『それで…こんなことになった心当たりとか…あるわけないよな』
『…分かってるんだったら訊くなよ。殺すぞ?』
とりあえず翔が落ち着いてから二人で向かい合って事情を確かめていた。
両親が新婚旅行中で留守なのが不幸中の幸いかもしれない。
ちなみに良夫さんも母さんも教師なのだが有給とかコネとか全て使って2週間のヨーロッパ旅行に出かけている。豪勢なことだ。
つうか2週間も学生の子供を二人も放って置いて旅行に出かける親がこの世にいるとは思わなかった。
相変わらずうちの親、とくに母さんは破綻しているな性格とか性格とか性格とか…
『まあ、とりあえず今日は学校休むか。俺、連絡しとくわ。翔って二年何組だったっけ?』
受話器を手にとって翔に訪ねる。
翔は俺と出会った直後は学校もよくサボリがちだったが、
俺の必死の思いが通じて(だと俺は思っている)最近はあまりサボらなくなった。
『…4組』
しぶしぶ答える翔…いや、口調と性格こそ翔だが外見的にはどう見ても知らない美少女にしか見えない。
電話も終わり。再び翔と対面する格好になる。翔はさっきから終始無言だ。
まあ、当然だろう。突然、女になったんだ。いろいろと考えることもあるんだろう。
それに比べ俺の方はさっきからドキドキしっぱなしだ。
かなしいかな俺は今だに女子と付き合ったこともなければ、友達になったこともなかったので、
いくら翔と分かっているとはいえ目の前の美少女は少々目の毒つうか眩しい。
それにタンクトップにハーフパンツという無防備な格好なので余計だろう。ついつい胸に目がいってしまう。
『………』
翔は何か考えるように黙っている。俺がチラチラ胸を見ていることには気が付いてないようだ。
まあ、気が付いてたら俺は今頃物言わぬ肉塊になっているだろうからな。
とはいえこの沈黙はすこしキツい。何か言わなくては…そうだ。
『なあ』
『おい』
……口を開いたら翔とハモってしまった。
『なんだよ? なんかあんのかよ?』
翔がややムっとした口調で訊いてきた。
『お前こそ、何か言いたいことがあるのか?』
『…っ! ウザい口の利き方すんじゃねえよ。お前から言えよ』
おっとまずいまずい。ここで翔を不機嫌にしたら話ずらくなるな。なるべく慎重に。
『なあ、翔。下着とかどうするんだ?』
“ドス!!”
椅子ごと世界が反転する。向かいの翔に思いっきり殴られたんだと気づく前に床に頭をぶつけていた。
『……つつつつ!』
頭と腰を撫でながら立ち上がる。どうも今の質問はまずかったらしい…当然か。
『てめえ…本当に今、ここで殺してやろうか?』
憤怒の形相で翔がこちらを睨みつけている。頬が赤い気がするが気のせいか…
『いや、変な意味じゃなくて…そのタンクトップだけだとその胸が…』
『え?…わ!?』
俺に言われて気が付いたのはすぐさま翔は胸を手で隠す。さすがに恥ずかしかったらしく顔が真っ赤だ。
あとなんか拳に力が入ってプルプル震えているのは気のせ…
“メメタァ!!”
