僕はジム=ナイト。17歳。バスケットボールの選手だ。
宿敵フーバー高との対戦試合。僕の身体は熱く汗ばんでいた。
ゲームの残り時間は残りわずか。ベースラインを突進するとシュートの体勢に入った。
まさにゲームに勝利するその瞬間だった。

僕は相手のセンターに肘で突かれて後頭部をバーにぶつけてしまった。
衝撃で頭に閃光が走る。僕の意識は半分ほど消し飛んでしまった。
チームメイトが助けに入る。
すると僕の目に映る光景が揺らぎ始める。
小さなスタンドが並ぶ高校の体育館の光景に、突然不思議な光景が重なった。

  ◇◆◇

いつのまにか僕は汚い床の上で倒れていた。
意識は朦朧としている。
泣き声が聞こえる。僕のお尻と小さな胴体は泣き声に共鳴していた。
足がシクシク痛む。”僕”はその時すすり泣いていた。

  ◇◆◇

ベンチで休んでいるとその奇妙な映像は次第に薄れていった。
チームが勝利して祝賀会が始まると、僕はその奇妙な映像の事をすっかり忘れてしまった。
「ジム、おまえは私達の誇りだ!」
帰宅すると両親は僕を抱きしめて、誇らしげに語ってくれた。
就寝時間。服を脱いでいると突然部屋が消えてゆく。

  ◇◆◇

どういわけか僕は外の通りをビクビクと歩いていた。
地面にハイヒールの靴音が鳴り響く──
(なんだ?! ……何か悪い事が起きてるんだろうか。後頭部をぶつけたから、頭が変になったんだろうか? ちがう、これは夢だ…夢を見ているんだ)
その晩、僕は見知らぬ誰かになった悪夢にうなされていた。

  ◇◆◇

翌朝、目を覚ます。
僕はどうしても悪夢の内容を思い出す事が出来なかった。
大量の朝食を平らげると学校へ向かった。
ジェニファーはブロンドの可愛いガールフレンドだ。
彼女は人目につかない静かな場所で「おめでとう、色男君」そう言って僕にキスをした。
ニヤリと微笑んで、二人はお互いの唇を近づける。
突然景色が一転した。

  ◇◆◇

大きな黒人の男が僕にキスをしながら囁きかけた。
『お前はいい娘だ、金を持って来れば俺は優しくなれる』
『うん、ジェシー』

  ◇◆◇

いつのまにか僕はジェニファーの前に戻って来ていた。
(僕の身に何が起こってるんだ…)
僕は脅えた。
彼女は僕が目の前から消えた事に全く気が付いていなかったのだ。

授業が始まる。
つまらないアメリカ史の授業に専念しようと教室に入った。
午前中が何事もなく過ぎ去ろうとしたその時だった。
急に落ち着かない気分になリ始めたのだ。
教室は揺らぎ始め、僕の意識は興奮の渦に飲み込まれていく。
突然、教室は消え去った。

  ◇◆◇

なぜか僕は顔に涙を流していた。
『まぁいいだろう。ディオニー、おまえの稼ぎに期待しよう』
男の声が聞こえると僕は左腕に注射針の痛みを感じた。
すると僕は幸福感に満たされて、ヘラヘラと笑い始めてしまった。
僕は少しの間混濁した意識の中を漂流していた。

  ◇◆◇

気が付くと僕は英語の授業に戻っていた。
周りを見渡す。誰も何かに気付いたように見えない。
額に手を伸ばすと、そこは玉のような汗がにじんでいた。
(何かが僕の身に起こっている)
僕は試合で倒れてから不思議な光景や感覚に度々遭遇していた。
それは、僕自身がどこかの誰かになった様な体験だった。

授業が終わる。
バスケットボールの練習中、僕はどこもかしこも調子が良かった。
練習が終わると僕はジェニファーとピザを食べに出かけた。
僕達学生は二人っきりになれる良い場所を知っている。
僕らは人目を気にしなくてもいい場所に入ると、そっと彼女を抱きしめた。
ああ、神様! 抱きしめた腕から彼女のやわらかい感触が伝わってくる。
その時突然。

  ◇◆◇

そこはホテルの部屋の中だった。
目の前の男は僕に抱きしめていた。
『おまえ、本当にデカパイだな!』
ニヤリと笑って言った。
鏡にちらりと写った自分の網ストッキングの黒い脚とハイヒールのブーツを見逃さなかった。

