今日はスイミングスクールだ。
「はい。今日はココまでです!」
「「「ありがとうございましたっ!」」」
ここは『美須賀スイミングスクール』という所だ。
「ここは人魚が通っている」「ここは人魚が先生だ」などと言う噂が立っているが証明したものは誰もいない。
俺は「小原羽毛田」17歳。基本強化は良いのだが、水泳の成績はダントツのビリ。それを克服するために通っている。
そして彼女が居る「美須賀美香」17歳。このスクールの先生だ。
今日は毎週1回の定期会議の様子を隠し見るためだ。
俺は階段横の部屋に隠れた。
夜七時、会議が始まった。
「――と言うわけでして、予算はこれだけになります」
業務的な話ばかりだ。そろそろ帰ろうとしたところ…
「さて、後はいつものにしましょうか?、では、着替えてください」
俺は再び隠れた。どうやらプールに向かうらしい。
(プールは2階から見渡せるな)
そう思って2階へ上がっていく。そして、その光景を見ることになる。
「人魚・・・本当に居たのか・・・!!」
イスに座ろうとした瞬間、ドスン!と転んでしまった。
人魚たちがそれに気づき、何かを言い始めたようだ。
次の瞬間、プールに水の柱が立ち、こちらに向かってきた。
そして、あっさりと俺の体をプールに引きずり込んでいく。
「あなたは私達一族の秘密を知ってしまった。殺さねばならない」
そう冷静に言う人魚の表情は「怒り」「驚き」「嫌悪」で染まっていた。
ドンッ!ドンッ!っと俺の体はプールの壁にたたきつけられている。
既に両手足とも骨を追っている俺は反撃さえできない。
すると、「最後だ。すまない」と言って首をしめ始めた。
30秒ほどしたところで思い出したように彼女を見る。
彼女は「哀れ」「悲しみ」の表情でこちらを見ている。
俺は「ごめんね」と声を出さずに言い、そして笑顔を向ける。
その時、意識が急に遠くなっていった。
そして羽毛田の体が光り出した。
傷や怪我が消え、体が小さくなっていく。
そして、30cmぐらいになったところで浮き始めた。人魚たちはただ驚いているだけだ。
水面を離れ、羽を広げて浮いたときに羽毛田は目を覚ました。そして身体を確認すると、
「あーあ。元の身体に戻ってらぁ。せっかく気に入ってたんだけどなぁ」
と、つぶやいた。そして、賀美香が、
「誰なの? 羽毛田なの!?」
と聞いてきたので羽毛田は、
「ああ、人間のときの名前だな。まぁ、今は『レイシェル』って名前だけどな」
と言うと少し笑った。さらに賀美香が、
「あなたは羽毛田の何!?」
「あなたは一体なんなの!?」
と聞いてきた。
「本人。元の姿だ。ん〜、世間一般では"妖精"とか"天使"とか言われているな」
「・・・本当?」
「ああ。と言うかお前達も人間にとって見ればそう言うもんだろう?」
「そうだけど・・・」
「まぁいいさ。んじゃ帰ろうか?」
と、軽く言った。
「あなたは特別なようですもんね!」
と皮肉たっぷりに返した。その時、空間が一瞬にして緊張した。
「…お迎えに着ましたよ、レイシェル様」
天使がやって来た。それはこの要に告げるとレイシェルは「帰りなさい」と一言だけ言った。
「しょうがない。今日だけは見逃しますよ。」と言うと、消えていった。
もちろん、その日は質問攻めにあったのは言うまでも無い。

翌朝。学校へ向かおうとするが・・・大問題がある。
『鞄が持てない』
考えに考え抜いた末に羽毛田は何も持たずに行く事にした。
そして特権と言うか電車にタダ乗りして30分後、到着。
さらに、職員室でお約束の通り詮索され疲れ果てた彼に重大な悲劇が…
ガラガラ…。先生が教室に入りいろいろ説明をしている。
この校舎は最近建てられたので綺麗だし、いろいろある。
その中で一番驚くのは各教室の入り口が自動ドアであることだ。
しかしこれが彼を困らせる。・・・機械に認識されないため開かないのだ。
とりあえずドアに体当たりをし、気づかせて先生に開けてもらう。
ウィーン…ガッチャン!
「「「「「おぉぉぉー」」」」」
クラスメイト全員がこちらを見る。性的に見てるヘンタイもいたが。
しかし、そんなものは無視して言う。
「訳は教えられないがでこうなった、まぁよろしくな」
そして先生が「じゃあ1時間目はじめるぞー」と言った。
そして休み時間。彼にとって人生一危険だったのは言うまでも無い。
「キーンコーンカーンコーン」と言うチャイムの音と共に休み時間になった。
彼は逃げていた。ひたすら逃げていた。追いかけて来るものは・・・
――女子。
どうしても抱きたいらしい・・・が本人にとっては地獄である。当然逃げる。
しかし!!ついに捕まってしまい抱かれてしまう。しかしそこへ・・・。
「そいつを返せ!!」と言う声と共にある男子が走ってくる。
制服の上に白衣を着ている。マッドサイエンティストだ。
そして女子から解放されたと思った瞬間その男子に強く握られ・・・。
むぎゅうううう・・・プチッ。
「「「「「あっ」」」」」
羽毛田の体から音が鳴り、羽毛田は倒れた。
「う、うーん」
ここは・・・保健室?
「はっ!」
起きると保健の先生がこちらを見ていた。
「あら、起きた?」
「あっ・・・はい」
「じゃあいいわね。もうかえっていいわよ」
「あっ! 起きたか!? 実験やってもいいか!?」
実験はないだろ・・・実験は・・・。
「実験されてたまるか!」
そそくさと逃げて帰り道につく。


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