁を何度もたたいた。
(ここはどこなんだ!! 早く出せ!!)
ドンッドンッ!!と何度も力いっぱい壁を叩いたが何の反応も無かった。
先ほどの男は、私のこの姿を見ているのだろうか?
それを思い出し、さらに怒りが込み上げてきた。
私は、大声で不平を叫ぼうとしたが、喉に力を入れたとたんに激しい痛みで床を転げまわることになった。
痛みに耐え切れず出た涙を感じると、私は、自分の不甲斐なさに嗚咽を漏らした。

数分後、足元の不快さに耐え切れず、泣いてばかりでは、どうにもならないと自分に言い聞かせ、
なにか脱出の足がかりになるものを探した。
壁をよく見回すと、鏡の壁に正方形のラインが引いてあるのを見つけた。
私は、その正方形に手をかざすと、突然シューッ、という機械音を出したかと思うと、鏡が上に吸い込まれるかのように上がっていった。
そのむこうには、高級ホテルにある様なトイレがあった。
(トイレあったのか、、、)
トイレがある部屋で粗相をやらかした自分を自嘲的に笑いながらしかし、おかげで冷静を取り戻せた。
私は、粗相で濡れたズボンを脱ぐと、洗面台にある蛇口ですすいだ。
(水は、でるんだな)
水が出るならどうにかなるかと、少し安心すると、綺麗になったズボンを干してその部屋をでた。
その部屋には他にもうひとつ正方形のラインがあった。
やっぱりそれもタッチセンサー式のドア開閉装置であってその部屋には、毛布と食料の入ったダンボールがあった。
よく考えると半日以上何も食べていなかった私は、ダンボールから食料と思わしきものを取り出した。
それは、12・3cmの固形食糧で、噛んで見るとバキンッ!という音がして、やっとの事で、一口大にすることができた。
それは、お世辞にも美味いとは言えるものではなかった。

それからの私の生活は目を覚ますとトイレに行き、硬い固形食糧を無理やり食べると鏡の私を見てすごした。
初日から三日ほどは、部屋中を探し回ったが結局トイレと食糧庫以外は何一つ無かった。
(この生活は退屈すぎる。頭がおかしくなりそうだ)
私は、あぐらをかいて頭をかかえ声の出ない声で一人言をつぶやいた。

とうとうここでの生活は14日に達していた。
私は、いつものように焦点の合わない目をしながら左右にゆれていると、ふと、視線を感じた。
正面を向くと、そこには今にも泣きそうな、軍服の少女がいた。
彼女は、とても美しく、しかし、触ったら傷つけてしまいそうな繊細な感じがした。
私は、彼女に性的な興奮を覚えた。
彼女の幼さはあるが艶のある姿をみて、私の体は、熱を篭らせていた。
私は、彼女の唇に私の唇を合わせると冷たいが平たい彼女を、愛を込めて舐めまわした。
彼女は、私の方を見つめうるんだ瞳を向けてきた。
(おねがい、私を触って………。)
彼女の美しさに絆された私は、股間に手を伸ばした。
そこは、温かく、そして湿っていた。
私は、全く毛の生えていない一本の筋を、上下にゆっくりとさわさわと擦っていった。
最初は、あまり濡れていなかったそこは、いつの間に、すこしねっとりとした液体に覆われていた。
滑らかになったそこにある小さな突起に軽く触れてみると急激な快感が私を襲った。
ピクッ……ピクッ……
「ふぁっ、、ヒュュ、ヒュッ、、んッ」
(あぁ、駄目だ、これ以上は、、)
しかし、一度押し寄せた快感の波は中々消えてはくれなかった。
私は、部屋の中央にあったイスが目に入った。。
(あそこでこれを・・・)
すでに快感だけが私の絶対になっている状態ではその提案を押しのけることなど、もちろん不可能であった。
私は、這ってイスに近づいていった。
中腰になってイスの角に、私の中心を当てた。
「んっ、ふぅっ、、んッ!」
私は少しずつ、しかし強く体を上下にゆすった。
何度も何度も、いつのまにか床には、イスの足を伝った私の体液でできた小さな水溜りが合った。
体の上下がだんだん大きくなっていった。
「んっ、、、ふぅ、んっんっ、、、んっっっ、ふぅっ!!!」
イスの角が私の小さなつぼみをこすると、その一際強烈な刺激によって、
最後の堤防が切られたように、私の背筋を何かが通っていった。
私は、背もたれに体を覆いかぶせると、体が自然に緊張して小刻みな痙攣が私の体を這いまわった。
体の緊張が解けると、床に大の字に転がった。
冷たい右腕で目を冷やしていると、体からもだんだん熱が発散していった。
寒さを感じた私は、まるで幼児のようにまるまり小さくなって眠りについた。

