嫌な夢を見る…

「ぁっ、そこっ…もっとぉ…」
俺は女になっていた。そして、そこらへんにいそうなオヤジ相手に媚を売り、まるでそれが当たり前のようにSEXをする。
自分から腰を振りながら、
「もっとぉ、もっとしてぇっ!」
と、オヤジ相手に懇願する。
そして俺はいつも最後には奥深くに白濁した液を出され、それでも足らず顔にまでたっぷりとオヤジの精液をかけてもらう。

俺が自ら犯されることを望むほど淫乱な女になり、これでもかといわんばかりの精液の海に浸る夢………

  ◇◆◇

「………また、この夢かよ」
俺はいい加減にうんざりしながら、ベッドから躰を起こした。
高校に入りしばらくしてから見るようになった夢だ。
最初見たときは、その夢のリアルさにかなり驚いたが、今はなんてことはない。
大体俺はオカマとかそういう気は全然ない!!男に犯される夢なんて見たら、朝から勃つもんも立たないっつーの。
そんな愚痴を漏らしながら俺はさっさと、学校へ行く用意を始めた。

「尊(みこと)さぁ、お姉さんとかっている?」
昼休みに、クラスメイトがそう話かけてきた。
「ん? いや、俺はずっと一人っ子だぜ。ついでに言えば、弟か妹も出来るような予定もねぇな」
厳密に言うならば、俺は一人っ子という訳ではない。
俺は本当は双子の弟として生まれてくるはずだった。
しかし運悪く先に生まれた姉の命(みこと)は生後数日で亡くなってしまったのだ。
俺たちは一卵性の双子だった。
そして俺は、物心ついた時には姉さんの分も生きていこうと心に決めていた。
「そっかぁ、お姉さんとかいないかぁ。じゃあ、ただの他人のそら似だな」
「何がだよ?」
「いやさぁ、昨日マジでお前に似た女の子みかけたんだよ。その子がマジエロい格好でさぁ」
「へいへい、どうせまた俺の顔が女っぽいって馬鹿にしてんだろ」
まったく、いつものことだ。俺もせめて身長だけでも170以上あればなぁ。
「いやでも、マジで可愛かったんだって。あんな子と一緒に歩いてるのがオヤジなんて、マジで世の中おかしいよなぁ」
俺も確かにおかしいと思いながら、その後は結局そいつの愚痴をずっと聞くはめになってしまった。

俺とそっくりの女の子…。
正直俺もこの時は他人のそら似ぐらいにしか考えていなかった……。

  ◇◆◇

その日の夢は、いつもより酷かった…

「ねぇ♪ 気持ちいい?」
俺は女になった証ともいえるような、その胸でオヤジのモノを挟みこんでいた。
「んちゅっ…いつでも……あむっ、くちゅ…イッていいからね…」
俺は胸だけでなく、その小さな口も使いオヤジに奉仕を続ける。
ときどき上目使いで見るオヤジの顔は昨日の夢に出てきたものとは違っていた。
夢に出てくるオヤジは一度として同じオヤジが出てくることがなかった。
横に視線をずらすと、そこには大きな鏡があった。
鏡の中では、うちの学校の制服を着た俺にそっくりな女の子が、オヤジに必死に奉仕している。
髪の長さだけが俺と違い、その子の髪は肩より長いくらいだった。
「んちゅっ……ぁむっ…ぷぁっ」
突然オヤジのモノが、胸の中で膨らんだ…

ビュッ、ビュウゥッ!!、ブピュウゥゥッ!!!

「あぁんっ!…濃いぃよぉぉ……白いネバネバァ……もっとぉ…もっとかけてぇぇぇっ!!」
俺はオヤジの精液を嬉しそうに顔中に浴びていった。
「んっ…ぅうんっ…ちゅうっ…」
オヤジが出し終った後は、残った精液を丁寧に舐めとっていく。
「…最初は私が上ねぇ♪」
俺はそう言うと、寝そべっているオヤジの上に腰を落としていった、
「んあぁぁ…入ってくるぅよぉ! あんっ!…見てっ、私のいやらしいアソコォ……どんどんくわえていっちゃってるのぉ……あはっ…気持ちいいぃ…気持ちい いぃよぉっ!!」
俺は快楽の虜になりながら、必死に腰を動かしつづけた。
そのうち、オヤジは目の前で揺れる豊満な乳房をいじり始めた。
「あんっ…いいっ……もっと…もっと胸触ってぇぇ…乳首がいいのぉ…持ちいいのぉっ!!」
しばらくして限界に近付いてきたのか、オヤジ自身が下から突き上げてくるようになった。
「あんっ! いいぃっ!!……すごっ…ぃよぉっ…オジサン…イクのっ?! もうイッちゃうの?!……んあぁっ…出すの?
高校生の膣に出しちゃうんだね?!…ぅうんっ……白いのビュルビュルだしちゃうんだねっ?!!」
俺は高校生とは思えないほど淫らな言葉でオヤジを挑発し、オヤジはそれに応えるようにどんどんと突き上げるスピードを速くしていく。
「あぁっ!……イッちゃう……私もイッちゃうぅぅっ!!…いいよぉっ、出してぇぇ……オジサンの白いのぉっ…私の膣にビュルビュル出してぇぇえっっ!!」

