「ちょっと熱いな……」
「そうか?」
「服を着るのも久しぶりだからな」
敬介はスーツの上衣を開き、ブラウスの胸元のボタンを外した。
乳房の弾力だけでブラウスの前が大きく開いて、巨大な胸の谷間が空気に晒された。
胸をサポートしている黒いブラジャーも、胸のなめらかな曲線を覆いきれてはいない。
春彦の喉がゴクッと鳴った。
敬介が胸元を手で仰ぐたびに、胸がゆさゆさと大袈裟に揺れ、春彦を誘惑しているようだった。
「テ、テレビでもつけようか」
春彦は自分の動揺を誤魔化そうとするようにリモコンを握った。
ところが動揺のせいかリモコンは春彦の手からすべり落ち、ジュースの入ったコップを倒してしまった。
こぼれたジュースが流れ落ちて、畳を濡らした。
「あーあ、なにやってんだよ。シミになっちまうぞ」
敬介は卓袱台の上にあったティッシュペーパーを何枚か掴むと、身を乗り出してこぼれたジュースを拭き取った。
ちょうど春彦が見下ろす位置に敬介の胸の谷間が踊った。
「おい……」
「あ、お前の足にもこぼれてるな」
敬介はついでにとばかり、ティッシュで春彦のトランクスから出ている腿を拭いた。
そのとき敬介は、トランクスの股間に大きくせりあがってきたテントを目にして息を呑んだ。
「春彦、お前……」
「ごめん、敬介! でも……そんな躰を近くで見せられて、触られたりしたらたまんないよ。いやでも勃起しちまう」
「春彦、まだ彼女いないのか?」
「悪かったな、いないよ。風俗いく金もないしな。恋人は右手ってか。
実はお前が訪ねてくる直前までAV見てたしな。わはは」
「そうか……悪い。溜まってるとき、こんないやらしい女の体がそばで動いてたら、嫌がらせみたいなもんだよな」
「頭じゃわかってるんだ、敬介だって。だから安心しろよ。手出したりしないから。
そのかわり……俺ちょっと便所で一発抜いてくるわ。そうしないと収まりつかねえ」
「待って」
敬介は春彦のトランクスに張ったテントに手をかぶせた。
「うひゃあっ!? や、やめろよ……いまのお前、すげえエッチな女に見えるんだぞ」
「我慢しなくていいよ、春彦」
敬介は囁くように言った。
「辛いんだろ、春彦。そうだよな、こんな女の体見せつけられたら、欲情しちまうよな。
オレには何もできないけど、この体なら春彦の好きにしていいよ。なんなら、溜まったもんを抜いてやるよ」
「抜くって……げ、下品だぞ……」
「はは。いくら外見が女でも、中身はオレだからな」
「うう。そりゃまあ納得だな」
空笑いしながら春彦は生唾を何度も呑み込んでいた。
「なあ、敬介。そのオッパイ、触らせてもらっていいか?」
「う、胸は……」
敬介は一瞬、言葉を濁らせた。ただでさえ敏感な胸だが、いまでは絞ると母乳が出るようにされている。
乳房を弄り回されるのは気が進まなかったが、春彦は伏し拝まんばかりの勢いで頼み込んできた。
「そんな立派な胸突き出させておいて、触るな、は殺生だよ。頼む、ちょっとでいいから触らせてくれ!」
「わかったよ……でも、あんまり乱暴にしないで……」
春彦が敬介の後ろに回り込んだかと思うと、左右の胸が下から持ち上げられた。
重く胸にのしかかっていた重量がふわっと軽くなる感じがした。
「あ……」
「やわらけぇ……!」
敬介の首筋に熱い吐息が吹きかけられる。
春彦の興奮にあてられてしまったように、敬介は次第に自分自身、高ぶっていくのを感じていた。
巨乳が持ち上げられ、春彦の手の上で何度もバウンドさせられた。
敬介は自分の胸を見下ろした。
嵐の海のように激しく波打つ胸のふくらみが自分の体の一部だとは到底信じられないくらいだった。
それでいて、心地よい刺激はしっかりと胸に感じる。