  ◇◆◇

気が付くと僕はジェニファーのところに戻っていた。
「すっごい! そんなキスどこで覚えてきたの?」
彼女が僕に言う。
何が起こったのか分からない僕は答える事が出来なかった。
(僕がキスした? いつどんなふうに?)
僕は驚いていた。
僕がどこに行っていたのか言葉にできなかった。
その夜、僕はこれまでの出来事を少しだけ家族に話した。
心配した家族は、僕を明日医者に診せに連れて行くと約束してくれた。
僕は自分でも大人だと思っているが、医者行くという事に不安を覚えた。
(僕の身に何が起こっているんだ)

  ◇◆◇

僕はシャワーを浴びていた。
突然、胸の膨らみを伝って水が滴り落ち始める。
後ろに誰かの気配を感じた。
いきなり僕の敏感な乳首に荒っぽい手が覆い被さる。
僕の柔らかいお尻に何か固いモノが、ぐりぐり押し当てられた。
『売春婦とシャワー浴びながらが最高に興奮するんだ』
しゃがれた声は言った。

  ◇◆◇

僕は平穏な自分の部屋に戻っていた。
それは自分が全く別人になっていたような
信じられない奇妙な体験だった。

僕が眠りに入る長い時間だった。
僕は夢を見た。

  ◇◆◇

僕はストリートを痛む足で歩いていた。
頭の中は不安で一杯だった。
十分に稼げなかったので、ジェシーの機嫌を損ねてしまうと頭の中で心配をしていたのだ。
自動車が止まると僕は必死に顔の表面に可愛らしい笑顔を作っていた。

  ◇◆◇

翌朝。僕は病院で診察受けた。
大した問題はないと診断され、薬物治療と精神安定剤の処方を受けるように薦められた。
試合でミスしないことを心から望んでいたので、僕は治療を受ける事にした。
薬を服用すると気は鎮まるが、再び自分が変わってしまうような気がした。
僕は腕の中の注射針を感じると安心で震えだした。

その夜、ジェニファーが会いに来た。
用件は彼女の可愛い顔に書いてある。
彼女が僕にキスしようと身を乗り出した。
その時だった。

  ◇◆◇

いきなりお尻に痛みが走る。
僕はベルトで鞭打たれていたのだ。
『痛っ!』
思わず悲鳴を上げた。
その声は自分の声とは異なる甲高い女性の悲鳴だ。
震えたような低い声が聞こえる。
『そそうだ、ももっと叫べ雌犬め! お俺に、ひ……悲鳴を聞かせろ!』
『いっ痛いぃぃ』
『お……おまえの悲鳴に$100のチップを出してるんだぞ!』
『ぎゃっん』
涙が頬を流れ落ちる。
再びベルトが打ち下ろされる、僕はさらに悲鳴をあげた。
『い、痛っ』

鞭打ちは終わった。
振り返って後ろを見ると、そこには太った顔を汗だくにした、疲れきった白人ビジネスマンがいた。
さらにほんの少しだけ振り向くと、鏡の中に巨乳の若い裸の黒人女性がベッドに横たわっている姿が写っていた。

  ◇◆◇

ホテルの部屋が消えていく。
入れ替わりに、僕は平和な自分の部屋へ戻っていた。
いつのまにか僕はジェニファーのおっぱいを撫でている事に気がついた。
彼女は僕の手の動きに合わせて呻き声を漏らしていた。
「あぁぁん、ジム、それ、すっごくきもちいいよぉ、なんで、前やってくれなかったの?」
可愛いブロンドがかかるほどに身を乗り出して、ジェニファーは僕に軽くキスをした。
僕のモノは服の上からもはっきり分かるほど盛り上っていた。
ジェニファーはそれを見て満足気に微笑む。
彼女は僕の股間に片手を伸ばすと、ズボンの上から固い膨らみを弄び始めた。
「ん〜っ固くなってる。ねえ、きもちいい?」
彼女は部屋の入り口のカギを掛けてゆっくりと振り返ると、服を脱ぎながら僕のほうへ近寄ってきた。
僕は慌ててその場に自分の服を脱ぎ捨てた。
(今から彼女を抱けるんだ!)
僕は興奮した。
裸になった二人は両腕を相手の背中にまわすとお互いの若い体をそっと抱きしめる。
胸は高鳴り至福の気分だった。
その時。

