目が覚めた時、主人公がいたのは冷たい地下室のような所だった。
「ここは・・・!?」
頭がひどく痛い・・
何故自分がこんな所にいるのか主人公にはまったく記憶がない。
懸命に記憶をたどってもまったく思い出す事が出来なかった。
「とにかくこんなところにいてもしかたない」
そう思って前に進もうと手足を動かすと金属のこすれる音がした。
どうやら手足を鎖で繋がれているようだ。
「何で鎖が・・・」
いくら引っ張ってみても鎖は外れない。
「これではここから出る事もできない・・」
深い絶望感が主人公の心を支配する。
それからどれぐらい時間がたっただろうか。
突然、誰かが階段を降りてくるような音が聞こえてくる。
やがて主人公の目の前にあるドアが勢いよく開かれると、現れたのは主人公がこの世で最も嫌悪してやまない男であった。
「よう! 気分はどうだ?」
あざけるような声で男は低い笑いを浮かべる。
「お前の仕業か!!」
怒りに打ち震えながら叫ぶ主人公。
二人は幼い頃からの知り合いではあったがお互いの親同士が仲が悪く、常に比較され続けた結果、互いに憎みあうようになっていた。
今では仕事上のライバルであり、どちらが先に出世をするかで争っていた。
「そうだ。今日のパーティーでウエイターに金を握らせお前の酒に薬を盛った。そしてここに連れてこさせたというわけだ」
「どういうつもりだ・・こんなことをしてただですむと思ってるのか!!」
「ただですむなんて思ってはいないさ。だがどうなろうが知ったことじゃない」
「どういう意味だ?」
「俺は偶然聞いてしまったんだよ。上の連中が話している事を。 お前が昇進し、俺がそのサポートをする。そう話しているのをな」
「・・・・・」
上司から自分のほうが評価されていたと聞いてもこのような状況では素直に喜べない。男はさらに話を進める。
「俺は自分の耳を疑ったよ。俺がお前の下につく? まったく悪い冗談だ!!」
男は怒りにまかせて壁に拳を叩きつける。
「もう俺がどうなろうが知ったことか!! お前をこれ以上ないというぐらいひどい目にあわせてやるから覚悟しろ!!」
男の目はすでに狂気の色にそまっていた。
「やめろ!! いったい何をするつもりだ!!」
「こうするのさ!!」
男はズボンのポケットから注射器を取り出し主人公へと近づいていく。
「やめろ・・!! 近寄るな!!」
必死に後ずさりするが鎖で繋がれているためこれ以上は逃げられない。
男の腕が主人公の腕を捕らえそこに注射針を突き立てる。
「うっ・・・・!!」
その途端に猛烈な眠気が主人公を襲うと彼はその場に倒れこんだ。
「目が覚めたあとのお前の絶望する姿を見るのが楽しみだよ」
薄ら笑いを浮かべて男はその場をあとにした。

「う、うーん・・・」
再び目を覚ますと体中から妙な違和感を感じた。
自分の体が自分のものでなくなってしまったようなそんな感じがした。
おそらく男が注射した薬品のせいであろう。
「どうやらお目覚めのようだな」
男の声がした。まだ視界がぼやけてよく見えないが声のした位置から判断すると近くにいるのだろう。
「貴様・・・いったい俺に何をした!!」
「すぐに分かるさ。そろそろ目が慣れてくる頃だろう。こいつを見てみろ」
男の言うとおり、だんだん視界が鮮明になってくる。
どうやら男がもっているものは鏡のようだった。
「なっ!!」
主人公は驚きのあまり声を張り上げる。
そこに写っていたのはいつも見慣れた自分の姿ではなく、長い髪の美少女だった。
腰まである美しく艶やかな髪。透き通るような白い肌。
バランスのいいスタイル。そして街を歩けば誰もが振り返るであろう整った顔立ち。
まさに完璧といっても過言ではないほどの美少女だった。
「な!! どういうことだ!!」
あまりの事態に主人公の声は震えていた。
自分の体が美少女に変わってしまったなどと誰が信じられるだろうか。
「まさか・・これは何かの冗談だろ!! そうか・・俺は悪い夢をみているんだ!! そうに違いない!!」
頭を抱えて叫ぶ主人公。だが男はさらに追い詰めるようにこういった。
「これは現実だ。その鏡に写っているのは紛れも無いお前の姿だ」
「そんな!! どうやって男を女に変えるというんだ!!」
男はポケットからカプセルを取り出すと主人公の前に突きつけ、
「この薬を使ってお前の体を分子レベルまで解体し、肉体を俺の思う通りに瞬時に再構成した。
もともとは性同一性症候群の治療薬として開発されたものだが、容姿を自由に変えられるため金持ちが美容整形に使用している。
俺はありったけの金を出して裏のルートで入手してきた」