  ◇◆◇

とうとう、この生活は、数え切れない位の日数になってしまった。
髪も肩のあたりまでとどく長さになっていた。
大量にあった固形食糧も、もう半数近くになっていた。
もっとも、あの硬い固形物を噛み砕く力は、すでに私の中には残っていなかった。
その粉っぽい固形物を、歯で削ると、呼吸とともに入ってきたその破片が喉に張り付き、慌ててせきをした。
ゴホゴホと何度もセキをしていると、目に涙が浮かび、吐き気を催した。
到底良くなっているとは思えない喉の傷がジンジンと痛みで自己主張した。
合わせ鏡の部屋は、無限に広がっているように見えるが、実際は小さい部屋であるいつものようにボーと鏡の中の私を眺めていると、
どこからかクスクスっといった可愛らしい、しかし、癇に障る笑い声が聞えてきた。
周りを見渡すと無数の知らない女がこっちを見ている。
大勢の女が私をクスクスと笑っていた。
私は、それがとても不快に思った。

いつまでたっても彼女の笑いは止まらなかった。
私は、それを不快に思う一方で。私に関心を持っていてくれることを嬉しく感じた。
しかし、いつまでたっても彼女はあそこからでてこないし、何も語りかけてくれない。
私も、彼女に話したいことが沢山あるのに、喉の傷が、それを許してくれない。
(私は、この生活にはもう耐えられない。いつまでここに入れておくつもりだ。
誰が、何のために、誰でもいい、ここから出してくれ。
出してくれないなら、私をもう殺してくれ、もうこんな状況には耐えられない。
お願いだ、そこから出てきて、私の首を絞めて私をこの世界から解放してくれ!
あああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああ
あああああああああ
ああああああああ
あああああああ
あああああ
あああ
あ)
私は、鏡に何度も何度も強く強く頭をぶつけた。
彼女を、そして私を傷つけようとゴシュッゴッシュと大きな音をたてて強く強く頭をぶつけた。
私の額に一筋の赤い線がたどった。
その一筋の血液が、とても綺麗に見えた私は、その赤い液体を顔に塗りたくった。
鏡でいつも私を見つめていてくれた彼女は、いつのまにか真っ赤な悪魔になっていた。
私は、突然の悪魔の登場に混乱し、部屋の中央にあったイスを鏡に投げつけた。
ガッシャンッ!!!!
大きな音とともに悪魔はこなごなになった。
しかし、地面に散らばった鏡の破片の中に小さな悪魔が何人も何人もこちらを見て笑っていた。
(見るな、私をみるな。やめてくれ、私のことをこれ以上見ないでくれ、ぐぅぅぅぁぁぁぁぁぁああああぁあ!!!)
私は、そこにあった鏡の破片を握って、私の右目に突き刺した。


私は、その痛みで麻痺したフワフワした精神を胸に
正気を逸した。


気が付くと私は、四方白い壁に囲まれた部屋の、中央にあるイスに座っていた。
私の右目には、白いガーゼを押さえるために、白い眼帯が巻いてあった。
体は、私にあつらえたと思えるくらいぴったりな敵軍の真っ白な仕官服を着ていた。
喉には、相変わらず包帯が巻いてあった。
白い部屋に、白い軍服、白い眼帯、白い包帯。
私の髪はいつのまにか真っ白に脱色していた。
残念なことに、ただ一点、左眼の奥だけが、気に障るほど吸い込まれそうなほど黒く深かった。
しばしの間、私はその自分の姿にほうけていると、どこからか空気が細い管を通り抜ける音がしたと思うと、抑えられない眠気が私をつつんだ。
イスから転げ落ちると同時に、ギギッという摩擦音とともに白い部屋に男が入って来た。
しかし、私にはどうする事もできず、眠りに落ちていった。

