激しい頭痛で目を覚ましたとき、自分の置かれている状況を上手く飲み込めない事が、どれ程混乱を来すことなのかを痛感した。
 どこにでもあるような病院の一室だと直感したのだが、それにしては部屋の中が暖色系でまとめられた上品な印象だ。
ズキズキと痛む頭を起こして部屋の中を見回したとき、自分の胸から肩に掛けて有り得ない肉の引っぱられ感を感じ、手を当ててみる。
 しかし、最初に驚いたのは自分の手の小ささだった。

「あれ?」

 記憶が混乱しているのを自ら解っているのに上手く整理できない。
 なんで?という疑問だけが頭の中でグルグルと回っていた。

 上品なフリルの付いたピンクのパジャマを着ている自分がどうしても理解できなくて、首もとのボタンを3つ外し上着を脱いでみた。
自分の視界に入ってくるのは、お椀型の可愛い膨らみが2つ、胸にぶら下がって重力に引っぱられている光景。

 しばらく呆然と眺めていたが、ふと思い立ってベットから起きあがりズボンを下ろしてみると、
股間の茂みには見慣れていた筈のペニスが無くなり、見事な貝の口が出来上がっていた。

「夢か?」

 自分の手で頬をペチペチと叩くのだが、その感触はちゃんと伝わってくる。
 静かな混乱がやがて大きな混乱に変わり始めたとき、部屋の隅に掲げられた鏡には見慣れない女性が立っていた。ほぼ全裸で。

「どなたですか……って俺か?」

 鏡に手をついて呆然とするしか出来なかった。
 姿見の鏡に映る自分の姿から視線を動かせずシゲシゲと眺めてみるのだが、それはどう見ても女子中学生か女子高生といった年の頃の少女だった。
 不思議な羞恥心を感じて急ぎ服を直したのだが……

 ガチャリ

「おっと、既にお目覚めでしたな。どうですか? 新しい自分は……丸山刑事」

 白衣姿の男はそう言ってベットサイドの椅子に腰掛けた。
 縁無しの丸眼鏡がやや下がり気味にずれて、ガラスの縁ギリギリの所から灰色の瞳でこちらを見ているその男には、表情が全くなかった。

「やれるものならやってみろ……そうおっしゃったのはあなただ。どうです?」

 記憶の混乱が収まると同時に頭痛も収束傾向のようだ。段々と色んな事を思い出してきた──

                   ◆◇◆

「課長! 俺の事かついでるんすか? 完璧な性転換だなんてそんなSFじゃ在るまいし」

 その日、捜査4課の会議室では少数の刑事達が公安2課との共同捜査でうち合わせ中だった。
その事件を警察組織がキャッチしたのは随分前なのだが、全くと言っていいほど掴み所のない組織が、水面下で有り得ないビジネスをしている……というもの だった。
 事の発端は中国公安局からの身元照会なのだが。

「いや、しかしだな、確かに大峰竜也という人物の照会ではあるが、それは女性なんだよ。先程外務省の在外公局経由で写真が送られてきたが、どう見ても未成 年の女性だ。
しかし、本人は大峰竜也32歳と言っているそうだ。……で、本人が言うには女性に強制性転換させられて売り飛ばされたんだとさ。借金のカタに」

 消費者金融の返済が滞り始めた頃、借金整理屋なる組織が暗躍していた時代があった。
 いわゆる人身売買で娘を売れだの女房を質入れしろだのという話でなくて、腎臓は1個在れば十分だ!とか、
左目の角膜を40万で買う!といった臓器ビジネスがかなり絡んでいるのを警察庁も把握していた。
 それはつまり、女性売買に関する国際的な監視の目が整備されていて、女性を商品として扱う事に対する警察リスクがブラックマーケットで問題になっていた のだろう。

 そこに目をつけた組織があった。いや、先見の明と言うべきなのかも知れない。
 生物クローン技術のデータ捏造により、世界的な名声を地に落とした高名な大学教授を迎え入れ、生物栽培技術の粋を尽くしたマクロウィルス処理による DNA書き換え技術の整備。
 以前より生物学の世界ではアングラな部分で技術検討がされていたそうだが、組織的にそれを大規模で行うようになったのは、
国家事業的な資金援助を行う裏資金の存在と、もはやブラックマーケットでしか資金調達できなくなっていた滅亡寸前の国家の存在が大きかったようだ。