…いじゃなかったようだ。
本日2度目の転倒。
『とりあえず上の下着だけでも何とかしなきゃな…』
拳がおもいっきり鼻にめり込んだおかげ様でドクドクと流れる鼻血をティッシュで抑えながら翔に切り出した。
『なんかお前の言うことに賛成しなきゃならないのは嫌だけど、まあ、そうだな…(何もつけてねえとすげえ揺れるし、なんかしんどいからな)』
とりあえず翔もノーブラではマズいと思ったらしく、う〜んと唸りつつも俺の意見に賛成したようだ。差し当たっては…
ドアの前には「貴志絶対入室禁止。この注意書きを見て、部屋の中に入ったときおまえは死ぬ」という、
たぶん作者にもあの予言が何だったのかわからない文字が書いてある。
今や母さんと良夫さんの愛の巣になっている母さんの部屋。
過去、まだ母さんが良夫さんと結婚するまえに一度入ったことがあったがあの時のことはもう二度と思い出したくい。
この世の地獄とはまさにああいうことを言うんだろう。
『おい、何してんだ? とっとと入るぞ』
翔は俺が葛藤しているのおかまいなしに合い鍵でドアを開けようとする。
いくら母さんが旅行中とはいえ普通に監視カメラとかありそうで恐い。実際あの人ならやりかねない。
“ギィ”
ドアが開く。もう腹を決めるしかないか。
中はごく普通の部屋だった。三角木馬もなければ鋼鉄の処女もない。あと自動追跡型のスタンドもいない。
「コッチヲ見ロ」って声も聞こえない。
綺麗に片づいているし危険そうなものは何もない。
『そりゃそうか。良夫さんも使ってるんだしな…』
『何ボケっとしてんだ。おら!さっさと探せ』
ここには女物の下着、ブラジャーを探しに来た。当然俺はそんなもの持ってないし、翔も持っているハズはない。
と、なると家で唯一の女性、母さんしかないと思った俺たちはここに来たわけだ。不本意ながら…
『うお!? なんだこんなトコから5万も出てきたぞ。貰っちまえ』
タンスの2段目を探していた翔は服の間に隠されたへそくりを見つけたようだ。
『おい、やめろって!母さん達が帰ってきたらバレるだろう』
『うっせーな。ダセえお前とは違うっつーの。おばさん、俺には甘いからな』
確かに母さんは翔には甘い。一応あの人にも義理の息子に対する遠慮みたいなものがあるんだろう…今はまだ。
でもじゃあ金を盗られた母さんの怒りがどこにいくかというと。
『頼む。止めてください。俺が冗談抜きで殺されます』
涙を流しながら翔に懇願する。
金がなくなったことを知ったら母さんは俺をネチネチといたぶってから殺すだろう。
想像するだけでも全身の毛という毛が逆立つ。
『…ったく。しゃあねえな』
しぶしぶと金を元に戻す翔。どうやら俺の必死さが伝わったようだ。
翔も間接的ながら母さんの恐ろしさは知ってるからな。あの人は翔と違って殺ると口にしたら本当に殺る人だ。
そんなことをやっているうちに下着を発見した。あまり色気のないベージュのブラジャーがいくつか入っている。
まあ、40過ぎたおばさんがピンクとか純白だったらすごく不気味だが。
『サイズとか分かるか?』
俺の見立てでは翔の胸は確実に80はあると思うが…
『んなもん分かるわけねえだろボケ!』
『まあ、とりあえず合わせてみろよ』
『おう、じゃあトイレ行ってくるわ』
そう言ってブラジャーを持って部屋を出て行こうとする翔。
『なんだ? 自分の部屋で着替えないのか?』
わざわざトイレで着替えなくてもいいと思うが。
『俺の部屋の合い鍵をてめえが持ってるからな。覗かれるかもしれねえだろうが』
覗くって誰が? もしかして俺が?
『なんで俺が覗かなくちゃならないんだよ。だいたいいくら女の子っていっても元は翔だろ』
“ガス!”
『…痛て!?』
左足におもいっきりローキックをくらわされた。ジンジンする。
『死ね!ボケ!』
そう言い放って乱暴にドアを閉めて出て行く翔。なんだ?俺またなんかマズいこと言ったのか?
『遅いな…』
もう5、6分はたっただろう。トイレに着替えに行ったきり翔は帰ってこない。
いくらブラジャーをつけたことがないといっても時間がかかり過ぎだろう。
少し気になった俺はトイレの前まで見に行くことにした。
…後にしてみればあと3分ほどまっていれば痛い目を見ずにすんだのに。
トイレの前まで来た。中からは人の気配がする。どうやら翔はまだ中に入ってるみたいだ。
いやに手間取ってるなと思ってドアの向こうから声をかけようとしたら中から微かだが妙な声が聞こえることに気づいた。
(…なんだ?)