気が付くと私は、冷たい雪の上に倒れていた。
目を閉じた場所と、目を開けた場所が違うのは、もう何回目だろうか、とうんざりした。
(ん? ここは、外なのか? 開放されたのか?)
私は、大空を仰ぐと自分があの部屋から開放されたと確信した。
長期間続いた謂れの無い監禁から開放された感動を神に捧げた。
ここは、どこだろうかと思い、見覚えのある山と太陽を頼りに、一応の現在位置はわかった。
一刻も早くキャンプに戻りたかった。
今の自分の体力と山の地形は、楽なものではなかったが、半日ほど歩いたところで、偶然にも私の小隊の部下達を見つけた。
私は、嬉しくなって彼らに早足で駆け寄った。

パァァァアンッ!
私は、乾いた銃声とともに山路に崩れ落ちた。
「動くな! うつ伏せになって腕を頭の後ろに回せ!」
あの私を見捨てた中隊長の声だ。
どうやら今は、奴が私の代わりのようだった。
中隊長は、私を見て私の部下にいった。
「この軍服は、どうみても反政府軍高官だぞ」
しまった、私は、自分が敵軍の軍服をきていたことをすっかり忘れていた。
いや、私は、皆は私を見れば以前の上官であることに当然気が付いてくれるだろうと無意識に考えていた。
しかし、私は、彼らの知っている私ではなかった。
変わってしまった姿を見て、誰も私だと気がつきそうな様子も無い。
声をあげて抗議しよにも、私の喉は機能きなかった。
(気が付いてくれ、私だ! 何故わからない!!)
「中隊長、こいつ大佐みたいですよ」
小隊の一人が、誰のかは知らないが、私の着ている敵国の軍服のきらきらとした襟飾りを見て言った。
「反政府軍は、ここら辺からは、とうの昔にに撤退しているはずだぞ。なぜ大隊長クラスの奴が敵地のど真ん中にいるんだ?」
「しりませんよ、でもまあ、高級将校となると捕虜収容とかいろいろ面倒なのでで適当に処理して、先を急ぎましょう。
どうせこの山の中です、誰も見ていませんよ。大体的の敵の将校なんて一人でも少なくなった方が、早く戦争終わりますからね」
「ああ、そうだな」
とまるで鳥を締めるのと同じ事といわんばかりの顔で、奴は言い放った。
私は、一度ならず二度までも味方に殺されるのか、そんな恐怖を感じたが、実際のところここで殺されていたほうがましだったのかもしれない。
奴は、先ほど撃った私の足が、銃弾が肉をえぐった程度だとわかると、私に腕を後ろに回し膝立ちになるようにいった。
私は、顔全体を涙で濡らしそれを拒否した。
いらついた奴は、私のわき腹を、硬いブーツで思いっきり蹴りつけた。
思わず転げまわる私をみて、奴は下卑な笑いを浮かべた。
「なんだ、こいつ女かよ」
いやらしく笑う奴に、私は身の危険を感じた。
身を翻し、足の痛も忘れ、必死に立ち上がった私は、少しでも奴から遠くに逃げようとした。
しかし、それは、冷酷にも私の部下達によって阻止された。
彼らは、奴と同じように下卑た笑いを浮かべている。私の運命は、この時決定した。
奴は、私の白い軍服の襟もとに手を伸ばすと、両手で襟をもって一気に左右に開いた。
私は、開いた胸元をニヤニヤと見つめる奴に、耐え切れず、後ずさると私の部下の一人が強く肩を抑えてきた。
その拘束をなんとかして逃れようとするも、男女の力の差では、どうとすることもできない。
ましてや、相手は歴戦の軍人である。
中隊長は、私を雪の積もった地面に叩きつけると、ベルトに手をかけた。
私は、それに気がつくと、無駄とは分かっていても必死にもがいた。
しかし、やはりそれは、彼らの嗜虐心をそそるものでしかなかった。
私のズボンに手をかけると、一気にそれを引き抜いた。
あらわになった私のそれを見て、彼らは、一瞬驚いたもののすぐに、ククッと笑い出した。
「反政府軍の大佐殿は、まだまだお子様のようでありますな」
私の毛の生えていない性器をみて奴はいった。
それを聞いた私の部下達も、腹を抱えて笑い出した。
私は、笑われたことよりも、部下達が、この下種な中隊長と同類だといことが辛かった。
「大佐殿は私が大人にして差し上げましょう」
奴は私の反応を見るかの用に、絶対優位について、組み敷いた女にいった。
しかし、私は、部下達への思いと、自分の不甲斐なさで頭がいっぱいになり、その言葉に何も反応することができなかった。
奴は、反応しない私に腹をたて、白い包帯の巻かれた私の首を強く絞めた。
「せっかく殺る前に大人にしてやろうってのに、感謝の一言ぐらいあってもいいんじゃねーのか!?」
首を絞める手が緩められると、私は大粒の涙を流し、喉の痛みに咳き込んだ。
声を出すことができず、相変わらずヒューヒューと間抜けな音を出す私をつまらなそうににらんだ。
「喋ることのできない女をヤルのは、気持ち悪いが、まあ、いいだろう、敵に情けはいらねーな」
そういうと、奴は私の全く準備のできていない性器に、自分の怒張したそれを、ねじ込んできた。
私は、足を打たれたときの痛みとは違う、内面的な酷く鈍い痛みを感じた。
大粒の涙を流すも、喉はヒューヒューと鳴りつづけ許しをこう事すらできなかった。
当然その経験の無い私のそこは、ブチブチという、太い筋肉の筋繊維を何本も一気に引きちぎったような音とともに奴のそれが私の体内を汚していった。
奴は、私の右目の眼帯をはがすと、もう開くことの無いまぶたをなめ始めた。
その行為に吐き気を催すものも、すぐに痛みの方へと神経はむかっていった。
ものの数分もしないうちに、奴は、大量の精液を私の中にはきだした。