  ◇◆◇

突然、さっきと同じホテルの部屋にいた。
目の前にはさっきとは別の大きな男が覆い被さっていた。
男は僕の股間に何かを押し当てるとそれを乱暴に押し込んだ。
『痛ったい! やめてくれぇ』
男が大きく注挿を繰り返す度に痛みで悲鳴を上げる。
『痛い! やめてぇ』
興奮した男はその大きなモノを乱暴に押し込む。
あまりの出来事に僕は正気ではいられなくなっていた。

  ◇◆◇

何の前触れもなく僕は部屋に戻っていた。
満足げな顔をしてジェニファーは僕にキスをしていた。
「ジム、あなたは初めてじゃないのね。だって女の子をこんなに夢中にさせる事ができるんだもん」
僕のモノはまだジェニファーの中に収まっていた
しかし僕は挿入した事をどうしても思い出せなかった。
「ねぇ まだ抜かないで」
彼女は甘えた声で囁く。
「あなたは若いし逞しいし、私達はもっと出来ると思うの」
その時、目の前からジェニファーの笑顔が消え去る。

  ◇◆◇

僕はホテルの部屋へ戻っていた。
再びあの、黒い売春婦になっていたのだ。
僕に覆い被さっている大きな男は何やら自慢気に話しかけてきた。
『みんなは俺様を5連発のピートって呼ぶんだぜ、お嬢ちゃん』
下腹部に挟まっていた塊が動き始める。当惑していた僕は悲鳴を上げた。
男はやる気満々、僕の体は苦痛にさいなまれていた。
残る気力で僕の身のまわりを見渡してみた。
細く愛らしい手には血の様に赤い長いネイルクリップ。
大きなおっぱいは僕の体の上を前後に移動する。
僕の思考はアルコール薬か何かが原因で霧がかかったようだった。
男が掴む長い髪は僕の頭を引っぱっていた。

  ◇◆◇

いつのまにかガールフレンドがいる僕の部屋へ戻っていた。
「ジム、今夜は最高の夜だったわ。あなたは最高のパートナーよ!」
彼女は僕に振り向いて言った。
ネコのようにゴロゴロと僕に甘えて喉を鳴らす。
僕は笑顔を作ると彼女を抱きしめる。
しかし僕は忌々しい悪夢に脅えていたのだ。

その夜。
僕の夢はごちゃごちゃにされて、うなされるようになった。
決まって朝になると思い出す事が出来なかったのだ。

翌日、僕は学校のカウンセラーのフリーベルグ先生に会いに行った。
その女性は見下すような笑顔で僕を迎えると
「ジム、貴方は白人中流階級特有の女性やとりわけ黒人女性の性差別、人種差別主義者の典型ですね」
そう診断を下した。
僕にはそれがとんでもないデタラメの発言に思えた。
自信を持って言える。僕は差別主義者ではない。
実際、同じチームの黒人は皆友達だったし、しばしばお互いの家に遊びに行く程の仲なのだ。
しかし僕は何にでもすがりたい気分だった。
カウンセラーの話を聞き続けた。
「恐ろしい幻覚に打ち勝つには、まず貴方が恐れに立ち向かう必要があるのです」
「それには貴方自身でディオニーが存在しない事を証明するのです」
「貴方が言っていたように、今夜フランクリンの車道をブラブラ歩いているディオニーが存在しない事を証明しなさい」
「恐れに直面する事だけが解決方法なのですよ」
僕はそれを試みるつもりだった。
ディオニーを探す理由がもう1つあった。
『ジムこっちへ来てよ、ディオニーに会いに来てよ、あたし達一緒に楽しもうよぉ。』
僕の頭の中にディオニーの声が聞こえるのだ。

カウンセラー室から出ると、ジェニファーが心配そうに待っていてくれた。
「土曜の夜、大試合の後でね。色男君さん」
僕にウィンクして囁く。
僕に笑顔が戻ってきた。
(僕の幻覚には何の根拠もないんだ……フリーベルグ先生の言ってる事はちょこっとだけ正しいかもしれないけれど、幻覚は脳震盪が原因に決まってるんだ)

  ◇◆◇

その夜、僕は家族と夕食を食べ終えると、ディオニーを探しに自動車でダウンタウンを見回りに出かけた。

ここは体を売る10代の白人や黒人の女の子が集まっている所。そこにディオニーはいなかった。
(神様ありがとう。そうだ……彼女は僕の脳が見せる幻覚なんだ)