後ろから胸を押さえつけるように手を当てると、春彦はその状態でゆっくりと双球を円運動でこね始めた。
「あぁぁ……」
淫らに熟れた乳房をこね回され、敬介はすっかり感じてしまった。
甘くとろけるような快感だった。
男のペニスのように敏感な性感帯と化した乳首がブラジャーの滑らかな裏地に擦れて、
そのたびに敬介はぴくっ、ぴくっと反応してしまう。
「胸、もっと見せてくれよ」
「あ、ああ……」
乞われるままにブラウスのボタンをさらにいくつか外した。
敬介はそこで止めるつもりだったのだが、春彦がブラウスを大きく左右に開いてしまった。
クリームのようになめらかな肌があらわれ、深い胸の谷間がいよいよ露わになってしまった。
春彦はその谷間に手を差し入れてきた。
熱くなっていた乳房に直接男のごつごつした手が触れ、敬介は思わず悩ましい吐息をついていた。
「あああ……あふぅ……」
「色っぽい声だな……やっぱり感じてる?」
「ば、バカ! そんな恥ずかしいこと言うなよ!」
「そうかそうか、感じちゃってるんだな」
「それは、この胸が敏感すぎるから……」
「へえ。そりゃいいこと聞いた」
「あっ、あっ、ちょ……くうっ!」
ブラウスの胸元は左右に開かれて、ブラジャーに包まれた胸が完全に露出している。それを春彦が激しくこねた。
大きくもまれるたびに、たぷんたぷんと乳房が揺れ動く。
それだけで声を堪えるのが精一杯だというのに、ブラのカップの中に指が侵入してきて、くりくりと乳首を摘んだ。
「くぁああああ!!」
ぴゅうっ、と乳首からミルクが吹き出していた。
「お?」
春彦は手を引っ込めて、指についた白い液体を不思議そうに眺めた。
「これ……まさか、母乳なのか?」
「ああぅ……そういう体にされて……だから胸はあんまり弄らないで……」
「どうして? 気持ちよさそうな顔してるじゃん? 俺も敬介も気持ちいいんだから、いいじゃないか」
春彦は母乳で濡れた手で、さらに乳房を攻めた。
ボリュームのある乳房全体が性器になってしまったように、
揉まれるだけでたまらない快楽が押し寄せてきて、敬介をよがらせていく。
乳頭をちょんと押されただけで、じわっと母乳が染み出た。
何度も乳首を弄られたせいで、ブラがすっかり自分の乳汁で濡れてしまった。
「すげえ、甘ったるいミルクの香りがしてくる!」
「や、やぁぁぁっ!」
「へへっ、女の子みたいな声出すんだな」
「だって……あく……母乳出すのだけは嫌だよぉ……」
春彦がブラの布を指でずり下げると、弾力に押されてぷるんと乳房が飛び出した。
乳首を付け根からしごくように摘まれると、ぴゅぴゅっと母乳が噴き出した。
「ふぁぁうう!」
敬介はあまりの強い快感にのけぞった。
「そうだ、敬介。自分で自分のオッパイ揉んで、出てきた母乳を自分で飲んでくれよ」
「やぁっ、そんなこと……」
快感の余韻にはぁはぁと喘ぎながら敬介は首を振った。
「頼む! こんなこと頼めるの、敬介ぐらいしかいないんだ!」
「………………」
春彦はもうたまらない気持ちになっているのか、トランクスを下げて怒張しきったペニスに手を添えていた。
(ペニスがあんなに……オレの躰を見たせいで……)
春彦のせつなさそうに眉を寄せた表情を目にして、敬介は淫らな雌の体を恥じるとともに、一抹の申し訳なさを覚えた。
(オレを匿ってくれるんだから……少しくらい希望を叶えてやっても罰は当たらないか……)
春彦は口づけをするように敬介の胸に顔を寄せると、乳首を口に含んできた。
「ひゃああっ!?」
舌を絡められ、乳首を強く吸われると、乳腺に溜まっていた母乳が迸り出た。
「くぁっ……ああぁぁんっ……」
射乳の快感に声を抑えられない。
肉体の快楽が少しずつ、親友と性的行為をしているという嫌悪感を霞ませていく。
