千葉涼平、愛しの緒方龍一に全戦全敗中。

それもこれも、全部ウチのフロントマン且つ策士、橘慶太の悪知恵が働きすぎ…。



悪知恵




「…ね〜、りょーへー…」

ゲームに没頭していたハズのカワイイ彼が、突然オレの名前を呼ぶ。

「ハイハイ。なんでしょ、姫」

読んでいた雑誌から顔を上げる。

龍一は「姫」の一言に敏感に反応。
今までTVの画面にクギ付けだった視線がこちらに向く。

龍一は床にクッションに囲まれて座り込み、オレはすぐ後ろのソファーに鎮座。
よって、必然的に龍一の上目遣い攻撃にやられるハメに。

「…なぁに、龍ちゃん」

本人としては一生懸命威嚇してるつもりっぽいけど、明らかに効果ナシ。

アレだね。「棒たおし」の伸也と同じ。
一生懸命強面を作ろうとしてるんだけど、カワイイだけ。
ま、仔犬が頑張って虚勢を張ってるカンジ?

確かに、違う意味でオレには効果テキメンなんだけど。

じーっとオレを見つめ(睨み?)ながらも、沈黙の龍一。

「なにさ」

「…ヘンなこと、言ってもイイ…?」

わざわざ尋ねてる龍一がカワイイ。
そもそも、だ。ヘンなことなら言わなきゃイイのに。

「言ってみな?」

許可が下りると、スリスリと床を滑りながら、オレの足元まで来る。
そして、右膝の上にあごを乗せる。再び上目遣い攻撃。

…でた。龍一の甘えたビームだ…。

性質の悪いことに、コイツはオレがこの瞳に弱いことを熟知してる。

「…どしたの…。何して欲しいの」

だーっ!カワイくてしょーがねーっ!!、って思ってることを悟られないように、
平静を装いながら、龍一の髪を優しく撫でてやる。
内心、心臓バクバクなんだけどねー。それは、ナイショ。

「…ン…」

もっともっと、というように頭を手のひらに擦り付けてくる。

…これは、本格的に甘えんぼモードに突入したな、龍一。

髪を撫でていた手を下に滑らせ、指先で顔の輪郭をゆっくりなぞる。
親指の腹で頬を撫でてやれば、気持ちイイのかくすぐったいのか。
大きな黒目がちの瞳をふゆん、と細める。…ネコみたい。

そのまま親指でクチビルをなぞってやる。
相変わらずふにふにして、柔らかいクチビル。

うーん…。ヘンな気分になりそう…。

と、人が自制しているのを知ってか、知らずか。


ぺロ


閉じられていた形のいいクチビルが少し開いた、と思いきや。
その間からチロリと覗いた真っ赤な舌で、いきなり親指をひと舐め。

「…ッ…」

思わず声が漏れそうになるのを必死でこらえ。

…やっぺー。…腰、に来たかも…。

ちくしょー。龍一のクセに。やるじゃねーか…。

かなり動揺したけれど、それも必死で隠し。
いつもの通り、余裕をかましたフリ。ホントは、焦りまくりなんですが。
やっぱり年上だし?(例えそれが1コだけでも)

「ん〜…」

そんなオレにお構いなく、龍一はオレの親指をもう一度ペロリ。
そして、ちゅっ、と音を立てながら、何度も吸いつく。

そういや、誰かが手も性感帯の一つだ、なんて言ってたなー、と今思い出し。

確かに。気持ち、イイ。

本番のセックスよりも敏感になってる、カモ。

まるで、体中の全神経が。
龍一のクチビルが与える感覚に集中してる、カンジ。

ふっと伏せられていた瞳がこちらを向き、お互いの視線が絡みあう。
少し熱を孕み、潤んだ瞳がとても煽情的で。目元もほんのり紅く色付いて。

…エロすぎる…。

誘ってるのか。それとも無意識なのか。
どっちにしても、オレの閾値をもうとっくの昔に超えていて。
龍一の腕をとり、自分の方へ引き寄せようとした、そのとき。

「りょーへ…」

龍一の方からオレへと近づいてきた。
自分の頬に添えられたオレの手を口元へ、導く。


キシリ


開いたオレの脚の間に入り込み、片膝でソファーに跪く。

気が付けば、視線の高さが逆転していて。

今度はオレが龍一を見上げているわけで…。


ぺロ


潤んだ視線を外すことなく、オレの手のひらを、ひと舐め。

「誘ってんの…?」

まぁ、言わずもがな、な状況だけど。
それでも、やっぱりコトバで表して欲しいなぁ、なんて。

「…う、ン…。…誘ってる、かな…」

今度は龍一がオレの頬を撫でる。

…珍しい。龍一からのお誘い、なんて。
いつもは恥ずかしがって、オレが誘っても焦らすぐらい、なのに。
…どういう心境の変化?

