落ち着け、自分。大体、何で僕の体が女なんだ?
焦る僕は、自分の体中をぺたぺた触りなら、確認する。
心臓が、破裂しそうなくらい、五月蝿い。
肌。全体的にすべすべとして、透き通るように白かった。
胸。小さいが確かに膨らんで、女の子の体の一部だと自己主張している。
腕。それなりについていたはずの筋肉が大分落ちて、ほっそりとしている。
足。腕同様にすっかり細くなってしまって、自分の足の面影がほとんど残っていない。
……そして、股間。さっきまであったものが、ない。替わりに、産毛のような茂みの中に割れ目が見える。
誰が何処からどう見ても、完全無欠に完璧に寸分の狂いもなく、女の子の体だった。
それでいて、確かに、僕の体でもある。
何故こんな事になったのか、まったくわからない。
整理のつかない頭の中で、ふと思いついたことがあったので、立ち上がって脱衣所へ入った。
そして、壁に取り付けられたの姿身の前に立つ。ベリーショートの愛らしい少女が、戸惑った顔つきでこちらを見つめている。
その顔立ちは、確かに僕の面影が残っていたけれど、それ以上に、奇麗だった母の特徴を色濃く移していた。
僕は、激しくなる一方の動悸に操られるように、鏡の中の少女にそっと触れた。
桜色の唇。大きく、潤んだ瞳。全体的にほっそりとした体に、白い肌。
ずくん。
何かが、おなかの下のあたりで疼くような感覚。
「んっ…!」
初めて感じる感覚に、つい声を漏らしてしまう。目の前の繊細な少女にふさわしい、ささやかで透明な声。
その声に触発されるように、疼きが胸に飛び火してきた。先端が、尖りはじめている。
「んくっ…!?」
これが、感じているということだろうか。慣れない感覚に、声が抑えられない。
それは、僕の更なる官能を刺激する。
ふと鏡に目を戻すと、少女は顔を赤く染めて、潤んだ瞳でこちらを見つめる。まるで、誘っているかのように。
けれども、それは僕自身だ。
動悸はますます強くなって、心臓が耳元に移動してきたように感じる。
もう、何も考えられなかった。考えたくなかった。
「くぅん…っ」
自分のものとはとても思えない甘い喘ぎが、耳に入り込んでくる。
いつの間にか僕の両腕は、まるで何かに取り付かれたかのように、自分の胸を揉み上げはじめていた。
ささやかな胸は、それでもその存在感を誇示するためにせりあがり、先端は尖りを増す。
「ふぅあっ…くぅっ!」
その先端が、摘み上げられた。両方、一度に。
「あ、ふ…」
体中を汗が流れ落ちていく感覚。それすらも、鋭敏になった僕の肌は快感として捉えてしまう。
鏡の中の少女は、その白い肌で構成された体全体を紅潮させ、今にもへたり込みそうなくらい膝を震わせている。
太ももを、液体がつたって流れ落ちていく。
可憐な少女の、たまらなく淫らな姿。
僕は、もう立っていることが出来なくなって、床にへたり込んだ。
べちゃり、とマットレスに、濡れた太ももが触れる。
「あっ…」
それでも、僕の両腕は止まらなかった。
左手で胸を弄りながら、右手は淫らな疼きの中心へ指を這わせる。
「ひぁ、くぅぅんっ!!」
その中心、すでに顔を出し始めた芯を、指が捉える。
瞬間、甘ったるい電流のような感覚が、背筋を駆け抜けて脳を直撃した。
そして、子犬の鳴き声のような、媚声。
全身が「びくんっ」と跳ね上がり、そして力が抜けていった。
僕は荒い息を吐きながら、床に仰向けになって転がる。
「あら、もうイっちゃったのね。女の子になったばっかりだって言うのに、ふふ、いやらしい娘」
唐突に、頭上から投げかけられる笑いを含んだ声。
それは、確かに僕の姉の声だった。