春彦が乳首から口を離したとき、敬介は「あんっ」と鼻にかかった声を出していた。
もうやめてしまうのか、という不満の気持ちがそんな声をあげさせたのだった。
敬介は唾液と乳汁で汚れた乳房を袖で拭いた。
その摩擦の刺激だけで、甘ったるい快感に脳が痺れてしまいそうになる。
敬介の視界の端にちらりと壁の時計が映った。
「春彦。オレは人間として話したり立って歩いたりできるのは、あと少しのあいだだけなんだ。
たぶん、もうすぐオレはまたイヌに戻っちまう……。それと、このお腹に赤ちゃんがいるんだ。
夏の終わり頃には出産することになると思う……
そのとき、春彦に迷惑かけると思うけど、そのかわり今できることなら、なんでもするから
「お……お前、妊娠してたのか!?」
「……どうしようもなかったんだ。メス犬に変えられて、発情期で何も考えられなくなるくらい欲情しちゃって……」
「そうか。慰めの言葉も見つからないけど……辛かったよな」
春彦は華奢な少女のそれになった敬介の肩を抱き、敬介の頭に手を置いた。
「あぁ……」
詩織によって埋め込まれた条件付けによって、頭を撫でられたことで敬介の心は圧倒的な安心感と、
春彦を慕う感情で満たされた。
かすかに鼻を鳴らし、敬介は春彦に抱きついた。胸の双乳が二人のあいだでおしつぶされるように変形した。
どちらからともなく、唇を求め合った。舌で口腔内をまさぐられるだけで、体の芯がじんじんと疼いた。
名残を惜しむように二人は唇を離した。
「人間でいられるうちに、春彦の望みを叶えてやるよ」
敬介は敷きっぱなしの布団に移動して、そこに身を横たえた。
万年床には、若い男の体臭が染みついていて、そのニオイの成分が媚薬のように敬介をたかぶらせた。
「あぁ……見てて……」
仰向けになってもなお小山のように盛り上がった乳房を自分の手で掴んだ。
「ふ……うっ……」
ゆっくりと、左右の乳房をこねた。
布団の手前で、春彦は食い入るように敬介の痴態を凝視していた。
「そんなに見るなよ……恥ずかしいだろ……」
「そんなことない。かわいいよ」
「ばか……オレは男なのに、嬉しいわけないだろ」
そう言いながら、敬介は首まで赤く染まるほど顔を紅潮させた。
恥ずかしさと奇妙な悦びのごちゃ混ぜになった感情を忘れようとするように、
敬介は自分の体をつかった遊戯に没頭していった。
まるで子供が珍しい玩具をいじるように、存在感のある乳房を縦横にこねたり、
手で胸を揺らして乳房を波立たせたりした。
そんな指戯のひとつひとつが、むず痒い快感をもたらし、さらなる快感を求めて敬介の心を乱していく。
敬介の淫靡な一人遊びから片時たりと目を離さないまま、春彦は己のペニスをしごき初めていた。
(あはぁ……精液のニオイがしてくる……なんでこんな甘く感じるんだ……)
乳腺に母乳が溜まり、胸が甘く痛いような痺れを訴える。
「オッパイ溢れそう……見て……」
左右から寄せるように乳房を押さえつけ、ふくらみの根もとから先端へと手をしごきあげると、
ピンと張り詰めた乳首の先からドクドクと白い液体があふれ出た。
「うぁ……やらしい……」
そう呟いたのは敬介自身だった。
小さなペニスのように勃起して白濁液を吐き出すピンク色の乳首がたまらなく淫らだった。
その勃起した乳首を指で軽くつまんだだけで、たえられないほどの快感が走った。
いつしか、春彦に見せるための行為が、自身で快感をむさぼる行為にとって代わられつつあった。
張り詰めた胸を弄る快感と、眼前で繰り広げられる淫靡きわまりない光景が、もっともっとと敬介を突き動かすのだった。
左右の乳房を擦り合わせるだけで滑らかな肌と肌が触れ合い、男のオナニーでは想像もできないほどの快感を味わえた。