パンパンパンパンパンパンパン!……

「あぁっ、イクッ! イッちゃう!!……イクッ! イクッ! イクッ!!……あぁっ、もう無理っ! ダメェェッ!!
イグッ!! イグゥゥゥゥウウウッッッ!!!!」

ブピュゥゥゥウウッッ!!! ビュウゥゥッ、ビュゥッッッ!!

「ぁああっ!! 熱いぃっっ!!……熱いよぉっ……私の膣が…熱いのでぇいっぱいだよぉっ……」
鏡の中の俺は、目がとろんとし、半開きになった口からはだらしなく涎を垂らしながら、うっとりとした表情を浮かべていた。
しばらくして、俺はゆっくりと腰を上げていき、モノが抜けるとオヤジに見せつけるように手でアソコを広げた。

ゴポッ、コポッ、トロォ〜〜

「あはっ、見て♪…どんどんと精液がでてくるよぉ………たくさん出されちゃったぁ……
娘くらいの歳の高校生相手に、変態だよねぇオジサン♪……んあっ…まだ出てくるぅ……私の膣、気持ちよかったんだぁ♪」
淫らな言葉を吐きながら、俺は再びオヤジのモノに口を近付けていった。
ドロドロになったそれをきれいしていくうち、それはまた力を取り戻していく。
「んちゅっ…くちゅっ……あはっ♪ やったぁ、まだまだ元気だぁ♪」
そして俺は体勢を変えよつん這いになり、オヤジの前にお尻を突き出した。
「ねぇ…今度は、後ろからしてよぉ♪」
誘うように腰を振りながら、俺はそう口にした。

『……淫乱が……おねだりしてみろ……』

オヤジのその言葉に、俺はなんの躊躇いもなく従うどころか、笑顔さえ浮かべていた。
「ぁああっ……そうですっ! 私は淫乱な女子高生ですぅっ!!……高校生のくせにチ〇ポが大好きなんですっ!!
………犯されたいんですぅ!……お願いですからぁっ!! 犯して下さいぃぃっっ!!!」
言い終わった瞬間、すでに俺は貫かれていた。そしてすぐに、さっきと同じよう自分から腰を振っていく。
「あんっ!いい!いいっ!!…お願いぃ……もっと突いてぇ!……チ〇ポ…気持ちいいっ!
気持ちいいれふぅっ……ぅんっ……淫乱な高校生でいいれすからぁっ!!……チ〇ポォ!! もっとぉ……チ〇…ポォォッッッ!!!」

その後も俺はずっと犯され続けた、オヤジに言われるままに淫らな言葉を吐き、笑顔を浮かべながら臭い精液に浸った。
6回目の膣出しまでは数えていたが、そこからは快楽に浸りきり数えることさえ止めてしまった。

夢から覚めるまで、ずっと、ずっと、永遠かと思うほどに……

  ◇◆◇

「………くそっ! またかよ……」
またあの夢だ。もう、いい加減にしてくれと言いたくなってくる。
しかも、夢を見るたびにだんだんと内容が過激に、そしてリアルになっていく。
まぁ、いくらリアルだろうと所詮は夢だから感触とかはないんだが……。
しかし、自分が女になって見たこともないオヤジに犯されるのは、気持ちのいいもんじゃない。
「……顔でも洗ってくるか……」
俺は寝起きの気分をどうにか変えたくて、洗面所へと向かった。
鏡に映る自分の顔を見ると、結局さっきの夢のことを思い出してしまう。
「しかしあの子、マジで俺に似てたなぁ」
夢の中、鏡に映った女の子の顔を思い出す。その顔立ちは、確かに俺にそっくりだった。
ただ髪だけが夢の女の子が肩より長かったのにくらべて、ずいぶんと短い。


