「美奈先輩、私達はどうするんですか?」
美奈はFMVを起動させ、画面に向かってなにやらキーボードを叩きはじめた。
「真希様の新しい作戦をちょっと試してみようというわけ」
「新しい作戦? 何をはじめるんですか?」
FMVの画面上では、何かのツールらしき物が起動している。
「ふふっ、まあ見てなさい」
美奈は熟練技術者のようなスピードでキーボードを叩き、何かを打ち込んでいる。
それはプログラムソフトらしかったが、Cでもfortranでもない、香織が見たことのないソフトだ。
画面上にすさまじい速さで文字列が現れていく。
確認のダイアログが何度か開き、その度にOKを押していく。
それが一段落すると、今度は別のツールを表示させる。
どうもそれは何かの掲示板らしい。インターネットで掲示板のログを表示しているのだろうか。
しかし、それはインターネットエクスプローラではない。
「何見てるんですか?」
「これ? ちょっと待って・・・よし・・・ふふ・・・オーケー、完了。
これはね、2ちゃんねるの『強制女性化小説ない?』っていうスレッド。
ここのスレッドにちょっと仕掛けを仕込んだってわけ。
このスレッドを見たらね・・・どうなると思う?
パソコンから画面・音声両面での催眠効果が発動して、あとは・・・ってわけ」
「流石ね、姉者」