乳房を下からすくい上げると、ぷるんと弾んだ乳首が口元にぶつかった。乳首は灼けた鉄のように熱くなっていた。
敬介はてらてらとぬめる乳頭を口に含もうとした。
まるで敬介を弄ぶように乳首の位置がゆらゆらと定まらず、それを追いかけて敬介は口をぱくぱくとさせてしまった。
ついに熱い乳頭を唇のあいだに挟むと、敬介はそれを吸った。
じゅわぁっ……
口の中一杯に、甘いミルクの芳香が広がった。
(自分のオッパイ……吸ってるなんて……)
敬介は無意識のうちにスカートの下で両脚の腿を密着させ、もぞもぞと動かしていた。
もてあますほどの奔流のような快感が全身に渦巻いていた。
甘い刺激が欲しくなり、今度は反対側の乳頭を同じように含んだ。
歯の間に挟んだそれを吸うと、また濃密な乳汁が迸り出た。
「はぁぁぁ……」
甘く喘ぐと、唇の端からミルクがこぼれた。
「俺もう、イッちまうよ……!」
春彦はペニスを激しくしごきながら、敬介の傍らに膝をついた。
「いいよ……気持ちよくなって!」
「ケースケぇ!」
春彦が敬介の体を跨いだかと思うと、赤黒いペニスが迫ってきた。
敬介は乳房を両脇からきつく押さえて寄せた。
腹にペニスが触れると、その熱さが心地よかった。
ペニスは左右の乳房のあいだに形作られたスリットへと滑り込んできた。
「あぁぁぁあぁぁっ……!」
灼熱したシャフトに胸を貫かれたような心持ちがして、敬介は叫んだ。
春彦もまた、獣のように呻いていた。
ずっ、ずっ……
胸乳の狭間をかきわけ、ペニスが前進する。
少しでもその男性器官を気持ちよくさせようと、敬介はペニスを挟んだ乳房をグラインドさせ、ペニスの表面を擦った。
「くはぁ……夢、みたいだ……」
「ハァ……ハァ……いまはこの体、ぜんぶ春彦のもんだよ……」
「はは……お前、やっぱかわいいよ」
春彦は片方の手で敬介の頭を撫でた。敬介はその愛撫で恍惚とした表情になる。
かわいい、と言われることが純粋に嬉しかった。
スカートのホックとファスナーが器用に外され、その隙間から差し入れられた手で股間をまさぐられた。
「ひぁぁぁっ!」
「こっちには、コレ入れてやるよ」
春彦は流線型のキャップのついた糊の容器を取り出して、
それの先端でパンティの上から割れ目をなぞったかと思うと、
下着の布地をずらして、熱く濡れそぼった膣にそれを挿入した。
「やっ……ああぁぁああぁぁッ!」
その挿入で敬介は軽いアクメに達し、体が震えると同時に乳首から白い液をこぼしていた。
ぽたぽたと垂れた母乳が敬介の胸を汚していく。
「俺も最後までイカしてくれよ」
春彦に促され、喘ぎながら敬介は乳房を使った奉仕を再開した。
胸の谷間から亀頭がひょっこり顔を出した。
乳房の動きは継続したまま、敬介は舌を突き出して亀頭を迎えた。
「ッフウッ!」
たまらなくなったのか春彦がガクガクと腰を揺すった。
突き出されたペニスの先端を敬介は精一杯頬張った。
シャフトの根もとをやわらかな胸の肉で包み、しごきあげながら、口腔内では舌で丹念に亀頭を舐め回した。
ついに春彦はうおおと叫び、からだを硬直させた。
射精の瞬間を悟った敬介は、精液を絞り出そうとするようにいよいよ激しく胸でペニスをしごいた。
「っ……!」
どっと口中に熱いザーメンが注がれた。
(オレの体で気持ちよくなって、こんなに出してくれた……)
愛おしく誇らしい気持ちになり、敬介は口から溢れそうになるほどのザーメンを、喉を鳴らして飲み込んだ。



春彦はのろのろと大儀そうに敬介の上から体をどかすと、敬介のすぐ隣にごろりと仰向けになった。
イッた直後の男の体の脱力感と空虚感を思い出し、思わず敬介はクスッと笑ってしまった。