《…クスクス……いい加減、気付いたらぁ♪…》


バッと後ろを振り返ってみるが、当然そこには誰の姿もない。
「……空耳?…………だよな?」
確かに何かが聞こえた気がした。
しかし、俺にはそう結論づけることしか出来なかった。

  ◇◆◇

「おいっ、昨日話した女の子、うちの学校の生徒だぞっ!!」
学校に着くなりそう言ってきたのは、昨日俺とそっくりの子の話をしていたヤツだ。
「何で分かんだよ?」
「昨日また見たんだよ、その子をさっ!」
「で?」
「だからぁ、その子が着てたんだよっ、うちの制服をっ!!」
「はぁぁ。考えてみろよ。そんな子がうちの学校にいたらとっくに気付いてるだろ、普通?」
「うっ、まぁ、確かに…」
「どうせこの学校に友達がいて、制服を借りただけだろぉよ」
大体、同じ学校に同じ顔の女がいるなんてゴメンだ………。
ん? いや、姉が生きてたらも一昨日とは違うオヤジ。どう考えても援交じゃん?
「まぁ、うちの学校にもいんじゃねぇの、少しはさ」
そう言い返し、二人で少しブルーに入っていたときだった、


《……別にいいじゃん…気持ちいいんだから♪……》


「? なぁ、今なんか聞こえなかったか?」
「あっ? 別になんも聞こえなかったぞ。どうしたよ?」
「いや、何でもねぇ。ただの空耳だわ」
そして、話題はまた世間話に戻っていった……。


《……クスクス………もう少しかな♪…》


  ◇◆◇

この空耳は何なんだ……?
その後の授業中にも、空耳は何度か聞こえた。それだけじゃなく、その声もだんだんとハッキリしてきている気がする。

《……あの女の子、エロい体だねぇ♪…》
《…あの先生のチ〇ポ、デかいだろうなぁ♪…》

そんな空耳ばっかり聞こえてくる。
もしかして俺、欲求不満なのかな?考えてみれば、高校に入ってからご無沙汰ではあるが………。
なんかそう考えると、あの夢もそのせいな気がしてきた。
そうなれば、解決法はひとつだ……。

そして放課後、俺は校門で人を待っていた。
誰を?
もちろん、彼女の深雪(みゆき)をだ。
「ごめんっ、待っちゃったかな?」
深雪は校門のとこに着くなり、そう切り出した。
「たいしたことねぇよ。んじゃ、行くか」
「うん♪」
深雪はバレー部に入っているため、一緒に帰ろうとすると、部活に入っていない俺が深雪の部活が終わるのを待つことになる。
そのせいもあり、高校に入ってからは、あまりやる機会もなかったのだ。
だから今日は、久しぶりに………。
「深雪、今日家に寄ってかないか?」
「えっ? あっ、ごめん。今日は親いないから、弟の夕飯私が作らなきゃいけないんだ」
深雪の弟はまだ小学生だ。
確かに、あいつが自分で飯を作れるとは思えなかった。
「そうか……」
「うん。ごめんね、尊」
深雪は本当に申し訳なさそうに謝った。
まぁ、仕方ない。今日は諦めるしかなさそうだ。
そんな俺の思いが伝わったのか、深雪が顔を赤くしながら聞いてきた。
「…あのさ……尊さ……その…もしかして……やっ、やりたいの?」
ギクッ!!俺は内心かなり焦った。
「いやっ! あのっ………別にそれだけが目的で誘った訳じゃないからなっ!」
「あっ、怒ってる訳じゃなくて……えっと…だからね……私も……したいなぁ…って思ってたから………」
深雪の顔はますます赤くなっていった。
「じゃあっ!!……」
「あっ!でも本当に今日は無理なのっ。……ごめんね、尊」
それは、ほとんど生殺しの状態だった。
「また今度しようね♪ それじゃあ尊、また明日ね♪」
「ああ。またな」

ちゅっ…

軽く唇同士を触れ合わせ、俺たちは別れた。

《………クスクス♪…尊ちゃん、残念でしたねぇ♪……》


そしてまた、あの空耳が聞こえた………


《……ねぇ♪……私が誰か知りたくない?……》


深雪と別れ、家に着いて最初に聞こえた空耳がそれだった。
別に空耳の正体など知りたいとは思わなかった。
俺はその空耳が欲求不満からだと決めつけてしまっていたのだ。
このまま、起きていたらますます空耳がひどくなると思った俺は、自分の部屋に入るなりベッドに入り、眠りへと落ちていった……。