  ◇◆◇

翌日、大学の地下室。
もう誰も使っていない部屋で、半ば倉庫と化していたが、かなり広い部屋だった。
そこになぜか、年齢も性別もばらばらの人々が集められている。
男性が圧倒的に多いが、数こそ少ないもののその中には女性も含まれていた。
そして・・・全員の目が虚ろで、まるで生気を感じさせなかった。
狭く暗い地下室に何十人も押し込められている状況にも関わらず、
彼らは何の疑問も抱かずただそこに立ち並んでいるだけだった。
「はい、みなさーん、ご苦労さまー」
こんな場所に不釣合いな女性の明るい声。
声の主は、美奈だった。隣には香織もいる。
その声を合図に、全員の目に生気が戻った。
彼らは周囲を見渡し、何事かと騒ぎ始めた。
「ここどこだ?」
「おまえどうやってここ来たか覚えてるか?」
「いったい何なんだよ、帰らせろよ」
「これってどういうことだよ!」
中には美奈たちに食って掛かる者もいた。
「静かになさい!」
美奈が一喝した。
途端に一人として口をきく者がいなくなった。いや、きけなくなったと言ったほうが正しいのかもしれない。
「今日ここに集まってもらった皆さんには、ある共通点があります」
彼らはお互いの顔を見合わせ、さっぱりわからないといった風のジェスチャーをした。
「『強制女性化小説』これがキーワード。今ここにいる人達は、全員この名前に覚えがあるはずよ」
彼らの顔が、一様に青ざめた。
「おまえもか?」「おまえも?」「まさか、どうやって?」
互いに指差しながら、彼らはジェスチャーでそのようなやり取りをした。
「私達はあのスレッドにあるウイルスを仕込んでおきました。
皆さんがあのスレッドを見たことで皆さんのパソコンがウイルスに感染し、
それを通じてある暗示が皆さんにかかるようにしたのです。
今日この時間、この場所に集まるようにね。あ、もうしゃべっていいわよ」
またざわめきが広まった。
「何でそんなことしたのかって? 理由は一つ。あなた達の精気をいただくためよ」
「ふ、ふざけるな!」「俺達を帰せ!」「ちょっと、いいかげんにしてよ!」
「はあっ!」
美奈が彼らに手を向けて掛け声と共に気を入れると、彼らの動きが一様に止まった。
とはいっても、強制的に体の動きを止められただけであったが。
「さて、この中に女の子はどれだけいるのかしら?」
美奈と香織が彼らの中をゆっくりと探し回る。
彼らの恨みや怒りをたたえた視線が容赦なく彼女達に向けられたが、二人は意にも介さなかった。
「へえ、三人だけか。意外に少ないじゃない」
二人は、動けない三人の女性を引っ張り出すと、
前のほうにあるなにやらいくつものコードがセットされた椅子に誘導し、
そこに彼女達を座らせた。
一人は高校生くらいの女の子、高校生ではなかなか見られないような黒い髪をツインテールにしたおとなしい印象で、
制服ではなくTシャツにズボンの私服姿だった。
二人目は茶髪でかわいく人懐っこい印象を受ける20歳くらいの女性、
残る一人はきっちり化粧も決め、短くまとめた髪にスーツ姿が似合うような、
キャリアウーマンといった印象を受ける30歳くらいの女性だった。
二人は彼女らの体のあちこちにコードを取り付けていく。
最後に、椅子の後ろの壁に手足を固定し、まるで磔にされているような状態にした。
美奈がぱちんと指を鳴らすと、三人の動きが自由になった。(当然磔にされていてろくに動けないが)
「ちょっと、あたしたちをどうする気?」
「女の子のくせに強制女性化小説なんて物好きな子ね。
ひょっとして彼氏を女性化させて犯したいなんてレズ願望でもあるのかな? あんた変態じゃない?」
「ほっといてよ、平気でこんなことする頭のいかれたあんたに言われる筋合いはないわ!」
「ふふ、そう強がっていられるのも今のうちよ。
まずは軽くあんたたちにいってもらって、精気を抽出するとさせてもらうわ」
美奈は並んで座らせた女の前に立ち、右手で20歳くらいの女の、
左手で高校生くらいの少女の胸を服の上からまさぐり始めた。
「じゃ、あたしはこっち」
香織は、残ったもう一人の女の前に立つと、顔を寄せ彼女に口づけた。
最初は美奈をきっと睨みつけていた二人の少女だが、すぐにその顔に赤みがさし、
息遣いがはあはあと荒くなってきた。
美奈の指先は、二人の感じるところを的確に刺激していく。
(な、なんなのこの女…!)
(胸を触られただけで…なんでこんなに気持ちいいの…?)
「あらあら、胸だけでそんなに感じちゃうなんてなんてエッチな子たちなのかしら。じゃあ、こっちはどうかしら?」
美奈は手を胸から離し、二人の股間に這わせた。
「ひゃあっ!」
「あんっ!」
「ふふっ、いい反応ね…じゃあもっと気持ちよくさせてあげる」
美奈が手の動きを一気に加速させる。
途端に二人の嬌声が大きくなる。
その隣では、香織が女とディープキスを交わしながら全身を撫で回している。
その光景に、見ていた男達は興奮を感じつつも動けないことにもどかしさを感じていた。
「ひゃあっ…だめえっ…もう…あっ、ああああっ!」
「そ、そんな…ああっ…あああああんっ!」
二人の少女は、美奈のテクニックの前になす術もなくいかされてしまった。
もう一人の女も、同時に香織によっていかされてしまったようだ。
いかされてしまった三人は、魂が抜け落ちたようにだらんと頭や腕をたれ下げている。
その様子をじっと見ている男達。
同時に彼らの中で三人だけ男が倒れたのだが、それに気づいたものはいなかっただろう。
やがて三人がゆっくりと目を覚まし、顔を上げた。
そして、彼女たちは思いもよらない態度をとった。
「えっ、なんで俺つながれて…!こ、声が…!」
「ま、まさか、俺…あの女になってる?!」
「うそだろ…こんなことが…」
美奈が妖艶な笑みを浮かべて三人に向き直った。
「そう、あなたたちにはその女の体に入ってもらったってわけ。いいでしょう? 女の体って。
もともと強制女性化小説なんか喜んで読んでたくらいだから、こういうの憧れてたんじゃない?
もっともその体でいかされちゃうと、さっきの女達と同じように精気を吸い取られて抜け殻になっちゃうけどね」
「そ、そんなあ…」
「さあ、今度はみんなにも手伝ってもらおうかしら」
美奈が指をぱちんと鳴らすと、男達の体が自由に動けるようになった。
「さあ、思う存分彼…いえ、彼女たちを楽しませてあげなさい」
「うおおおーーっ!」
先ほどの痴態を見せられてすっかり興奮した男達は、見境なく彼女たちに襲いかかった。
「ふふふ…いずれ自分達もああなるとも知らずに。男って本当馬鹿で単純よね」
「うぐっ…や、やめろお…」
「そんなこといってここはもうこんなになってるよ?」
「ひ、ひゃああっ!」
「おうおういい声上げちゃって。いいなあ女を楽しめて」
「ひ、ひどいよ…グスッ…」
「いいねえその顔。そそられるねえ」
「あっ、あああっ!」
「どうだい? 男に触られてキスされて入れられるってどんな気分だ?
それともそんな格好になったら男が好きになるのかな? ひゃはははは」
そこはもう阿鼻糾歓の地獄絵図だった。
繋がれて動けない女達を男達がかわるがわる犯していく。
そして、女達の中にいるのは、つい今まで男だった者。
それがいきなり女の体に放りこまれ、その瞬間男達によってたかって陵辱される。
その屈辱の中でいかされ、精気を吸われていく。
女を犯すことに熱心だった男達は気づかなかったが、女がいくたびに一人、また一人と犯す側の男が減っていっていた。
かわりに床には抜け殻と化した男の体が山積みになっていた。
そうこうしているうちに、最後の男一人が女を絶頂に導いた瞬間、
男の体が崩れ落ち、女が自分の体を見てぎょっと驚きの表情を浮かべた。
「さあ、あらかた片付いたみたいね」
美奈と香織が、残された三人の女に向かっていく。
「後はあなたたちだけね。あたしたちがじっくりと可愛がってあげるわ」
三人の女には、一様に怯えの色が残るだけだった。


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