自宅に戻ろうと自動車の向きを変るとその時、なんと僕は彼女を発見してしまった。
彼女も同時に僕を見つけたようだった。
微笑みながらこちらに向かって大きく手を振っていた。
(ディオニーは本当にいたんだ……)
僕は彼女を助手席に招くと、彼女は色っぽくシートの中へ滑り込んだ。
彼女は可愛らしいが、あちこち生傷だらけの体をしていた。
黒く短いビニールスカートに網目のストッキング、12cmものヒールがある黒いエナメル革のロングブーツ、そして大きな胸を強調するような赤いブラウス。
彼女はキツイ化粧をしていた。
「あたしも17よ。あんたと同い年なんだよジム」
 彼女は笑って言った。
「ねぇ、僕達に何が起こっているんだろう?」
「あたし分かんないよぉ。あたしも時々あんたになったけどね」
「ジム、あんたってジェニファーとはラブラブなんだよねぇ」
「おい!」
「ごめんごめん……ねぇあたし達もっとお話できるところに行こうよ」
 彼女はハスキー声で笑った。

僕達はホテルの部屋にいた。
そこは僕が彼女になっている幻覚で見ていた時にいた部屋だった。
「あたしのヒモさ、あたしの客のために部屋を用意してるの」
 ディオニーは艶っぽい声で言うと、僕を刺激するように脚を組んで座った。
彼女に会って話をする事は非常に不思議だった。
ここ最近、僕は目の前に座っている女性に度々なっていたのだ。
神経質にゆっくりと歩きながら、事の始まりを思い出そうとした。
「僕は……バスケットボールの試合中に、頭をぶつけたときからそれが始まったんだ。急に……」
「あたしも思い出した」
 ディオニーは遮って、
「あたしのヒモのジェシーがさ、あたしをちょっと虐待したの。ポリ公がアイツを徹底的に捜索してて アイツ動揺してたの」
「あたし、あなたの体育館でベンチに座っていたとき、これは夢だと思ってたの」
「きっとそれだよ! どういうわけか僕達は同時に同じ種類の衝撃を受けて、心の回線が繋がったんだ」

彼女は大きく口を広げてニヤリと笑った。
「多分ね! ……でさぁ十分話もしたし、ヤらない?」
「や、やらない?」
 僕は弱々しく返す。
「そう! あんたの本心はあたしと姦りたいって事知ってるんだ」
「それに姦ればさぁ、きっとこんな事、もう起こらなくなると思うんだよね」
「あたしさ、どっかのデブのチンポに犯られる代わりにジェニファーを姦ったのは楽しかったよ」
 僕は何か言い返そうと口を開く。
ディオニーは立ち上がって僕の正面に忍び寄ると、両手で僕の顔を少しだけ引き寄せて、唇を押し付けた。
彼女の舌は僕の唇を割って、口内を侵していく。
舌を絡めあう濃厚なキス。
「んんっジム、これっていいでしょ……ね、ディオニーを信じて。二人で忘れられない夜を過ごしましょ」
(逃げろ!)
僕の心は危険信号を鳴らしていた。
(ここに留まれ!)
しかし情欲に冒された体は動けなかった。

彼女の細い手は僕の下半身に伸びると、次第に大きく膨らむモノをズボンの上からやさしく撫でる。
彼女は僕のズボンを下ろすと、ベッドの方へ優しく押した。
僕の股間の前に跪くと、僕の股間のモノを美味しそうにしゃぶり始めた。
僕にとってそれは生まれて初めてのフェラチオだった。
「ねぇ、上手でしょ。お世辞抜きで、あたしがストリートで一番上手にやってくれるってみんないうんだよ」
僕は彼女の乳房を弄び始めた。
「あぁん、ジム、それいいよぉ、いいよぉ、あたしたちもっと一緒になろうよぉ」
彼女は裸になった僕の体全体に丹念に舌を這わせた。
僕は呻き声をもらす。頭の中で光が輝き始める。
彼女の花弁からは溢れ出す蜜は股間を濡らして、ホテルの薄暗い照明に照らされて怪しく輝いている。
彼女は僕の上に跨ると、僕のモノを手で握って割れ目に押しあてる。
ゆっくり腰を落して騎乗位の体位を取ると彼女はうっとりと微笑んだ。
僕はディオニーに蹂躙されていった。