「思い出した。中坊の頃、パイズリのAVをこっそり二人で見て、目ぇ丸くしたことあったよな」
「あったあった。まさかお前にそれをやってもらえるなんて、思いもよらなかったよ」
「……気持ち良かった?」
「聞くなよ。あんなに射精させられるとは思わなかったぜ」
仰向けだった春彦が寝返りをうって敬介のほうを向くと、むんずと敬介の乳房を片方掴んだ。
「アンッ」
「喉かわいちまった」
いやらしい音を立てて乳を吸われた。
乳房を鷲づかみに持ち上げられてその先端を吸われ、敬介は快感にとろけそうな表情でその行為を受け入れた。
心ゆくまで喉を潤すと、春彦は口元を拭った。
「ははは、生きたミルクスタンドみたいで便利だな、これ」
ミルクスタンドと呼ばれ、敬介の中で昼間の忌まわしい記憶が甦った。
「オレは人間だぞ。それだけは覚えておいてくれよ」
春彦からの返事はなかった。
かわりに敬介の首に何かが巻かれ、カチリと音がした。
「え……?」
「不思議そうな顔するなよ。イヌには首輪が必要だろう?」
錠前の鍵をもてあそびながら春彦は言った。
敬介は呆然と、首に手をやった。エナメルの首輪がそこに巻かれ、頑丈な金具によってロックされていた。
弾かれたように敬介は立ち上がった。
「悪い冗談はよせ! その鍵を渡してくれ!」
「その首輪、自分が何者なのかを思い出させてくれるだろ?」
「う……く……」
敬介の上体がフラフラと揺れた。
二本の足で立ってるという当たり前のはずのことが、ひどくアクロバティックな行為に思えてくる。
どさっ。
ついにバランスをとれなくなって、何かに屈するように敬介は両手を床についていた。
「ちゃんとお願いできたら、その首輪を外してやってもいいぜ」
四つん這いの上体で敬介は春彦を見上げた。
「あぁあうぅぅぅ……ああぅっ……うぅ……」
敬介がどんなに必死で訴えようとしても、もはや人間らしい声も言葉も出てこなかった。
そんな反応を春彦はクスクスと笑って見守っていた。
「やっぱりイヌだよな。首輪がお似合いだぜ、ケースケ」
春彦の顔が嗜虐的な笑いに彩られるのを絶望的な気持ちで敬介は見つめた。
「はだかのメス犬よりも、人間様みたいなスーツを着乱してるその姿のほうがいやらしくていいよな」
「ううぅぅぅっ!」
「おとなしくしろよ。近所迷惑だろ」
ぽんぽんと頭を手で撫でつけられると、敬介の中で怒りがすうっと薄らいでしまった。
(ああ……逆らえなくなる……ぅ……)
「お座りしてみろ、ケースケ」
命じられて、唯々諾々と敬介はそのポーズをとった。
「うはぁ。オッパイもばかでかいけど、ケツもむちむちとそそる形してやがるな。まったくたまんない愛玩ペットだぜ」
「あうう……」
「ケースケ。お前に会わせてやりたい奴がいるんだ」
春彦は部屋の外へ姿を消したかと思うと、しばらくして一人の少女を連れて戻ってきた。
少女……ではなく、“イヌ”だった。敬介と同じ首輪を巻かれ、
胸や股間を露出させたエナメルのボンデージスーツに身を包まれた少女犬だった。
その少女を一目見るなり、敬介には少女の正体がわかった。
(ユキナ……!)
少女は敬介が腹をいためて出産した子の一人だった。
産まれてまもなく引き離された子でも、敬介にとっては間違いようのない面影が残されていた。
「へえ。その目……やっぱり我が子はすぐわかるってか?」
(春彦……どうしてお前がそれを!)
敬介の心を読んだように春彦は歯を見せて笑った。
ユキナを指さして言う。
「こいつは、詩織ちゃんに売ってもらったんだよ。知り合いのよしみで、安く売ってくれたんだぜ。
もちろんお前がイヌになって調教されてることもちゃんと聞いてたさ」
ユキナが敬介のほうを向いて、ウウウと低く唸った。
(ああユキナ……オレだよ、わからないの?)