それから長い間、私は奴と、部下達に、代わる代わる何度も犯されるた。
私は、まるで自分に今起きている事が、対岸の火といったようにただただ虚空を見つめるだけの壊れた人形のようになっていた。
私は、この体になってからのお決まりの、焦点の合わなくなった目で、森の針葉樹の枝にかかっている白く美しい雪を眺めていた。

「大佐!!」
どこからか大きな叫び声が聞こえると同時に、バシッバシッという細い銃声がしたと思うと
私の周りにいた人間達は、ものの数秒でただの肉塊となった。
三度目の精を私に注ぎ込もうとしていた中隊長は、逃げようとしたところをその醜い腹を打たれ、のた打ち回っていた。
反政府軍の人間と思われる兵士達が駆け寄ってきて、彼らの国の言葉で言った。
「大丈夫ですか大佐!?」
私は、彼らの言葉を聞き取り。白く小さく息を吐きながら、微かにうなずいた。
彼らの何人かが、中隊長に向かって罵声を浴びせた。
「よくも大佐にこんなことを、楽には死なせない!」
そういって彼は奴の体から飛び出した臓器を足蹴にした。
とても慕われていたのと思われる「大佐」は、私の姿に良く似ているのだろうか。
私は、彼を制止すると紙とペンを借りた。
不思議そうに見る彼を少しおかしく思いながら、穏やかな気持ちで紙にペンを走らせた。
奴に<私は以前あなたの見捨てた少尉ですよ>といった文面を書いて見せた。
奴は、それを見て驚くとともに、命乞いをはじめた
何度も「あの時は、悪かった。許してくれどうか命だけは!!」と惨めな姿を私に見せた。
しかし、私に彼への怒りなど、もう無かった。
私は、さっきの彼に銃を借りると中隊長のこめかみに当て一度だけ引き金を引いた。
メモを彼の腹に空いた穴に突っ込むと、針葉樹の枝を見ながら血のついた指を舐めた。
吐く息は白くそして輝いていた。
私は、「大佐」を助けに来た彼にもたれ掛かった。
すると、先ほどの陵辱の証が体の中からドロっと逆流してきた。


私は、足を伝うそれに薄い赤色が混り、
この白一色の世界を汚しているようで残念でならなかった。


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