僕の心は興奮で耐え切れないほど登りつめていく。
ディオニーを押し上ると、彼女は切なそうな喘ぎ声を上げる。
その声は僕の興奮で荒れ狂う心の渦をかきたてる。
彼女を押し上げると僕の心は彼女の心に押されていく。
彼女の中に深く押し入ると彼女は僕の内に深く入ってくる。
気が付くと僕の下腹部の中で何かが蠢き始める。
それはゆっくり上下に移動しはじめると、蕩けるような快楽が体を駆け巡る。
僕は再びディオニーの中にいたのだ。

男はリズムカルに腰を突き上げると、大きな膨らみは胸の上を跳ねまわり僕は女の声で嬌声を上げる。
力強い男の手が僕の細い肩をがっしり押さえつけると、男はついに耐え切れず膣の中に何かを吐き出しつづける。
僕の体と心に何かが染み込んでいく。

  ◇◆◇

「ふう」
 下にいる男は僕の声で満足のため息をついていた。
僕は軽く頭を振ると、長い髪はサラサラと肩から背中を撫でていく。
しばらくの間、余韻を楽しんでいた。
今回はいつもの体験とは何かが異なっていた。
上手く説明できないが何かが違うと感じていた。
下にいた男は体を捻って僕から離れた。
花弁から肉棒がするりと抜けると、
僕の秘唇から蜜に混ざった樹液がこぼれ始めた。

僕は自分の体が起きあがって、体を伸ばしているところを見た。
「あたしに会いに来てくれて、ありがとう。あたし自信なかったの、マヌケな精神科医に感謝しないとね。
あんたが来るように囁き続けたけど、それは彼女……えっとフリーベルグ博士に言われなきゃ来ないと思ってたの」
男は笑っていた。僕は混乱している。

「わかんないの? 考えてごらんよぉ、あんたは今誰なのか。乱暴なヒモのヘロイン中毒でホームレスの黒い売春婦?
それとも愛する家族と恋人がいるバスケットボールのスター選手なイケメン君?」
男が何を言っているのか気が付いた。
「いやだ!」
「いいの! あたしがたった今からジム=ナイトで、そしてあんたが売春婦のディオニー。お幸せに!」
僕の体は笑った。
「心配しなくていいよ。あんたはきっとあたしの体が好きになるよ……ムリかな?」
 新しいジムは二つ折り札入れを開くと現金をすべてベッドに投げた。
「あたしを信じて、あんたは ほんのちょっぴり価値があったんだよ」
 僕は男に飛び掛った。
背が高く強い男はニヤリと笑うと、軽々とあしらう。
小さな弱い女の身体を軽く引っ叩くとベッドへ放り投げた。
僕の今の体ではなす術がなかった。

僕はベッドの上ですすり泣いていた。
「君はその体を使いなよディオニー! そいつが君の新しい運命なのさ。僕はこれから両親の所へ帰るつもりさ。
今きっと僕の事を心配してくれているって分かるんだ。ジェニファーと過ごす土曜の夜も考えているんだ……彼女はう〜ん、可愛くって素敵だよ」

ディオニーの記憶が僕の頭の中で再生を始めると、あたしの心は恐怖に凍りついた。
明日は生理の予定日だったという事。
しかもジェシーはそれでも薬欲しさに彼女(あたし)が働いている事を期待しているという事。
腕を見おろすとそこには注射針の痕があった。
新しいディオニーはドアの開く音を聞いた。
新しいジムは扉を途中まで開ける
「それでは、ごきげんよう。君もディオニーらしくなるんだよ!
ところでさ、もっとお金集めたほうがいいと思うよ。ジェシーは短気だからね」

黒い売春婦は泣き始めた。
対面の鏡には淫靡な女性が写し出されていた。
その魅力で男どもに彼女を連れ去らせる事が出来ただろう。
ビニールのスカートを腰に通すとハイヒールのロングブーツを履いた。
鏡の前に移動すると化粧を整え始めた。
(神様ぁ、あたしアイツだいっきらい)
ジェシーをぶっ殺す方法を思いついた あたしは苦々しく口を歪めた。

急激な変化がディオニーに襲い掛かかる。
(あたしジムからディオニーまで落っこちちゃったんだ……カウンセラーのばかぁ〜世の中のばかぁ〜あたしのばかぁ〜)

ディオニーはトボトボと階段を降りて行った。
「また客引きかい? ディオニー、さっきの子かわいかったじゃない!」
初老のフロント係の女性はあたしを見つけると親しげに話しかけるとウィンクした。

あたしは無言で夜の闇へ戻っていった。いつものストリートへ目印を探して歩いていく。
あたしは自分の運命が何なのかを知ったのだ。


End


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