不信感のこもった唸り声をあげ、ユキナは鋭い目で敬介を睨んだ。
「おやおや。こいつはすっかりお母さんのことを忘れてるみたいだぜ。
別なメスにご主人を取られたと思って、ライバル心をむき出しにしてやがる」
(別な“メス”って……オレのことを……)
春彦がユキナの首輪につけられた散歩紐を強く引くと、ユキナは怯えたように鼻を鳴らして唸るのを止めた。
「久しぶりの母子再会だな」
敬介の首にも紐がつけられた。
紐で引っ張られ、敬介はユキナのすぐ前まで連れ出された。
下半身をなんとか隠していたスカートと下着がが引き下ろされた。
春彦に紐を引っ張られ、敬介はユキナに尻を向けさせられた。
今度はユキナに向かって春彦が命じた。
「今度からお前と一緒に暮らすケースケだ。仲良くしてやれ」
「うーっ!」
「うー、じゃねえよ。ほら、挨拶がわりだ。こいつのオマ●コをぺろぺろしてやんな。
へへ、お前が産まれてきた穴なんだぜ?」
そうやって命じられると、観念したようにユキナは敬介の股間に鼻先を近づけた。
そこでクンクンと匂いをかいだかと思うと、長い舌で秘所を舐め始めた。
ぴちゃっ……
四つん這いのまま敬介はビクン、と全身を震わせた。
「あ゛あ゛……」
舌による愛撫から逃れようとして、首につけられた紐がきつく引き絞られた。
「尻向けたままじっとしてろよ」
ユキナは勢いよく舌を動かし、秘肉をかきわけ内側まで掻き出すように舌を這わせた。
すでに火照っていた敬介の体はあっというまに高みに押し上げられていった。
ぴちゃっ、ぴちゃっ。
規則的に湿った音が響く。
そのたび敏感な花弁に舌を這わされ、敬介は喉の奥で鳴いた。
すっかり快楽の波に翻弄されて喘ぎ続ける敬介の前に、小柄な人影が現れた。



忽然と、なにもなかった空間に姿を現したのは、詩織だった。
「詩織ちゃん」
春彦の声を耳にして、敬介は顔をあげた。
敬介の頭上に、詩織の満面の笑みがあった。
「う゛う゛う゛……!」
「よかったね、ケースケ。春彦がお前を飼ってくれるって」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
敬介は絶望のために叫んでいるのか、蜜壺に舌先を差し入れられてよがり鳴いているのか、自分でもわからなかった。
されるがままに抵抗もかなわない敬介の乳房を春彦が掴み、面白半分に母乳をしぶかせた。
「詩織ちゃんからお前を譲り受けてもらえることになって、俺がどんなに興奮したかわかるかよ?」
(春彦……お前、詩織に心を操られて……)
「別に詩織ちゃんに何かされたわけじゃないぜ、ちなみに。俺はお前が羨ましかったんだよ。
高校まで同じだったのに、片やお前は一流の大学に入って文武両道で彼女までいた。
それにひきかえ俺は大学も全部落ちて、専門学校を出たあとはご覧の通り無職さ。
お前が得意げに女とののろけ話をするたびに俺が内心どれだけ屈辱に震えてたと思うよ?
まるで俺を憐れむように気を使うお前の態度も鼻について仕方なかったぜ」
(そんな! 誤解だ、春彦!)
「だけど、いまはもう全部許せる気分だぜ。
なんたって、あの敬介がこうしてメス犬にまで堕ちて俺の足下に這いつくばり、みじめに喘いでるんだからな!