《……クスクス……寝ちゃったね♪……》

  ◇◆◇

またあの夢だ。
しかし、いつもとは少しだけ違っていた。
今日の夢は、女の俺がベッドから起きるところから始まった。
俺はそのまま部屋の押し入れに近付き、扉を開く。するとそこには、見覚えのない大きな箱があった。
その箱を開くと中には、女ものの下着や服、靴などが入っていて、その中にはうちの学校の制服もあった。
俺はそこから、キャミと超ミニのフレアスカート、そして下着の上下を取り出し着替えた。
最後に箱からヒールとバッグを取り、洗面所へと向かった。
鏡にはあの俺にそっくりな女の子の姿が映っていた。俺はバッグから道具を出し、メイクはじめる。
それは、深雪がするようなナチュラルなものではなく、明らかに男を誘い、その気にさせるためのものだった。
そして、メイクが終わった俺は家から出ていった。


《……クスクス……今日は誰としようかな♪……》


「…なんだぁ♪ もうカチカチじゃぁん♪」
家を出た女の俺が声をかけたのは、教室でいつも話しかけてくる同級生だった。
そいつが、友達らしい男と話しこんでいるところに声をかけたのだ。
そして今、三人の姿は公衆トイレの一室にあった。
「……ん、ん、んっ……………あんっ!……ねぇ、お願い………もう挿れよてぉっ!」
口での奉仕に徹しながら、敏感なところをいじられ続けたために、躰はもう我慢出来なくなってしまっていた。
そしてそれに応えるように、同級生は後ろから一気に俺を貫いてきた。
「んああぁっっ!! あんっ!………いいっ、すごいっ!!……おっきぃ……チ〇ポォ……いいよぉっっ!!」
またいつもと同じように、俺は自分から腰を振りはじめていた。
「もっと、もっと突いてぇぇっ!!……あっ……いいぃ……奥まで……届いてるのぉ……いいっ…チ〇ポォ…もっぐうぅ?!!!」
そばで、後ろから犯される俺の姿を見ていたもう一人が我慢しきれず、小さな口に無理矢理ねじ挿れてきた。
「あぐぅっ……ぅうんっ……ぐぇっ……くふっ…」
相手はただ夢中に腰を動かすために、上手く口ですることが出来ない。
口のまわりは唾液と先走り汁でドロドロになっていった。
「……ぅぐっ……ふごいぃっ……ふごいぃよぉ……おがひぐなりゅ…ぐふぅっ……わだひ……おがひぐなりゅよぉ……」
もはや、意味をなしていない俺の叫びに男達は耳を貸すことはなかった。
男達は、もう限界に近かった。
そして俺も………
「ぐうぅっ!………がっ…ぐりゅっ! ぎぢゃうっっっ!!……イグのっ、イッぢゃうぅ……ふぶっ……ぐふっ…バメェェッッ!!………イグ、イグ、イグッ!  イグッ!! イグッッ!!! イグウウゥゥゥッッッ!!!!!」

ブチュウゥゥッッッ!!! ブビュゥッッ!! ビュッ!! ビュウゥッッッ!!!!!

「ぐえっ!……ぐふぅっ……ごふっ…ぐぅっ……」
大量に出された白濁液が下の口を、そして上の口を犯していった。

『…こぼさず飲んでよ♪…』

いやらしい糸をひきながら、俺の口から自分のを引き抜いた男が言う。
俺は口を精液でいっぱいにしたまま、男の顔を見上げた。
そして、目をつぶることもなく、まるで男に見せつけるかのように………
「ん……コク、コク、コクッ………ゴクッ…ぱぁっ♪」
白濁した液の全てを飲み下した。その姿を見つめていた男達は再びその醜悪ともいえる性欲を取り戻していった。
そして俺は、そんな男達の股間にすがりつき、ほうけたような表情を浮かべながら頬をすり寄せていった。
「あぁんっ……もっとぉ……下さいぃっ!……アソコにぃ……口にもぉっ!!……好きなのぉ……白いのぉっ!……
んあっ………臭くてぇ…ドロドロォ……もっとぉ…ちょうだいぃっ!!!……」
もはや、快楽を求めることしか頭になく、俺は男達へ必死に哀願していた。
そしてその後はいつものように、男達の白濁した液を浴び続け…、飲み続け…、躰の中にも受け入れていった………。
「ああぁっ!……いいぃ…いいよぉっ…気持ちいいよぉっ!!……もっとぉっ……ドロドロにしてぇ……ぐちゃぐちゃに犯してぇっっ!!!」