そう思って耳を傾けている。
『…ぅぁ……ゃ…』
微かだが聞こえる。なんかため息のような声が。直感的にこれ以上ここにいたらヤバイと思ったがついつい耳を傾けてしまう。
『……んはぁ…ん…ぁふ……駄目だ……く…声が…ふぅん…』
微妙にため息のなかに甘い声がまざる。
これは、その、もしかして…
『ゃぁ…早く…ん、戻らないと…ふん…怪しまれる…あ、くん…』
予想は確信に変わっていく。つまり翔は、トイレの中で、してるわけだ。
初めての経験。まさか女の子がオナニーしてるのを聞くなんて生涯にそうそうあったもんじゃない。
あったもんじゃないが俺がここにいるのは非常にまずいのでは…
そうは思っても男の性、ドアに耳をはりつけて翔である女の子の声聞いてしまう。
幸いにも翔は行為に夢中で、ドアの向こうに人がいるとは気が付いてないみたいだ。
『…ゃ…はぁ…ふぅん…でも…気持ち、いい…ふぁ』
気が付けば俺の息子も背筋を伸ばして起立してしまっている。
元が翔であると分かってはいるが、今まで聞いたことのないかわいくて甘ったるい声を聞いて興奮してしまったようだ。
これが若さか…
『…あふっっ、も、もう…ぁ…だめだ…ぁ…やぁ…』
翔の声も徐々にせっぱつまったような感じになっていくる。絶頂が近いのかもしれない。
『ぁ…あ…ふぁぁ…や…もう…ひんっ、だめぇ…んあ…』
翔の声も大きくなってきた。つうか俺もそろそろ逃げないとまずい、まずいのだが…
『ああっ…あああっ…も、もう…ふあああっ…に…ちゃ…あ、あ、あ、…お…ぃちゃん…
ふあああああっ!!…いちゃん!!……くっ!…はぁ…はぁはぁはぁ…』
どうやら翔は絶頂を迎えたようだ。つうか俺の息子も限界かもしれない。よもや声だけで射精してしまうところだった。
女日照りってのは恐いな。あと『いっちゃん』って誰だ?
翔の彼女か…?
なんてどうでもいいことを考えるとトイレの鍵が内側から“カチャ”と開けられる音がした。
(げっ!! やばい逃げるの忘れてた!!!)
ドアノブがキキキと回される音がする。ゆっくりゆっくりまるでスローモーションのようにドアが開けられる。
だが意識だけははっきりしている。
突然だが客観的に物事を見てみよう。
まず俺が翔だとすると一番最初に見に入ってくるのは俺の顔なわけだ。
で、次ぎに俺の全体が見えるわけだ。つまり異様に盛り上がった股間とか。
さて俺が翔だとどうゆう反応をするかな?
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
まずはビックリして思わず叫ぶ、うん予想通りだ。
さてこの後は………
“ドス!ガス!バキバキ!ガン!ガン!ドスドス”
まずは股間に蹴りを一撃。俺悶絶。勃っているところを蹴るなんてまさに究極の反則技。
その後すかさず腹に一発。いいパンチだ。女になってパンチ力がけっこう落ちたみたいだがそれでもいい一撃だ。
そのまま俺が倒れる前に顎にアッパー。
脳が揺すられて意識を失いそうになるが、続いてまるでマシンガンのような左ジャブの連打。
そしてトドメのギャラクティカ・マグナム。
完璧だ。今日からお前が本物のキング・オブ・ハート………
人物紹介
◇ドクロちゃん
童顔で豊満な胸を持つ趣味は撲殺のヴァイオレンス美少女。つまりロリで巨乳
対人最終兵器「エスカリボルク」を持つ
本編には登場しない
◇プロシュート
兄貴。暗殺チームの一員。マンモーニではない
スタンドは生物を老いさせることができる「ザ・グレイトフル・デッド」
本編には登場しない
◇ジャン・ピエール・ポルナレフ
イタリア人。敵になったり味方になったり亀になったりする忙しい人
スタンドは高速の剣技を持つ「シルバー・チャリオッツ」
本編には登場しない
◇ヴァニラ・アイス
DIO様の腹心の部下。自分で首を切り落とすドM。蹴り殺してやるこのド畜生がァ――――ッ
スタンドは口の中が暗黒空間になっている「クリーム」
本編には登場しない
◇スティーブン・スピルバーグ
巨匠。近年では宇宙戦争などを製作した。宇宙好き
自転車で空飛べるかどうかは微妙
本編には登場しない
◇オヤシロ様
何かと祟りをおこす御方。ょぅι゛ょではないと思う
いま あなたの うしロにイるの
本編には登場しない
◇藤田まこと
大物俳優。代表作は「はぐれ刑事−純情派」「必殺シリーズ」等
近年では「剣客商売」「世直し順庵−人情剣」に主演している
本編には登場しない