詩織が敬介を指さした。
「ケースケ。これからはどんなことでも必ず、春彦の命令をきくのよ」
ノウブルの力が敬介の心に新たな枷をひとつはめた。
もはや敬介はどんなことだろうと、春彦の命令には逆らえなくなっていた。
「そうそう。ケースケを逃がしたメイドね、あれってあたしの忠実な操り人形だから。
あいつはずっと前にただの人間に肩入れしてノウブルに反逆しようとしたから、
叔父さんたちが完全に心を壊しちゃったの。いまじゃあたしの人形よ。
もちろん、ケースケを逃がしたのもあたしに命令されてそうしただけ。
だから、あれに助けてもらえるかもしれないなんて希望をもっちゃダメよ。ウフフ」
小悪魔のように笑う詩織の前で、敬介はついに押し寄せる快楽の波に耐えきれず、
はしたないよがり声を高くあげてイッてしまった。
「キャハハハ。よくわかったでしょ。自分がメス犬でしかないことが。人間になるなんて、夢見るだけ愚かだってこと!」
「う゛……あ゛……」
「だけどね、忘れさせてあげない。
メス犬でありながら、お前はずっと人間の男だった記憶を持って、
堕とされた屈辱にうち震えながら一生を過ごすといいわ」
「ほらっ、ケースケ。今度はお前が愛娘をイカせてやる番だぞ」
敬介は抗おうとした。
「舌でイカせてやれ。こいつがイクと同時にお前もイクんだ」
春彦の命令は絶対的な権威を伴って響いた。理性でそれを拒もうとするより先に、敬介はその命令に従っていた。
先ほど自分がされていたと同じように、ぴちゃぴちゃと音を立ててユキナの秘所に舌を這わせた。
最初は敬介に愛撫をされて嫌がる素振りをみせていたユキナだが、すぐに甘い声でひんひんと鳴き始めた。
敬介にとっては、最前までの自分自身の姿がこうだったのだと見せつけられるかのようだった。
いつのまにか詩織は姿を消していた。
春彦は手遊びをするように無防備となった敬介の秘所に指を抜き差しして、敬介の反応を楽しんでいた。
「ケースケ。今日からお前は俺の飼い犬だ。俺はお前の御主人様だ」
(春彦が……御主人……様……)
ユキナの秘所にこぼれてくる蜜が、その濃密さを増した。
ユキナはがきゅっと床を掴もうとするように手足の指を曲げた。
「きゃうううぅぅぅっ……」
甘ったるく鳴いてユキナが達すると同時に、敬介もまた強制的にエクスタシーを迎えさせられた。
真っ白な絶頂のさなかで春彦に頭を撫でられ、ひときわ強い幸福感に包まれて敬介は意識を失った。



「ハァ……ハァ……」
「ああぅ……あんん……」
ユキナと敬介は互いの乳房をぶつけ合い、唇を貪り合っていた。
きつく張った乳房をユキナに舐め回されると、敬介はあられもない声でよがってしまう。
敬介もユキナとおそろいのエナメルの淫らな服を着せられていた。
ユキナが牡のように敬介に馬乗りになると腰を振り立て、敬介の股間に秘所をすりつけてきた。
やわらかな媚肉が擦れ合い、二匹の雌は声を合わせるように喘いだ。
そこへ、外から帰ってきた春彦が部屋に入ってくる。
「よしよし。準備はできてるようだな」
春彦の姿を見つけると二匹は股間を濡らしたまま大急ぎで駆け寄り、ばたばたと尾を振って主人を迎えた。
敬介はそれを屈辱に感じながら、躾られた通りにしか振る舞えない。
春彦による“躾”に従い、二匹は濡れそぼった秘所を主人のほうに向けた。
「今日は布団でやらせてやる」
春彦は二匹の尻を叩いた。
敬介とユキナは汚れた布団の上で体を重ねた。敬介の大きすぎる乳房がユキナを圧迫するような格好である。
そこへ春彦が覆い被さった。
「うぅぅぁ……」
いきり立つペニスに貫かれて、敬介は悦びの声をあげてしまった。
三日ぶりの御主人様のペニスだった。
それをもらえない限り、敬介とユキナは雌同士で際限なく体を求め合い、秘奥の疼きをもてあますしかないのである。
一突きだけで敬介から引き抜かれたペニスは今度は、ユキナに差し入れられる。
「きゅうぅぅんっ」
主人のペニスが自分を貫いたことで、ユキナは甘く喘ぎ、勝ち誇ったような眼差しで敬介を見るのだった。
そんなユキナの反応が哀しくも愛おしくて、敬介はユキナの頬を優しく舐めた。ユキナはきょとんとしていた。
ユキナを思う敬介の心を打ち砕くように、再びペニスが敬介の体を貫いた。
主人のペニスをとられたと思い、ユキナが不満げに鼻を鳴らす。
ユキナの疼きを少しでもしずめてやろうと敬介はユキナの固い乳房に舌を這わせた。