あまりにリアルなのに、まるで感触のない不思議な夢。
そんな夢の中で女になった俺は、同級生に犯され続けた。
自分から男達の汚い性を求め続けた。
夢から覚めるまでずっと、ずっと………。

  ◇◆◇

「……朝か?……」
すでに窓から見える空は明るかった。
どうやら、昨日ベッドに入ったまま朝まで寝てしまったらしい。
ベッドから起きあがると、押し入れが目に入った。
夢の中の俺は、あの中にあった箱から女ものの服や下着を取り出して着替えていた。
そう考えると、俺の足は自然と押し入れへと向かっていた。
『……あれは夢だ……あんな箱が本当にあるはずなんてない………』
そして俺は扉に手をかけた………
「ん?……やべぇっ!!遅刻だっ!!」
扉を開く寸前、時計が目に入った。
かなり、ヤバイ時間だ。
俺は押し入れのことも忘れ、急いで家を出た……。

「よう♪ 今日は、ずいぶん遅かったじゃん?」
「あぁ、おもくそ寝坊したからな」
昼休みに話しかけてきたのは、昨日の夢に出てきた同級生だ。
「……………」
そいつが何故か俺の顔をじっと見つめてくる。
「…? なんだよ、どうかしたのか?」
黙ったままじっと見つめられるというのは気分のいいものではない。
しばらくすると、相手の手が動いた……

ポンッ……

いきなり、俺の胸のあたりに手をおいてきたのだ。
「…………言い残すことはあるか?」
俺は胸に当てられていた手をどかしながら言った。
「待った! 待ったっ!! わかった、俺が悪かったって!!!」
本当に悪いと思っているのか、怪しいものだ。
「……で、何がしたかったんだ?」
「いやぁ、もしかして尊って、女なんじゃないかと思ってさ」
「えぇ、えぇ、俺は女顔だし背も低いですよ。すいませんねぇ、俺が男で」
「そう、怒るなってば。実はさ、俺昨日ついにあの子とやっちゃったんだよ」
「まちゃまちゃか?」
「そうそう、あの独特のヘアスタイルがなんとも…………って、勃たねぇよっ!!!」
なかなかいいノリつっこみだ。
「だからぁ、尊にそっくりだって言ってた女の子とだよっ!! 昨日、その子とやったんだってっ!!」
「それが何で俺の胸を触る理由になるんだよ?」
「いやぁ、あんまり尊に似てたから、実は尊が女だったってオチかなぁってさぁ」
「寝言は寝て言えっつーの」
「でも、まじでエロい子だったぜ。あぁ、もう一度させてくれねぇかなぁ」


《……クスクス……そんなに言うなら、せてあげようかなぁ♪……》


一晩寝たというのに、この空耳はまだしやがる。
まったく、あの夢と一緒にさっさとどっかに消えてもらいたいもんだ。


《……ひどいなぁ……私が何かも知らないくせにさぁ……》


うるせぇなぁ、空耳は黙ってろよ。
大体、どうやったら空耳の正体なんて分かるっていうんだよ。


《……クスクス……開けてみなよ、押し入れを♪……》


はぁっ? 押し入れ開けて、それで何で空耳の正体が分かるんだよ?


《……尊ちゃんも鈍いよねぇ♪………変だと思わないの?……昨日夢の中に出てきた同級生がさ……現実でも実際にSEXをしてた………すごい偶然だよねぇ ♪♪……》


「っ?!!!」
空耳のその言葉に、俺は一瞬かたまってしまった
「おい? どうした?」
「いゃ、なんでもない。……俺、今日は帰るわ。なんか調子わりぃしさ」
そして何より、早く帰って確かめなければならないことも出来た。
「そうか? まぁ、担任には言っておくわ」
「サンキュ。あとさ、深雪にも会ったら伝えといてくれ」
「あいよ〜」
そうして、俺は家に……いや、自分の部屋の押し入れへと向かった。