それでも、まぁ。
据え膳食わぬはナンとやら、と言うぐらいだし。
龍一の気が変わらないうちに。

龍一の頬に添えていた手を、そのまま下へとスライド。
腰の辺りを、ゆうるり、と撫で。
そのまま、龍一の服の中へ手を…。

「ダメ」

…ハイ?…今、何て?

呆然としていると、服の中に入りかけている手を取られ。
また、龍一のクチビルへ。

「…レ、が…りょーへー…に…ちゅー…した、い…」

…ちゅー、ですか…?

「ってか、もしかしてそれが言いたかったこと…?」

「…え…、ウ、ン…」

…耳まで赤いよ、龍一。かわいーv

でも。そんなの、いつもしてんじゃん。
今更、わざわざ…


ちゅ


抗議する暇も与えられず。
気が付けば、直ぐ目の前にダイスキな龍一の顔が。

「ん…」

クチビルをまるで小鳥のように何度も啄まれ。
龍一は優しく肩を押しながら、オレをソファーの端へと追い詰める。

いつもとは体勢が逆転。オレが下で、龍一が上。

オレの腰を跨ぐように、龍一が覆い被さる。

中腰になっている龍一の腰に手を添えて、
自分の脚の上に座らせるように、誘う。

その間も、尽きることなく、龍一はオレのクチビルを啄む。

「りゅー…」

「しー…」

どうやら、話すのも許されないようで。

龍一に襲われるのは全然気分の悪いモノじゃないし。(寧ろ大歓迎v)
何をしてくれるのか。期待しながら、龍一のクチビルを受けとめる。
何度も何度も、龍一は優しくオレのクチビルを啄む。

そろそろ反撃開始かな…と、思い始めたとき。


かぷ


…「かぷ」?

伏せていた目をそっと開けると、ナント。
龍一がオレの下唇をはんでるし…。

「りょーへー…の、クチビル…ヤラかい…ス、キ…」

クチビルをはみながら喋るから、吐息がかかる。

…おぉ〜、本格的にヤバイかも…。

龍一を目の前にして、自分がこんなに我慢強いとは…。

んが。そんなオレも我慢の限界が。
ここで襲わなかったらオトコじゃないだろ!?
どんなに井川遥さんに似てるとは言われても、やっぱり健全な男子なもんで。

龍一の腰に添えていた手に力を込め。
一気に体勢逆転を計ろうとした、そのとき。

「ハイ、終わり〜!」

がばっと元気よく、龍一がオレの上から退いた。

「…へ…?」

彼の腰に添えられていた手はそのままの位置で固まる。
手、だけじゃなく。オレ自身もその場で固まる。
きっと、「鳩が豆鉄砲くらった様な顔」を自分はしてるに違いない。

「おーい…りょーへ?」

…「おーい」って、アナタ…。
こんな状況で「ハイ、終わり!」なんて…。生殺しですか…。
オレの、この気持ちの高ぶりはどーすんだよ。

「ね、ね、気持ちヨかった??」

えぇ、そりゃーもう。しっかり腰に来ましたとも。
今ココでオマエを襲っちゃいたいぐらいに気分は上昇してるともさ。

「…ビックリした。龍一がイキナリこんなエロいこと、するなんて思ってもみなかった」

「エロい」を強調して言ってやった。腹いせに。
そうしたら。案の定顔が真っ赤。
恥ずかしくなるなら、しなけりゃイイのに。
いつまで経っても「ウブ」なとこもカワイイんだけどねv

「だっ、だってだって!けーたがさぁ!『クチビルって、「かぷ」って噛まれると気持ちイイんだよね〜v』って言ってたから!」

…慶太…。オレのカワイイ龍一に入れ知恵しやがって…。

ってか。

そもそも、アイツはどこでそんな情報を仕入れたんだ?
実体験にでも基づいてんのか?しかも「噛ませて」んのか?
後で問いただしてやる、ゼッタイ。

「だからって、何も実践しなくても…」

「…、りょーへに、…てもらってるし…」

ごにょごにょと言う龍一。しかも、更に顔、赤いし。
…空耳じゃないよね…?今、すっごいカワイイこと、言われたような…。



『だって、いつも涼平に、気持ちヨク、してもらってるし。お返し』



…慶太に、他にももっと入れ知恵しとけ、って言っとくか…。






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ウチの『腹黒』基本構図:慶太=涼平>>>龍一




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