負けじとユキナも敬介の乳房を舐めあげ、敬介に甘い鳴き声をあげさせる。
かわるがわる、何度も二匹は犯され、大量の精液を注がれた。
三度精を放った後、大の字で仰向けに横たわる春彦のペニスを、二匹の雌は左右から同時にぺろぺろと舐め始めた。
“御主人様”のペニスは麻薬のようにたまらない芳香を放ち、
それをしゃぶっているだけで満たされた気持ちになっていく。
敬介は自分が二度とかつての自分には戻れないことを、心でも体でも思い知らされてしまうのだった──。



どこかで、遠くで、誰かが、呼んでいた。
その呼び声を耳にしたと思ったとき、すべての現実は砂の城のように崩れて消えた……



────。
名前を呼ばれていた。
──タカミ。声が呼ぶ。
「隆美ってば」
「え、あ!?」
隆美は夢から醒めたようにはっと顔を上げた。
さっきから隆美の名を呼んでいたのは、同じ六年一組の詩織だった。
「どうしたの。ぼうっとしちゃって」
「ご……ごめんね。疲れてたのかな」
「フフッ。へんな隆美」
詩織は水着姿だった。
──当然だ。いまは水泳の授業の前で、ここは学校の女子更衣室の中なのだから。
詩織と隆美以外の女子はみんなプールのほうに移動していた。
隆美がタオルを教室に忘れてきてしまい、詩織はそれを取りにいくのにつきあってくれた。
そんな理由で、二人だけ遅れて着替えをしているのだ。
それまで何か違うことを思い出しかかっていた隆美の頭に、すらすらといまの状況が甦ってきた。
隆美自身、途中まで紺の水着を着ているところだった。
頭からかぶった水着はまだ胸の上あたりで止まっていた。
最近少しずつ女らしくなってきた隆美の体がほとんど露わになっている。
去年あたりから乳首を中心にふくらんできている胸の隆起は、めくれた水着の下で、ぷっくりと突き出していた。
水着を手早く身に着けてしまおうとして、隆美は着替え方を忘れている自分に気がついた。
(ええと、この水着はどうやって着るんだっけ……?)
急がないと、授業に遅れてしまうかもしれない。
だが、隆美は首をひねった。
小学校の六年間、何度も着ていたはずの学校指定の水着の着心地にひどく違和感を覚えた。
それどころか、何もかもに違和感を覚える。
変わり映えもしない日常の光景なのに──。
ふと詩織を見たとき、隆美は立ちすくんだ。
深く吸い込まれてしまいそうな詩織の瞳をどこかで見たことがある、と思った。
「隆美ちゃん、聞いて。このあいだ、クラスで飼ってる兎が毒の餌を食べて死んじゃったでしょ。
あれね、あたしがやったのよ」
隆美は頭がクラクラしてくるのを覚えた。
「どうして、詩織。そんなことするなんてダメだよ」
ずっと昔、どこかでこんなやりとりがあったような気がして、仕方がなかった。
「どうして? だって楽しいから。あたしには、それが許されてるから」
「詩織、おかしいよ──」
そのとき、隆美は言葉を失った。詩織の瞳がまっすぐ隆美を見据えたとき、
堰を切ったように、ありえないはずの過去が隆美の中で甦ったからだった。
「隆美。それともケースケって呼んでほしい?」
「詩織ちゃん……詩織……」
「“こっち”でも、あたしに逆らってみる? あたしはどっちでもいいよ。
ケースケの好きなほうを選びなさい。ふふ」
そう言うと、詩織は自らの股間を覆っていた水着の布を外した。
露わになる未熟な女性器。
「詩織……ちゃん……」
隆美はがくりとその場に跪いた。
そして、恭しく詩織の秘所に舌を添わせた。
それが──隆美となった敬介の選択だった。この瞬間、詩織は主となり、隆美はその忠実な下僕となったのだ。
「そう。いい子ね、隆美。何年かしてあたしがノウブルの力に目覚めたら、
隆美は一生あたしのそばに置いてあげるね。だってあたしたち友達だものね」
「ありがとう詩織ちゃん、ありがとう……」
何度も繰り返し、隆美は神聖な主人に奉仕するように舌を使った。
ふわりと微笑むと、詩織は奉仕を続ける隆美の肩に手を置いた。
「行こう、隆美。きっと先生が心配してるわ」
「うん。行こう、詩織ちゃん」
隆美は、立ち上がり、水着に袖を通した。

二人の少女は手を取り合い、夏の陽射しの降り注ぐ校庭を駆けていった。

(完)


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