「そこまでしていったい何の意味があると言うんだ!!」
「意味はあるさ。お前に先を越された時点で俺の生きる意味は終わったんだよ。
ただお前だけが人生を謳歌するのが我慢ならん。
だからお前を不幸のどん底に陥れてやろうと思った。ただ殺すだけでは俺の気がすまん。
かといって痛めつけたとしてもお前を心の底から絶望させるには足りない。
俺は復讐の方法を決めかねていた。女なら陵辱すれば簡単に絶望するのにと思った。
その時この薬のことを思い出したんだ」
主人公は男の次に口にする言葉は予想できた。しかし頭の中で必死の否定していた。
そんなことがあるはずがないと。だが体は恐怖のあまり震えが止まらなかった。
「その時俺はこれだ!!と思ったね。男が女にされて犯される。これ以上屈辱なことはあるまい」
そう言いながら男はこちらに向かって一歩ずつ近づいてくる。
「やめろ!! 近寄るな!!」
美しい顔を恐怖に歪ませながら主人公は叫んだ。
「安心しろ・・俺はフェミニストだ。むりやり犯すなんて外道なまねはせん」
震える主人公に向けて男は優しげな口調で語りかけてくる。
言葉の意味を計りかね、主人公は戸惑いの表情を浮かべる。
「とりあえず着替えろ。そんなかっこじゃせっかくの美人が台無しだぞ」
そういって男は荷物から服を取り出した。
「この服は!!」
男が取り出したのはメイド用の服だった。
裕福な主人公の家では専属のメイドを雇っていたので彼にとっては見慣れた服だった。
しかし自分が着るとなると話は別である。
「誰がそんなもの着るものか!!」
そう叫んで主人公は男を睨み付ける。
そんな様子の主人公を楽しげに見つめながら男はこう言った。
「ふふふ・・いいのか?そんな事言って。確かお前には妹がいたよなあ」
「!?」
主人公には二つ年下の妹がいる。生まれつき体が弱く、よく看病していた彼をとても慕っていた。
彼のほうも妹を可愛がっており仲のよい兄弟として近所でも評判だった。
急に妹の話を切り出され、男が彼女に危害を加えるつもりではと不安になる。
「確かとても大人しいいい子だったな。でも近頃物騒だから気をつけたほうがいいぞ。
そういえばさっき俺の知り合いががお前の家の周りをうろついていたぞ。
そいつは危ない奴でな。昔、女をレイプして投獄されていたんだ。
兄としては心配だろう? 仲のいい兄弟だったからなあ」
「貴様・・卑怯だぞ!!」
主人公は彼の意図を察し怒りに打ち震えた。
言う事を聞かなければ主人公の家の近くで待機させている手下を使って妹を犯すと暗に言ってきたのである。もはや要求を飲むしかなかった。

「よく似合ってるじゃないか。可愛いぞ」
男の言葉に主人公は顔から火がでるような思いだった。
あのあと、男の見ている目の前でメイド服へと着替されられた。
自分の手でスカートをはいたときは屈辱のあまりこの場から消えてしまいたくなった。
「ほら、お前も見てみろよ。メイドを服きた自分の姿を」
男は傍にあった鏡に手を伸ばすと、わざわざこちらから見える位置に置いてくる。
「嫌だ!! 誰が見るもんか!!」
スカートやフリルの感触だけでも恥ずかしいのに客観的に自分の姿を見せられるなんて耐えられない。
主人公は必死に目をつぶって鏡を見ないようにした。
「もう一度だけ言う鏡を見ろ。さもないと」
その言葉は主人公にとって十分ば強制力をもっていた。
「分かった見るよ、見ればいいんだろ!!」
主人公は恐る恐る目を開けた。
鏡にはメイド服を着ている不安そうな顔をした美少女が写っている。
憂いを含んだその表情はどんな男でも虜にするだけの美しさをもっていた。
主人公はそれが自分だということを忘れて思わず見入ってしまった。
「おいおい・・何自分自身に見とれているんだ? まあその美少女ぶりじゃ無理ないか」
男の言葉に我に帰った主人公は、恥ずかしさのあまり死んでしまいたい気分になった。
まさか自分自身に見とれてしまうとは。
「まあいい。とりあえず着替えが終わったわけだ。じゃあこれから本番に入るぞ」
男はそういうとズボンのチャックを下ろし、今にもはちきれんばかりの肉棒を取り出した。
どうやら主人公のメイド姿を見て興奮していたらしい。
主人公は自分が欲情の対象となっているのに身の毛がよだつ思いと同時に身の危険を感じ、少しづつ後ずさりしていく。
「な・・何のつもりだ・・」
震える声で問う主人公。何のつもりかなんて分かってる。
全身を襲う恐怖感を少しでも取り除くためあえて聞いたのだ。
「もちろん若い男女が一つの部屋に二人っきりでいたら・・することは一つだよなあ?」
「うわああああ!! 来るな!! 来るなあぁぁぁl!!」
ヒステリックな叫び声をあげる主人公。男はその反応を楽しむかのように主人公に向かってゆっくりと近づいていく。
やがて壁際まで追い詰められる主人公。その表情は恐怖に支配されている。
「安心しろ。いきなり入れるなんて無粋なことはしないさ。物事には順序ってものがある。
男は不気味な笑みを浮かべながら肉棒を主人公の顔へと近づけていく。
主人公は何か言おうとしたが恐ろしさのあまり声もでない。
「まずはこいつをしゃぶってもらおうか」
主人公の恐れていたことを男が平然と言い放つ。
「だっ!! 誰がそんなことを!!」
「もう一度言う。こいつをしゃぶれ」
有無を言わさないその言葉。主人公は覚悟を決めるしかなかった。
目の前にある肉棒は硬直し、青臭い異臭を放っていた。
こんなものを口に入れなければならないなんて・・・。
男として・・いや・・人間としてこれ以上の屈辱があるだろうか。


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