ちょろちょろ・・・
股間を濡らす感覚にいまだに慣れることが出来ない。
それも当然だろう。つい最近まで「おれ」は男だったんだから。
TS法。その結果としておれは15人のクラス全員の子供を孕むための母体にされた。
そうしておれは慣れ親しんできた男の身体を失い、男たちの精液を流し込まれるための器にされた。
今のおれは大きな瞳と美しい黒髪を持った美少女になっていた。
自分で言うのも嫌になるがかなりのナイスバディだ。
こんな女が目の前にいたら、そして、それを自由にしていいといわれたら。
それだけで大抵の男なら理性を失い、自らの欲望を注ぎ込もうとするだろう。
おれは、それが実現してしまった稀有な例といっていい。
問題は、今のおれが大抵の「男」ではなくなってしまったことだった。
おかげで、それまで色々と妄想の種にしてきたグラマー少女の小便を間近に見ているにもかかわらず、まったく興奮を覚えることはなかった。
これでも心は男のままだから自分が美少女になったのなら自分が即オカズになるのではないか。
理不尽かつ不運なくじに当たった瞬間から処置を施され、実際に自分の身体を見るまでのわずかな間抱いたそんな希望めいたものは、絶望でもって報いられた。
変わり果てた自分の体。これから女としてこの体と一生付き合わなければならない。
男に自分の体を捧げ、その肉棒に貫かれ、精液を流し込まれた体を出産の日まで抱えこまなければならない。
この体をクラス全員が犯し、孕ませることになる。おれは、ひとりでそれに耐えなければならない。
そんな現実を前にすると、手鏡の中の整った顔は瞬く間に曇り、自分の体をつぶさに見ても、それは自分の絶望を増す材料にしかならなかった。
自分は男に抱かれて、男とのセックスに腰を振り乱す可愛い女の子になった。
それをトイレのたびに刻み付けられるのが何より嫌だった。
終わったあと、紙をちぎり、股間を丁寧に拭く。
すべての女がそうなのかは知らないが、おれの股間は排尿のたびにふとももまでを尿のしずくで濡らしてしまう。
丁寧に拭かなければならず、その間おれの女の部分にもたらされる刺激に耐えなければならない。
沈んだ表情で手を洗い、トイレから出る。そこでハンカチを忘れたことに気づいた。
あわてるおれにさっと出されるハンカチ。驚いて振り向くと、そこに見知った顔がいた。
「ほら、家に忘れてたぞ。まったく女になってもドジは変わんないんだから苦労するぜ」
そこにいたのはおれの兄の敬だった。兄といっても年子で学年は同じ。ついでにいうと同じクラス。
いままでそんな感じで同じような人生を歩んでいたのにこんなところで分かれてしまうとは思わなかった。
兄弟から兄妹になってしまったが、そんなことでいまだに昔と変わらない気軽さで接してくる。
めぐみという名前を付けられたおれのために、いろんな女の子用品を買い揃えてきたことだってあるが、
その気安さからか着替えを覗こうとしたり、一緒に風呂に入ろうとか言い出してくるのはやめて欲しいところだ。
「サンキュー」
ついつい昔通りのしゃべり方で返すが、声が女の子の声なのでどうしても違った感じになる。
それでも、敬といるうちは男に戻ったような感じになった。
ハンカチで手を拭くと、早速クラスメートからいつもの「挨拶」が来る。
「俺とどう? よかったら今からでもいいぜ」
いまだに女としての自覚のないおれにとって男からの「お誘い」に乗る気にはならない。
「どうせ全員とヤルことになるんだから、さっさと終わらせようぜ。俺ならそうするけどな」
気軽な発言にうんざりする。クラスは15人、それだけの男たちに犯され、精液を注ぎ込まれる。
さらに、クラスメート「全員の」子供を孕み、産み落とす。その恐怖を想像すらしないことに苛立ちを覚える。
通常人間が妊娠してから出産まで10ヶ月。普通にヤッたところで高校生活の間に3人も産めない。
しかし、このTS法の監視下では違った。子供を孕んだとわかるとすぐに母体を「強制妊娠施設」へ送り込む。そして十日ほどで元通りになり、もどってくる。
その間どうなったのかは謎に包まれている。
強制的に出産の苦しみを濃縮して産み落とされている。
他の「母体」へ受精卵が移されている。
与太話としか思えないうわさを含めると実に様々なことが語られているが、真実はわからないし知りたくもない。
一つだけいえるのはその施設に送られてからのことがどういう意味でもまっとうなものでなさそうなことだからだ。
あと、帰ってきた「母体」にはどうしたわけか前にもまして女性らしく、人によっては淫乱になってしまうというが、これについても触れたくない。
どれひとつとっても自分がわがこととして体験したくない話ばかりだからだ。
いまだに慣れないスカートの感覚。突き出した胸の重み。それらに注がれる男たちからの視線。
