「取りあえずどこから話そうか…」
困ったような顔を見せた後。
少女は自分の胸に手を当てて、告げる。
「まず、私の名前はニール。夢の世界に住むもの」
少女が動くたびに、彼女の服も細かく揺れる。
無駄な部分の多い衣装はどことなくミュシャっぽい。
なんのレイヤーかはわからないがやっぱり腐なのか、ガチなのか。
「私はずっと同じところに住んで、夜を監視していたけれど、私の力は衰えて、その維持はできなくなった」
少女は続ける。
ふしぎ星はね、内側にななつの国がある平和な星。
ところが、中心にあるおひさまの国のおひさまの恵みに異変が!
たいへんたいへん、このままじゃ滅んじゃうよう!
大丈夫大丈夫、わたしたちが救えば…って、そんなことをなんとなく思い出したが。
似たような設定になるのは、何でも黄金率のようなものがあるのだろう。
オサレな設定と言えなくもない。
「ぇーと…」
こちらの思考に気付いたのか、不審な目を少女は送ってくる。
続けても問題ないことをジェスチャーで伝える。
ニールは不審な眼差しを変えなかったが、それでも素直に先を言ってきた。
「それで、私は回復…というより、今以上の力を持つ必要が出てきた。
夜は何よりも強く、今までの力でも足りないことが分かったから。
それで、存在を変換された人間のエネルギーが必要になったのよ」
ブルマかっ!? 脱ぐか!?
「何でよっ!?」
ニールが叫ぶ。
「考えてることに突っ込まれても困るし」
「…ぅー、そうだけど…」
言葉を返すが、納得がいかない、という表情で少女が呻く。
「とにかく、理由は良くわからないが結果として俺が女性化したわけだな」
「そういうことよ」
少女は言葉を切る。
「でも、元に戻れないのは困る」
「正確には方法がないことはないけど、多分、出来ないんじゃないかなということなんだけど…」
他人が出来ることでも出来ないのだから、それではとても無理だな。
即座に判断する。
しかし、今までのパターンだと、なんか目覚めて男に戻ろうという気が無くなったりとか、
イクとかイカないとか、勝負に負けて男に戻れなくなったりとか、
淫獣、エロいよ淫獣、とかそんなことしているうちに、男に戻れなくなったりとか。
あーりーあーしーこーしーこーさーれーちゃったーとかオナニーを止めることが出来なくなったりとか、
なんだか淫獣が出てきて永遠に犯されるとか、
敵キャラが出てきて元に戻る方法を邪魔するとか、
生活しているうちに男キャラに惚れて元に戻る気がなくなるとか、
オティンティン病にかかってしまうとか、
思考が女性化とか幼女化するとか、
なんだか薬で夢落ちとか、
皮が外れなくなるとか、
悪魔に気に入られるとか、
ハーレム落ちのゲームエンドが来るとか、
奴隷エンドとか世界が変革することとかそんなことだった。
ふとニールを見ると、泣きそうな顔で今まで私が何をした、という表情を浮かべているが、
…という表情という語彙は、それを使えばどんな表現も出来てしまうのだから、とても便利な方法だと思う。
ともあれ、方法があっても40ジュール以上使うような大変なことならさっさと諦めて、
おちんちんランドへの情熱が勝てば元に戻ることを選択すればいい。
話は簡単だった。
「夏コミでコスプレも出来るから、夏まではこのままでもいいかもな…」
呟いてみる。
惨事で、少女の姿とは言っても10代半ばほどである。
ストライクゾーンからは過ぎていたが、レイヤーとしてならファインに成り切れないことも無い。
「…悪いけど、それは無理なのよ」
「なんで?」
…やはり無理があったか? 年齢か?
ニールに返すと、彼女は唐突に言ってきた。
「あなたが死んでしまうからよ」
「何で!?」
まだ尿道オナニーもしてないのに!
「ぇと、あなたの命は40日。だからあなたは元に戻ることも、夏まで生きることも出来ない。エネルギーがなくなってしまうからよ」
ニールが説明する。
「元に戻る方法は、40日までにエネルギーの変換を完結して、体へのダメージを最小限に留めること。そしてそれが命を救う方法でもある」
「ちょっと待って。今大体一日一回の割合で投下してるペースになるから…この下らない話は後40回も続くわけ!?」
「なんの話よ!?」
自分でも何を言ってるのか分からなかったが。
今、自分が死ぬことは出来ない。
今期は久々に良質アニメが固まって出てきていて、夏コミの同人誌はかなり期待を持つことが出来た。
それを手に出来ないまま死ぬわけには行かない。
特にゾイドとふたご姫の同人誌は必ずゲットする。
これは信者とか関係なく。
「元に戻る…方法を教えてくれ」
ニールに向かって、告げる。
彼女はまじまじとこちらを見ていたが、そのうちに口を開いた。
「きっと大変になるよ、それでもいいの?」
「…それでも、やるさ」
出来ることなら、と心の中で付け加える。
「ぅん」
付け加えたことはどうでもいいのか、彼女は頷く。
彼女が力を取り戻すことを決意したときはどんなことを考えていたのだろう。
「ぇと、今までの戸籍は改竄されてるから、今の名前を決めなきゃね」
ずっと三人称だったのはそういうことだったのか、と思わないでもないが、どうでもいい。ニールも構わずに続けた。
「さや、よ」
「なんでひらがな?」
どうでもいい疑問を口にするが、名前なんて付けたもの勝ちなのだからそれもどうでもいいことなのだろう。
こうしておちんちんランドに行くためのはなしがはじまったりはじまらなかったり。