 日本国内で抱えた借金を処理するために、大陸経由でその国に運ばれた男性が性転換処理されて商品になり、男性のまま国境を越え管理売春の闇組織へと運ば れていく。
 実に上手くできた組織的犯罪、そして、複数の国家的集金システムや生物技術の蓄積に向けた研究を兼ねる大規模な組織。

「じゃぁ、例の巨大宗教団体を隠れ蓑にした……」

 何をするにも資金を要する巨大組織は必然的に多額の現金を用意せねばならない。
 そして、裏金作りや不透明な経理操作に風当たりの強い昨今では、水面下での高額ビジネスはどんな組織でも喉から手が出るほど欲しいだろう。

「どうやらそうらしいな。例の団体とズブズブだった某先生も、選挙の時に総理へ楯突いて与党からおっぽり出されたらタダの人になってな。
今じゃ圧力も掛けられないんで例の宗教団体も色々と困ってるらしい。で、そっち系のケツを持っていたあの国の圧力も弱まってるってのが真相のようだ。
まぁ、それのお陰でおれ達も堂々と捜査できるって事さ。今までなら上から色々と圧力が掛かっていたよ」

 話が見えなかった部分も多いのだけど、組織とは結局そういう物なのだろうし、むしろそういうことをスムーズに行うために大規模組織には厳格な上下関係が あるのだろう。

「とりあえず潜入捜査してみる。危険だが志願するものはあるか?」

 公安課長は会議室を見回しているのだが、さすがにこればかりは皆尻込みする。
 そりゃぁそうだ。もし少しでも踏み込むタイミングを逸すれば自分が何をされるか解らないし、それに相手は時の総理ですら足を運んで会談を申し込む程の会 長が居るほどの巨大組織だ。
もし正体がばれれば海に沈むか山に埋まるか……或いは本当にどこかへ売り飛ばされるか。
いや、むしろそれだけ巨大な組織なら国内に留め置かれたまま、二度と陽の目を見ないようにどこかへ押し込まれるかもしれない。

 会議室は静まり返った。
 公安課の警視正待遇警視はジッと一人の若者を見ている。

「警部補。この中で一番若く、そして独身なのは君だけだ。なんとか──」

 会議室の目が一斉に一人の若者へと集まる。その視線の鋭さに若者は一瞬たじろいだ。

「あ……確かにそうですが……」

 青年は黙ってしばらく考え込んでいた。重苦しい沈黙が会議室を包む。一番遠くの席に座っている捜査4課の課長が吸う息の音まで聞こえてくる。

「自分の親は母親一人です。もし何かあったら……その時はお願いします」

 警視正は黙って頷いた。課長も目を閉じて真一文字に口を閉じ頷いていた。

「もし、君の身に何かあった時は、その時は国家を上げて支援することを約束する」

 その後で詳細な打ち合わせが始まった。法務省まで巻き込んだ大規模な潜入捜査。
 青年警部補はアメリカへ捜査協力の研修という名目で1年間の出向が決まり、署を上げての送別会まで開かれた。
成田空港へ課長が見送りに行くと言って二人で署を出た刑事は、都心の喫茶店で待機していた特別捜査チームの見知らぬ刑事から偽造の免許証と戸籍謄本を受け 取った。

「君の名前は丸山だ。丸山雄二24歳独身。東京下町出身。両親は事故死して天涯孤独の身という事になっている。まぁ、その手の組織にゃ願ったり叶ったりの 存在だ。
今の君には消費者金融各社から500万ほどの借金がある存在だ。近日中に090金融を使ってくれ」

 古い木造アパートの一室をあてがわれ、そこが丸山の新居になった。住所を必死で暗記しそこへ行ってみると、もうすぐ取り壊されるアパート群の一棟が立っ ていた。
 全ては地上から存在を抹殺するのに楽なように段取りが組まれていた。
 段々と青年は怖くなり始めるのだが、寮から運び込まれた雑多な生活道具に囲まれていると、青年はなんとなく劇でも演じているかのような気分になり始めて いるのだった。