《……クスクス……何があるんだろうねぇ♪……》


  ◇◆◇

「ハァッ、ハァッ、ハァッ………」
急いで学校から帰ってきた俺は今、押し入れの前に立っている。
そしてゆっくりと、その扉に手を掛けた。


《……クスクス………何が出てくるのかな♪……》


黙れっ!! あれはただの夢だ。
何も出てくる訳がない。
そうだっ、そうに決まってる!
自分自身にそう言いきかせながら、俺は扉を開いた………

「……そんなっ……」

そこにあったのは、夢とまったく変わらない箱だった。
その光景に一瞬かたまってしまった俺は、急いでその中身を確認した。

うちの学校の制服………
夢の中で着ていたキャミとスカート………
ヒールにパンプス………
化粧品の入ったバッグ………
なまめかしい下着類………

その全てが夢のままだった……
「…………は、ははっ………何だこれ?……どういうことだ?………一体どういうことだよっ?!!!」


《……クスクス……知りたい?……いいよ……教えてあげるね♪…》


その空耳が聞こえたのと同時に、俺は目眩に襲われた。
そして俺の意識は、闇の底へと沈んでいった………

  ◇◆◇

俺の意識が戻ったとき、俺はまたあの箱の中から服を取り出し着替えているところだった。
《……これは……あの夢か?》
「…クスクス……夢なんかじゃないよ♪」
着替えている俺自身の口が、その言葉をしゃべっていた。
「その証拠に、今は感触があるでしょ?」
確に今までの夢とは違い、今は着替えをしている感触がリアルに伝わってくる。
俺は、自分の意思で躰を動かしてみようとしたが、ピクリとも動かすことは出来なかった。
そして俺の躰は、俺の意思に逆らったまま、着替えを進めていく。
「…クスクス♪……無駄だよ尊ちゃん♪ 今は私の躰なんだから♪」
『……どういうことだよ?』
「だから、言葉のとおりよ♪ 今、この躰は私のものなの。オッパイもあるし、逆に尊ちゃんのち〇こはないでしょ♪」
確に、部屋の鏡に映る俺の姿は完全に女のものだった。
「まぁ、根本的には尊ちゃんの躰なんだけどね♪」
《お前は誰なんだよっ?一体何がしたいんだ?》
「一度にいろいろ言わないでよぉ……私が誰かって? もちろん『みこと』よ♪」
《それは俺の名前だろっ!!》
「だからぁ……同じ『みこと』でも漢字がちがうのよ♪」
《何を言って………》
俺は本当に訳が分からなかった。
「まだ分からないかなぁ?……私は命(みこと)よ♪ あなたの姉のね♪」
《なっ?!!!………》
「ふふっ♪ 命は生後すぐに死んだはずだって言いたそうね♪」
当たり前だ。そんなことが信じられる訳がない。
「確に私の身体は死んじゃったわ。でもね、私の意識だけは、ずっとあなたの中にあったのよ♪……それこそ、ずっと♪
トイレの時も、告白の時も、精通の時も、オナニーの時も、SEXの時も、ずう〜とねっ♪♪」
《っ!!!》
姉さんに自分の恥ずかしいところをずっと見られていたことを知り、俺は本気で恥ずかしくなった。
「でもね、ずっと羨ましかったのよ、尊ちゃんが。あなたは何でも出来るんだもの、見ているだけの私と違って……」
一瞬だけ、姉の声に悲しみが混じったように感じた。
「それである日ね、私も外に出たいって思ったの♪……そして気がつくと、私の意識の方が躰を支配していたわ。
女の子になった尊ちゃんの躰をね♪ その間尊ちゃんの意識はずっと眠ってたけど♪」
さっきまで、混じっていた悲しみなどひとかけらもなく、嬉しそうに姉さんは言った。
《じゃあ、俺がずっと夢だと思ってたのは………》
「クスクス♪……さぁ、お話はここまで。着替えも終わったしね♪」
鏡を見ると、俺はすでにうちの学校の制服に着替え終わっていた。

肩よりちょっと長い綺麗な黒髪……
ブレザーの上からも分かる胸の膨らみ……
短めのスカートから見える白い太股……

《……可愛いい……》
俺は無意識にそう呟いていた……。
「でしょ♪でもこれは、私であると同時にあなたでもあるのよ、尊ちゃん♪ これが女の子になった尊ちゃんの姿なのよ♪」
《……女になった俺?》
「そう♪」
姉さんはそう言うと、鏡の前で体育座りに座った。
「尊ちゃん♪ いつも躰借りてるお礼に、今からすっごく気持ちいいことしてあげるからね♪」
まるで、獲物を前にした獣を思わせるその口調に、俺は背筋が冷たくなった。


「ふふっ♪ クセになっちゃっても知らないけどね♪」


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