時々、自分がどうしてもしなきゃいけないなら誰とするかと自問自答してみるが、答えは出ない。
隠しても女であることを主張する今の自分の裸を晒して、女として男に犯される。
そんな屈辱的な光景が頭をよぎり、あわてて想像をかき消す。
そんな日々が数日間続いた。
トイレ、風呂、着替え。
女の体を確認させられる行事と、数知れない「お誘い」が繰り返された。
徐々に慣れてきたとはいえ、いまだに男子トイレに入ろうとする自分に赤面しつつも、自分の中の「男」が健在であるのにどこか安堵する。
自分の全裸にどきまぎすることもなくなり、いつしか男性器の形が思い出しにくくなっていった。
「お誘い」を繰り返す男たちの視線の中に妙なものが混じり始めたのはこの頃だった。
「どうしたんだ。いきなり映画見に行こうなんて」
敬が驚いたように言う。
「この映画、面白いんだって。たまには映画館で見るのも面白いと思うぜ」
本当は、少しいたずらしてみたかったからだ。女っけのない敬がこんな映画なんか見たらどんな顔するか。
今かかっているのは話題の恋愛映画だった。
上映
この体が女の子だからってけして精神まで女性になったわけではない。
話題になるだけあってつい引き込まれたからだ。
おれの目に涙が浮かんでいるのも、気がついたら女性側の心境で映画を見ていたのも、演出のせいだ。そうに違いない。
ふと隣を振り向くと、敬が真剣な面持ちでスクリーンを見つめていた。
その表情に心のどこかでじくりと来るものを感じた。
「意外と面白かったな、やっぱり迫力が違うんだろな」
映画館の中で知らず知らずにこみ上げた感情と頬の火照りを隠そうと、必死に男らしさをだして話しかける。
「あのな、気持ちはわかるけど、もすこし自然に話してみたらどうだ、
俺は別におまえが女の子言葉で話したって構わないと思ってるんだ。こんなことになったしな」
ふと映画館で感じた疼きが蘇った。
夕焼けに映る敬の横顔を見て思った。
敬となら、後悔しないかもしれない。
この後、どんなことになるか、自分がどんな風にされてゆくかわからないけど
敬がその最初のひとりなら、その思い出を胸に耐えられそうな気がした。
その日からこっち、おれの中で何かが変わった。
女の子言葉でしゃべることに抵抗がなくなったのだ。
それでも、まだ男に抱かれたいと思うことはないが、とりあえず自分の体に嫌悪感を抱くことはなくなった。
それと平行して、妙な視線が自分をつけていることに気づいた。
一、生徒は母体提供者の同意なく性行為をしてはならない。
一、生徒は母体提供者の要望があれば可能である限りそれに応えなければならない。
一、母体提供者はいかなる要望をも通すことができるが、子を為すことを第一義としなければならない。
TS法の3大禁則。これがある限りレイプされることはないと思うが、得体の知れない視線にそれが通用するかはわからない。
妙な恐怖感とともに、一つの決意が浮かんだ。
こんな男どもに抱かれるくらいなら、敬に抱かれてやる。
敬も同じクラス。ヤるのは推奨されても禁止されるいわれなどない。
敬の子供なら、どんなことになっても産んでみたい。
そう思うほどになった。
ことここに至ると行動は早い方がよい。
授業が終わると、早速学校唯一の女子トイレに駆け込んで、スカートのポケットをまさぐる。
今まで見ることも恐ろしかった赤いカプセルがそこにあった。
今改めてみるカプセル。真っ赤なそれは誘惑するような輝きを放っていた。
早速一粒を手に取り、トイレを出る。そろそろ敬が通る頃だ。
敬の姿が見える。幸いひとりだ。
トイレがある階段の陰で潜みながら待つ。
カプセルを飲み、すかさず敬をこの陰に引きずりこんで、ここでヤろう。
TS法の第2禁則からいっても断れるはずはないし、もし断ったとしても、押し倒しても思いを遂げる。
敬の姿が近づいてきた。
一瞬ためらい、決意とともに、カプセルを飲み込む。
すると、唐突に後ろから手が伸びて、おれを乱暴にトイレに引きずりこんだ。
「いけないなぁ、そんなことしちゃ」
その顔に見覚えがあった。同じクラスの鳶上という男。どこか暗い雰囲気と、陰気そうな目をしていた。
その視線は、間違いなく今まで後ろをつきまとってきた視線と同じものだった。
「な、なんだおまえは」
自分を見下ろす冷たい視線に恐怖を覚えながらも必死に強勢を張る
「とぼけちゃこまるよ。敬とヤろうとしてたんだろ。一目でわかるよ」
いやらしい視線にいやらしいセリフ。全身に冷たいものが走った。
「だからどうだっていうんだ。同じクラスだし、お前にどうこう言われる筋合いはな……あ……」
突然腰から火がついたような疼きが襲い掛かった。
ガクガクと震えながらその場にへたり込む。全身が熱を帯びたように火照り始めた。