 そして、090金融利用から数日後のある日。

 ドンドン! ドンドンドンドン!
 誰かが乱暴に安アパートのドアを叩いた。ドアスコープから見ればどう見ても堅気には見えないオヤジが数人立っている。

「丸山さ〜ん、いるんでしょ! あんまり手間掛けさせないで下さいねぇ〜」

  ◇◆◇

 2ヶ月ほど執拗な取り立てが続いたある日、丸山は近所のコンビニの前で見知らぬ男数人に囲まれ問答無用で車に押し込まれた。

「丸山さん貸したお金は返してくれないと困りますよぉ。私達だって手荒な真似はしたくありません。
どうです? 良いビジネスを紹介しますから、借金棒引きの代わりにそのビジネスで少し稼いでみませんか?」

 前歯の欠けた顔に傷のあるパンチパーマの男がニヤニヤ笑いながら提案してきた。
 思わずキタ!と思ったのだが、まずは抵抗してみないとダメなのだろう。

「おっお金は返しますから! 下ろしてください! ホントに返しますから! ウソじゃないです! ホントです!
もうすぐ死んだ父親の保険金が入るんです! ホントです! 信じて下さいよ!」

 涙目になって訴える作戦に出た。
 いや、本当に軽くどころかかなりビビっていたのだが。

「仕方が無いですねぇ。丸山さん、本当にお願いしますよ」

 そう言って安アパートの前で降ろされた青年は、部屋に飛び込むなり捜査本部へと連絡した。奴らが痺れを切らしてきました、と。

 それから2週間後。

 風呂上がりに部屋でテレビを見ていた青年がウトウトしている所へ例の男達がドアを蹴り破って入ってきた。

「丸山さ〜ん、信用ってのは嘘を付かない人にだけ在るんですよ。嘘を付く人は私も嫌いです。先日お話ししたビジネスの件、あれでお願いしますね。
あんまり焦げ付くと幾ら良いビジネスでも返済しきれなくなりますのでねぇ……ヒッヒッヒ」

 無表情の男が青年の口に汚い雑巾を摘め部屋から担ぎ出していった。残った男達はテキパキと部屋を片づけ灯りを消した。
 アパートの入り口には新聞屋へ張り紙を置いた。旅行に行きますので新聞を止めて下さい……と。

  ◆◇◆

 青年が運ばれていったのは都内にある巨大な宗教団体の建物だった。
 地下へと車が入り屈強の大男がトランクを開けると、猿轡に目隠しの青年がその中で震えていた。

「さぁ行きますよぉ〜。丸山さ〜ん、ビジネスで〜す」

 青年が目隠しを外されたところは小さな診察室のような場所だった。白衣を着た男が数人立っていて、様々な医療器具の並んだステンレスの台車が隣にあっ た。

「丸山さ〜ん、あのですね? 簡単に言うとあなたの借金は現在1000万を越えてます。でもね、私達と一緒にビジネスをすると、私の計算では2年半で完済 になります。
なに、あなたの臓器を取って売ろうとかね、そんなダーティーな事じゃありません。今ウチの国の金持ちが続々と国外脱出してるのは知ってますか?
東南アジアにね、金持ちの特別な老人ホームがあってね、そこのスタッフを捜してるんですよ。
でね、そこは全部日本人ってのが売りでねぇ。しかも若い女性だけってのがポイントなんですよぉ〜」

 どう見ても堅気じゃない男はニコニコしながら話を続けた。

「それでねぇ、どう見てもあなたは男ですからね。今から我々があなたを若い女の子に仕立て上げちゃいます。そしてね、そこへ行って老人の相手をして欲しい んですよ。
なに、いい年よりばかりだし社会的に名のある人も多い。気に入られればあなたを買い取って国内に連れて帰ってくるかも知れません。
そうなれば2年も掛かりませんよ、全部あなたの心掛け一つだ。とりあえずここに拇印で良いですから同意書へ捺印して下さい」

