いつか、どこかで




オレと涼平は今、札幌に帰って来ている。

ダンススクール時代からとても仲の良い友達のお父さんが亡くなられた。
勿論涼平も知っている人で、突然の知らせにオレ達は愕然とした。

その知らせを受けて、オレ達は即効で地元に戻って来た。
マネージャーさんが早急にチケットを手配してくれたので、
お通夜には間に合わなかったけれど、葬儀には何とか間に合った。

何が出来る訳でもなく、それでも、少しでも彼の傍にいてあげたい。

そう思って葬儀に行き、実際彼を目の前にして、オレは何も言わなかった。
いや、言えなかった。

一体どういう言葉が、こんな状況にはふさわしい

お葬式からの帰り道、オレ達3人が昔よく遊んだ川沿いの土手を、涼平と2人で歩いた。
夕日を背にしながら、喪服を着た男2人が仲良く肩を並べて歩いている姿は少し浮いていたらしく、
すれ違う人達がちらちらと見ている。

それでもオレと涼平はお互いに何も言わず、土手を歩き続けた。

不意に目の奥が熱くなり、瞳から涙が零れ落ちそうになる。
泣くまい、と思って我慢しようとしたけれど、一度溢れ出した涙は止まることを知らず、
オレの頬をとめどなく濡らし続ける。

涙のせいで視界がぼやけ、上手く足を踏み出せなくなった。
その場に立ち止まって、自分を落ち着かせようとしたけれど、涙と共に嗚咽も出始め・・・。
堰を切ったかのように、オレはその場で泣き始めた。

「龍、こっちおいで」

涼平がそっとオレの背中に手を添えて、土手沿いの叢に座るよう促す。

こんな状態じゃ歩き続けられないし、何よりも知らない人に泣き顔をさらしたくもなかったので オレは素直に涼平の隣に腰を下ろした。

「・・・泣いても仕方ないのはすっげー分かるけど・・・っ、でも・・・」

そう、辛いのは自分じゃない。彼だ。
分かってる。分かってるけど・・・どうしても涙が止まらない。

自分でも何が悲しいのか・・・わからない。

正直なところ、自分の父親が亡くなった訳ではなく、だから、自分が悲しむ必要はない。
それでも、涙が止まらないのはどうしてだろう・・・。

涼平は何も言わずに、そっと背中を擦ってくれる。

「・・・そうだね。何て言葉をかけてイイかも分からなかったし・・・。」

どんな言葉をかけても、それが心底から出て来たものだとしても、
一度「ことば」という形にしてしまえば、何て陳腐に聞こえるんだろ。
すごく白々しく聞こえてしまう。ホントに、そう思ってるのに・・・。

「同情、とかに思われるのもヤだし、安っぽく聞こえるのもヤだからさ・・・」

何にもしてあげられないのが、スッゴイ悔しい、と涼平が小さく呟く。
まだ嗚咽の止まらないオレの肩を、キツく抱きながら。

なかなか止まらなかった涙がおさまり始めた頃、涼平が俯いているのに気付いた。

「・・・りょーへ・・・?」

オレの呼びかけに顔をあげた涼平の頬に、一筋の涙。

「すっげー悲しい。・・・もうおじさんに会えないのか、って思うと」

あぁ、そうか・・・。

友人である彼の心境を思うと、辛くて、悲しくて。だから涙が止まらないのかもしれない。
だけど、「もうこの世には存在しないおじさんに会えない」、その事実も、またとても悲しい。

だからこそ、余計に涙が止まらない。

「多分、一生かかっても「死」が何かなんて、きっと分かんないよ、オレ。
でも・・・、でも、死んだらその人ともう会えない。何があっても、絶対に。もう二度と。
それだけは分かる・・・」

静かに涙を流しながら、嗚咽を堪えながら、涼平は言う。

何も言えなくて、オレは涼平の手を握った。

夕日に照らされた涼平の横顔が、とても儚くて、今にも消えてしまいそうで、オレは少し怖くなった。
このまま涼平も居なくなったら・・・。

「・・・涼平」

「うん?」

「お願いだから・・・お願いだから、死んじゃわないでね」

更に強く涼平の手を握る。
涼平も手を握り返してきた。

「オレのこと、スキじゃなくてもイイ。他の誰と一緒に居てもイイ。何をしててもイイ。
ただ・・・生きていて」

勝手に想像の中で涼平が居なくなった世界を想像すると、とてつもない悲しみが込み上げてきた。

「龍・・・。勝手に人を想像で殺さないでね」

ちょっとカラかったような口調に、少し安心。
涼平を見やると、目じりに溜まった涙を指でそっと拭ってくれた。
少し周囲を見回して、誰も居ないことを確認すると、オレを力強く抱き締める。

「うん。絶対、って約束は出来ないけど、でも、オレも龍に逢えなくなるのはイヤだからさ・・・。
龍も、だよ?・・・何があっても、生きていて」

身体をもっと密着させるために、オレも涼平の身体をキツク抱き締めた。
涼平の体温が染み込んでくる。

あぁ、涼平はココにいるんだ・・・。

今は、お互いが大好きで一緒にいるけれど、
先のことなんて、ホントに誰にも分からない。

明日、涼平がオレのことを嫌いになるかもしれない。
それとも、オレが嫌いになるかもしれない。

「もしも・・・」なんて考えて、将来に不安になったりもする。

でも。それでも。


「生きていれば、またいつか、どこかで逢えるんだからさ」


そう。
生きている限り、また逢える。

ただ、生きている。
それだけで、充分じゃん・・・?






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『同情するなら・・・』ってフレーズを思い出したのは私だけ・・・?




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