「そろそろ薬が効いてきたみたいだね。忘れたかい? TS法第3禁則
──母体提供者はいかなる要望をも通すことができるが、子を為すことを第一義としなければならない。
つまり、キミが誰とするかはキミの意思にゆだねられるけど、敬とだけはそれが許されない。
実の兄妹同士での性交が出産にどんな影響を与えるか聞いたことくらいはあるだろう」
「・・・んっ・・・んんっ」
もう、話を冷静に聞くことが出来ない。
股間から卑猥な痒みと性感が襲い掛かり、それをまぎらそうと太腿をすりあわせ、あえぎ声を口をふさいでこらえるのが精一杯だった。
熟した桃のような腰からはとめどなく甘美な液体がこぼれる。はじめて味わう性交の衝動に理性が破壊され始める。
「・・・で、残念ながらキミの第一志望である敬は候補から除かれる。
そこで、僕がキミの処女をいただきに上がったというわけだよ」
(誰が・・・おまえなんか・・)
声にならない。必死で燃え上がる情動をこらえながら、鳶上をにらみつける。
「どうやら、キミは僕を受け入れたくないようだが、これを見てもそういい続けられるかね?」
おもむろにズボンを下ろす鳶上。そこから隆々と勃起した肉棒がそそり立つ。
「……ゴクリ……」
久しく忘れていたペニス。それを見た瞬間、カプセルでとろけきったおれの理性は破壊された。
「おねがい、そのおちんちんを・・・あたしの中に入れてぇ・・・」
そのセリフで理性を取り戻し、あわてて口をふさぐも、中から薬の力でこみ上げてくる
メスの情念はふたたびおれの『男』を木っ端みじんに粉砕し、おれ──あたしの心をオンナへと塗りかえてゆく。
意識は朦朧とする。
「これで交渉成立。では、お言葉に甘えて」
へたりこんだあたしの腰を上げて、子供におしっこをさせるような体勢に導く。
わずかに残った意識の中ではじめて女の子としておしっこをした日の羞恥が蘇る。
もう、どろどろに蕩けているあたしの神秘。それを覆うグショグショに濡れた下着を引き剥がし、鳶上は充血するクリトリスに舌を這わせる。
「あん……」
もう隠れもないあえぎ声を出す。女の神秘をやさしく蹂躙される官能に体が浸される。
舌でクリトリスや蟻の門渡りを嘗め回される一方で、指を使って秘裂をほぐしてゆく。
「あン……はぁ、ん、いく……いくぅ!」
刹那、きゅっと膣がしまった感覚とともにびゅうびゅうと股間から潮を吹く。
意識が真っ白に飛んでゆく。イッてしまったのだ。挿れられることなく。
「さて、遊びすぎたかな。そろそろ本番にいかせてもらうよ」
朦朧とした意識とともにおれの意識が顔を出す
「・・・いやだ・・・」
そう叫びたかったが、もはや体に力が入らない。
おれの両足を開かせて、男のモノを股間に押し付ける。
おぼろげな視界のなかに薄い繊毛で護られた秘裂が男のごつごつした腰とおぞましいペニスに割り込まれるのが見えた。
「は……はぁぁぁぁん」
絶叫を上げてしまう。痛みなどまったく感じない。それどころか今まで感じたこともないような性感に全身が悶え狂う。
挿入感と異物感に、男の心が悲鳴を上げるが、それを上書きするような悦楽がそれを押し流す。
男のペニスを受け入れたあとは、あっという間だった。
ずっ、ずっと繰り返されるグラインドに増幅されたメスの感情が『おれ』の抵抗や意地をあっけなく洗い流し、
「あたし」を一匹のペニスを欲しがる淫乱な少女へと体と心を堕としていった。
「あっ……はぁん……ぁ、あん、あん……また、また来る」
初めてであるにもかかわらず激しく腰を振り乱し、両手で豊かな胸をもみしだく。
邪魔になったブラジャーは上着とともに脱ぎ捨てる。
喘ぎ声と突き上げるペニスの衝撃が自分をただの淫乱な少女に堕としてゆく。
そのままメスの快感の坂を全力で駆け上り・・・
「あぁん……また、いくぅ!」
それとともに奥まで突っ込まれたペニスから子宮へと精液が迸るのを感じる。
そのままあたしもイッてしまう。膣の律動がペニスからより一層の精液を搾り取ろうとする。
ペニスが抜き取られ、股間からどろりと白い液体がこぼれる。
ペニスからは白い液体とあたしの愛液が滴っていた。
ぐったりするあたしはもう『おれ』じゃなくなっていた。
気がついたとき、鳶上はいなくなっていた。
ひとり服をただし、立ち上がる。スカートは白い液体だらけだった。
夕暮れのトイレから人目を気にしながら教室にはいり、体操服に着替え、家に帰る。
外はすっかり雨だった。傘を持たずに走り去るあたし。
もう、男には戻れない。あたしはあのいやらしい視線をした鳶上にオンナにされてしまった。
鳶上の下に組み伏されて、オンナの体に溺れてしまった。
処女喪失、そして、下腹部の違和感、そして──未だにじゅくじゅくする股間が語る運命……妊娠……
あたしの目からとめどなく涙がこぼれた。