 顎が上手く噛み合わないくらいガクガクと震えていた。奥歯に仕込んだ通報装置のスイッチを入れたいのだけど、上手く歯を噛み合わせられないでいる。
座っている椅子がグラグラと揺れるくらい全身で震えているのだった。

「丸山さ〜ん、そんなに震えたってダメですよ。もう遅いんですぅ〜。もう諦めましょうよ。それともあなたの指を切り落として私達の方で代わりに捺印しま しょうか?」

 涙が知らない内に溢れてきた。本気で怖いと思ったことは今まで何度かあったのだが、そんな事とは比較にならないほど震えている。

「おっ、俺は刑事だ! 潜入捜査だ! 今なら黙っていてやるから解放しろ!」

 周りの男達がゲラゲラと笑いだした。

「丸山さ〜ん。いや、丸山刑事って呼びましょうね、自称刑事なんですからねぇ〜。今まで色んな事を聞きましたが潜入捜査は初めてですねぇ〜。
あなた、良いスタッフになりますよ。退屈な年寄りを喜ばせてやって下さいねぇ〜」

 その男が指示を送ると隣の男は大きなハサミを懐から取り出して青年の後ろ側に回った。
 後ろ手に縛られている右手に冷たいハサミの感触が伝わる。

「丸山刑事、痛い思いするのは嫌でしょ。自分から捺印しましょうよ。そしたら痛い思いはしません。大丈夫ですって、私はあなたと違って嘘は付きませんか ら」

 男の冷たい視線が突き刺さるようだ。青年は首を左右に振りながら大声を張り上げるしかなかった。

「やめろ! やめてくれ! 俺は刑事だぞ! オマエラ全員逮捕してやる!」

 それを聞いた男がハサミの握りに力を入れた。指の付け根に金属の感触があたる。

「くそ! やれるもんならやって見ろ。必ず逮捕してやるからな!」

 ヤレヤレという表情を浮かべた男は顎をしゃくってヤレの合図を送った。途端に全身を激痛が駆け抜け、寒気と脱力感が襲いかかった。 そして断末魔のよう な悲鳴──

「ギャァァァァァァ!!!!!!!!」

 その後の光景を青年は余りよく覚えていない。ただ、白衣を着た男達が何本もの注射を青年に打ち込み段々と意識が遠くなっていったのだった。

  ◆◇◆

「さて、では、何から始めましょうか?」

 白衣姿の男は縁無しの丸眼鏡を外して部屋のカーテンを閉めた。自分が女性化している実感は湧かないのだが、その男の行為それ自体に僅かではない警戒を覚 えた。

「通常ですね、あなたの処女は競売に掛けられ、最高値を付けた人があなたの破瓜の権利を持つのですが……世の中には調整済みを求める人も居ますので、
我々はどんな対応でも出来るようしてあります。これはビジネスなんですよ、急に言われても困るでしょうけど、あなたにもプロ意識を持って欲しいものです」

 男はそう言いながら部屋の入り口のロッカーを開けた。
 中には綺麗に整理された──整理された……

「丸山刑事、まずは裸になりましょう。手荒な真似はしたくありません、自分で脱いで下さいね。あなたを傷物にする権利を持つのは競売で買った人だけですか ら」

 ベットサイドのテーブルに載せられたのは、不思議な形の紐と合成皮革で出来た、おそらくは衣類に属する物……それ以上の想像は付かない。

「ほら、とっととやりましょう。それともまた痛い思いをするのが良いですか? 私達はあなたを作り替えたエンジニアですよ。今更あなたの裸に興味はありま せん。あなたは──」

 それまで全くの無表情だった男の目が一瞬輝いた。

「大事な商品なんですからね。出来れば傷を付けたくない」

 同時に右手がポケットから取りだした物、それはスタンガン。

「ちょっと改造してあって、これは瞬間電圧10万ボルトの強烈な奴です。まぁ、普通の人なら一瞬で頭の中が真っ白でしょうね。さぁ、大人しく来てる物を全 部脱いで」

 なにか大事な物が体の中のどこかで壊れる音を聞いたようなそんな気がして、そして諦めたように服を脱ぎ始める。
と言っても来ていたのは簡素なパジャマだけだから、単にシャツとズボンを下ろしてショーツ一枚になっただけだ。

「来ている物を全部です。聞こえませんでしたか?」

 事務的な口調というのは時に芯から震え上がるほどの恐怖をもたらす物だと痛感する。
 抵抗すればどうなるかが解っているだけに、ショーツを下ろして一糸まとわぬ姿になった。
 男は何も言わずにテーブルから紐の付いた合成皮革を持って近づくと、絶望を浮かべる自称丸山刑事の後ろに回って、
ウェストのくびれた部分からその紐をあてがって股下を通し、へその下の辺りでプラスティック製の留め具に収めた。
 女性器をスッポリ覆う形になっているそれは──貞操帯。

「これからあなたには色々とトレーニングをつんで貰いますが、これはその最中にあなたが処女を失わないための保険です。
あなたの商品価値を落とすわけには行きませんからね。トイレで用便をするときは私に言いなさい」

 男は口を動かしながら自称丸山刑事の前に立つと、今度はポケットから取りだした首輪を首に巻いた。まるで犬のように。
 首輪には小さなタグが取り付けられている。そこにはローマ字でSAKIと打たれていた。

「今日からあなたの名前はサキです。良いですね?」

貞操帯と首輪だけの姿になった俺は声を荒げた。鈴を転がすような可愛い声で。

「俺はそんな名前じゃ……」

 しかし、言葉の途中で白衣姿の男が女性の頬を強打する。打たれた反動で床に倒れ込むのだが、男は首輪の部分を手に持つと上に引き上げた。

「手間を掛けさせないで下さい。もう一度言います、あなたの名前はサキです。返事をしなさい」

 男はベットサイドへ押し飛ばし、パッと手を離した。俺はベットに座り込む形になった。

「返事は?」

 黙っている俺に男はもう一度バシッと平手打ちを入れる。

「……返事は?」

 少し苛立っているのかもしれない。違う方向からもう一度平手打ちが入り重い音が響いた。男の目は何かを確かめるようにジッと俺を見ている。

「返事……は?」

 今度はやや振りかぶってテークバックを付け、もう一度強く叩いた。

 そして何も言わずに逆サイドから裏拳の角度へテークバックした。

「サキさん、返事は?」
「はい、サキです………」

 俺は涙を浮かべてそう答えた。何がどうというのではなくて無性に悲しかった。
 俺の身に何かあたったら助けてくれるはずの警察はどうしたんだろう?
 俺は売られたんだろうか? そんなバカな……

「では、サキさん。両手を握って前に出しなさい」

 俺は恐る恐る両手を出した、男は何も言わず片手ずつ指のない手袋をかぶせた。袋の中で手を広げられない構造だ。
男は袋の紐を手首の細い部分で縛ると、余った紐をハサミで切ってしまった。袋の先端に小さな鉄の輪が付いている。

「では、まずはレッスン1ですね。サキさん、あなたの体が女性である事を確認しましょうか」

 男は俺を乱暴にベットへと押し倒した。ベットの天板部分にあるナスカンへ手袋の輪をロックした。万歳状態で両腕が拘束され男はソレを確認した。

「さて、次は足ですね」

 男はやや幅のあるベルト状の帯を足首に巻き付け、マジックテープでしっかりとロックした。
 そのベルトにも鉄の輪が付いていて、ベットの足側にあるフックへとそれを引っかけられる構造になっていた。

 X状に拘束された貞操帯姿の俺……

「そんなに不安そうな顔をしないで下さい。何、すぐにそんな事しなくても自分から求めるようになりますよ。なにせあなたはそういう風に作られてるんですか ら」

 男の右手が無造作に俺の左胸を掴み捻った。ズキッと痛みが走るのだけど、その中に僅かではない電気の走るような感触がある。
男の口が胸に近寄って緩やかな丘の頂きにある突起を舐め始めた。途端にビリビリとくすぐったいような感触が駆け抜ける。

「ほら、気持ち良いでしょ? その感触を忘れないように。それに身を任せましょう」

 男はそう言って乳首を舐め続けた。幾らもしないウチに甘い吐息を漏らし始める自分が猛烈にミジメだった。


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